令和元年度学生生活研究会報告 野口栄太郎1),三浦寿幸2),大鹿 綾3),福島正也1),皆川洋喜2),白石優旗2) 筑波技術大学 保健科学部 保健学科1) 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科2) 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部3) 要旨:令和元年度学生生活研究会を開催した。「①低意欲な学生への対応」,「②学生に関する情報の教職員間での共有方法」,「③重複障害学生への対応」の3つの分科会を設け,各内容に関して議論,意見収集,情報の共有を行った。また,「発達障害を併せ有する学生への理解と対応」というテーマで全体会において講演を行った。 キーワード:発達障害,重複障害,学生委員会 1.はじめに 本学学生委員会で毎年開催している学生生活研究会は,本学学生の教育及び生活への適応,人間形成として行われる課外活動の指導,助言,学内秩序の維持等の諸問題について,教職員間で共通意識を持ち,よりきめ細かい日常業務の推進を図り,学生生活支援体制の円滑な運営を目標としたものである。平成7年度から開催され,全体会及び分科会で構成されている。毎年,up-to-date な話題で,本学の最近の問題点等に関して議論を深めている。本年の内容は,教職員間の共通の問題点をアンケートにより抽出し学生委員会で決定している。 2. 令和元年度の学生生活研究会の構成と内容 分科会では,「低意欲な学生への対応」「学生に関する情報の教職員間での共有方法」「重複障害学生への対応」の全3テーマで議論を行なった。分科会終了後には,担当者がその議論の概要を報告し,情報の共有を行った。全体会では,本学で近年問題となっている「発達障害を併せ有する学生への理解と対応」をテーマに講演を行った。 2.1 分科会 分科会では次の3つの話題が提供された。 ① 低意欲な学生への対応 福島 正也講師 ② 学生に関する情報の教職員間での共有方法 皆川 洋喜教授 ③ 重複障害学生への対応 白石 優旗准教授 分科会として60分の議論,意見交換を行い,全体会終了後,報告会として分科会ごとに5分ずつ,質疑応答も含めて計25分の報告会を行い,情報の共有,意見交換を行った。 各分科会の参加者は分科会①16名,分科会②19名,分科会③17名であった。   2.2 全体会 全体会では,以下のような講演会を企画した。 「発達障害を併せ有する学生への理解と対応」 講師:障害者高等教育研究支援センター    大鹿 綾 講師 石原保志学長の挨拶後,全体として90分間の講演会が行われた。全体会の参加者は46名であった。 (写真) 図1 学長挨拶 3.学生生活研究会報告 3.1 分科会報告  以下に,各分科会の座長による報告をまとめる。 3.1.1 分科会1 「低意欲な学生への対応」  分科会1では,低意欲な学生への対応をテーマに,各学科や専攻の現状や取り組みについて参加者間での話し合いを行った。はじめに,座長が学習意欲の評価法,低意欲の問題点・現状と今後の見通しについて話題提供を行った。その後,参加者間での各学科・専攻の現状や取り組みに関する情報交換を行った。  情報交換の中では,低意欲な学生に関する本学の現状が報告された。その中の主要な意見を以下に列記する。 ①本学の入試は全入に近い状況にあり,入学者の選抜が機能しづらく,学修・就労意欲が低い学生も入学しやすい傾向がある。 ②学修・就労意欲における学生間の格差が大きく,当該年度の入試倍率によって学年間の格差が生じることがある。 ③本学の特殊性として,本学の充実した支援体制を理由に入学を希望したが,理数系の学習内容に対応できず,入学後に意欲が低下してしまう例がみられる。 ④学生の中には,学修・就労への意欲は高いが,何をすればよいのかが分からず,成果に結び付けられていない例がみられる。  また,情報交換の中では,低意欲な学生への対応についても議論された。その中の主要な意見を以下に列記する。 ①学生への意識づけにおいては,入学前・後を通じ,学びの場としての大学の意義(なぜ大学で学ぶのか,大学での学びがどのように将来に結びつくのか)について理解を深められるように努め,学修・就労への意欲の向上を図る必要がある。 ②カリキュラムにおいては,1年次では基礎科目の学習内容の定着を図る必要があるが,あまりに詰め込み型の学習に傾くと学生の意欲低下を招いてしまうため,カリキュラム編成に配慮する必要がある。 ③授業においては,反転授業等を通じ,学生の学修意欲を引き出す工夫を行う必要がある。  今後,本邦の高等教育においては,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(中教審答申,平成30年11月)に示された“学修者本位の教育への転換”,“教育の質の保証と情報公表”が推進される。本分科会を通じ,低意欲な学生への対応は本学の重要な教育課題であり,学生個人の課題としてではなく,大学の課題として取り組んでいく必要があることが確認された。 [福島 正也 講師] (写真) 図2 分科会1 3.1.2 分科会2 「学生に関する情報の教職員間での共有方法」  学生に対する「教育の質」を向上させることを目的に,チームとして教育にあたる際に必要な情報を教職員間でどのように共有できるかをテーマに議論を行った。限られた議論の時間を有効に活用するために,アクティブラーニングの手法の一つである「反転授業」の手法を用いて参加者に対し事前にアンケート調査により意見を求め,その内容に基づいて議論を進めた。アンケート調査及び議論の概要を以下にまとめる。なお,ここに取り上げた内容は個々人の意見を列挙したものであり,必ずしも参加者の総意というわけではない。 (1)どのような情報が利用可能か a. 学修状況(到達度),カルテ  ・成績(入学前含む),履修状況,PROG(社会人基礎力テスト),就活状況 等 b. 個人の能力(障害含む)  ・言語・コミュニケーション技能,視機能, 特別配慮 等 c. 生活・健康  ・出席,ポートフォリオ,課外活動,奨学金,賞罰,交友,保護者,健康・体調・精神,特別配慮 等  クラス担当,アカデミック・アドバイザー教員(履修計画や学修状況について学生に助言する教員。以下AA教員),教務,支援センター,保健管理センター等で持っている各種情報があり,これらの情報が利用可能である。ただし,健康・体調・精神などの情報は担当教員でも把握することが難しい場合があり,どのように把握すればよいかが課題である。 (2)情報共有についての取り組み a. 定期的な会議  ・会議(月1回~2回),基礎教育・学科・専攻毎 b. メディアによる共有  ・電子メール c. 個人対応  ・立ち話や歩き回っての情報収集・共有  会議や授業で個別に把握した情報が,それを必要とする教職員(非常勤教員含む)に十分に共有されていない場合がある。学生の年次進行で状況も変化するので,それに合わせた対応も必要である。  速く,正確で,的確な範囲での情報共有を行うために,情報システム化に対する期待が大きい。その中で特に学生の出欠状況の把握が重要であり,まずは出欠状況だけでも対応できるようにしたい。 (3)個人情報保護との兼ね合い a. 情報システム化による情報共有が必要 ・閲覧制限ができるようにし,個人情報が流出しないような対策が必要である。 ・システムは,教職員だけでなく学生も利用できるとよい(出欠,履修状況等)。 ・出欠状況等,利用者が逐次データを入力することによりデータ収集の負担を軽減できる。 b. 共有不可な情報 ・学生のプライバシーや本人が望まない情報は共有すべきでない。 ・他者間での情報共有は原則不可であり,学生本人の同意を得て必要に応じてその都度検討すべきである。  共有すべき情報は何か,共有すべきでない情報は何かを分けて整理する必要がある。 分科会2のまとめ  何が「個人情報」であるかについて,教職員間で共通理解を持つ必要がある。その上で,共有すべき情報とそれ以外の情報を分類する必要がある。  また,「どんな情報を共有するか」ということだけではなく,それに対し「チームとしてどう対応するか」ということと併せての議論が必要である。 [皆川洋喜 教授] (写真) 図3 分科会2 3.1.3 分科会3 「重複障害学生への対応」  本分科会では,1時間の分科会に対して参加者が13名であり,参加者全員に十分な発言の機会がないことが想定されるため,(1)事前アンケートにより全参加者の意見・状況を収集,(2)アンケート結果をまとめたものをベースに司会進行役の白石優旗准教授が分科会当日のアジェンダを作成,(3)分科会当日もGoogleドキュメントを活用することで,全参加者がリアルタイムかつ同時に発言可能となるように工夫を行った。  事前アンケートで,(1)現在どのような重複障害を持つ学生の対応を行っているか,(2)重点的に議論すべきと考える重複障害の種別は何か,(3)本学における重複障害対応は十分な体制が整っていると考えるか,の3点について尋ねた結果,8名からの回答が得られた。 (1)については, 視・聴覚障害が5名, 発達障害が3名, 精神障害が1名, 肢体不自由が1名, 特になしが1名, すべてが1名 であった(延べ人数)。 (2)については, 視・聴覚障害が1名, 発達障害が3名, 精神障害が2名, すべてが1名, 内臓疾患が1名 であった。  以上により,本分科会では,発達障害(精神障害)学生関する議論が特に望まれていることがわかった。 (3)については,  不十分との回答が(8名中)7名から得られており,具体的な課題や解決方法の提案がなされた。 分科会当日は,最初に,分科会の背景と目的(多様な学生への対応の重要性,本学の特徴,活発な議論と発想を期待)を確認したのち,これらのアンケート結果の紹介を行い,発達障害について重点的に議論することを確認した。  次に,一般大学における発達障害学生への対応について紹介した。  具体的には,大きく以下の3パターンに分類できる(国立障害者リハビリテーションセンターのWebページより)。 1. 障害学生支援室(障害学生を専門に支援する組織が対応) 2. 学生相談室/保健管理センター  (一般の健康管理部門が対応) 3. 発達障害のある学生に特化した支援室  しかしながら,本学においては,クラス担当教員が中心となり,保健管理センター及びAA教員と保護者が連携・情報共有を行っているのが現状である(平成30年度の本学自己評価書 p.141より)。  以上を踏まえて,司会進行役の白石優旗准教授より,以下の問題提起がなされた。 【前提】我々は「視覚障害学生」 「聴覚障害学生」の支援については「プロ」である(でなければならない) 【背景】近年,本学においても「重複障害学生」が増加してきている(と感じている) 【問題提起】視覚障害・聴覚障害以外の障害を同時に有する学生にとっても,本学は学びやすい大学になっているか(「障害者のための大学」という看板)  この問題提起に基づき,今後の方針として,以下の2つの道が示された。 1. 我々は,その他の障害を持つ学生の支援についても「プロ」になる 2. その他の障害については「専門スタッフ」が中心となり対応し,我々は専門スタッフとの協力の上で支援する(我々は,視覚障害学生・聴覚障害学生の支援のプロに徹する)    すなわち,誰が中心となって対応した方が良いのか,という問である。  これに対し,(1)従来どおり「クラス担当」が中心となる場合と,(2)「専門スタッフ」が中心となる場合について議論がなされた。 (1)については, 「本来の業務(各教員の専門性を活かした教育活動)に支障がでている」 「他のAA担当学生の時間の不公平感がある」 との意見があった。 (2)については, 「支援室は実際の授業に関与できないので,クラス担当の教員が一番苦しむという事例も(実際の授業担当との板挟み)」 「現場(クラス担当など)と保健管理センターを繋ぐ組織はあってよいかもしれない」との意見があった。  最後に,分科会での議論により得られた結論を以下にまとめる。 1. 「カウンセラー」のより積極的な活用/制度の構築を進める  (「入学時にカウンセラーとの面談を義務付ける」なども検討) 2. 現状に対応した「クラス担当制度の見直し」について議論していく 3. 事例を共有(DB作成)し,教員が協力し合う体制作りを検討する  (教員が得意分野と短いスキマ時間を登録し協力し合う)  1時間という限られた時間の議論では,今後の方針について,明確な提言はできなかったが,視・聴覚障害以外の学生への対応方針は,本学の特色の根幹に関わる重要事項であるため,今後も引き続き全学的な議論を継続していく必要があると考える。 [白石優旗 准教授] (写真) 図4 分科会3 3.2 全体会報告 「発達障害を併せ有する学生への理解と対応」  2016年より「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」が施行されたこともあり,近年高等教育を受ける障害のある学生の数は急増している(日本学生支援機構,2019b)。障害に関する支援を受けている学生の内訳をみると,精神障害の学生が全体の31.7%,発達障害の学生が25.3%とその半数以上を占めていることが示されている。本学においても,聴覚障害,視覚障害に発達障害を併せ有する,もしくはそのような困難を示す学生に対してどのように理解,支援していけばよいのかは喫緊の課題となっている。  発達障害とは,明らかな知的な遅れはないものの,学習上,生活上に極端な苦手さを示すものであり,学習障害(LD,DSM-5ではSLD),注意欠陥多動性障害(ADHD),自閉スペクトラム障害(ASD,DSM-5ではアスペルガー症候群に対応するものは別のカテゴリーへ。)等とされる。聴覚障害,視覚障害があると言語や社会性の発達などに影響を及ぼすことがある(二次的困難)事は従来より指摘されているところであるが,そこに発達障害を併せ有するとなると,困難の原因が見えにくく,どのように支援してよいかわかりづらかったり,適切な理解が得られずに苦しむこともある。そこで,本学においてどのような困難が予想されるのか,どのように理解,支援していけばよいのかを考えたい。  学習場面での困難として,入学後最初の躓きとしては履修計画の作成,登録がうまくできないことが予想される。また,実際に講義が始まってからはそのスピードについていけない,90分間集中を続けることが難しい,どこが重要な情報であるかわからず,例えば課題の提出や試験に出やすい内容などを落としてしまうなどもある。また,最近は大学でもアクティブラーニングが積極的に行われており,グループワークなども多い。こういった集団にうまく入れなかったり,指示がうまく伝わらないなども起きやすい。こういったことが重なると,レポートや課題がうまくこなせなかったり,締め切りまでに出せなかったりするかもしれない。また講義への興味が徐々に失われてしまい,遅刻,欠席が増える,単位を落としてしまうことにもつながってしまうことも考えられる。  生活面での困難では,友人関係でのトラブルが多発したり,孤立してしまう,善悪の判断よりも,感情が優先されてしまう,ストレスに弱く,非常に落ち込みやすい,身辺整理が難しい,自室にこもってしまい,昼夜逆転生活になってしまう,刺激に過敏であったり,パニックを起こしてしまう,アルバイトや就活がうまくいかないなどが考えられる。生活面での困難にどこまで大学が介入するかは判断が難しい面もあるが,講義への参加に関わる部分や保護者との情報共有などはニーズが高いだろう。  では,こういった困難に対してどのように対応していけばよいのだろうか。「発達障害」と一言で言っても個人差は大きく,同じ診断名がついていたとしてもニーズは一人一人違うこともあるので,まずは本人や保護者としっかりと話をし,問題を整理していくことが最初のステップだと考える。今のことだけでなく,これまでのこと(いつから困難があるのか,家庭や高校生まではどうしていたのかなど)の情報も得られると今後の支援のヒントになるものがあるかもしれない。その際に,確実に通じているか,確認しながら進めることは重要なポイントである。例えば,音声であっても手話であっても「消えてしまう情報」なので,話をしながらメモを取ったり,重要なところは書いて確認し合うなど「残る情報」を活用するなどするとよいかもしれない。また,状況によって教員一人で対応が難しいと思われる場合,チームで対応することもある。本学の場合,学生にとって最初の窓口はAAもしくはクラス担任となることが多いかと思われるが,状況を整理した結果チームで対応した方がよいと判断される場合,授業担当教員,保護者,障害学生支援委員会,合理的配慮推進委員会,保健管理センター(カウンセリング)などと情報共有し,対応を検討していく。その中で授業担当者としての対応を求められた場合,原則として重要なのは大学は「学ぶ」場所であり,発達障害があるからと言って評価のダブルスタンダードはしてはいけないということである。評価基準を変更するのではなく,評価基準を達成するためにどのような配慮が必要かを相談,対応していくことになる。例えば,普段の授業でできる工夫として,情報提示の方法,量の調整,要点の整理,残る情報化などがあるだろう。他にも課題の提示,試験方法(「内容」ではなく)の工夫として,提示の方法や,試験時間や締め切りの延長なども考えられるかもしれない。繰り返しになるが,これらはその講義で身に付けるべき内容に合わせて行うことが重要で,例えば「速さ」が学習目標として重要であれば時間延長ではなく,どうしたら「速さ」を身に付けられるかを工夫していく方がよいだろう。また,遅刻,欠席,別室受講等への柔軟な対応などについては新たな課題としてどのように対応していくか,学則の見直しが必要かどうかも含めて大学全体での検討が求められるところである。  障害者差別解消法の中では,本人からの配慮要請が重要とされている。つまり,学生本人が自身についてよく理解し,どのようにしてほしいか申し出ることが基本となる。しかしまだ自己理解が充分ではなく,卒業後に適切な配慮要請ができる力を身に付けることも大学生活での目標となる場合もあるだろう。本学でも,これまで支援を受けた経験のあるケース,入学時に高校や保護者との引継ぎのできたケース,本人や保護者に困り感や自認のないケースなど混在しているのが実態である。AAやクラス担任だけではなく,専門的知識を持った,医療,カウンセラー,福祉等専門家の力を借りて対応していくことで自分の得意/不得意,性格等に目を向け,その時どうするとよいかを考えさせていきたい。また,支援をする立場としても「できない」ことばかりではなく「得意」にも注目すること,必ずしも障害名にこだわり過ぎないことも必要であると考える。また,二次的(三次的)なものとして精神的に不安定になっている可能性も念頭に置いておきたい。 ここまで,対応の基本的な考え方について述べてきたが,一方で大学として対応すべきところはどこまでかという問題もある。特に本学においては構内に寄宿舎があるために,どうしても支援の範囲が広がりやすいことも指摘される。基本的には入試,授業,実習,卒業,就職に関わる部分への対応が主になるだろうが,その範囲をどこまでとするのか,学内対応の窓口はどこなのか,支援を検討する場はどこなのか,誰がどのように対応するかなどを今後大学として明らかにしていく必要がある。また,それ以外の部分は関知しない,ではなく保護者とも連携しつつ大学以外に介入してくれる機関へつなげていくことができるとよいのではないかと考える。例えば医療(診断,服薬,カウンセリング等),福祉(情報提供施設:相談業務,福祉課:就労支援,手帳等),NPO(ピアグループ,SST,相談,居場所づくり等)等が考えられる。 また,予防的介入として,当事者だけではなく学生全体に対しての理解啓発という方法がある。例えば,入学時のガイダンスやパンフレット等を用いて発達障害の基礎的理解や困ったときの相談窓口を知らせておく,周囲に困っている学生がいたときにどのように理解するとよいか一般的な提案をしていくなどである。特に周囲とのトラブルが多発してしまった場合,周囲が本人を避けてしまい孤立状態になったり,逆に周囲が我慢を強いられすぎてしまうことがある。周囲の学生にとっても適切な理解をすることでストレスを軽減し,我慢しすぎない対応がとれるようになることは有益であろう。他大学では学生間での支援体制を構築する例もあるように,一つのリソースとして育てていくことができればより豊かで自然な支援をしていくことへつながっていくかもしれない。 本学における発達障害への対応は,現状ではAAやクラス担当が多くを抱え込んでしまっているようである。今後大学全体での理解,支援体制を整備していくことで聴覚障害,視覚障害のみならず様々な教育的ニーズがあっても十分に学修することができる大学を目指していきたい。 [大鹿綾 講師] (写真) 図5 全体会 [1] 松村明編.大辞林.第三版(cited 2019-08-16),https://kotobank.jp/ [2] 文部科学省.大学等への修学支援の措置に係る学修意欲等の確認の手引き(高等学校等向け)(cited 2019-08-16),http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1417161.htm [3] 見舘好隆,永井正洋,北澤武,上野淳.大学生の学習意欲大学生活の満足度を規定する要因について.日本教育工学会論文誌.2008;32(2):189-196(cited 2019-08-16),https://ci.nii.ac.jp/naid/ 110006967143/ [4] 中央教育審議会.2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(cited 2019-8-16),http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm [5] 文部科学省.学生調査について(cited 2019-8-16),http://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/05/__icsFiles/afieldfile/2019/05/29/1417489_6.pdf [6] 旺文社教育情報センター.どうなる! 22年後の大学像(cited 2019-8-16),http://eic.obunsha.co.jp/resource/viewpoint-pdf/201804.pdf [7] 進研アド.活動意欲の高い学生はどんな大学情報に動機付けられたか.Between. 2013年2-3月号(cited 2019-8-16),http://shinken-ad.co.jp/between/backnumber/pdf/2013_2_tokubetsu.pdf [8] 進研アド.中退率やST比を加え,情報公開の対象拡大へ(cited 2019-8-16),http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2018/05/johokokai.html [9] 辻太一朗.小学生より勉強しない日本の大学生.東洋経済オンライン(cited 2019-8-16),https://toyokeizai.net/articles/-/13446 [10] 奥田弘美,木村智子.メディカルサポートコーチング.中央法規,2012. [11] 松尾理,磯貝典孝.学生の自律的学習へのモチベーションを上げる方策を考える.近畿大学医学雑誌.2017;42(1):33-39(cited 2019-8-16),https://ci.nii.ac.jp/naid/120006368488/ [12] 見舘好隆,永井正洋,北澤武,上野淳.大学生の学習意欲,大学生活の満足度を規定する要因について.日本教育工学会論文誌.2008;32(2):189-196(cited 2019-8-16),https://ci.nii.ac.jp/naid/ 110006967143/10.15077/jjet.KJ00005059796 [13] 狩野武道,津川律子.大学生における無気力の分類の試み―スチューデント・アパシーと抑うつの観点から― :スチューデント・アパシーと抑うつの観点から..こころの健康.2008;23(2):2-10(cited 2019-8-16),https://ci.nii.ac.jp/naid/130004113635/10.11383/kokoronokenkou1986.23.2_2 [14] 日本学生支援機構(2019a)障害学生支援(cited 2019-9-12),https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/index.html [15] 日本学生支援機構(2019b)令和元年度(2019年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査(cited 2019-9-12),https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/chosa/index.html [16] 日本学生支援機構(2019c)教職員のための障害学生修学支援ガイド 第6章_1 支援ガイド_発達_発達障害とは(cited 2019-9-12),https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/hattatsu_shougai.html#hattasu_shougaitoha [17] 日本学生支援機構(2019d)教職員のための障害学生修学支援ガイド 第7章_1 支援ガイド_精神_精神障害とは(cited 2019-9-12),https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/seisin_shogai.html [18] 発達障害情報・支援センター(2019a)発達障害に気づく(cited 2019-9-12),http://www.rehab.go.jp/ddis/発達障害に気づく/青年・成人期の気づきと対応%EF%BC%88支援者向け%EF%BC%89/大学生活/ [19] 発達障害情報・支援センター(2019b)発達障害を理解する(cited 2019-9-12),http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E3%81%AF/ [20] 筑波技術大学(2018)大学機関別認証評価 自己評価書(cited 2019-9-12),https://www.tsukuba-tech.ac.jp/assets/files/soumu/hojin/pdf/ninsyo_jikohyokasyo30.pdf [21] 筑波大学発達障害学生プロジェクト(2018)(cited 2019-9-2),http://radd.human.tsukuba.ac.jp/index.html Report of the Activity in the 2019 Fiscal Year of a Student Life Study Meeting NOGUCHI Eitaro1), MIURA Toshiyuki2), OSHIKA Aya3), HUKUSHIMA Masaya1), MINAGAWA Hiroki2), SHIRAISHI Yuhki2) 1)Department of Health, Faculty of Health Sciences, 2)Department of Industrial Information, Faculty of Industrial Technology, 3)Division for General Education for the Hearing and Visually Impaired, Research and Support Center on Higher Education for the Hearing Impaired and Visually Impaired , Tsukuba University of Technology Abstract: The Student Life Study Meeting was taken place in 2019. At first, three sub-meetings were held during the first half of this conference. The first theme was “Responding to low-motivated students.” The second theme was “The means to share the information of students between members of faculty.” The last theme was “Responding to students with multiple disabilities.” Each sub-committee promoted the exchange of ideas and information with participants and shared their perspectives. In addition, a lecture was held: “The understanding and responding to students who have developmental disorders in addition to others.” Keywords: Developmental disorders, multiple disabilities, The Student Committee