神津島村民の運動器疼痛に対する実態と意識に関する調査研究 近藤宏 筑波技術大学保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 要旨:本研究の目的は,神津島村の住民の運動器疼痛に対する実態と意識について把握し,住民のための運動器疼痛への方策を検討するための基礎資料を資することである。調査は,集団調査法により神津島村役場保健医療課生きがい健康センターで行われる健康診断時(2018年 5月実施)に無記名による自記式質問調査票を用いて実施した。本研究の成果は,住民のための運動器疼痛への施策を検討するための大変意義ある基礎資料となる。 キーワード:運動器疼痛,島嶼地域,保健医療資源,鍼灸マッサージ,意識調査 1.研究背景と目的 島嶼地域は,人口減少や過疎化といった課題を有しており,少子高齢が進む将来の日本の地域の姿として取り上げられることが多い[1]。また,保健医療資源が限られており,住民は保健医療サービスを十分に受けら得ていないことが明らかとなっている[2-4]。そのため,島嶼地域が健全かつ持続的な地域社会の形成を確立することは,日本が直面している多くの課題の一端を解決することに繋がる可能性がある。 国民生活基礎調査における国民の有訴者率の上位は運動器疾患(腰痛,肩こり)である。また,介護にならないまでも生活に何らかの支援を必要とする「要支援の原因」は,骨折・転倒や関節症などの運動器疾患が 2割を占めている[5]。運動器疾患は疼痛や機能不全を引き起こすことが知られている。特に慢性化した運動器疼痛は,健康状態のみならず労働生産性,日常生活活動,QOL,医療資源の使用および経済的負担を大きく影響を及ぼす。 そのため高齢化が著しい離島において,運動器疼痛を有する人の占める割合は,きわめて高いことが推測される。また,労働人口が減少している離島にとって,島民の健康は離島の振興に大きく影響を及ぼす。そのため,神津島をはじめ,離島の限られた保健医療資源のなかで,運動器疼痛に対する方策を検討することは非常に重要である。しかし,運動器疼痛に対する方策を検討するための基礎資料は管見の限り非常に少ない。 本研究の目的は,本研究では神津島村の住民の運動器疼痛に対する実態と意識について把握し,住民のための運動器疼痛への方策を検討するための基礎資料を資することである。 2.成果の概要 2.1 研究方法 研究デザインは,集団調査法。調査は,神津島村役場保健医療課生きがい健康センター(以下,健康センター)で行われる健康診断時(2018年 5月実施)に無記名による自記式質問調査票を用いて実施した。回答は選択式(単一及び多肢選択)および自由記述式とした。調査項目は,①属性(年齢,性別,職業),②現在の健康状態,③現在の痛みに関する項目,④現在の痛みに対する治療方法,⑤過去の痛みに対する治療方法,⑥痛みに対する意識とした。書き終えた回答用紙は,生きがい健康センターに設置した回収箱で投函するよう対象者に依頼した。回収した658件のうち属性(性別・年齢)の未記入であった調査票を除いた 642件(有効回答率 97.6%)を集計の対象とした。回答データについては単純集計を行った。集計結果は実数および百分率で示した。統計分析では,多変量解析により属性や運動器疼痛の状況および意識に係る因果関係を明らかにした。 2.2 研究結果 本研究結果の詳細は,学術誌に投稿を予定しているため公表は差し控える。以下は結果の項目のみを記す。 ・現在の健康状態 ・現在の痛みに関する事項 ・現在の痛みに対する治療方法 ・過去の痛みに対する治療方法 ・痛みに対する意識 3.成果の今度における教育研究上の活用および予測される効果 神津島村の住民の運動器疼痛に対する実態と意識について把握した。本研究の成果は,住民のための運動器疼痛への施策を検討するための大変意義ある基礎資料となる。本研究の推進は,神津島村のみならず保健医療資源の限られた島嶼地域の住民の運動器疼痛の改善や予防プログラムの構築に役立つことが推測できる。ま,島嶼地域の保健医療政策の持続的な発展に結びつくことが期待できる。 謝辞 本研究は , 2019年度学長リーダーシップによる教育研究等高度化推進事業 A(競争的教育研究プロジェクト事業)の助成を受けて行われた。ここに深く謝意を表する。 参照文献 [1]国土政策局離島振興課.平成 25年度新しい離島振興施策に関する調査. http://www.mlit.go.jp/common/001081043. pdf.2019.3.11閲覧. [5] 佐久川政吉,他.沖縄県一離島における介護保険サービスに関する研究.H島における要介護高齢者の在宅サービス 2年間の実態.沖縄県立看護大学紀要. 2003;4:110-117. [3]八坂貴宏.離島医療の現状と将来.長崎県の離島の経験からー.治療. 2014;96(1):14-18. [4] 小川智子,他.島嶼地域で暮らす高齢者の “健康 ”に関する文献的考察.島根県立大学出雲キャンパス紀要. 2015;10:17-24. [5] 厚生労働省.平成 28年国民生活基礎調査の概況.第 10表 性・年齢階級・症状(複数回答)別にみた有訴者率(人口千対). 2017.2019.3.10閲覧. en/ chosa_kenkyu/chosa/__icsFiles/afieldfile/2019/07/22/report2018_2.pdf.(2019.6.30閲覧)