視覚障害者のための「しゃべる触図」とタブレットを活用した学習ツールの開発 白岩伸子,周防佐知江 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 キーワード:視覚障害学生,音声触図教材,ドットコード,タブレット端末 視覚障害者の視力は様々で,全盲者と弱視者が同じ教室で学ぶ場合,各自に応じた教材を制作するのは容易ではない。従来の教材では,点字,拡大文字,DAISY教材などに加えて,学生の理解を促進するため,点字付き触図教材を使用してきたが,点字使用者には細かいオリエンテーションが難しく活用は限定的である。弱視者にとっても拡大によりかえって全体像がわかりにくくなる。 本研究の目的は,墨字使用者,点字使用者両者が同時に利用できる“「しゃべる」触図教材 ”を開発することである。視覚障害者の協力を得て評価・試作を繰り返し,その制作ノウハウなどの成果を全国の特別支援学校や視覚障害施設に提供し,晴眼者と共に学べる学習環境を実現することを最終的な目標とした。 我々は,現在タブレット端末を弱視者のみならず,全盲者にも使用可能なツールとして開発改良しつつある。例えばタブレット端末の一定の部位を触れることで,読み上げ機能と連動して簡単に操作可能にするなどの工夫をしている。さらにタブレット端末を触図と連動させる試みも最近されるようになっている。 これらを融合することができれば,触りながら文字情報のみならず,図表についても音声情報を付加して理解することが可能になる。すなわち,タブレット端末一つに,機能をまとめオールインワンにすることで,「読む」行為がより容易に可能になる。またタブレットにすることで視覚障害者にとっての学習ツールがよりポータブルな形となり,どこでも使用可能となる。 昨年度までは,音声をリンクさせた微小な 2mm四方のドットコードを図全体に刷り込み,音声ペンで触れて再生する新規教材を作成した。従来の SPコード等の録音再生シールに対応したペン型ボイスレコーダーとは異なり,音声をリンクさせたい形を図上で自由に設定することが可能で,音声教材の準備が比較的短時間で大量にできることが確認された。しかし,墨字教材ではなく,点字使用者については,触図にドットコードを印刷しようとすると,従来の触図プリンターではドットコード部分を点として認識して紙が膨隆してしまうため,音声ペンで再生できなくなるという問題が生じた。 本研究では,ドットコードの技術をさらに発展させ,透明シール状のものにドットを印刷して,触図に貼付する試みや,読み上げ機能を付加したタブレット端末とそれらの触図の連動を検討した。さらに,今後は,学生の自学自習に使えるような,よりポータブルで使いやすい形を検討している。