論文概要 ○ 論文題目 「支援学生及び聴覚障害学生の支援に対する考え方に関する研究」 ○ 指導教員 技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻佐藤正幸教授 ○ 副指導教員 技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻白澤麻弓准教授 (所属) 筑波技術大学大学院技術科学研究科 情報アクセシビリティ専攻 (氏名) 岡田雄佑 目的: ①聴覚障害学生、支援学生の考え方の共通点及び違いを明らかにする。 ②より良好な支援学生と聴覚障害学生の関係構築、より良好な聴覚障害学生支援について提言することを目指す。 方法: ・質問紙調査 聴覚障害学生、支援学生に対して調査を行い、聴覚障害学生と支援学生の支援に対する考え方にはどのような共通点や違いがみられるのかについて把握する。 支援学生及び聴覚障害学生の回答について平均値及び標準偏差を算出する。そしてSPSS for Windows Ver.23 を用いて、因子分析を実施する(因子の抽出方法:主因子法/回転法:バリマック ス回転)。 ・面接調査 質問紙調査の結果をもとに、質問項目を作成し、聴覚障害学生とその学生の支援を担当する支援学生に対象に、面接調査を行い、考え方の違いや違いが生まれた要因、そのような違いによる関係への 影響について把握する。 聴覚障害学生2 名を選定し、その2 名に対して、支援を実施している支援学生各2 名(計4名)に対して、調査面接法の1つである半構造化面接法にて、面接調査を実施する。 結果: ・質問紙調査 因子分析の結果、聴覚障害学生は第1 因子「支援学生との本音でのコミュニケーション」第2 因子「聴覚障害学生の遠慮」第3 因子「支援学生の技術力」第4 因子「支援に対する聴覚障害学生の向上意識」第5 因子「聴覚障害学生の支援学生のズレ」という5 つの因子が表出された。 支援学生は、第1 因子「聴覚障害学生との本音でのコミュニケーション」第2 因子「聴覚障害学生と支援学生のズレ」第3 因子「聴覚障害学生の遠慮」第4 因子「支援に対する聴覚障害学生の向上意識」 という4 つの因子が表出された。 ・面接調査 支援の経験が積み重なることにより、支援学生・聴覚障害学生共に支援に対する技術的な不安等を互いに関係を築くことで解消・軽減していることが見られた。しかし、コミュニケーションに課題を 残した相手の場合、お互いにコミュニケーションに難しさを感じ必要最低限のコミュニケーションで終わらせるように努める等、相手に対して壁を作ってしまい不安や悩みを抱えていることが窺えた。 理想的な両者の関係については、支援学生・聴覚障害学生に同様な回答が見られ、支援者・被支援者を超えた関係になること求めていた。 考察: 質問紙調査の結果から、支援学生・聴覚障害学生の支援に対する考え方には、支援以外での関わりや両者合同での支援に対する話し合いが影響を与える重要な要素であることが考えられた。 面接調査の結果から、支援学生・聴覚障害学生共にコミュニケーションが円滑に行えないと感じてしまうと、相手に対して壁を作り、必要最低限でのコミュニケーションで終わらせようとする傾向も見られた。このようなことが考え方に違いが生れる要因になっていることも窺えた。このことに対して、理想的な支援学生・聴覚障害学生の関係については、両者とも支援についての不満や課題、日常的なこと等、どのような事についても話せるような間柄になりたいと述べていた。このことから、相手に対して壁を感じつつも、目指している関係については、支援学生・聴覚障害学生共に同様であることが窺えた。 結論: 聴覚障害学生支援において、支援学生と聴覚障害学生の考え方の違いを減らし、支援について同一方向に進んでいくためには、両者の積極的なコミュニケーションが重要になることが分かった。 また、面接対象とした大学で行われていた、匿名での支援に関する本音を問うアンケート等を支援学生や聴覚障害学生に実施、共有することも前述した両者のコミュニケーションを促すことに有用で あると考えられた。 これらの結果から、聴覚障害学生支援を学生同士で行っている大学では、支援学生と聴覚障害学生が支援に関する話し合いを行える場をより積極的に設けると共に、支援以外の場での関わりを学生が 持てるような促しを行っていくことが求められると考える。