聴覚障害者を対象とした災害情報伝達に関する研究 倉田成人,若月大輔 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:災害弱者,災害情報,情報伝達 1.研究目的 本学は,聴覚障害を有する学生が学ぶ,我が国唯一の国立大学である。災害時に,音声を通じた情報はリアルタイム性が高いが,聴覚障害者は情報を入手できず,最も不利な情報弱者となる可能性がある。本研究では,多様な聴覚障害者の職員・学生が生活している本学天久保キャンパスにおいて,リアルタイム災害情報伝達手法の実証的研究を行い,情報弱者を作らない仕組みの実現を目標とする。さらに,聴覚障害者を対象とした災害情報伝達について,既往研究を調査し,関連する大学・研究所・企業と意見交換等を行う。 2.情報配信実験 本学・天久保キャンパス,及び筑波西武において,メール,LINE,Twitter,Facebook等による情報配信実験を行った。実験実施日,参加者等について下記に示す。また,下記③における配信情報の例を図1に示す。 ①2016年5月17日(火):学生寄宿舎避難訓練における災害情報配信実験,本学学生30名が参加 ②2016年10月20日(木):防災避難訓練における災害情報配信実験,本学学生15名が参加 ③2017年2月15日(木)・16日(金):筑波西武における災害情報配信実験,本学学生10名が参加 3.他大学・研究所との意見交換,事例調査 主に火災時避難方法を対象とした研究を実施している早稲田大学,日本大学,清水建設技術研究所と,聴覚障害者を対象とした身体密着式腕時計型端末の振動通知による災害情報提供に関する議論を行い,共同の取り組みをスタートした。今後,本学と日本大学それぞれにおいて実証実験を行う予定である。 図1 配信情報の例 4.まとめ 実験参加者が実証実験場所や避難場所を熟知している天久保キャンパスでの情報配信実験と,未知の商業施設(筑波西武)での情報配信実験を行い,文字のみの情報よりも,マップや画像等を表示する詳細な情報が避難に有用であることを確認した。また,他大学・研究所との意見交換を通じて,共同研究の基礎を築くことができた。課題として,実証実験場所のバリエーションを増やしたり,情報配信の表示方法などを詳細に検討する必要があると考えている。 参照文献 [1] N. Kurata, M. Suzuki, S. Saruwatari and H. Morikawa, “Application of Ubiquitous Structural Monitoring System by Wireless Sensor Networks to Actual High-rise Building”, Proceedings of 5th World Conference on Structural Control and Monitoring (5WCSCM), Tokyo, 2010. [2] 聴覚障害者に対する災害情報伝達に関する基礎的検討.筑波技術大学の防災訓練を対象とした情報伝達実験.,信学技報,Vol.115, No.491, pp.13-18, 2016.