修士論文 視覚障害者向けゲーム開発環境の開発とそのインクルーシブゲームへの応用 163204 松尾政輝 指導教員 坂尻正次 教授 大西淳児 教授 2018 年 1 月 筑波技術大学 大学院 技術科学研究科 保健科学専攻情報システム学コース Copyright ⓒ 2018, Masaki Matsuo. 目次 第 1 章 はじめに 1 1.1 筆者とゲーム 1 1.2 背景 2 1.3 目的 5 1.4 本論文の構成 6 第 2 章 関連研究 8 2.1 視覚障害者の QOL を向上させるための活動 8 2.2 視覚障害者向けコンピュータゲーム 9 2.3 これまでに開発を行ってきた Audiogame 10 2.4 インクルーシブ・ゲーム 11 2.5 コンピュータゲームの開発環境 15 2.6 コンピュータゲームの応用 16 2.7 本章のまとめ 17 第 3 章 開発環境の整備 19 3.1 開発環境の概要 19 3.2 マップエディタの概要 21 3.3 ゲームへの反映結果 25 3.4 マップエディタの評価実験 26 第 4 章 開発したゲーム 33 4.1 ゲーム開発の経緯 33 4.2 アクション RPG 35 4.3 サイドスクロールアクションゲーム 46 2 目次 第 5 章 おわりに 53 5.1 まとめ 53 5.2 今後の展望 54 謝辞 56 参考文献 58 第 1 章 はじめに 1.1 筆者とゲーム 筆者はほぼ先天性の全盲であるが,幼い頃からコンピュータゲームをプレイしてきた. 筆者がコンピュータゲームに出会ったのは,小学校低学年の頃である.当時近所に住んでいた晴眼者の友人達と,よく一緒にゲームをプレイしていた楽しい思い出がある. しかし,全く視力のなかった筆者は,画面を見ることができなかったので,ほとんどのゲームを満足にプレイすることがかなわなかった.それでも,ゲーム中に流れる音楽や効果音などを頼りに状況を把握したり,メニューの並び順や階層構造を暗記したり,あるいは操作できないところを友人に手伝ってもらうなどして,数少ないプレイ可能なゲームを探し出し楽しんでいた. ある時,視覚障害者向けに開発された音のみを頼りにプレイするゲーム(Audiogame) の存在を知った.これらの多くは海外製であったが,視覚障害者向けに設計されているため,不自由なく全てのゲームをプレイすることができた.またAudio Game をプレイする一方で,プログラミングを学び,Audio Game の開発を行うようになっていった. しかしながらAudiogame は,ゲーム画面上に映像がまったく表示されないため,晴眼者の友人と一緒にプレイすることができないという問題に直面した.視覚障害者と晴眼者とが一緒に楽しむことのできるゲームは,現在もほとんど存在していない. 以上のことから,両者が満足に楽しむことができるようなゲームの必要性を感じ,本研究を開始することとした.まずは視覚障害者自らゲームを開発できるよう,視覚障害者向けのコンピュータゲーム開発環境を整える.そして,晴眼者が楽しめるコンピュータゲームを作成する過程で視覚障害者にもプレイできるような情報提示機能を付加し,両者が楽しめるインクルーシブゲームを開発することとした.視覚障害者と晴眼者がともに楽しむことができ同じゲームの話題を共有できることは,両者のコミュニケーションを促進するための一つのきっかけとなれると考えている. 1.2 背景 コンピュータゲームは人々の娯楽の一つとして広がり,さまざまな形態/内容で普及が進んでいる.またゲームの供給形態やゲーム内容によって大まかに分類することができる.コンピュータゲームを遊ぶためのデバイスや筐体によって,家庭用ゲーム,アーケードゲーム,パソコン用ゲーム,スマートデバイス向けゲーム,オンラインゲーム等に分類される.また,ゲーム内容によってジャンル分けができ,大まかには,アクション,RPG(Roll Playing Game),シューティング,シミュレーション,アドベンチャー,レース,スポーツ, テーブル/カード,パズル等に分類される.しかしゲーム内容の多様化が進み,複数のジャンル要素を複合したゲームが登場する等,各ゲームジャンルの定義や切り分け方法は日々変化している.近年では,コンピュータゲームをQOL(Quality of Life,生活の質) の向上に用いる動きや,ゲーミフィケーション(gamification,ゲームの仕組みを利用して問題解決を図ること) やシリアスゲーム(Serious game,教育や医療にゲームを用い社会問題を解決すること) 等様々な場面での利用が進められている. 文化庁の「メディア芸術データベース」には,1972 年から 2015 年までに発売された国内の家庭用ゲーム・アーケードゲーム・PC ゲームが44,683 件登録されている [1].2017CESA ゲーム白書によれば,2016 年の家庭用ゲーム市場は,日本国内では 3,147 億円,海外規模では2兆 5,794 億円であることが示されている [2].このようにコンピュータゲームは,人々の生活の中で娯楽に留まらず,教育や医療, マーケティング分野等幅広く活用が進んでいる. このように普及を続けるコンピュータゲームであるが,本コンピュータゲームを利用する視覚障害者も少なくない.視覚障害者, 特に画面を視認することが不可能な全盲者は,空間情報やテキスト情報などゲーム画面内の状況を,主に聴覚情報を用いて把握しつつゲームをプレイしている.また,全盲者が独力で操作するためには, 時にゲーム内の状況と効果音を関連付けて記憶したり,メニュー等の項目の並び順や階層構造を全て覚える必要がある.しかし,これらの条件を満たした視覚障害者にとってアクセシブルなゲームタイ トル数は少なく,プレイできるコンピュータゲームは限られている. このため,視覚障害者が一般のゲームで遊ぶことは,健常者に比べ多くの労力が必要となり,非常に高い障壁があるのが現状である. コンピュータゲームの発展の裏で,初めから視覚障害者のみを対象としたAudio Game が開発されている.Audiogame は,音声と効果音のみを用いたコンピュータゲームを指し,主に視覚障害を持つ当事者の有志によって開発が続けられている.海外サイトであるAudiogames.net には, 世界中からAudiogame の情報が集められ, ゲームをプレイするユーザによるコミュニティが開設されている. しかし,Audiogame はゲーム画面情報を一切排した設計であるため,晴眼者がプレイすることは難しく,また遊ぶにたる魅力も失われてしまっている.したがって,Audiogame を視覚障害者と晴眼者が一緒に遊ぶことは稀である.一方同サイトでは,Audiogame と対をなす一般に広く普及するゲームをMainstream Game と定義している.Mainstream Game とは,一般的に「現在最も人気のあるゲーム」というような意味合いで用いられる用語であるが,本論文ではAudiogames.net に習い,Audiogame とは異なる一般に広く普及をしているゲームという意味で用いることとする. コンピュータゲームの中には,視覚障害者と健常者がともに利用できるようなインクルーシブデザインを目指して開発されたものがある.本論分では,開発の段階から視覚障害者に配慮されて設計されたゲームの他,視覚障害者がプレイ方法を工夫することで結果的に晴眼者と対等に楽しめるゲームを「インクルーシブゲーム」と定義する.現状,インクルーシブなゲームデザインを目指し設計されているゲームの事例は少ない.またゲーム内容も 1 プレイ数分から数十分で終了するような短時間の間に楽しめるゲームがほとんどである.また開発されているゲームジャンルは,シューティングゲームやテーブルゲーム,テキストアドベンチャーゲーム等がほとんどを占めており,リアルタイムアクションゲームやRPG 等,ルールや操作方法が複雑なインクルーシブゲームの開発は行われていない.この背景には,ゲーム内の地形等視覚で把握しなければならない情報量が多いため,、視覚障害者向けの情報提示が非常に難しいことが原因であると考えられる. 以上のような状況から,現状,視覚障害者と晴眼者とが分け隔てなく楽しめるゲームはほとんど存在しないという問題がある.また, 両者のゲームコミュニティは分離している状況が続いている.そこで,Mainstream game を視覚障害者が健常者と同様に利用できるような新たな提示方法を整えることで,両者が満足に楽しめるゲームを開発できると考えた.また,両者が共にゲームをプレイすることにより,障害の垣根を超えたコミュニケーションや相互理解を促進できるはずである.さらに,ゲームをシリアスゲームやゲーミフィケーションへと応用していくことで,視覚障害者のQOL の向上や社会進出にも繋げられると期待できる. 1.3 目的 本研究の目的は,視覚障害者向けのゲーム開発環境を整えることと,視覚障害者と健常者が分け隔てなく満足に楽しむことのできるインクルーシブゲームを開発することの 2 点である. ゲーム開発は,全盲である筆者が中心となり行うこととした.視覚障害者がゲーム開発に携わることで,視覚障害者に適したゲーム内状況提示方法や操作方法を開発段階から直接反映することができると考えたためである.しかし,現状では視覚障害者がインクルーシブゲームを独力で開発するのは容易ではなかった.特に,ゲーム内で利用する地図として用いるマップデータの作成/編集に非常に多くの時間がかかってしまっていた.そこで,インクルーシブゲームの開発に先立ち,視覚障害者自身がマップデータ作成を容易化するツールを開発し,その後でゲーム本体を開発した. インクルーシブゲーム開発においては,アクションRPG とサイドスクロールアクションゲームという 2 ジャンルのコンピュータゲームを開発した上で,視覚障害者も利用できるよう,聴触覚情報を用いてゲーム内状況を提示する新たな手法を考案した.これらジャンルに分類されるゲームは,画面上の情報を基に瞬時の判断が求められるため,現状では視覚障害者がプレイすることは非常に困難なものであった.本研究で開発したゲームは,晴眼者が楽しめることを前提とした上で,視覚障害者に配慮したインクルーシブゲームである.そのため,視覚障害者の定性的な評価を中心に各ゲームの満足度等を評価した. アクションRPG とサイドスクロールアクションゲームというの 2 つのゲームジャンルを選定した理由は,これらのゲームジャンルが前節で述べたその他のゲームジャンルを構成する要素を包含しているためである.本研究で開発したアクションRPG には,アドベンチャーゲーム,カードゲームの要素を取り入れることができ,サイドスクロールアクションゲームには,パズルゲーム要素の他,複数人で協力プレイを行える機能を搭載した. 1.4 本論文の構成 本論文の構成は以下の通りである. 2 章では,関連研究について述べる.視覚障害者の生活を豊かにするための方策や研究,視覚障害者向けコンピュータゲームの種類・プレイ方法・関連研究,視覚障害者向けゲーム開発環境の現状について整理した上で,今回明らかにする研究内容を改めて示す.また,筆者がこれまでに開発を行ってきたAudiogame についても概説する.第3 章では,新たに整備した視覚障害者向けのゲーム開発環境構築について述べる.特に,全盲者がゲーム用マップデータをグラフィカルに作図したり編集したりできる新しいマップエディタを提案したので,それらについて説明する. 第 4 章では,実際に開発を行った 2 つのゲームについて概説し,新たに考案した聴触覚を用いた視覚障害者向けゲーム内状況提示方法を述べる. 第 5 章では,本論分のまとめと今後の展望を述べる. 第 2 章 関連研究 2.1 視覚障害者のQOL を向上させるための活動 2016 年 4 月 1 日からの障害者差別解消法の施行に伴い,様々な側面における合理的配慮の明示的な社会実装が求められており,視覚障害者に対しても自治体・会社等が様々な配慮を行っている [5].独立行政法人日本学生支援機構は,全国の大学・短期大学・高等専門学校のうち,障害のある学生が在籍している811 校を対象に,支援・配慮事例をまとめている [6].ソフトバンク株式会社は,視覚障害者向けにiPhone のアクセシビリティ機能の操作練習を行うことができるアプリケーションを提供している [7].日本彫刻会では,視覚障害者の彫刻鑑賞支援として,彫刻のタッチツアーや鑑賞教室を実施している [8].UDCast は,映画等のコンテンツに音声や字幕を提供するスマートフォン用のアプリケーションである [9]. このように視覚障害者向けに様々な社会的支援が行われているが, コンピュータゲームの中にも視覚障害者がプレイ可能なものが存在 している.本章では,視覚障害者向けに開発されたAudiogame,視 覚障害者にもプレイ可能なMainstream game,ゲームアクセシビリティに関するガイドライン,視覚障害者向けゲームに関する関連研究,開発環境についての現状を整理する. 2.2 視覚障害者向けコンピュータゲーム 2.2.1 Audiogame の概要 英語圏のサイトであるAudioGames.net には,視覚障害者向けに開発されたAudiogame の情報が集積されている [4].Audiogames.net では,Audiogame を主な出力がグラフィックスであるコンピュータゲームとは異なり,サウンド中心のパソコンゲームと定義している. 2017 年現在,Audiogames.net には,628 件のゲームが登録されている.また,Augiogame のプレイヤー/デベロッパが,Mainstreamgame を含めたコンピュータゲーム全般についての情報交換を行うためのコミュニティフォーラムも設置されている.このフォーラムではMainstream game について,視覚障害者自身が各ゲームを独力および協力を得てプレイ可能かなどについても情報交換が行われている. 国内では,「視覚障害者向けゲーム まとめ Wiki」[10] に国産のAudiogame の情報が集積されている.2017 年 12 月 31 日時点で,100 件のゲームが登録されている. Audiogame の多くはWindows パソコン上で動作するものがほとんどであるが,そのジャンルはMainstream game と同様にアクション,RPG,シューティング,シミュレーション,アドベンチャー, レース,スポーツ,テーブル/カード,パズル等の多岐に渡っている. Audiogame 全般に対する特色として,Mainstream game でゲーム画面上に表示される情報は,すべて音声や効果音による出力がなされるという特徴がある.ゲーム中のテキストはスクリーンリーダによる音声やゲームにあらかじめ搭載されたボイス音源によって出力される.ゲーム内に登場するキャラクタやオブジェクトの情報は, 音声によるオブジェクト名の読み上げや,固有の効果音によって提示される.ゲーム内に 2 次元平面空間を持つゲームでは,オブジェクトの位置関係を,音声による座標読みや効果音の変化によって伝達する.効果音は,操作キャラクタや操作カーソルと各オブジェクトの相対的な位置関係によって決定され,音圧変化や音圧左右差の変化によって伝えられる場合が多い.プレイヤは,音情報を頼りにゲーム内空間を頭の中にイメージしながら(メンタルマップを形成しつつ)ゲームをプレイしている.Audiogame の開発は,有志のデベロッパによって行われており,視覚情報の代行方法については各デベロッパが試行錯誤を重ねている.このように音情報を頼りにゲームを進行するため,Audiogame の多くには,learn game sound のような効果音が示す状況を学ぶための機能が搭載されていることが多い. 2.2.2 筆者が開発したAudiogame 2.3 これまでに開発を行ってきたAudiogame 筆者はこれまでに,12 種類のAudiogame を開発してきた.開発したゲームはWindows 上で動作するもので,スクリーンリーダによる音声読み上げに対応している. 『激乱戦!』は,最大 4 人での対戦が可能な対戦型アクションゲームである.横 21 マス,縦 10 マスのフィールド内でキャラクタ同士の対戦や駆け引きを楽しむことができる.ゲーム内フィールドは 1 画面固定式で,キャラクターを横から見た視点で操作を行う.それぞれが操作するキャラクターを選択し,リアルタイムに攻防を繰り返す.全てのキャラクターの動作には,固有の効果音を割り当てている.画面中央を基準とし,左右方向(キャラクター同士の距離感)を音圧左右差で,上下方向(高さ概念)を音圧の変化で表現した.プレイヤはヘッドホンでステレオ音響を視聴することにより,ゲームをプレイする.ゲームは,大乱闘スマッシュブラザーズやソウルキャリバーシリーズなどから着想を得て制作した [25, 26]. 『Bloody School』は,ゾンビを倒しつつ校舎内を探索するAudio-game である.2 次元マップ上で弾薬などのアイテムを補給しながら目的地を目指す探索型アドベンチャーと,ゾンビを倒す 3D シューティングの複合ジャンルである.探索パートでは,通路の曲がり角を足音の反響で提示して,周辺地形を把握させるようにした.また, 扉やアイテムなどの重要オブジェクトに接近すると特別なビープ音が再生されるようにし,そのありかを示した.一方,ゾンビと戦うシューティングパートでは,Mainstream game の 3D シューティングゲーム同様に,昇順から敵までの角度を音圧左右差で表現した上で,照準を合わせた際にビープ音で通知を行うようにした. 『Audio Reversi~オーディオリバーシ~』は,障害状況によらず楽しめるオセロゲームである.インターネットを介した対戦プレイにも対応している.オセロ盤面のコマの種類や並び順を音圧変化と音圧左右差によって提示することで,全盲者に状況提示を行う.座標情報を音声提示する従来の方法よりも直感的に盤面状況を把握可能である.また晴眼者向けに画面提示を行い,弱視者向けに盤面の色やコントラストを変更できる機能を搭載した. 2.4 インクルーシブ・ゲーム 視覚障害者がMainstream game をプレイする際は,聴覚情報を頼りにゲーム画面内の空間情報やテキスト情報を補いつつゲームをプレイする必要がある.しかし,多くのゲームにおいて聴覚情報から画面の状況を把握することは非常に困難であるために,視覚障害者がプレイ可能なMainstream game の数は非常に少ない.また,そのゲームが視覚障害者にとってプレイ可能かどうかについての情報がゲームメーカーから告知されることはないため,実際にゲームをプレイしてみなければわからないという問題がある.したがって,視覚障害者がMainstream game で遊ぶのは,健常者に比べ多くの労力が必要となり,非常に高い障壁があるといえる. 視覚障害者がプレイ可能なMainstream Game については,前節で述べたAudiogames.net のコミュニティの他,国内でも,良藝館というサイトにて視覚障害者自身がプレイできるゲームに関する情報発 信が行われている [11].また最近では,「視覚障害者向け アクセシブルゲーム 情報 まとめWiki」において,視覚障害者が利用可能なゲームの情報について,ユーザ同士で共有する動きが始まっている [12]. 本Wiki には,2017 年時点で 180 タイトルのコンピュータゲームが登録されている.登録されているゲームには,ゲームを最後までクリアできるもの,クリアに際し工夫が必要となるもの,クリアには支障はないが一部視覚情報が必須な機能が含まれるもの,ゲーム内の一部の機能のみが利用可能なもの等,その状況は様々である. クリアに際し多くの工夫が必要となるRPG の例として,ポケットモンスターシリーズが上げられる.筆者らが独自に調べた限りでは, ポケットモンスターを遊んでいる全盲者が複数いることが分かっている.ポケットモンスターでは,モンスターキャラクタ約 800 種類とモンスターが使用する技のそれぞれに,一部例外を除き異なる鳴き声や効果音が割り当てられているため,モンスターの種類や技の名称を特定することが可能である.またゲーム内でのフィールド移動の際は,壁にぶつかった時に発生する効果音を手掛かりにフィールド内をくまなく探索することにより,ゲーム内のマップを自分の頭の中に形成することができる.この頭の中に作成したマップ(メンタルマップ) を利用してゲームを進めることで,通常プレイの数倍から数十倍の時間をかけてしまうことにはなるが,全盲者でも何とかゲームをクリアするということが可能である.音とゲーム内イベントの対応を学習する際には,インターネット上の攻略サイトやプレイ動画を参考にしたり,スマートデバイスのOCR アプリなどを使いゲーム画面上のテキスト情報を取得することが報告されている.また,必要に応じて晴眼者の協力を得て状況を把握している.多くの労力とプレイ時間を費やす必要はあるが,全盲者でも晴眼者と通信プレイを行うことも可能となっている. 視覚障害者と晴眼者が対等に利用可能なインクルーシブゲームも数は少ないが存在している.株式会社ワープは,音だけでプレイする「リアルサウンド」というジャンルを提案し,「リアルサウンド~風のリグレット~」というゲームをセガサターンのソフトとして 1997 年にリリースした [19-21].本ゲームの開発者は,視覚に障害を持つ人と持たない人の間でゲームを通じたコミュニケーションが生まれることを目指しており,視覚障害者向けに希望者に点字印刷された取扱説明書を送る仕組みまで整えていた.しかし,このゲームの売れ行きは芳しくなく,その後リアルサウンドというジャンルのゲームは登場していない. 日本障害者ソフト社 [16] は,「スペースインベーダー フォーブ ラインド」や「オトセロ」など,視覚障害者のアクセシビリティに配慮したパソコンゲームを発売している.スペースインベーダー フォーブラインドでは,敵機に照準を定めたことを音で提示することで,視覚障害者も晴眼者と同様にインベーダーゲームをプレイすることができる.これらのゲームはルールや操作方法が単純であるため,ゲーム初心者であっても楽しめる設計ではあるが,逆にゲームの熟練者にとってはすぐにクリアできる難易度の低いゲームで,熟練者が満足するゲーム内容とは言い難い. 2006 年には,任天堂がゲームボーイアドバンス専用ソフトとして『Soundvoyager』をリリースした [22].本ゲームはヘッドホンを装着してプレイするもので,落ちてくる音をキャッチする,周囲を旋回する音源を打つ等 7 種類のミニゲームを収録している.高難易度ステージになるにつれ,画面情報が表示されないAudiogame となるが,ゲームボーイアドバンスという家庭用ゲーム機でリリースされたことで,障害の有無によらず楽しめるインクルーシブなゲームとして広がっている. Lab Zero Games が開発した『Skullgirls』は,スクリーンリーダのアクセシビリティに配慮された対戦格闘ゲームである [23, 24].キャラクタの動作に割り当てられた効果音を記憶し,ステレオ環境下で音圧左右差の変化を聞き分けることで,ゲーム内の状況を音情報から把握可能である.また,メニュー画面を含めたゲーム中のテキスト情報は,スクリーンリーダによって音声ガイドされる. 前節で筆者が開発したことを報告した『Audio Reversi~オーディオリバーシ~』についても,障害状況によらず楽しめるという意味において,Audiogame ではなく,両者が楽しめることを前提に設計されたインクルーシブゲームであるといえる. ゲームにおけるアクセシビリティも,様々な研究者によって再検討される課題となっている.Meisenberger らは,様々な障害状況毎に必要なアクセシビリティやインタフェース要件などをまとめている [27].また,Porter らはゲーム開発業界と障害を持つゲーマーに, ゲームにおけるアクセシビリティについてインタビュー調査を行っ た.彼らは結果を基にして,プレイ上での問題点や,コストなどの業界における問題についても明らかにしている [28].Zahand は,ビジネスの価値と設計上の配慮という観点から,開発者向けにアクセシビリティ要件を述べている [29].視覚障害者におけるゲームアクセシビリティについては,Yuan らがAudio games やそれ以外のゲームについて詳しくまとめている [30]. 2.5 コンピュータゲームの開発環境 コンピュータゲームの開発環境やライブラリーが提供され,だれでもゲーム開発が可能となってきた.RPG ツクールのランタイム [46],Unity [47],Unreal Engine [48],DirectX [49] などのマルチメディア機能の充実したランタイムやライブラリ,統合開発環境を利用してゲーム開発ができる.しかし,現状では,これらのGUI ベースの開発環境を全盲の視覚障害者が利用できるようなアクセシビリティは確保されていない.したがって,視覚障害者がゲーム開発を行う際には,テキストベースでのプログラミングを行う必要がでてくる. 一方,Audiogame を開発するための環境は整いつつある.国産の開発環境であるテキストゲームメーカー [13] は,音楽,効果音,スクリーンリーダでの読み上げ音声と選択肢を配置して,視覚障害者がプレイ可能な簡単なRPG を作成できる.BGT (Blastbay GameToolkit) は,Audiogame の開発に特化したツールキットで,様々なジャンルのAudiogame を容易に開発することが可能である [14]. ゲーム開発に利用するための効果音や画像等のマルチメディアデータの選定や編集作業もゲーム開発に必要である.効果音・音楽データの編集の際は,Audacity [15] やサウンド レコーダー等の波形編集ソフトを利用できる.一方,画像データの編集を視覚障害者自身が行うことは困難である. RPG 等の開発には,ゲーム内で使用する 2 次元平面に地形情報を付加したマップデータが必要である.マップ作成ツールに関しては, ゲーム用ではないがXML に対する知識がある者であれば,関が開発した聴覚空間認知訓練システム内の地図作成を利用し,テキストベースで作図を行える可能性がある [39].しかし,テキストで示された座標情報の羅列から,マップの全体像を想起することは非常に難しいため,マップデータ作成に多くの時間がかかってしまうという問題があった. 2.6 コンピュータゲームの応用 視覚障害者が遊べるゲームを実現するための,操作・提示インタフェースの研究も盛んになっている.熊澤らは視覚障害者が遊んでいるゲーム数本について,提示系・操作性・楽しさについて,実験を通じて評価している [31].彼らは結果を基に,コンテンツの充実などの改善点について述べている.感覚代行機能を用いた提示系の開発も進んでいる.特に全盲の視覚障害者が音源定位や空間知覚能力に優れる点 [32-35] や,その訓練の必要性が高い点を利用し三次元音響を利用したシステム/ゲームが幾つか提案されている [36-41]. Honda らは三次元音響を用いた音源定位能力の訓練システムとしてBBBeat というゲームを提案している [36].また,Seki らが提案した聴覚空間認知訓練システムは,現場の視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士)がゲーム性を取り入れて訓練させられるよう設計されている [38].大内らが汎用聴覚ディスプレイとともに開発したMental Mapper は,視覚障害を持つ当事者に向け,盲学校教員のような支援者が立体音響による訓練用地図を提供するものである [37]. 操作系についても,Wii やKinect のように身体の動きを取得するデバイスが広く普及したことで,視覚障害者も身体を使ってプレイできるゲーム(Exergames)も増加している [42-44].Morelli らは触覚・聴覚への情報提示をし,Wii リモコンを用いてボーリングやテニスを行うゲームを開発した.また,Rector らは視覚障害者でもヨガを楽しめるようKinect を用いたEyes-free Yoga というアプリを開発した [44].石井らは,フィットネスバイクを運転し,仮想空間内の音源を探索するバーチャルサイクリングゲームを提案している [45]. 2.7 本章のまとめ 本章で述べたとおり,視覚障害者を取り巻くゲーム事情は,日進月歩で向上している.Audiogame は視覚障害者の間で普及し,一定の供給が行われており多くの視覚障害プレイヤーがプレイしている. 一方,視覚障害者にとってアクセシブルなMainstream game については,良藝館を中心に情報共有が行われているが,その数は十分とはいいがたい.また開発プロセスからインクルーシブデザインを目指したゲームはさらに少なく数タイトル程度である.またゲーム内容も 1 プレイ数分から数十分で終了するような短時間の間に楽しめるゲームがほとんどであるため,熟練者が楽しめるようなタイトルは不十分である.特に,ゲーム内容や操作方法が複雑なリアルタイムアクションゲームやRPG 等のインクルーシブゲームは開発されていない.この背景には,ゲーム内の地形等視覚で把握しなければならない情報量が多いため,、視覚障害者向けの情報提示が非常に難しいことが原因であると考えられる. この結果,視覚障害者と晴眼者が共通にプレイできるゲームはそれほど多くはなく,ゲームジャンルにも偏りがある.また,ゲームデベロッパ側も,コスト面の問題から視覚障害者を想定したゲーム作りをしているケースはほとんどない.したがって,視覚障害者のゲームコミュニティは,晴眼者などのコミュニティから完全に分断されている. また,視覚障害者が独力でゲーム開発を行うにあたっての障壁はさらに高い.GUI ベースの開発環境のアクセシビリティが十分に確保されていないため,利用可能な開発環境が限られる。一方で,Audiogame の開発環境の整備は整いつつある.しかし,ゲーム内の 2 次元マップデータの作成については難しい状況が続いている. マップデータを作成するためには,現状ソースコード上への座標入力等テキストベースでの作成の必要があり,多くの時間と労力がかかるだけでなく,マップ全体のイメージを想起できない. 以上のように,視覚障害者と晴眼者が満足にプレイでき,ともに楽しめるようなRPG やアクションゲームはこれまで開発されていな かった.また,視覚障害者自身がゲーム用の地図等を作成できるようなゲーム開発環境も用意されていなかった.このため本研究では, 視覚障害者向けのゲーム用地図開発環境を整えた上で,インクルーシブゲームの開発に応用していくこととした. 第 3 章 開発環境の整備 3.1 開発環境の概要 全盲の視覚障害者がインクルーシブゲームを開発できるようにするため,まずはWindows 上にアクセシビリティが確保された開発環境を準備した.表 3.1 に開発環境を示す. 表3.1. 開発環境 オペレーティングシステム (OS) Windows 7 (64 bit) / Windows 10 (64 bit) スクリーンリーダ PC-Talker,NVDA 音提示状況確認 ステレオヘッドホン 画面状況の確認 点図ディスプレイ(ドットビュー DV-2) 入力デバイス キーボード,ジョイスティック プログラム言語には,各命令名や関数名が短くテキストベースでのコード入力が容易であること,プログラム開発に利用するエディタに制限がないこと,コンパイル操作等開発環境の利用にスクリーンリーダからのアクセスが容易であること等々の理由から, Hot Soup Processor(HSP)を選定した [50].本言語により,基本的なゲームのアルゴリズムの開発を行った. 画像・効果音等の素材データは,各種フリー素材を公開しているウェブサイトや素材集,フリーランスのコンポーザ/イラストレータの協力を得た.ゲーム内で使用する効果音の選定・編集には,Audacity やサウンド レコーダー等の波形編集ソフトを用いた.画像データの選定の際は,晴眼者や弱視者の協力を得た. ゲーム内のシーン管理,各イベントに対するテキスト情報やマルチメディアデータの挿入等の開発効率を高める工夫として,テキストベースのイベント作成ツールを開発した.本ツールは,ゲーム中の各イベントシーンに対するテキスト情報やマルチメディアデータの割付・編集を容易化するツールである.ソースコード上で利用するために複数の命令の組み合わせで実現できるサウンド再生・テキストの表示・ゲームシーンのローディングといった操作を,一つの命令文で実行できるようにし,開発の効率化を図っている.本ツールでは,プログラム全体の流れをコントロールする「制御系」,効果音や画像データを扱う「マルチメディア系」,ゲーム本体をコントロールする「シーン管理系」の3 系列の機能を命令文という形で提供している.制御系命令では,選択肢や変数値による条件分岐を,それぞれ1 命令で操作することが可能である.テキスト表示に関しては命令文を書き込む必要はなく,命令文やコメント行以外の文字列はすべてテキスト情報として扱われる.これらテキスト情報は,ゲーム画面上への表示とスクリーンリーダによる音声発生が自動的に行われ る.マルチメディア系命令文では,BGM/効果音/ボイス等サウンド データの再生や音量の変更,画像データの表示を行う.シーン管理系の命令は,ゲーム本体側の機能を利用する命令群で,マップデータを読み込みオブジェクトを配置して,ゲームシーンを作成することができる.制御系命令とマルチメディア系命令の組み合わせによって作成されたイベントと,ゲーム本体側の機能(アクションやRPG 等)を交互に繰り返すことでゲーム全体を構成している.本ツールは,簡単サウンドノベル作成ツール 『オトノベ』としてウェブサイト上で公開している [51].現在ではテキストアドベンチャーゲーム,シミュレーションゲーム,RPG,レースゲーム,シューティン グゲーム等多くのジャンルのAudiogame 開発に利用されており,有志の手によって 10 タイトルほどのゲームが開発されている.また,一つのテキストファイルに対して最大 100 個のブックマークを保存することが可能であるため,テキストファイルリーダとしても利用されている事例もある. 視覚障害者がゲーム開発を行う際,ゲーム内のマップデータを作成するために利用可能なツールが存在していないという問題に直面した.そのため,音を頼りに作図を行う新たなインタフェースを考案し,視覚障害者のアクセシビリティ対応ができるマップエディタを開発した(2 節).本エディタの利用により,ゲーム開発の効率を高めることができた.本章では,新たに考案したマップエディタについて,その利用方法と評価結果を述べる. 3.2 マップエディタの概要 本エディタは,全盲者でも視覚情報なしにフィールドを作成できる地図エディタである.他ツールと同様に,HSP で開発されている. 画面上のカーソル位置を音により伝え,キーボード操作によって 2 次元のフィールドを作図できるものである. これまで,関や大内が研究開発している三次元音響を用いた視覚障害者向け空間認知訓練システム上においても,専用の地図を作成できるエディタは開発されてきた.本研究で開発したエディタは,全盲者自身が専用の命令を覚えることなしに,グラフィカルに編集できる点が異なる. 3.2.1 作図の流れ 本地図エディタを使って,全盲者が作図している状況を図 3.1 で説明する.まず地図の四方を壁で囲う(図 3.1 左図).次に,描きたい地図をイメージして壁を配置する(図 3.1 中図).最後に宝箱などのオブジェクトを配置する(図 3.1 右図). 図3.1. 開発した地図エディタを利用した作図の例. 図中の赤枠白抜きの丸は,編集用カーソルである.左図:部屋の枠を作成した,中図:室内の仕切りを置いた,右図:仕切りの他に宝箱を配置した. 3.2.2 操作方法 本エディタでは,カーソル移動,位置決定・範囲選択,オブジェクト配置・編集の 3 種類の操作を組み合わせて,マップ作成を行う. カーソル移動は,キーボードの方向キーで行う.図3.1 に表示された赤い丸がカーソルである.カーソルを移動する毎に,次節で述べるような音提示がなされており,各位置に配置されたオブジェクトなどが確認できる.このカーソル地点にオブジェクトの配置もできる. オブジェクト配置・編集は,キーボード上のアルファベットキーで行う.配置可能なオブジェクトは,侵入可能/不可能なものに分かれている.ここで述べる「侵入」とは,プレイヤーが操作キャラクタを動かして,オブジェクトの上に乗せることを意味する.可能なものには壁や水辺などの他,侵入すると操作キャラクタがダメージを受ける谷や溶岩などのタイルが含まれる.不可能なものには,様々な色の壁,宝箱や扉,扉等に対応したスイッチなどがある.必要に応じて,カーソルで任意の位置に移動後にオブジェクトの追加・変更ができる. カーソル移動の際は範囲選択も可能であり,選択範囲にあるオブジェクトをまとめて処理することもできる.範囲選択の開始地点でShift キーを押しながらカーソルを動かし,キーを離すと四角形の領域で範囲選択ができる.この領域に対して一括処理が可能であり, まとめて同一のオブジェクトを追加したり,まとめてオブジェクトを削除したりできる. 3.2.3 音による提示方法 音で提示するのは,カーソルの現在位置に関する情報と,配置されたオブジェクトの情報である. カーソルの現在位置を使用者に把握させるために,カーソル位置に応じて音圧を変化させるようにした.カーソルの左右方向の位置情報提示には,音圧の左右差を用いており,音像定位により画面の横方向の座標を把握できる.また,カーソルの上下方向の位置情報提示には音圧変化を用いている.カーソル位置が変化した際の音圧変化は,Hafter ら,Yost らの報告を参考にして左右の音圧差を 2 dB 以上 [55, 56],Miller らの報告を参考に上下方向は 1 dB 以上 [57] とした.画面を横 32 マス,縦 24 マスに区切ったものを基本的なフィールド単位とした.左右方向は,画面中央の中心座標(15 マス目と 16マス目の間)を0 dB とし,左右端での両耳間レベル差が32 dB になるようにした.上下方向は,画面下端を0 dB として,上端で-24 dB となるよう設定した.この設定により,全盲者が各座標の位置を識別できるようになった.さらに,カーソルを動かした際画面中央の座標が把握できるよう,縦方向または横方向の中央にカーソルが当たった時,専用の効果音で知らせるようにした.以上のような条件により,カーソル位置を移動させ地図全体をたどることで全体像を音のみで把握することが可能である. なお,本研究では三次元音響技術を用いずに,上記のような二次元的な音響提示法を採った.これは,マップエディタを使用する上で, 三次元音響提示法を使うよりも簡便法の方が都合が良かったためである.具体的には,三次元音響提示法では聴取者自身を中心とした相対位置を音空間提示を行う.一方で本手法では,場所ごとに割り付いた音提示が出来るため,二次元平面上でのカーソル位置や,地図上に配置した複数のオブジェクトの画面上の絶対的位置(座標)を提示するのに都合が良かったためである.本手法は,相対的位置の提示にも利用できるため,複数のモードを持たせる上で,簡便法の方が柔軟である.なお,本エディタで用いた音提示方法は,後述するゲーム本体でも採用している.これは,プレイヤ後とに音聴取環境が異なるため,頭部音響伝達関数(Head-related transfer function: HRTF)を使っても必ずしも立体的な音空間の提示が出来るとは限らない点,またHRTF の相性などに伴う個人差の影響などを考慮したためである. 配置するオブジェクトの種類によって異なる効果音が再生されるようにした.カーソルを重ねた位置にあるオブジェクトに対応した音が鳴ることで,現在のオブジェクトが何か,新たに配置したオブジェクトは何か,削除したオブジェクトが何かを把握できる.範囲選択については,操作が行われたか分かるよう,Shift キーを押した時(範囲選択の始点を設定),離した時(範囲選択の終点を設定),カーソルキーを押した時(選択範囲の解除)に効果音で知らせるようにした.図3.1 に示す2 つのカーソルは,範囲選択の始点と終点を視覚的に表したものである.全盲者はこれらカーソルを視覚的には把握できないが,範囲選択を知らせる効果音と,自身のキー操作によって編集対象を把握できる.また,図やフィールドの編集データの読み込みと保存を行った場合にも,操作完了を知らせる効果音が再生されるようにした. 3.3 ゲームへの反映結果 図 3.1 のような流れで作成したゲーム用マップデータの例を,図3.2 に示す.本マップは,アクションRPG の開発に利用したものである.図 3.2(a) は,プレイヤが直感的に移動することを想定した地図(配置・経路が分かりやすいもの),図 3.2(b) はプレイヤが探索することを想定している地図(配置・経路が分かりにくいもの),図 3.2(c) はプレイヤが広い空間を駆使して,敵キャラクタと戦闘をするか回避するかを任意に選択できるフィールドである.ゲーム内では,町の一部分,迷宮の一部分,町と迷宮を繋ぐ移動経路の一部として利用されている. 次章で述べるアクションRPG の開発にあたり,本エディタを開発した全盲者自身がこのエディタによって横 32 マス,縦 24 マスの地図を約 500 枚作成した.地図の縦横のマス数は,人間が聞き分け可能な音圧変化・音圧左右差の限界値であり,後述する触覚ディスプレイの表示限界でもある.また,アクションRPG の開発段階で,触覚ディスプレイでの触察を行う場合には,1 画面ごとに切り替える方がゲーム画面上の地形形状を把握しやすいことがテストプレイヤから報告されたため,地図サイズを固定とした. また,サイドスクロールアクションゲーム用のフィールドの作例を,図 3.3 に示す.図 3.3 では,地図の縦軸方向を画面の奥行ではなく高さ方向として用いている.アクションRPG のフィールドは,1 枚当たり横32 マス,縦24 マスであるが,サイドスクロールアクションゲームでは 50 マスから 200 マスまでゲーム内の利用用途に合わせて変更している. 従来,全盲者によるマップの作成時間は,座標情報をプログラムスクリプト上に直接入力していたために一画面あたり数十分を要していた.しかし本エディタで座標入力よりも直感的なユーザインタフェースを実現したことにより,作業時間が数十秒から数分に短縮され,全盲者が短時間で効率的にゲーム内の全てのマップを描画できるようになった. 3.4 マップエディタの評価実験 このエディタによる状況把握・作図が,様々な視覚障害者や健常者にとって利用可能かを確認するために,簡易的な評価実験を行った. 3.4.1 実験方法 実験参加者は,弱視者 5 名,全盲者 2 名,健常者 1 名の合計 8 名である.このうち男性が 7 名で,女性が 1 名(弱視)である. 年齢層は20 代から 40 代であった. 図3.2. マップエディタによる編集結果(左図)とゲーム画面への反映結果(右図) (a) ゲーム内の街 / Town (b) ゲーム内のダンジョン / Dungeon (c) 段差とスイッチのあるマップ / Map including steps & a switch (d) 町と迷宮を繋ぐ移動経路 / Main field connecting towns and dungeons 図3.3. サイドスクロールゲームのフィールド例.[左図]:地図エディタによる作図結果,[右図]:ゲーム画面内での表示結果. 評価実験の流れを示す.実験の前に画面を提示しての練習,画面提示なしでの練習をさせた. 画面を提示してでの練習の際,全盲者は点図ディスプレイを用いた. この練習の際,実験参加者は,正方形,長方形,枠囲い等の基本図形を描画した. これらの描画の後,簡単な室内図を聴覚情報のみを頼りに作図させた. 提示した室内図について, Fig. 3.4 に示す. 作成された図については,壁の配置位置,大きさ,角のは 3 点で評価した. また,作図時間やキーストローク数についても計測した. この後,各参加者は自由に作図する時間が与えられた. 一通り作図が終わった後,5 段階評価で音による位置把握のしやすさ, 操作性等を問うアンケートを行った(5:かなり良い~1:かなり悪い,とした). 図3.4. 手本図形.3 つの障害物と,南側1 か所に入り口のある図. 図3.5. Result of the drawing by the participants. Left figure: blind person, medium figure: weak sighted person and right figure: sighted person. 3.4.2 評価実験の結果と考察 作図結果の一例を,Fig. 3.5 に示す. 提示した基本図形の室内図について,作図者全員が正しく再現することができていた. なお,経過時間,ストローク数,1 秒辺りのストローク数については,視覚障害状況,オーディオゲームや触知図の経験度合いごとの有意差は認められなかった. ただし,本実験に参加した全盲者はオーディオゲームの経験がない者であった. オーディオゲームの経験がある全盲者の場合は,よりスピーディに操作できる可能性がある. ただし,実験中の参加者の作業を観察するに,本実験において特にスピーディに操作していた者では,自分の作図したものを確認する回数が少なかった. 逆に,ゆっくり作業していた者では,確認回数やオブジェクト削除回数が多かった. 彼らの中には,真ん中にオブジェクトを配置する際,端からのマス数を数えている者もいた. なお,大まかな形状については,作業時間による差は確認できなかった. 一方で,手本に対する正確さという観点では,作業時間が長いほど,ドット単位での正確さが上がった. 一方で,作成するものの形状(枠や塗りつぶしなど)に応じて,1 秒辺りのストローク数の大きさに有意差が確認された (p < 0.05,ANOVA). 特に,枠のときや塗りつぶしの際などには,他の場合と比較してストローク数が有意に増加していた (p < 0.05, Tukey- Kramer). これは,特にゆっくり作業していた者での確認・オブジェクト削除回数が影響した可能性がある. なお,自由作図の際に作成されたものの例をFig. 3.6 に示す. 図中ではコンビニエンスストアの棚の配置や演習室の机の配置の作図結果を載せた. どちらも概観をうまく再現できていると思われる. これ以外にも,学内の食堂,校舎などの配置や宿舎における間取りなどが作図された. 次に,アンケート結果を示す. エディタの操作の簡便性については平均で 4.5(SD: 0.5),操作方法の覚えやすさは平均で 4.63(SD: 0.7) と評価された. この他の全般的なエディタの操作性については,平均で4.0 を超える結果となった. また,このエディタが全盲者にとって必要かという質問に対しては,平均で 4.63(SD: 0.5)という結果が得られた. 図 3.6. Example figures that participants drew freely. Left and right figures are the maps of a conve- nience store and a seminar room, respectively. 一方で,画面上のカーソル位置把握については,平均で 3.5 前後を超える程度であった. 左右方向(音圧左右差)の分かりやすさは平均で4.0(SD: 1.1),上下方向(音圧変化)の分かりやすさは平均で3.6(SD: 1.2)という結果となった. 画面上のカーソル位置と音空間上のカーソル位置の対応付けについては,平均で3.4(SD: 0.9)という結果であった. なお,音楽に携わっている者やAudio Game の経験のある者では,音による情報提示についての評価値が高い傾向がみられた. 自由記述内容を見ると,画面上部の音が小さい領域について作図操作が難しいことや,作りかけの状況が分からなくなってきてしまうという意見があった. 一方で,音のみで作図してから書いたものとを比較する練習を行うことで精度を上げられるのではないか,という意見があった. このため,練習のためのチュートリアルなどがより細かに実装されることで,作図を行いやすく出来ると考えられる. この他,円形等四角形以外のオブジェクトも使いたいという意見が寄せられた. 本研究では線による描画しか行わせなかったが,曲線などの描画機能の実装も将来的な検討課題である. 第 4 章 開発したゲーム 4.1 ゲーム開発の経緯 筆者は本研究以前に,主に 5 ジャンルのAudiogame の開発を行ってきた(2 章 2.2 節).開発を行ったそれぞれのジャンルについて,Audiogame 的な状況提示方法・操作性を提案することができた.これらのゲームは全盲ユーザから支持を集めた一方,視覚情報のないAudiogame は晴眼者にとってはゲームをプレイする魅力が少ないよ うであった.さらに音圧左右差や音圧変化を聞き分けるゲームにつ いては,状況把握について視覚障害者よりも習熟までに時間がかかっ た結果,ゲームをプレイするまでたどり着かなかった場合もあった. 本研究では,晴眼者が楽しめることを前提としたゲームであり,視 覚障害者がプレイできるように配慮したインクルーシブゲームを新た に開発した.そのため,視覚障害者が音と触覚を用いてゲーム内状 況を把握できるインタフェースを考案し,それらを付加したゲームを 2 タイトル開発した.すなわち,アクションRPG『Shadow Rine』(2 節)と,サイドスクロールアクションゲーム『Planet Adventures』(3 節) である.これらジャンルに分類されるゲームは,画面上の情 報を基に瞬時の判断が求められるため,現状では視覚障害者がプレイすることは非常に困難であった.アクションRPG /サイドスクロールアクションゲームの 2 つのゲームジャンルを選定した理由は, これらのゲームジャンルが他のゲームジャンルの要素を構成する要素を包含しているためである.本研究で開発したアクションRPG には,マッピング(ゲームでは,ゲーム内フィールドを移動しながら周辺状況を把握していくことを指す)やキャラクターを育成するというRPG に見られる要素と,タイミングを合わせてボタンを押 しリアルタイムに変化するゲーム内状況に対応するというアクションゲームに見られる要素の他に,文章を読み進めつつ選択肢を選ぶというテキストアドベンチャー・シミュレーション要素,ゲーム内のヒントを頼りに仕掛けを動かしたり隠されたアイテムを探したりして進行ルートを切り開いていく探索型アドベンチャー要素等が含まれる.一方サイドスクロールアクションゲームには,複雑な操作が要求されるリアルタイム性の高いアクションゲーム的要素の他, ゲーム内のオブジェクトを動かして進行ルートを探るようなパズルジャンルに含まれる要素,複数人が一緒にゲームを進行できる協力プレイ要素を含めることができた.開発したゲームに含まれる要素をジャンルごとに整理すると,アクション,RPG,シミュレーショ ン,アドベンチャー,テーブル/カード,パズルの 6 ジャンルの要素を含んでいる.そのため,本ゲームが完成すればたのゲームジャンルの開発にも応用ができることを期待できる.本研究では,晴眼者がプレイできることを前提とした上で,視覚障害者がプレイできるような機能を付加したインクルーシブゲームを開発し,視覚障害者の定性的な評価を中心にクリア状況や各ゲームの満足度等を評価 した. 4.2 アクションRPG 4.2.1 アクションRPG 3 章で述べた開発環境を利用し,『Shadow Rine *1 』を開発した. *1 当初は「見えない中を走り抜ける」という意味を込め「Shadow Run」としたが,同名のゲームが既に存在していた.このため,線を辿りつつ進んでいくということで「Line」を使うことにした.ただし,「走り抜ける」 の意味の「Run」のニュアンスも残すに当たって「R」を残し「Shadow Rine」とした. 本ゲームは,健常者のみならず視覚障害者も独力で遊ぶことが可能な「触るアクションRPG」である.視覚情報の代わりに,触覚情報 や聴覚情報のみでも操作できるような,2 次元フィールド上を移動するリアルタイム性の高いアクションRPG を実現した.本RPG は晴眼者も遊ぶことができるよう画面からの視覚情報を提示可能であ り,また視覚障害者を対象に聴覚・触覚提示によるアクセシビリティも確保している.このような機能を明示的に確保しつつ,詳細なシナリオを用意したゲームはこれまでに存在していない.この点で本ゲームは,晴眼者と全盲者が一緒にプレイできるよう設計された,世界初のインクルーシブアクションRPG と言える. 本ゲームにおいて,晴眼者は従来のアクションRPG と同様に,画面を視認しつつ操作できる.一方で視覚障害者は,聴覚や触覚を用いて情報取得し,ゲームを操作することができる(図4.1).音による画面情報の取得には,マップエディタと同様に横方向の座標は左右の音圧差で,縦方向の座標取得には音圧変化を利用している.さらに,触覚ディスプレイ(点図ディスプレイ ドットビュー DV-2 [52]) を用いることにより,画面の状況を触覚情報としてリアルタイム把握することが可能である.ゲーム中に含まれる要素は視覚・聴覚・触覚のどの感覚でも確認できるように設計した. 表 4.1 に動作環境・開発環境を示す. 図 4.1. ゲーム画面と触覚ディスプレイによる表示例. ゲーム画面,触覚ディスプレイ,コントローラ. 表 4.1. 動作環境および開発環境 動作環境 Windows XP 以降,Direct X8 以上 推奨メモリ容量 512MB 以 上 対応スクリーンリーダ PC-Talker,NVDA,SAPI,その他クリップボードを自動読み上げ可能なソフト 対応デバイス ジョイスティック,点図ディスプレイ(ドットビュー DV-2) 推奨音提示デバイス ステレオスピーカ,ステレオヘッドホン キャラクタボイス フルボイス (登場する全てのキャラクタの音声を収録) クリアまでの所要時間 12 時間程度 シナリオ分岐 5 種類のマルチエンディング 開発環境 Windows 7 64bit, HSP ver. 3.31 (詳しくは 3 章を参照) ソースコード 約 37,000 行 シナリオ総字数 約 77000 字 マップデータ総数 500 枚以上 本ゲームを開発するにあたって,幾つかのゲームを参考にした.大まかなゲームシステムはゼルダの伝説シリーズなどから,効果音の提示イベントは,ドラゴンクエストシリーズやポケットモンスターシリーズなどから着想を得た. 4.2.2 プレイ方法 基本的には,従来のアクションRPG と同じ流れで進行する. ユーザは,フィールド上で操作キャラクタを上下左右に動かしてゲーム内世界を冒険する.このフィールド上には,侵入可能/不可能地点が配置されると共に,様々な方法でゲーム進行を妨害しようとする敵キャラクタが配置されている.ユーザはこれらの敵を避けたり,武器を用いて倒したりして,ゲームを進める.決められた目的地へ向かったり,強力なボスキャラクタの待つダンジョンを攻略したりすることで物語が進行する. 各フィールドには,様々な敵キャラクタやオブジェクトが配置されている(図 3.1 参照).敵キャラクタは,操作キャラクタを目掛けて攻撃してくる.ユーザは,操作キャラクタの体力が尽きる前に,操作キャラクタの武器を用いて敵を倒すか,敵からの攻撃を避けつつ先へ進む必要がある.また,オブジェクトには,操作することで進路 を開くスイッチや,支援アイテムが入っている宝箱,落ちたり触れ たりすると体力が減少してしまう谷や溶岩等の危険地帯などがある. 物語を進行させると,新たな能力や特性を持ったキャラクタが使用 可能となる.これらのキャラクタは,谷を跳び越える,河や湖を泳 いで渡るなどの行動ができ,ゲーム内フィールドの探索可能範囲を広げることに貢献する. さらに,各所に隠された宝箱を発見したり,ノンプレイヤーキャラクタ(NPC)からの依頼を達成したりすると,操作キャラクタのス テータス(攻撃力,移動速度,特性など)を強化できる.また,倒した魔物の数に応じて,武器が強化される.ステータスや武器の強化をするとゲームのクリアが容易になる他,アイテムの収集率と依頼の達成状況がクリア後の最終評価に影響する.クリア後の評価は, やりこみ要素(通常のゲームクリア以外に,特定のゲーム内容を徹底的に極めることを目的とした要素)として用意したものである. 4.2.3 ゲーム習熟度に合わせた難易度設定 本ゲームでは,難易度を 3 段階に設定できる.まず,開発者の松尾を含めた協力者数名(本格的に協力したのは 4 名)でテストプレイを重ねつつ,フィールドの構成や敵キャラクタの強さなどを調節し, 標準的な難易度を設計した. 次に,難易度に応じて敵キャラクタの強さや危険地帯の影響力が調節され,ゲーム初心者,熟練者が楽しめるような難易度2 種類が追加された. さらに,ゲーム初心者のために操作を交えながら遊び方を説明するチュートリアルモードを用意した(図 4.2 参照). 図 4.2. チュートリアル画面の例。各画面中のテキストは次の通りである。a) このフィールドを抜けて、さらに北を目指しましょう。b) このフィールドには分かれ道があります。迷わないように気をつけて下さいね。c) 立ち止まったりしないよう、ダッシュを使って対岸へ渡りましょう。d) オブジェクトを壊したり魔物を倒したりすると、このようにアイテムをドロップすることがあります。 また,ゲーム熟練者のために,クリア時点のプレイ状況を評価し, 得点を提示するようにした.この得点は,宝箱の回収率やNPC からの依頼の達成率,ゲームの難易度に応じて増減する.クリア得点はボーナスポイントに変換される.このポイントをお金のように支払うことで,2 周目以降にゲームを遊ぶ場合の特典要素を追加できる. 具体的な特典には,クリア時のアイテム・ステータスを開始時へ引き継ぐもの,敵キャラクタとの戦闘で得られる金貨が 2 倍になるようなゲームシステムの変更などがある. 4.2.4 操作の概要 4.2.4.1 触覚ディスプレイを利用した操作 触覚ディスプレイを接続することで,ゲーム画面を触りながら操作できる(触察プレイ).ゲーム上の画面とその際の触覚ディスプレイの様子を図4.3 に示す.ゲームの画面情報のうち,ゲーム内フィールド上での侵入可能/不可能な場所の他,操作キャラクタや敵キャラクタなどの位置関係もピンの上下で二値的に提示する.これらの情報はリアルタイムに提示され,プレイヤはフィールド状況を容易かつ即座に把握できる(図 4.3a) 参照). また,特定のキーを押し続けている間は,操作キャラクタ,敵キャラクタ,オブジェクトを個別に表示することができ,複雑な地形内であっても位置関係を容易に把握できる(図 4.3b)~4.3d) 参照). 図 4.3. ゲーム画面とその際の触覚ディスプレイの様子 4.2.4.2 音だけを手がかりにした操作 横方向の座標を音圧差で,縦方向の座標を音圧変化により提示することは前述した.さらに,音のみで操作できるように,多彩な効果音やエフェクト(エコーやリバーブなど)を用いて画面上の情報を提示している. 効果音の再生方法は,プレイヤ中心モードとフィールド中心モードの 2 種類を用意した. プレイヤ中心モードは,操作キャラクタを基準として,敵キャラクタやオブジェクトの位置を音圧提示するモードである.対象となるオブジェクトが左右方向に離れている場合は音圧左右差を変化させ, 上下方向に離れている場合は距離に応じて音圧を下げるよう設計している.画面を視認することなく音のみでゲームを遊ぶ際に適している. 一方,フィールド中心モードは,画面中央を基準として,敵キャラクタやオブジェクトの位置を音圧提示するモードである.対象となるオブジェクトが左右方向に離れている場合は音圧左右差を変化させ,上下方向に離れている場合は画面下部へ向かうにつれて音圧が高くなる.すなわち,3 章で述べたマップエディタ同様の定住手法をを用いている.画面を視認しつつ遊ぶ場合や,触覚ディスプレイを併用する場合に適している. 移動可能な地点では,地形に応じて足音が変化し,移動不可能な地点に差し掛かると壁にぶつかる音で提示する.曲がり角や隣のフィールドへつながる通路は,音圧を変化させた風の音で通知する. なお,敵キャラクタ,アイテム,宝箱,水辺などの特別な地形からは,常に効果音が発生している. 操作キャラクタとこれらの対象物が,上下または左右方向に一直線上に並んだ際は,特別な効果音で通知する.効果音の種類は,対象物によって異なり,アイテムの場合はきらきらとした金属音が,崖の場合は地面が崩れるような音がそれぞれ聞こえてくる. また,敵キャラクタとの戦闘を効率良く行わせるため,特定の場合に警告音を提示するようにした.具体的には,操作キャラクタの攻撃範囲に敵キャラクタが出入りした場合と,敵キャラクタの攻撃範囲に操作キャラクタが出入りした場合である. この他に,3 章で述べたマップエディタを,「フィールドビューア」機能としてゲーム内に搭載した.本機能は,ゲームを一時停止した状態で,マップエディタのようにフィールドの全体像をカーソルキーを使用して確認することができるものである. 4.2.5 FullVoice Edition の開発とユーザニーズに基づく改善 本ゲームは,もともと効果音の演出にそれほど多様性が無かった. 2012 年9 月29 日に公開した本ゲームの初期バージョンは,ゲームを遊んだプレイヤから様々な問題点が指摘された.各音の区別が出来ないため,操作性やイベントシーンでの演出などが不十分という意見である.この不満点を解消するため,フルボイス版である「FullVoice Edition」として開発を改めて行うこととした.ウェブサイト [17] のユーザ交流掲示板にも,フルボイス化にあたって肯定的な意見が多く寄せられたことにも依る. フルボイス版は,ゲーム中のキャラクタの会話に声優による肉声を使用することとし,新しいフィールドや新規エピソード,宝箱やアイテムの種類を追加した(追加後のスペックが表 4.1 である). 声優の募集にあたっては,インターネット上で活動中のアマチュア声優を募った.この結果,24 人の声優方々からご協力いただいた. 2017 年12 月時点で,現行のソフトウェアバージョンは3.13 であるが,これまでに 33 回のバージョンアップを行っている.アップデートには,ゲームのバグ修正の他,ユーザの意見を基に追加したシステムなども含まれる.   Fullvoice Edition の初期バージョンの開発に当たっては,触察プレイをする際の 2 つの問題が指摘された.壁などの移動不可能地点や敵キャラクタが密集したフィールドでは,すべての表示物が繋がってしまい判別できなくなること,ゲーム初心者は操作キャラクタの形状をすぐに記憶できないために現在位置を見失ってしまうことの2 点である.これは,ゲームシステムがピンの点滅表示に対応していなかったことや,点図ディスプレイの解像度が低いことに起因する問題であった.この問題については,操作キャラクタや敵キャラクタを個別表示できるナビゲート機能を搭載することで改善することができた. サウンドプレイにおける問題も寄せられた.ウェブサイトのユーザ交流掲示板には,フィールド内の壁の位置などの構造が分かりにくいという意見が寄せられ,フィールドビューアを搭載した.この機能は,全盲者がゲーム開発の際フィールド作成に使用したプログラムを応用したもので,カーソル位置を音により提示することでフィールド内の壁やオブジェクトの位置を知らせるものである.谷を飛び越える際のジャンプ操作が難しいという意見については,チュートリアルの内容を拡充するとともに,さらにジャンプで飛び越えた地形に応じた移動音が鳴るよう改善した.ゲームの初期段階からたくさんの効果音が再生されるためにそれぞれの効果音の意味するところが分からなくなってしまうという指摘には,チュートリアル内で効果音を視聴できる機能を追加して対応した. 4.2.6 ゲームのダウンロード数とプレイヤ等からの反響 本ゲームは,ゲームのウェブサイト [17] 等を通じて 2014 年 2 月 9日より無償配布している.2015 年11 月現在,これまでに国内外から2508 回のダウンロードを記録している. また,国立障害者リハビリテーションセンターでのイベント [53] 等を通じて,多くの方に本ゲームを試して頂き,健常者・視覚障害者の方々から様々な意見や感想を頂くことが出来た.参加者からは,視覚障害者も楽しく遊べるアクションRPG である,ぜひ晴眼者・視覚障害者の協力プレイなどをしてみたいなどの感想などが寄せられた. また,ゲームをプレイしたユーザを対象に,2014 年 6 月 11 日から配布サイト上で本ゲームについて匿名式のアンケートを実施した. アンケートの質問項目は,5 段階で面白さを総合評価するもの,ゲームの良い点・悪い点を自由記述させるものの二点である.この結果,99 人からの回答があり,63 人が「5: 非常に面白かった」と回答し,平均評価が 4.6 という結果が得られた.ゲーム熟練者の視覚障害ユーザからは,フィールドが広い点,ストーリーが長い点,物語の分岐があること,高難易度ダンジョンやアイテムの収集要素等の追加要素があったことから概ね高評価を得られた.この評価は,主に従来 のAudiogame と比べてのものである.特にBGM・効果音・キャラ クタボイスを用いての音による雰囲気作りは非常に好評であった. また,キーボードでの操作が主流のAudiogame にあって,ジョイスティックなどのゲームコントローラの利用ができる点も評価された. 一方で,ゲーム初心者の視覚障害ユーザからは,フィールドが広く 現在位置が分からなくなる,システム音の意味しているところが分からない,谷を飛び越えるアクションが難しいなどの意見があった.このように得られた課題に対しては,前節で述べたとおり,バージョンアップにより対応することができた. なお,アンケートは日本語しか用意していなかったが,海外の視覚障害ユーザからも少なくとも 38 件の回答があった(アクセス元の国が日本ではない国を集計した.アクセス元の国が不明である場合は集計していない).海外ユーザのコメントを見ると,ゲームが非常に楽しかったことや次回作への要望,今後も新しいゲームを作り続けてほしいこと,ゲームの英訳を望む意見などがあった. 本ゲームの情報は,AudioGames.net にも掲示され [54],英語圏の視覚障害者も楽しんだことが分かった.さらに,海外の視覚障害者より,筆者宛てにメールでの連絡も幾つか寄せられた.ある海外の視覚障害ユーザからは,本ゲーム公開後1 週間にしてゲームをクリアした旨が寄せられた.本連絡は,国内のユーザからのクリア報告よりも早いものであった.このユーザは,日本語のシナリオをGoogle 翻訳により英語に訳しつつ遊んでいたとのことだった.また,他の海外の視覚障害ユーザからも,Audiogame として見てもゲーム内容が斬新で,音だけでも楽しめたとの感想を頂けた.ほとんどの視覚障害ユーザは,触覚ディスプレイを使用できる環境にないため,音だけを用いてのプレイであった.しかし,そういった環境下でも,本ゲームをクリアできたという報告を多数頂けた. また,配布サイトに用意したユーザ交流掲示板には,障害者と健常者が一緒に楽しめたという感想も寄せられた. 以上の反響から,本ゲームが目標としていたRPG 内における視覚障害者向け状況提示方法の開発と,障害者と健常者が一緒に遊べるインクルーシブゲームを開発することは十分に満たせたと考えられる. 4.3 サイドスクロールアクションゲーム 4.3.1 ゲーム概要 本ゲームは,晴眼者と視覚障害者がともにプレイできる「サイドスクロールアクションゲーム」である.Windows 環境で利用でき, DirectX によるマルチメディア処理を実装している.2 節で開発したShadow Rine は,ゲーム内地形を把握し進行経路を摸索していくことに重点を置いたつくりであったのに対し,本サイドスクロールゲームは仕掛けの突破や敵キャラクタとの戦闘に特化しており,正確かつ素早い操作が求められるようなリアルタイム性の高い設計である.本ゲームでは新たに,晴眼者と視覚障害者が共に楽しめるよう,二人で協力してプレイを進めることができるモードを搭載している(図 4.4). 晴眼者は,従来のアクションゲームの様に,ゲーム画面を視認しつつ操作を行う.一方で視覚障害者は,聴覚情報や触覚情報を手掛かりに操作する.ゲーム画面とリアルタイムに連動する点図ディスプレイを触りながらゲーム内状況の把握ができるよう,触覚情報を利用して遊ぶ『触察プレイ』機能を搭載した.また聴覚情報のみで遊ぶ場合を想定して,多彩な効果音や音圧変化を用いて画面情報を提示する『サウンドプレイ』機能を搭載した.このようにゲーム画面内に含まれる情報を聴覚/触覚で提示する方法はShadow Rine と同様であるが,RPG よりもスピーディに変化し続けるゲーム内状況に対応するための機能拡充を行っている. 4.3.2 ゲームプレイの流れ 本ゲームの目的は,同ジャンルのゲームと同様,奥行きのない 2 次元ゲーム内フィールドで操作キャラクタを左右方向へ移動させつつゴール地点へ導くものである.フィールド上には,高低差を作り出す段差,谷等の転落するとやり直しとなる罠仕掛け,プレイヤを追尾/攻撃する敵キャラクタ等が配置されている.プレイヤは,ジャンプ操作を駆使して段差や仕掛けを乗り越え,敵キャラクタを倒したりあるいは回避したりしつつフィールドを進み,ゴール地点を目指す.Shadow Rine ではゲーム上の制約から導入を見送っていた仕掛けとして,プレイヤが任意で動かして足場を作るためのブロックや,常に移動を続ける足場,接触するとプレイヤの体力を奪う移動物等を新たに設置した. 二人でゲームをプレイする場合は,プレイヤ1 のゲームプレイをプレイヤ 2 がサポートする形でゲームを進める.プレイヤ 1 を中心とした画面内を,プレイヤ2 は自由に移動できる.2 社でコミュニケーションを図りながら,協力してゲーム内の仕掛けを乗り越えたり,共闘して敵キャラクターを倒す等の操作が求められる. 図 4.4. 協力プレイ中のゲーム画面の例 4.3.3 聴覚・触覚による情報提示方法 『サウンドプレイ』では,ステレオスピーカ/ヘッドホンを使用し, 多彩な効果音エフェクトを用いて画面上の全ての情報を音提示することが可能である.プレイヤキャラクタのオブジェクトを中心として,フィールド上の全てのオブジェクトの位置関係を,横方向の距離を音圧の左右差で,高さ方向の距離を音圧変化によって把握できるようにした.なお,位置関係の把握については,地図エディタ同様,Hafter ら,Yost ら,Miller らの報告を参考にしている [55-57].敵キャラクタや仕掛け等フィールド上の全てのオブジェクトには,移動音/動作音/接触音/消滅音の少なくとも 4 種類の効果音を設定した.また,自ら動作をしないオブジェクトについては,待機音を常時再生するようにした.オブジェクトの種別ごとに設計した動作音とそれらに対するプレイヤの操作について表 4.2 に記す. 表 4.2. 本アクションゲームにおけるオブジェクトの音提示方法 オブジェクト名 動作 敵キャラクタ 主にプレイヤを追尾/攻撃 穴/谷/マグマ 落下後耐久力を奪い,開始地点へ復帰 足場ブロック 「うごかす」コマンド表示,プレイヤが任意に移動/乗場可能 移動ブロック 一定の区間(左右の壁の間等)を常時往復 火山岩 定期的に水平または垂直方向に放たれ,接触で耐久力を奪う オブジェクト名 音提示方法 敵キャラクタ 移動音(足音)/動作音(攻撃) 穴/谷/マグマ 待機音(風音等) 足場ブロック 接触音(専用音) 移動ブロック 移動音(機械音等)/接触音(移動方向の折り返し時) 火山岩 動作音(出現音)/移動音(対空音) オブジェクト名 プレイヤの対処 敵キャラクタ 音圧左右差から距離を推定,適切な距離から攻撃 穴/谷/マグマ ジャンプ操作で回避 足場ブロック オブジェクト動作ボタンで移動させ,足場とする 移動ブロック 音圧左右差を頼りに相対距離を推定し,接触音を頼りに乗り降り 火山岩 音圧変化から距離推定,移動やジャンプを駆使して回避する サウンドプレイを助ける 2 つの機能を新たに設計した.サラウンドビューア機能は,プレイヤキャラクタが移動すると,進行方向の壁/足場/落下地点/頭上に浮かぶ足場に近づいた際,壁等から音源を発生させて状況を通知する機能である.それ以降の進行が不可能な壁の位置を移動音(足音など) の反響で伝え,ジャンプ等のアクションを用いることで進行できる段差の位置を専用の効果音で通知する.また,ユーザが任意に利用可能な「フィールドスキャナ」機能は,ゲームを一時停止した状態で利用でき,ゲーム画面上のオブジェクト情報を知ることができるものである.敵キャラクタ/罠仕掛け/壁などの各オブジェクトの距離情報と方位情報を,プレイヤキャラクタを基準とした相対的な情報として伝達する. 触察プレイでは,触覚ディスプレイ(点図ディスプレイ ドットビュー DV-2)を接続することで,ゲーム画面を触りながら操作できる.ゲームの画面情報の内,段差や仕掛けを含むフィールド形状の他,操作キャラクタや敵キャラクタの位置関係をピンの上下で提示する.オブジェクトごとに各オブジェクトごとに固有の形状や振動パターンを割り当てて,RPG よりもスピーディで正確な状況把握が可能となった.これらの情報はゲーム画面と連動してリアルタイム提示され,プレイヤは画面状況を容易かつ即座に把握できる. 4.3.4 ゲームシステムの評価 本ゲームは,物語性の導入や更なるゲーム内フィールドの追加のため現在も開発を継続している.開発中には少なくとも 7 名の視覚障害者によってテストプレイを行っている.テストプレイを行ったすべての視覚障害プレイヤは,サウンドプレイを用い,各フィールドをクリアすることに成功している.また,通常プレイユーザとサウンドプレイユーザ,サウンドプレイユーザ同士のそれぞれで協力プレイを行った結果,2 人のプレイヤがゲーム内状況を同様に把握しつつ,一緒にプレイを進め,ゴールに辿り着くことができていた.この際,晴眼者・弱視者は通常プレイを,全盲者はサウンドプレイを選択し,ゲームを共にプレイした. 本ゲームの使いやすさや操作性を評価するため,開発中のバージョンを用いクローズドベータテストを実施した.インターネットを通じて協力者を募り,評価実験用のソフトウェアをプレイしてもらい, プレイ後のアンケートの回答を収集した.テストプレイの参加者は, 全盲者 11 名,健常者 1 名の合計 12 名であった. テストプレイの流れを示す.実験に参加した協力者は,8 種類のゲーム内フィールドを順にプレイした.最初のゲーム内フィールドは,ゲームのルールや操作方法を学ぶためのチュートリアルを交えた練習用フィールドとした.その後,敵キャラクタの全討伐や,指定されたアイテムオブジェクトを捜索する等の目的に沿ってフィールドを攻略した.ゲーム中のプレイスタイル(通常プレイ/触察プレイ/サウンドプレイ) の選択については協力者が任意で選択し,全盲者 11 名がサウンドプレイ,晴眼者 1 名が通常プレイを選択した. プレイ後のアンケートでは,本ゲームの操作性/面白さ/状況把握のしやすさ/総合満足度について 5 段階評価で質問した.ゲームの操作性や満足度については,System Usability Scale (SUS) を用いて評価した [58] 結果,平均点は 71.25(SD: 0.47) であった.なお, SUS スコアの平均点は 68.1 点であることが報告されている [59, 60]. また,SUS スコアとAcceptability ranges(受容性評価)との比較結果に当てはめると,5 段階のうち最も満足度の高いAcceptable(好ましい) という結果が得られた.Adjective ratings(形容的評語) との比較結果に当てはめると,6 段階のうち上から 3 番目のGood(よい) という結果が得られた.以上より,本ゲームの操作性やユーザ満足度については,一定水準の満足度を満たす結果となった. ゲームの面白さと状況把握のしやすさについては,フィールド内の移動時,戦闘時,罠仕掛けの移動時に分けて質問したが,全て平均4.0 を超える結果となった.この結果について,全盲者/晴眼者による評価の差は確認できなかった.またサウンドプレイのユーザを対象に,上下方向と左右方向の分かりやすさについて質問した結果,左右方向(音圧左右差)の分かりやすさは平均で 4.33(SD: 0.94),上下方向(音圧変化)の分かりやすさは平均で3.56(SD: 1.34)という結果となった.このように上下方向よりも左右方向の変化のほうが分かりやすいという結果は,前章で述べたマップエディタの評価実験のアンケート調査に類似していた. ゲームの満足度を総合的に評価する項目では,平均4.5(SD: 0.5) という結果であり,ベータ版での評価であったにもかかわらずShadow Rine 同様の高評価を得られた.自由記述欄では,ベータ版を用いたテストプレイであったため,主にゲームのバグ報告や誤字の指摘などが多く寄せられた.中には上下方向の変化がわかりづらいとの意見も含まれていたため,今後サラウンドビューア機能の改善が必要である.また,正式版を早く遊びたいという期待の声も寄せられた. 以上の結果より,新たに考案したサイドスクロールアクションゲームにおける視覚障害者向けゲーム内状況提示方法の有用性を示すことができた.また,障害者と健常者が一緒にプレイできるインクルーシブなアクションゲームを開発するという目標は十分に満たすことができたと考えられる. 第 5 章 おわりに 5.1 まとめ これまで,晴眼者と視覚障害者の両者が分け隔てなく楽しめるゲームはほとんど存在していなかったため,視覚障害者と健常者のゲームコミュニティは分離している状況が続いていた.またゲームの開発環境については,全盲の視覚障害者向けのアクセシビリティが十分に確保されていない状況であった. そこで本研究では,視覚障害者向けのゲーム開発環境を整備した上で,視覚障害の有無によらずプレイ可能なインクルーシブゲームを開発することを目標としてきた. 開発環境の整備では,視覚障害者がインクルーシブなコンピュータゲームを開発できるよう,グラフィカルな作図環境を提供するマップエディタを開発した.画面上のカーソル位置を音で伝えることで, キーボード操作による 2 次元フィールドの作成を可能とした.その結果,視覚障害者が2 次元平面情報を含むRPG 等のインクルーシブゲームを開発することが可能となった. マップエディタでの音提示方法を応用して,アクションRPG とサイドスクロールアクションゲームの 2 つのインクルーシブゲーム を開発した.新たに開発したアクションRPG『Shadow Rine』は, 晴眼者が遊ぶことができるよう画面からの視覚情報を提示可能である.また,聴覚や触覚を用いてゲーム内状況を提示する新たな方法を考案したことにより,視覚障害者/晴眼者が共に利用可能なインクルーシブ・アクションRPG となった.また『Planet Adventures』は,ShadowRine よりもリアルタイム性が高く,晴眼者と視覚障害者が協調プレイできるサイドスクロールアクションゲームである.これらのゲーム内において,視覚障害を持つプレイやは,地形情報や刻々と変化する戦況を聴触覚を用いて把握しつつ,健常者と対等にゲームを進めることができた.したがって,本研究で新たに開発したゲームは,視覚障害者と晴眼者が共に利用可能な世界初のインクルーシブゲームになりえたといえる.さらに,今回開発したインクルーシブゲームにおいて,アクション,RPG,シューティング,シ ミュレーション,アドベンチャー,テーブル,パズルの7 ジャンルについて,視覚障害者向けの提示方法を示すことができた. 5.2 今後の展望 今後は,引き続きより視覚障害者と晴眼者の協調プレイを促進できるような方法を探っていく.さらに,本開発環境を応用し,他ジャンルのゲーム開発を行っていくことを予定している.本研究で示したインクルーシブゲーム開発のための視覚障害者向け提示方法を,今後デベロッパ等がゲーム開発に応用できる仕組みを整えることができれば,世の中のゲームをインクルーシブにできるはずである.また将来インクルーシブゲームがますます開発され視覚障害者と晴眼者の両者のゲーム体験が共有されることで,障害の垣根を超えたコミュニケーションや相互理解が深められることを期待している.さらに,ゲームをシリアスゲームやゲーミフィケーションへと応用できれば,視覚障害者のQOL の向上やさらなる社会進出も可能となると考える. 視覚障害者が独力でゲーム開発するための統合開発環境の整備も検討課題である.特に,マップの作図に慣れていない視覚障害者も, 効率よく地図を自作できるよう,本論文で述べたマップエディタを改善することを検討している. 本研究では,聴触覚によるゲーム内地形の作成とゲーム内の誘導を行ってきたが,今後はこれら手法を仮想空間から現実空間への利用へと転用し,実世界での視覚障害者支援へ応用していくことを検討している.実世界においても,視覚障害者の移動支援については,確実かつ安全な移動支援技術が求められる状況が続いている.そのためゲームで利用した 2 次元空間内の状況把握の方法を,視覚障害者の移動支援へ転用する計画である。また,視覚障害者向けに地図情報を提示する研究は行われているが,視覚障害者自身による地図作成についてはそれほど研究されていない.そこでマップエディタをさらに改良し,実世界の地図情報の把握と作成へ応用していくことを検討している. 謝辞 本論文は,筆者が筑波技術大学大学院 技術科学研究科 保健科学専攻 情報システム学コース修士課程に在籍中の研究成果をまとめたものです. 同専攻教授坂尻正次先生には主指導教員として本研究の実施の機会を与えて戴き,その遂行にあたって終始ご指導を戴きました.また,筆者がこれまでに開発してきたゲームの価値を認めて戴き,何度もデモや展示会に出展する機会を与えて下さったことは,筆者が大学院へ進学し研究を継続したいと考える大きな転機となりました. ここに深謝いたします. 同専攻教授大西淳児先生には副指導教員としてご助言を戴くとともに本研究の意義や目的について多くのご指導を賜りました.ここに深謝いたします. 筑波技術大学名誉教授の小野束先生には,研究研究を次のステップ へ進めるための様々なご助言を戴きました.ここに深謝いたします. 東京大学高齢社会総合研究機構特任助教の三浦貴大先生には,研 究目的の設定や関連研究の調査に当たり多くのご助言を戴きました.また論文執筆や評価実験を進めるに当たっては,細部にわたりご指導を戴きました.ここに深謝いたします. 同専攻教授の巽久行先生には主査として研究遂行に際しご助言を戴きました.また,同専攻准教授の岡本健先生には副査としてご助言を戴きました.ここに深謝いたします. 北海道科学大学教授・東京大学名誉教授・北海道大学名誉教授の伊福部達先生には,研究遂行に際しご助言を戴きました.ここに深謝いたします. 本研究はJSPS 科研費(26285210, 15K04540, 15K 01015)及び筑波技術大学競争的教育研究プロジェクト事業の助成を受けています. ゲーム開発・評価の際には,筑波技術大学の学生の皆様や,イン ターネット上で活躍される声優の方々にご協力およびご助言を戴きました.また,研究開発したゲームのをプレイして下さったユーザの皆様からは,多くのご意見・ご感想を戴きました.ここに感謝を申し上げます. 最後に,何時も温かい目で見守り続けてくれ,研究者としての道を示してくれた家族に,深く感謝します. 本卒論TeX ファイルの作成にあたっては,東京大学 工学部 計数工学科/大学院 情報理工学系研究科 数理情報学専攻・システム情報学専攻が公開しているsuribt.zip を利用させていただいた [61]. 参考文献 [1] メディア芸術データベース, https://mediaarts-db.bunka. go.jp/ (cited: 2017/12/30) [2] CESA ゲーム関連調査報告書 , http://report.cesa.or.jp/ (cited: 2017/12/30) [3] 2017CESA ゲーム白書, ISBN 978-4-902346-36-7, 2017/7/24 [4] AudioGames.net, http://www.audiogames.net/ 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[60]“ 福祉用具における SUS,” http://www.f.waseda.jp/s_yamauchi/ResEthics/SUS/%E7%A6%8F%E7%A5%89%E7%94%A8%E5%85%B7%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%EF%BC%B3%EF%BC%B5%EF%BC%B3.pdf [61] 東京大学工学部計数工学科 LaTeX テンプレート, http://www.keisu.t.u-tokyo.ac.jp/research/latex/ (last checked: 2015/12/25). 研究業績 学術雑誌(紀要・論文集等も含む) に発表した論文及び著書 (査読有) [1] 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 小野 束, “視覚障害者のアクセシビリティに配慮したアクションRPG:全盲者向け開発環境とゲーム本体の開発,” 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 21(2):303-312, 2016. [2] M. Matsuo, T. Miura, J. Onishi, M. Sakajiri, T. Ono,“Experience report of blind gamer to develop the accessible action RPG,”Journal on Technology & Persons with Disabilities, 5:172-191, 2017. (査読無) [1] 松尾 政輝, 坂尻 正次, “音と触覚により視覚障害者も利用可能なバリアフリーゲームの開発,” 筑波技術大学テクノレポート, 21(1):76-80, 2013. [2] 松尾 政輝, 坂尻 正次, “音と触覚も利用可能な視覚障害者向けバリアフリーゲームの開発”, 第 31 回日本ロボット学会学術講演会特別併設シンポジウム「介護・リハビリ・自立のための実用的なロボット技術の創出」寄稿集, pp:58-60, 2013. 国際会議における発表 (口頭発表 査読有) [1] M. Matsuo, T. Miura, M. Sakajiri, J. Onishi, T. Ono,“Audible Mapper and ShadowRine: Development of Map Editor Using Only Sound in Accessible Game for Blind Users, and Acces- sible Action RPG for Visually Impaired Gamers,” Computers Helping People with Special Needs, Lecture Notes in Computer Science, 9759:537-544, 2016.7. Linz, Austria. [2] T. Miura, S. Soga, M. Matsuo, M. Sakajiri, J. Onishi, T. Ono, “GoalBaural: A Training Application for Goalball-related Au- ral Sense,” Proc. Augmented Human 2018, 5 pages, 2018.2, Seoul, Korea. DOI: 10.1145/3174910.3174916 (to Appear) (ポスタ/デモ発表 査読有) [1] M. Matsuo, T. Miura, M. Sakajiri, J. Onishi, T. Ono, “Shad- owRine: Accessible game for blind users, and accessible action RPG for visually impaired gamers,” IEEE International Con- ference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC), pp: 2826- 2827, 2016.10, Budapest, Hungary. [2] M. Matsuo, T. Miura, M. Sakajiri, J. Onishi, T. Ono, “In- clusive Side-scrolling Action Game Securing Accessibility for Visually Impaired People,” Proc. INTERACT 2017, pp: 410- 414, 2017.9, Mumbai, India. 国内学会・シンポジウムにおける発表 [1] 松坂 治男, 北村 直也, 中岫 謙, 松尾 政輝, 坂尻 正次, 巽 久行, 小野 束, “iOS を中心としたタッチスクリーン端末における音声読み上げの現状 ?iOS のバージョンアップに伴う漢字詳細読み機能の付加とアプリケーションの活用?,” ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会 2012, 2012/11/2, サイトワールド 2012, 東京都台東区. [2] 松尾 政輝, 坂尻 正次, “音と触覚だけでも利用可能な視覚障害者向けバリアフリーゲームの開発?誰でも楽しむことのできるアクションRPG を目指して?,” ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会 2013, 2013/11/3, サイトワールド 2013, 東京都台東区. [3] 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 小野 束, “全盲者のためのバリアフリーゲームにおける音だけで作図する地図エディタ”, 第 31 回ライフサポート学会大会, 2015.9, 九州産業大学. [4] 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 小野 束, “全盲者のアクセシビリティに配慮した音だけで作図する地図エディタとアクションRPG の開発”, 第25 回 ライフサポート学会 フロンティア講演会, 2016.3, 東京工科大学 蒲田キャンパス [5] 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 小野 束“全盲者のアクセシビリティに配慮した音だけで作図する地図エディタの評価”, 第 32 回ライフサポート学会大会, 2016.9, 東北大学 青葉山キャンパス [6] 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 小野 束, “視覚障害者のアクセシビリティに配慮したアクションRPG のユーザニーズに基づく改善”, FIT2016 第 15 回情報科学技術フォーラム, 富山, 2016 年 9 月 [7] 大西 淳児, 大橋 隆, 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 小野 束, “視覚障害者のための遠隔個別教育支援システムの試作,” LIFE 2016, pp:55-56, 2016, 東北大学 青葉山キャンパス. [8] 松尾 政輝,三浦 貴大,坂尻 正次,大西 淳児,小野 束, “視覚障害者のアクセシビリティに配慮したアクション RPG の ユーザニーズに基づく改善,” FIT 2016, 2 pages, 2016. [9] 大西 淳児, 松尾 政輝, 大橋隆, 三浦貴大, 坂尻正次, 小野束, ”視覚障害者のための遠隔教育支援システムの試作,” FIT 2016, 2 pages, 2016. [10] 松尾 政輝, 横田 和紀, 三浦 貴大, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野束, “全盲者が開発した視覚障害者向けトレインシミュレータ『Dreamy Train』,” ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会 2016, 2016/11/3, サイトワールド2016, 東京都台東区. [11] 松尾 政輝, 三浦 貴大, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野 束, “視覚障害者のアクセシビリティに配慮した横スクロールアクションゲームの開発,” 情報処理学会 アクセシビリティ研究会, 2016.12, 国立情報学研究所. [12] 三浦 貴大, 大橋 隆, 松尾 政輝, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野 束, “視覚障害者のスマートフォン利用におけるアクセシブルなボタン配置に関する検討,” 感覚代行シンポジウム 2016, pp:13-16, 2016.12, 産業技術総合研究所 臨海副都心センター. [13] 曽我 晋平, 松尾 政輝, 三浦 貴大, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野 束,“GoalBaural:ゴールボールにおける音感覚の訓練アプリケーションの開発,” ライフサポート学会 第 26 回フロンティア講演会, 2017.3. [14] 松尾 政輝, 三浦 貴大, 櫻田 仁幸, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野束, “全盲者のアクセシビリティに配慮した音で作図するタッチスクリーン端末用地図エディタ,” LIFE 2017, 3 pages (OS-8-3),2017.9, お茶の水女子大学. [15] 三浦 貴大,坂尻 正次,大西 淳児,松尾 政輝,小野 束, “Minskey: 全盲者のためのスマートフォン向け小型ソフトウェアキーボード,” LIFE 2017, 3 pages (OS-8-5), 2017.9, お茶の水女子大学. [16] 大西 淳児, 杉崎 信清, 松尾 政輝, 坂尻 正次, 三浦 貴大, 小野束, “盲ろう学生のための遠隔要約筆記伝達支援ソフトウェアの試作,” LIFE 2017, 3 pages (OS-8-7), 2017.9, お茶の水女子大学. [17] 坂尻 正次, 三浦 貴大, 大西 淳児, 曽我 晋平, 松尾 政輝, 小野 束,“ゴールボールにおける投球音の定位能力を訓練するアプリケーションの開発,” 日本音響学会 2017 年秋季研究発表会, pp:1497- 1498, 2017.9, 愛媛大学城北キャンパス [18] 松尾 政輝, 三浦 貴大, 坂尻 正次, 大西 淳児, 小野 束, “視覚障害者のアクセシビリティに配慮したサイドスクロールアクションゲームの開発とゲーム内における聴触覚提示方法,” 第 43 回(2017 年)感覚代行シンポジウム, pp:51-54, 2017.12. 産総研臨海副都心センター [19] 三浦 貴大, 坂尻 正次, 大西 淳児, 曽我 晋平, 松尾 政輝, 小野 束,“ゴールボールにおける方向を誤認しやすい投球音の分析,” 日本音響学会 2018 年春季研究発表会, 2 pages, 2018.3. (to Appear) その他の業績 [1] 福祉機器コンテスト 2014 学生部門最優秀賞, 松尾 政輝, 中尾 清隆, 日本リハビリテーション工学協会, 2014.10 [2] バリアフリーシステム開発財団奨励賞, 松尾 政輝, 第31 回ライフサポート学会大会, 2015.9 [3] 若手プレゼンテーション賞, 松尾 政輝, 第31 回ライフサポート学会大会, 2015.9 [4] 学生奨励賞, 松尾 政輝, 情報処理学会第 2 回アクセシビリティ研究会, 2016.12 [5] 筑波技術大学 学部長表彰, 松尾 政輝, 2014/10 [6] 筑波技術大学 学長表彰, 松尾政輝, 2016/03