視覚障害者のタッチスクリーン端末の利用とユーザインタフェースに関する研究 平成24年度 筑波技術大学大学院修士課程技術科学研究科 保健科学専攻 松坂 治男 目次 第1章 はじめに 1.1 研究の背景 1  1.1.1 視覚障害者の障壁  1.1.2 MS-DOSの時代  1.1.3 Windowsショック  1.1.4 携帯電話の普及  1.1.5 タッチスクリーンショック  1.1.6 SPANの創設 1.2 本研究の目的 3 1.3 本研究で設定する課題とアプローチ 4 1.4 本論文の構成 5 参考文献 第2章 視覚障害者における情報機器の使用状況 2.1 背景と目的 6 2.2 調査方法 7  2.2.1 調査協力者  2.2.2 アンケートの概要 2.3 結果と考察 9  2.3.1 個人特性  2.3.2 携帯電話の使用状況  2.3.3 パソコンの使用状況  2.3.4 スマートフォン・タブレット端末の使用状況  2.3.5 その他の意見や感想 2.4 本章のまとめ 20 参考文献 第3章 視覚障害者向け講習会の実施 3.1 背景と目的 23  3.1.1 簡易マニュアルの作成  3.1.2 支援者の養成  3.1.3 アンケートの作成 3.2 講習会の実施 25 3.3 結果と考察 26 3.4 本章のまとめ 28 参考文献 第4章 ユーザインタフェースの提案 4.1 背景と問題点 30 4.2 目的・部分課題の設定 30 4.3 調査及び実験方法 31  4.3.1 アンケート調査  4.3.2 アンケート協力者  4.3.3 アンケート項目  4.3.4 アンケート方法  4.3.5 結果と考察 4.4 タッチスクリーン端末における押しやすいボタンサイズに関する調査 32  4.4.1 実験協力者  4.4.2 実験アプリの概要  4.4.3 実験方法と分析方法  4.4.4 結果の要約 4.5 本章のまとめ 35 第5章 まとめ 5.1 本論文のまとめ 37 5.2 今後の展望 39 謝辞 40 業績目録 A.研究業績 41 B.受賞 42 付録 A.アンケート質問票 43 B.簡易マニュアル 56 筑波技術大学 修士(工学)学位論文 第1章 はじめに 1. 1 研究の背景 1.1.1 視覚障害者の障壁  視覚障害者が日常生活を過ごす上では,情報の障壁を克服する必要がある.情報における障壁とは,環境中に存在する視覚情報や,目標物からの情報の獲得における障壁である.この障壁の低減の際は,視覚情報を残存視力により獲得するか,何らかの形で聴覚的もしくは触覚的に把握する必要がある.筆者は中途で視覚障害者になった.パソコンは,情報取得が早く,新の情報取得が可能となった発信においても,晴眼者と同じ漢字仮名交じりの文章を書くことができ,電子メールでは,晴眼者と相互に情報交換が可能となった.しかしパソコンの操作を習得するには,自学自習では困難であった. 1.1.2 MS-DOSの時代  パソコンの歴史を振り返ってみると, 1979年にNECから発売されたのが最初である.スクリーンの拡大やスクリーンリーダはまだなかった.日本では1985年頃,パソコンのOSとしてMS-DOSが登場し,標準的なOSになった.共通のOSが登場したことによって視覚障害者のためのソフトウェアのスクリーンリーダ である「BRPC」,「OS-Talk」, 「VDM」がと次々に開発された.基本ソフトのMS-DOS,「点字」とスクリーンリーダの組み合わせにより,視覚障害者用のワープロソフトにより,墨字を独力で書くことを実現した.[1],[2] また,視覚障害者のコンピュータプログラマとしての職域拡大が計られた. 1.1.3 Windowsショック  90年代に登場し,後に爆発的に普及したWindowsパソコンは,晴眼者に情報取得/作成を容易にするという恩恵をもたらした.しかし,視覚障害者における情報補償が現在の状況に至るまでには,多くの困難の歴史があった.その最たる例がキーボードを用いて文字ベースで操作を行うCUI(Character user interface) から,マウスを用いて操作を行うGUI(Graphical user interface)への変化の際に生じたもので,これは「Windowsショック」[1]と呼ばれている.この変化により, CUIで使用できたスクリーンリーダがGUIで使えなくなり,多くの視覚障害者が使用を妨げられたり,職にあぶれたりという状況に陥った.コンピュータプログラマの職については ,今現在も未解決である.個人のパソコンはGUI対応スクリーンリーダの開発とパソコンボランティア(パソボラ)の活動によって,解決が進み,現在に至っている.書籍やコンピュータから情報を取得する場合では,多くの機器が開発されており使用されている.弱視者は拡大読書器やスクリーン拡大機能を使うことが多い.全盲者は文字情報を聴覚/触覚情報に変換/代替するようなスクリーンリーダや点字/点図ディスプレイを用いている.ただ,全てのコンテンツを自由に使える訳ではない.  アメリカではADA法の制約のために,どのような情報機器も視覚障害者への対応が必要とされるため,各種コンテンツが利用しやすい.特に,ここ数年での電子書籍の普及により,晴眼者との差異は小さくなっている.一方,日本の場合は,著作権の問題があり,これらコンテンツが利用しにくい.これは出版社から視覚障害者への文字情報提供が少ないためである.確かに電子書籍の普及とともに,この影響は軽減されると考えられるものの,まだ進展は遅い.現状では,ボランティアによる出版物内容の点訳/音声化に頼っている.最大のものとしては,日本点字図書館が提供しているデイジー図書が挙げられる.日本国内ではデイジー図書の市場がかなり大きく,新聞,雑誌,教科書など様々な情報を閲覧可能である.しかし,OSがWindws95,98,ME,XP,VISTA,7,8と更新されるたびに,多くの視覚障害者は操作できない状態になった.このような場合には,再びパソボラの教えを請うことになる.そして,Windws8の登場で,タブレット端末と共有のOSとなり,より一層,直感的な操作方法となった.これに伴い,スタートメニューがなくなり,キーボードによる操作を主な手段としていた視覚障害者には一層わかりにくいものとなった[1],[2]. 1.1.4 携帯電話の普及  携帯電話は,小型・軽量で手軽に持ち運びができる情報機器の出現である.携帯電話もパソコンと同様にやや遅れて2001年に「らくらくフォンⅡ」として,スクリーンリーダの搭載した携帯電話が発売された.これが最初の全盲者でも利用できる携帯電話である.毎年新しい機能 (インターネット,メール,デイジー図書,ナビシステム)等が追加され,多機能携帯電話になった[2].一方,海外の携帯電話は2000年後半,スマートフォンは共通のオープン環境で利用できるようになった2000年代末には日本でも,携帯電話の多機能化よりもスマートフォン化のほうが将来の発展が期待できることが認識され,携帯電話からスマートフォンへの移行が進んできた.スマートフォンは,ハードウェアキーボードを用いていた状況から,タッチスクリーンという触覚フィードバックの無い平面を操作するという状況へと変わった.この変化により視覚障害者は,複数のボタンの位置を認識できず操作ができない状態になった. 1.1.5 タッチスクリーンショック  「Windowsショック」 から約17年,現在は言うなれば「タッチスクリーンショック」の時代である.操作方法が 従来の触覚を中心としたものから,触覚のないものへと切り替わる. 確かにタッチスクリーン端末にはスクリーンリーダが付属しているが,操作方法 がこれまでのPCにおける操作と大きく異なる上,自学自習のための教材や資料は多くはない.PCとタッチスクリーン端末とは,一種の棲み分けは出来ている状況であるため,視覚障害者にとってWindowsショックほどの衝撃ではないかも知れない.しかし,晴眼者と視覚障害者における情報格差が小さくなっている現状を考慮すると,晴眼者と同じレベルの情報機器の使用能力を視覚障害者にも求められる可能性は考慮されるべきである.「Windowsショック」の際に発生した問題を思い返すと,今回の「タッチスクリーンショック」で起こりえる問題に早い段階から対処できるべきなのである. 1.1.6 SPANの創設  GUIのため,晴眼者は,マウスによる操作が主流となる一方 ,画面の見えない視覚障害者はマウスでの操作はできなかった.96年には,画面読み上げソフト95Readerの登場により,音声のサポートでキーボードからの操作が可能になった.しかし,キーボードによ る操作方法を指導できる人材はごく少数であった.そこで,98年にパソコンを使用している視覚障害者の仲間に呼び掛けて,視覚障害者に特化したサポート団体を立ち上げた.その団体は,視覚障害者当事者,晴眼者のサポーターと視覚障害者向けのソフト会社で構成され,視覚障害者パソコンアシストネットワークという団体,頭文字をとって略称SPAN(スパン)[3] とした.  視覚障害者を対象にキータッチタイピングからメールの送受信までを習得する講座のサポートが可能なアシスタントの養成を行った.教え方やサポートの仕方は,講座を進めることにより,徐々に確立されてきた.その指導法をテキストにまとめたのが,「視覚障害者向けパソコン講座・初級編」であった.しかし,全国的にみると首都圏と地方では教える場所やサポーターの人数には格差があり,その格差を解消するために,サポーター養成講座を全国で行ってきた.  しかし,急速に普及してきたタッチスクリーン端末の操作をサポートするノウハウは確立されていない.視覚障害者にジェスチャ操作をどのように教えるか,画面に表示されているオブジェクトをどのように説明するかの手法は確立されておらず,視覚障害者を指導するためのマニュアルもない.これらの整備が待たれている状態である. 1.2 本研究の目的  今後の情報機器からボタンが失われていくことがほぼ確実視されること,そして,IBMの今後5カ年の情報技術予測にあるように,人間の5感をコンピュータ処理できる時代がすぐ到来することを踏まえておく必要がある.  晴眼者の間で,スマートフォンやタブレット端末等のタッチスクリーン端末の普及が進んでいる.最近のスマートフォンの利用率は上昇傾向にある[1-3].今後更なるタッチスクリーン端末の普及が予想されるため,視覚障害者のタッチスクリーン端末利用時のアクセシビリティの機能を使って,全盲者がどこまで操作可能かの検証を行う.具体的には,タッチスクリーン端末を使用する際に視覚障害者がどのような不具合を感じているのか,視覚障害者はタッチスクリーン端末にどのような機能を求めているかを調べる.まず初めに,これら情報機器の使用状況とニーズを把握するための調査を行うことから始める.スマートフォンやタブレット端末という道具を利用するには,タッチスクリーン機器の操作方法を学ぶための視覚障害者向けマニュアル等の教材が整備され、さらに視覚障害者向け講習会が開催される必要があるが、現状ではそれが十分ではない.そこでSPANのパソコンボランティアとして活動してきた経験をもとに ,タッチスクリーンショックを受けている全盲者に講習会を開催することにより,全盲者がどのような点で困っているか,どこで操作が難しくなるか等を明らかにすることを目的とする.  本研究の次の目的として視覚障害者のユーザインタフェースの検証を行う.弱視者の場合はスクリーン拡大機能により残存視力を用いてのターゲット位置の把握が可能である.一方で,全盲者の場合は,視覚情報を用いることができないため,スクリーンリーダを利用して聴覚情報により操作状況を把握し,触覚・体性感覚による情報を通じてスクリーン上の相対的位置を把握する.視覚障害者向けアクセシビリティ機能およびアプリケーションデザインについて,ボタンサイズ・配置等について調べる必要がある.そこで,タッチスクリーン端末の視覚障害者での普及に必要な項目の具体化とアプリケーションデザイン指針の提案をすることを目的とする. 1.3 本研究で設定する課題とアプローチ  前節で述べた目的に対して,以下の方法で課題を設定しアプローチした. (1)アンケート調査による分析:  視覚障害者140名にアンケートをEメールで配布し回答を得た.このアンケートの調査内容は,個人特性,携帯電話/パソコン/タッチスクリーン端末の利用状況とニーズ,タッチスクリーン端末などを使わない理由などである.質問項目は54個あり,テキストファイルに入力して答えさせた.結果は,障害状況ごとに集計を行った上で状況を分析した. (2)講習会の実施とその評価:  対象機器をiOS搭載機器として,主に全盲者を対象とした講習会を実施した.まず,講習会を実施する前に資料を作成した.この資料には,機器の概観,アクセシビリティの設定/利用方法,起動/終了方法,アクセシビリティ下のジェスチャ練習について記述した.また,講習会の支援者を前もって養成した.参加者は視覚障害者であり,支援者および講師でサポートした.講習会の終了後,受講者および支援者にアンケートを回答させた.アンケート内容は,分かりやすさの他,複数の操作方法の使いやすさ,想定使用状況などである. (3)タッチスクリーン端末における押しやすいボタンサイズ指針の作成:  音声読み上げ機能を使用している状況下において,視覚障害者が押しやすいボタンのサイズについて検討した.まず,実験アプリケーションをiOSに実装した.本アプリケーションの挙動は,画面上に一つボタンがランダム配置され,実験協力者がこのボタンが押すと別な場所にボタンが配置されるというものである.この際のボタンサイズもランダムである.なお,実験協力者のタッチ操作は本アプリケーションに記録された.実験協力者には複数のジェスチャで,これらの試行を繰り返させた.結果の分析に当たっては,指が触れた位置,ボタンの発見までの時間などを用いた. 1.4 本論文の構成   本論文は次の5章から構成されている. 第1章 はじめに  本章ではこれまで視覚障害者に起こった情報機器のショックについてより具体的に述べ,現況における問題について概説する. 第2章 視覚障害者における情報機器の使用状況  本章では,視覚障碍者の情報機器の使用状況を調査し,タブレット端末の利用者を把握し,使ってない人には,なぜ使用しないかの理由を尋ね,この結果から,今後の課題などを明確化する. 第3章 視覚障害者向け講習会の実施  第2章の結果により,体験型講習会の要望を受け,講習会を実施した.  講習会終了後,アンケートを実施し,この結果から,今後の全盲者向け講習会を行う指針を具体化する. 第4章 ユーザインタフェースの提案  視覚障害者にとって利用しやすいタッチスクリーン端末の設計指針を具体化する. 第5章 まとめ  本章では,第2章から第4章の知見と今後の展望を受けて,本研究を総括し,その結論を述べる. 参考文献 [1]渡辺 哲也, 岡田 伸一, 伊福部 達:GUIに対応した視覚障害者用スクリーンリーダの設計,電子情報通信学会論文誌D-II, Vol.J81 J81-D-II, No.1, pp137 pp137-145, January 1998. [2]視覚障害者のコンピュータ利用の歴史 長岡 英司 http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d- (last viewed:2013/01/05) [3]SPAN / 資料室 設立趣意書 http://span.jp/material/foundation.html#foundation (last viewed:2013/01/05) 第2章 視覚障害者における情報機器の使用状況 2.1 背景と目的  晴眼者の間で,スマートフォンやタブレット端末等のタッチスクリーン端末の普及が進んでいる.最近のニュースによると,スマートフォンの利用率は上昇傾向にある[1-3].今後,更なるタッチスクリーン端末の普及の進展が予想されるため,視覚障害者のタッチスクリーン端末利用時のアクセシビリティの確保が課題である.視覚障害者の間でもタッチスクリーン端末に興味を持ち,使用している事例はある.しかし,視覚障害者におけるスマートフォンの利用状況やニーズについては,まだ十分に分かっていない.このため,視覚障害者がスマートフォンを使用可能性といった基本的な情報でさえ十分に行き渡っていないこともある.そのため,タッチスクリーン端末を使用できないと思い込んでいる視覚障害者が少なくない.  現在のタッチスクリーン端末から視覚情報を得るに当たり,視覚障害者はアクセシビリティ機能を使っている.具体的には,スクリーンリーダやスクリーン拡大機能が挙げられる.弱視者の場合,拡大機能を通じて残存視力によりターゲット位置を把握可能である.一方で,全盲者の場合は,視覚情報がそのまま使えないため,スクリーンリーダを用いて聴覚情報として操作状況を把握し,触覚情報を通じてスクリーン上の相対的位置を把握する.具体的なスクリーンリーダは,iOS機器でのVoiceOver[4]や,Android機器のTalkBack[5]が挙げられる.  アクセシビリティ機能における問題点は,機能実装の不十分さにある.特に日本語へのローカライズ問題は,各OS共に問題である.2012年8月段階では,特にVoiceOverでは詳細読みの実装はなされていなかった.Androidでも日本語の読み上げが出来ない状況であった.こういった状況の改善は,日本語を利用する視覚障害ユーザにとって重要なものであった.しかし,2012年9月にiOSがバージョン6に上がった際,VoiceOverによる日本語へのローカライズ対応が進み,詳細読みができるようになった.Android端末でも,クリエートシステム開発(株)が開発したドキュメントトーカfor Android[6]をインストールすることで,同様の機能を実現できる.このように,視覚障害者にとってのアクセシビリティ状況は,日に日に改善が進んでいる.しかしながら,アクセシビリティ機能利用時の操作方法は,晴眼者のものと大きく異なる.このため,タッチスクリーン機器の操作方法を学ぶための,教書・教材の数や講習会などの開催数は少ない.この結果,視覚障害者の多くは,タッチスクリーン機器の使用を諦めている.アクセシブルなタッチスクリーン端末の普及のためには,視覚障害者におけるタッチスクリーン端末とのインタラクションが詳細に明らかになる必要がある.具体的には,タッチスクリーン端末を使用する際に視覚障害者がどのような不具合を感じているのか,視覚障害者はタッチスクリーン端末にどのような機能を求められているか,などである.そこで本研究では,視覚障害者におけるスマートフォン・タブレット端末の利用状況とニーズを明らかにすることを目的とした. 2.2 調査方法 2.2.1 調査協力者  調査協力者は140人の視覚障害者(男性:100人,女性:40人)であった.彼らは,大学生もしくはICT普及に関するNPOに属する者であった.図2-1に年齢層と障害等級を示す.渡辺ら[7]の報告と比べ,被験者群は主に30~50代のものが占めている.障害等級に関しては,54.3%の実験協力者が1級,30.7%の者が2級であった(1級:両眼の矯正視力の和が0.01,2級:両眼の矯正視力の和が0.02~0.04). 図2-1 本論文における調査協力者の年齢層(上)と障害等級(下) 2.2.2 アンケートの概要  詳細なアンケート項目を付録Aに示す.このアンケートは以下の6項目を調査するために作られた.  1. 個人特性:年齢・性別・障害状況・日常生活訓練の受講状況など  2. 携帯電話の利用状況:使用端末,利用中のアクセシビリティ機能,望む機能など  3. パソコンの利用状況:使用OS, 利用中のアクセシビリティ機能など  4. スマートフォンやタブレット端末の利用状況:使用端末,使用場所,操作方法,使用アプリケーションなど  5. スマートフォン・タブレット端末などを使わない理由:これらの端末に対する印象な  6. ど  7. その他の意見    なお,ここでの「携帯電話」とは,携帯可能な電話機器のうちスマートフォンやタブレット端末を除いたもののことであり,フィーチャーフォンやPHSを主に指す.質問項目は,渡辺らの研究[7]や厚労省の調査[8]などを踏まえ,全盲者を含む著者らによる討論を基に決定された.質問項目数は54項目である.本アンケートは,テキスト形式でEメールにより配布された.調査協力者には自分のコンピュータを使って回答を入力させた上で,著者らに返信させた.なお,本研究の実施にあたっては,筑波技術大学倫理委員会の承認を得た.調査期間は,2011年11月から2012年2月である. 表2-1自立生活訓練の経験(上:見え方の状況に対する歩行訓練,下:点字による読書の訓練経験のクロス集計表) 2.3 結果と考察 2.3.1 個人特性  調査協力者のうち,36.4%が全盲で,52.1%が視覚で文字を判読できないと述べていた. 本論文では,この視覚障害状況と質問事項についてのクロス集計により分析を行う.クロス集計に用いた障害状況は3種類であり,障害等級,見え方の状況,視覚での文字判読可否である.  表2-1は見え方の状況に対する,歩行訓練および点字による読書の訓練経験のクロス集計表である.弱視者と比べ,全盲者の方が,これらの生活訓練を受けている者が有意に多かった (p<0.01).  調査協力者における各機器の保有者数 (保有率)は,携帯電話またはPHS:127人(90.7%),パソコン:132人(94.2%),スマートフォンまたはタブレット端末:18人(12.9%)であった.次に,見え方の状況に対するICT機器の使用状況のクロス集計表を表2-2に示す.この表を見ると,概して弱視者の方が全盲者よりも,スマートフォンおよびタブレット端末を持つ率が高い.スマートフォンまたはタブレット端末の非所持者のうち,使用したことがない:96人(78.6%)で,使用したことがあるが持っていない:19人(15.6%)であった. 表2-2 ICT機器の使用状況(見え方の状況に対するICT機器の使用状況のクロス集計表) 2.3.2 携帯電話の使用状況  調査参加者の95.5%が携帯電話を所持していた.渡辺らの調査結果[7]と比べると,本調査における参加者における所持率は高い.図2-2に本調査参加者が利用しているアプリケーションを示す.障害等級,見え方の状況,視覚での文字判読可否による有意差は特に無かった(フィッシャーの正確確率検定による).参加者の多くは,通話やメール機能のほか,時間表示やアラーム機能を使っていた.また,その他の項目には,バーコードリーダ,歩数計,地図機能,連絡帳,計算機,カメラ,音楽再生機能,赤外線通信機能,おサイフケータイ,GPSを通じたナビ機能などが挙げられていた. 図2-2 携帯電話における各アプリケーションの使用状況  使用中のアクセシビリティ機能を表2-3に示す.全盲者はスクリーンリーダのような音声による補助機能を用いていた者が多かったのに対し,弱視者では画面拡大機能や色調整機能のような見え方を補助する機能を用いる者が多かった.この結果は,渡辺らの調査結果[7]と様であった.  表2-4に視覚状況ごとの携帯電話に望む機能を示す.スクリーン表示に関する改善要求を除いては,全盲者および弱視者での傾向に違いはなかった.スクリーン表示に関する機能への要求のみ,全盲者と弱視者での違いに有意傾向があった.この原因は,日本語の場合は漢字のような文脈によって読み方や発音の仕方が異なる文字があったためと思われる.漢字は日本語の文章を理解する上で重要であるが,幾つかの漢字は見た目が似ている一方で,意味が異なることがある(例:[人][入],[日][曰],[矢][失],[挙][拳],[己][已][巳]).このような漢字の違いを見分けるために,ディスプレイやフォントのサイズや解像度に対する改善要求が上がったのだと思われる. 表2-3 視覚状況に対する携帯電話のアクセシビリティ機能 表2-4 携帯電話に望む機能 2.3.3 パソコンの使用状況  全ての調査参加者がパソコンを持っており,全員がWindowsを使っていた.このうち95人はWindows XP,71人はWindows 7の入った機器を所持していた.3人の弱視者のみ,Mac OS Xの入った機器をWindowsパソコンと併用していた.  表2-5に視覚状況ごとのパソコンで利用している機能を示す.メール機能の使用状況を除いては,全盲者および弱視者での違いは見られなかった.メール機能については,全盲者の方が有意に利用率が高かった.これは,全盲者と比べて弱視者の場合,携帯電話でのメール確認/入力の操作の際の不具合が少ないためと考えられる. 表2-5 パソコンで利用している機能  図2-3に調査参加者が使用しているスクリーンリーダを示す.弱視者および全盲者において,使われるアプリケーションに違いは無かった.ただし,表2-6に示す通り,弱視者の場合はスクリーンリーダを使用していない者が有意に多く,全盲者の場合は全員がスクリーンリーダを使用していた.一方で,画面拡大機能の場合は,全盲者で使っているものは全くおらず,使用者は弱視者のみに限られた.図2-4および図2-5に,弱視者が使用している拡大機能およびその他のアクセシビリティ機能を示す.これらの結果より,全ての弱視者が拡大機能を使っているわけではないと分かる.一部の弱視者は,GUI画面をカスタマイズして使っていた. 図2-3 全盲者・弱視者における使用中のスクリーンリーダ(パソコン) 表2-6 パソコンで利用されているアクセシビリティ機能 図2-4 弱視者における使用中の拡大機能(パソコン) 図2-5 弱視者における使用中のその他のアクセシビリティ支援アプリ(パソコン) 2.3.4 スマートフォン・タブレット端末の使用状況  表2-7にタッチスクリーン機器の使用経験を示す.調査協力者の多くは使用経験が無いものであり,視覚状況ごとの差は見られなかった.所持している者は全盲者で4名,弱視者で15名であった.表8にタッチスクリーン端末を所持していない者における,これら端末に対する興味を示す.約50.0%の視覚障害者がタッチスクリーン端末に興味を持っていることが分かる.弱視者は「ぜひ使ってみたい」が最も多い一方で,全盲者は「使ってみたい」が多く,若干のトーンダウンが見られる.ただし,視覚状況ごとのタッチスクリーン端末に対する興味には有意差は無かった.興味を持っていない視覚障害者における,タッチスクリーン端末を使いたくない理由(表2-9)を見ると,従来の携帯端末に満足しているという意見が見られた.特に全盲者においては,ハードウェアキーボードなどにあるような機械式のボタンが必要とする者が多かった.これは,触覚フィードバックの必要性を示唆している. 表2-7 タッチスクリーン端末の使用経験 表2-8 タッチスクリーン端末を使ってみたいか 表2-9 タッチスクリーン端末を使いたくない理由  図2-6に調査協力者が所持しているタッチスクリーン端末を,図2-7にタッチスクリーン端末の使用場所を示す.3名が全盲者で,それ以外が弱視者であった.7名は複数のタッチスクリーン端末を所持していた.使用場所については,全員が自宅で使用すると答え,半数が電車などでの移動時にも使用すると答えた.所持状況や使用場所に関 しては,視覚状況による有意差は確認されなかった. 図2-6 所持されているタッチスクリーン端末 図2-7 タッチスクリーン端末の使用場所  自宅やオフィスのような静止条件においては,多くの弱視者で,左手で把持して右手で操作している傾向があった(表2-10,表2-11).一方で,全盲者では,テーブルや机に置いて使う傾向があった.一方で,電車内のような移動条件では,見え方によらず,端末は両手で把持されていた.この結果になったのは,調査参加者の回答を基にすると,静止条件ではタブレット端末が使われるのが多かった一方で,移動条件ではスマートフォンが使われるのが多かったためと考えられる. 表2-10 タッチスクリーン端末の使用手 表2-11 タッチスクリーン端末の固定方法 図2-8 タッチスクリーン端末で使われるアプリケーション  図2-8にタッチスクリーン端末で使われるアプリケーションを示す.通話,メール機能,音楽再生機能,ウェブブラウザが主に使われていた.静止条件および移動条件で,使われるアプリケーションに違いは見られなかった.ただし,ナビゲーションアプリケーションは,移動条件でより使われる傾向があった.三浦によると,弱視者の場合はバリアフリー情報を事前に得ておきたいと答える傾向があった.このことより,全盲者が主にナビゲーションアプリケーションを使っていた可能性が示唆されるが,これらアプリケーションの音声対応状況が不明であるため,弱視者の使用も考えられ,更なる検討が必要である[9].  図2-9に示したタッチスクリーン端末におけるアクセシビリティ機能によると,約半数が視覚を頼りにタッチスクリーン端末を使用していると分かる.この結果は,主たる使用者が残存視力を持った者であるためと考えられる.スクリーンリーダも彼らにより使用されていたが,この結果は前述の理由に矛盾するものではなく,驚くべき結果でもない.例えば,弱視者の約75%が携帯端末で(表2-3),約84%がパソコンでスクリーンリーダを使っている(図2-3)ためである. 図2-9 タッチスクリーン端末で使われるアクセシビリティ機能  図2-10にタッチスクリーン端末における文字入力方法を示す.大半がスクリーンキーボード(ソフトウェアキーボード)を用いて入力していた.静止条件下でのみ,一部の調査協力者がハードウェアキーボードを使用していた.しかし,移動条件ではそういった者は見られなかった.本アンケート調査では,音声入力を用いていた者はいなかった.しかし,iOSでの文字入力機能やAndroidの検索機能において,音声入力の精度は日進月歩で向上していることから,今後は使用者が増加するものと見込まれる. 図2-10 タッチスクリーン端末における入力方法  図2-11に示した触覚フィードバックに対する必要性によると,約50%が触覚フィードバックを必要だと答えていた.彼らに望ましいフィードバック方法を尋ねたところ,ディスプレイの枠やディスプレイの中心位置の提示,アイコンやボタンなどのターゲット位置の提示が挙げられた.この他,現状では実現していない技術として,ディスプレイ上に貼り付け・取り外し可能なハードウェアボタンなども挙げられていた.タッチスクリーン端末の使用法を視覚障害者に教示する上では,固定された触覚ガイドは有効であると考えられる.具体的には,ディスプレイの枠やディスプレイの中心位置のフィードバック方法は簡易的に取付が可能である.具体的には,ディスプレイに貼り付けられるスクリーンを加工するなどが想定される. 図2-11 触覚フィードバックの必要性  表2-12に静止時・移動時において,好まれるタッチスクリーン端末を示す.大半の調査協力者は移動時において,大きい画面で重い端末よりも,小さな画面で軽い端末を選択する傾向にあった.一方で,静止条件においては,これらの選択者が概ね同数となった.全盲者においては,どちらの条件においても,全員が小さな画面で軽い端末を選択していた.この結果より,好まれるディスプレイサイズは,視覚状況に依存して変化することが予測される.具体的には,視力が弱まるにつれて必要とするディスプレイサイズは大きくなるが,全盲といった状況になると,ディスプレイサイズは小さい方が好まれるというものである.この仮説は今後具体的に検証されるべきと考えられる. 表2-12 静止時・移動時において,好まれるタッチスクリーン端末 2.3.5 その他の意見や感想  一部の調査協力者の回答によると,本アンケート調査を通じて,タッチスクリーン端末に視覚障害者向けのアクセシビリティ機能が存在を知った者がいたと分かった.つまり,一部の視覚障害者は,タッチスクリーン端末は使えないという先入観を持っていたが,それは払拭できると言える.少なくとも,簡単な機能説明やアクセシビリティ機能の存在を知らせるだけでも,視覚障害者におけるタッチスクリーン端末を使おうとする動機を高めるには有効と示唆される. 2.4 本章のまとめ  タッチスクリーン端末における使用状況およびニーズを明らかにするために,視覚障害者においてアンケート調査を実施した.結果は以下のように要約できる.   1)【所持率】調査協力者における各機器の保有者数 (保有率)は,携帯電話またはPHS:127人(90.7%),パソコン:132人(94.2%),スマートフォンまたはタブレット端末:18人(12.9%)であった.また,概して弱視者の方が全盲者よりも,スマートフォンおよびタブレット端末を持つ率が高かった.スマートフォンまたはタブレット端末の非所持者のうち,使用したことがない:96人(78.6%)で,使用したことがあるが持っていない:19人(15.6%)であった. 2)【持たざる理由】一部の調査協力者は,従来の携帯機器に十分に満足していた.また,タッチスクリーン端末に対して,特に全盲者は入力に対するフィードバックを求めており,ハードウェアキーボードなどの使用を希望するものが多かった. 3)【アクセシビリティ機能】約半数ものタッチスクリーン端末の使用者は,障害状況によらずスクリーンリーダ機能を使用していた.なお,全盲者については,全員がスクリーンリーダを使っていた 4)【触覚フィードバック】約半数ものタッチスクリーン端末の使用者は,触覚フィードバックを必要と答えていた.彼らの意見によると,枠の位置をガイドするような位置固定のフィードバック機能も有効であると示唆された.例えば,ディスプレイの枠やディスプレイの中心位置が挙げられる. 5)【好まれるタッチスクリーン端末】大半の調査協力者は移動条件においては,大きい画面で重い端末よりも,小さな画面で軽い端末を選択する傾向にあった.全盲者においては,静止および移動条件において,全員が小さな画面で軽い端末を選択していた.この結果より,視力が弱まるにつれて必要とするディスプレイサイズは大きくなるが,全盲といった状況になると,ディスプレイサイズは小さい方が好まれるという仮説が導かれた. 6)【情報供給の必要性】アクセシビリティ機能の存在といった簡易的な説明でさえ,視覚障害者におけるタッチスクリーン端末を使おうとする動機を高めるには有効と示唆される. 参考文献 [1]"スマートフォンの国内普及率は18.0%,1年でほぼ倍増|ニュースリリース-日経BPコンサルティング," http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/news/2012/0726sp/ (date last viewed: 2012/12/03) [2]"Smartphone ownership on the rise in asia pacific, whilst advertisers struggle to enga ge with consumers via mobile ads: nielsen," http://jp.en.nielsen.com/site/documents/SPImr-jun12_FINAL.pdf (date last viewed:2012/12/03) [3]"スマートフォン利用率は個人が39.9%,企業が41.7%とほぼ倍増 個人のスマートフォンユーザーのFacebook利用率は38.7%9年目の実績,個人3262人企業担当者1795人『スマートフォン/ケータイ利用動向調査2013』11月22日(木)発売," http://www.impressrd.jp/news/121120/kwp2013/ (date last viewed:2012/12/03) [4]"VoiceOver - apple," http://www.apple.com/accessibility/voiceover/ (date last viewed:2012/12/03) [5]"TalkBack," https://play.google.com/store/apps/details?id=com.google.android.marvin.talkback (date last viewed:2012/12/03) [6]"ドキュメントトーカ日本語音声合成エンジン for Android," http://www.createsystem.co.jp/dtalkerAndroidSDK.html (date last viewed:2012/12/03) [7]Miyagi, K. Minatani, ”User Survey of Screen Readers, the Internet, and Mobile Phones 2007,”The National Institute of Special Education, 2007. Web:http://vips.eng.niigata-u.ac.jp/PCUserSurvey/Survey2007/Survey2007En.html (date last viewed:2012/12/03) [8]Census of disabled people in 2006 (this translated title was prepared by the authors). http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/index.html (date last viewed:2012/12/03). 第3章 視覚障害者向け講習会の実施 3.1 背景と目的  視覚障害者向け(主に弱視者向け)iPad機器の講習会が国内でも開かれるようになってきた[1,2].この際,情報機器としてだけでなく,拡大読書機の代替としての使用法が教授される場合が多く, MiYAKEスタンドなどの専用スタンドも発表されている[3].しかしながら,全盲者向けの講習会/意見交換会は,ほとんど行われていない.このため,多くの全盲ユーザにおいて,タッチスクリーン端末に興味を持ちつつも手を出せないケース,実際に購入しても上手に使えないケースが散見されている.一方で,この使用方法が解らず挫折している者も少なくない.この原因は,視覚障害者向けの資料や習得機会の不足にある.我々は2011年12月~2012年1月にかけて,視覚障害者におけるタッチスクリーン端末の使用状況について調査した[4,5].このアンケートの回答者は9割以上が,携帯電話,パソコンの使用を日常的に使用しており,情報機器に対するリテラシーが高い集団であったが,アンケートを通じてアクセシビリティ機能の存在を知ったものもいた.また,タッチスクリーン端末に興味を持つ視覚障害者が多くおり,視覚障害者向け講習会の開催への要望もあった.  そこで,本研究の目的を特に全盲者に向けたタブレット端末の講習会を行うことで,彼らの習熟を高めることと設定する.まず,アクセシビリティ機能を中心とした講習会を行った上で,参加者から結果についてアンケートを行った.この結果から,今後の課題などを明確化した. 3.1.1 簡易マニュアルの作成  簡易マニュアルの概要は以下の通りである.   1.iOS機器の外観説明   2.VoiceOverの設定方法 (晴眼者への頼み方)   3.iOS機器の起動・終了方法   4.iOSの初期画面   5.VoiceOverを使いこなす上で必要なジェスチャ   6.iOS機器でのジェスチャ練習   7.時計アプリの起動・設定方法   8.ブラウザ(safari)の使用方法   9.アプリケーションの追加方法(App Storeの使用方法)  このテキストは,特に全盲者が単独でiOS機器を使う際に,苦労すると想定される箇所について細かく記述した.例えば,iOS機器の場合はVoiceOver起動をスタートアップ時にさせた場合でも,電源投入時には音が鳴らない.また,電源ボタンを長押しする時間によっては,一旦起動したとしても再度電源が落ちるようになっている.このため,電源が入るまでの長押し時間(2.5秒程度),電源が落ちるまでの長押し時間6秒程度)を書いておき,約4~5秒程度押しっぱなしにすることによる起動を推奨するように記述した.この他,アクセシビリティの設定方法について解説した.全盲者の場合,初期出荷状態においては,自分自身でアクセシビリティ機能の起動設定をするのは困難である.このため,周囲の晴眼者にアクセシビリティ機能の設定をonにさせる方法を教授できるようにした. 3.1.2 支援者の養成 講習会の日時・会場  2012年7月1日の午後の約3時間,SPAN☆三田スカイプラザ(住所:東京都港区芝5-29-22 フェリス三田1103)の一室にて行われた.  参加者は,受講者(男性:3名,女性:3名)と支援者(1名),講師(1名)で,長テーブルの両側に各3名ずつの受講者を配置した.  iOS機器(iPod touchおよびiPad)が1台ずつ配布されるようにした.これらの機器のOSはiOS 5.1であった.  本講習会での講習事項は以下の通りである.   ・端末についての解説と電源のon/off.   ・アクセシビリティ機能の設定方法.   ・スクリーンリーダ(VoiceOver)使用時のジェスチャ練習.   ・全盲者向けの講習会での注意事項   ・ジェスチャ操作の伝達方法  テキストは,墨字で印刷されたテキストを配布した. 3.1.3 アンケートの作成 講習会後のアンケートの概要  本アンケートは,受講者向け,支援者向けで異なる内容である.受講者向けのものの概要は以下の通りである. 1.個人特性:年齢,性別,障害状況,タッチスクリーン機器の所持状況 2.講習会について:使用機器,使用ジェスチャなどの理解・操作性 3.その他:想定される使用状況,意見・感想 支援者向けのものの概要は以下の通りである. 1.個人特性:年齢,性別,障害状況 2.講習会について:受講者の理解状況 3.その他:意見・感想  アンケートは墨字のものが配布された.全盲者に関しては,晴眼の支援者が各項目について口頭で伝え,答えを代理で記入する形を採った. 3.2 講習会の実施 講習会の概要 講習会の日時・会場  2012年8月11日の午後の約3時間,日本盲人職能開発センター(住所:東京都新宿区本塩町10-3)の一室にて行われた. 参加者 本講習会の参加者は,受講者(12名)と支援者 (8名),講師(1名)とに分けられる.受講者は,12名の視覚障害者(男性:9名,女性:3名)である.障害状況は,1種1級:8名,1種2級:3名,等級不明:1名であり,報告された障害状況は,全盲が10名,弱視が2名であった.年齢範囲は,30代:3名,40代:2名,50代:1名,60代以上:6名であった.彼らの多くは都内に住む者であったが,2名は西日本に住む者であった.  支援者は,8名(男性:4名,女性:4名,全員が晴眼者)であった.支援者は,全員ともiOS機器のアクセシビリティ機能について事前に学習している者である.このうち5名は,7月1日に実施した支援者養成講座を受けて,アクセシビリティについてひと通り学習し直した者である.なお,支援者のサポート要員として,全盲者5名(情報系の学生)を置いた.彼らは,iOS機器を日頃から使用している者である.講師は,全盲であった.講習会の様子を図3-1に示す. 講習会の流れ  本講習会を行う前に,事前に予備的な視覚障害者向け講習会を6月および7月に行った.この際,iOS機器の紹介を主とし,本講習会を行う上での必要事項を具体化した.  得られた事項は,以下の通りである.   ・支援者を配置して統率をとって講習会を進行すること.   ・ジェスチャ操作は口頭だけでなく,受講者の掌を支援者がなぞって説明すること.  次に,本講習会について説明する.利用する机は長机とし,この両端に受講者を座らせた.次に,二者の間に支援者を配置した.支援者2名につき,iOS機器(iPod touchおよびiPad) が少なくとも1台ずつ配布されるようにした.これらの機器のOSはiOS 5.1であった.また,より支援が必要な場合を考慮し,周囲を見まわる支援者を2名置いた.本講習会での講習事項は以下の通りである.   ・端末についての解説と電源のon/off.   ・アクセシビリティ機能の設定方法.   ・スクリーンリーダ(VoiceOver)使用時のジェスチャ練習.   ・その他,各参加者が興味を持つアプリケーション(ブラウザなど)の使い方.  これらの解説内容を簡易マニュアルとして作成した(巻末付録B 簡易マニュアルを参照のこと).簡易マニュアルを事前にテキスト化しておき,視覚障害者にはテキストファイルまたは点字版のテキスト,晴眼者には墨字版のテキストとして配布した.  講習会が終了した後,受講者および支援者にアンケートを回答させた. 図3-1 講習会の様子 3.3 結果と考察 講師のコメント  講師のコメントは,以下の3点である. ・受講者の定員について SPANのWEB.に講習会開催の募集をしたが,講習会参加希望者が多く,高知・京都・岐阜等地方から参加希望があり,定員を7名から14名に変更した.晴眼者1名に受講者2名となり,十分なサポートができなかった.当初の計画通り1対1のサポートが望ましい. ・操作について 事前に簡易マニュアルを配布しておいたが,ジェスチャ操作は慣れが必要で,しかもカタカナ語の専門用語のため,理解には実際操作して体得する必要を感じた. ・操作画面説明 表示される画面を言葉で説明するのは難しい.触覚的にわかる立体コピーを事前に用意したほうが,受講者によりわかりやすい説明ができたのではないか. 受講者向けアンケート  受講者向けアンケートの結果は次のようになる.  タッチスクリーン機器の所持者は2名であり,iPhone:1名,iPod touch:1名であった. ただ,所有していない者の全員(10名)が使ってみたいと回答した(ぜひ使ってみたい:5名,使ってみたい:5名). 講習会の内容については,8名の受講者が理解できたと答えた(非常によく理解できた:4名,理解できた:4名).一方で,他の受講者は「あまり理解できなかった」を選択した.この選択をした者は,全員が全盲者であった.この原因として,2名の受講者につき,1名の支援者の割り当てたため,時に支援が偏ってしまったことが考えられる.  使いやすい画面サイズについて比較させたところ,10名が小さい画面のものを選択した.この理由としては,小さい方がアイコンを探しやすいこと,軽いために持ちやすいことが挙げられていた.大きい画面を選択した2名においては,大きいほうがアイコンを探しやすいことが挙げられていた.実際にアイコンが探せたかどうかを確認した所,大きい画面のもの(iPad)の場合,快適に操作できたと答えたものが2名で,それ以外の者(10名)はあまり/とても快適には操作できないと回答した.一方で,小さい画面のもの(iPod touch)の場合,とても快適に操作できたと答えた者が2名,快適に操作できたと答えたものが2名いた.このような意見の食い違いは,視覚情報を利用するか否かの違いと考えられる.全盲者の場合は,視覚情報が使えないために大きい画面を必要とせず,操作領域が小さい方が操作に手間取らない.一方で,弱視者の場合は視覚情報に頼るために,より大きな画面を必要とする.この結果は,我々が過去に行ったアンケートでの考察と一致する[7].ただし目的となるオブジェクトの起動ジェスチャ(ダブルタップ,スプリットタップ)についての操作性や理解については,画面サイズごとでの差は特になかった.  ジェスチャの説明方法については,ほぼ全員(11名)の受講生が,口頭での説明よりも掌になぞっての説明の方が理解しやすいと答えた.視覚障害者(特に全盲者)の場合は,触覚を通じて伝えることが重要であると確認できた.  アイコンなどの探索方法は,画面をなぞって探す方法の方が,左右フリックで一つ一つのアイコンを読ませる方法よりも好まれる傾向があった.ただし,支援を実際に行った全盲者や,講習会を行った者のように熟練した者では,左右フリックを使っていることが多く見受けられる.このため,初心者と熟練者とでは,好まれる使用方法が異なることが考えられる.  画面サイズごとに想定使用状況を確認した所,大きいサイズのもの(iPad)は,全員が静止時(自宅や職場など)での使用を好んだ.一方で,小さいサイズのもの(iPod touch)に関しては,移動時での利用が好まれた(9名が選択).この結果も,我々が過去に行ったアンケートでの考察と一致する[7].  その他の感想・意見に関しては,多くの受講者が機器を体験できたこと自体を評価していた.一方で,VoiceOverでの使用の場合は,イヤホンなどを利用して,一つの端末の音に集中できる方が良いとの意見が多かった.今後,講習会を行う上では,機器に分岐ケーブルを通してイヤホンを2つ付け,受講者と支援者とが音を聞けるようにするのが良いと考えられる. 支援者向けアンケート  受講者に講習内容が理解されたどうかに関して,1名:非常によく伝わった,3名:よく伝わった,4名:あまり良く伝わらなかった,を選択した.特に,ジェスチャ操作について確認したところ,横文字だけでは難しいため,より詳しい説明が必要との意見があった.なお,掌にジェスチャ操作をして教える方法は,多くの支援者で良い方法であるとの意見の方が多かった.その他の感想・意見を見ると,操作可能領域が伝えにくく誤動作が多かった,との回答が2件あった.過去に我々が行ったアンケート調査では,タッチスクリーン端末に触覚フィードバックがあればより使いやすいとの回答があった.彼らは固定的に配置された目印でも十分と述べていた.本講習会ではそういった目印となるものは使わなかったが,今後の講習会では利用していく必要があると考えられる. 3.4 本章のまとめ 今後の全盲者向け講習会のための改善指針  以上のアンケート集計結果を踏まえ,本講習会の運営指針は,以下のようにまとめられる.   受講者1名に対して,なるべく支援者が1名は付けられるようにすること.   ジェスチャは掌をなぞって伝達すること.   スクリーンリーダの音声に集中しにくくなるのを防ぐため,イヤホンを導入すること.   操作可能領域を具体化するために,スクリーンの枠部分などを触って分かるようにすること.   画面の説明の際,マニュアルのほかに補助として立体コピーを用いて画面に表示されるオブジェクトを触れるようにすること. 参考文献 [1] GiftHandsについて-事業案内, http://www.gifthands.jp/about/business/ (last viewed:2012/10/17) [2] iPad2を視覚障害教育で教材・教具として活用する方法, http://home.hiroshima-u.ac.jp/ujima/src/research08.html (last viewed:2012/10/17) [3] 携帯型タブレット台であるMiYAKEスタンド発売開始, http://www.gifthands.jp/news/miyakestand.html (last viewed:2012/10/17) [4] 松坂 治男,三浦 貴大,坂尻 正次,小野 束, ”視覚障害者におけるスマートフォンの利用状況とニーズに関するアンケート調査,” 第21回ライフサポート学会フロンティア講演会, 2012.3, 早稲田大学. [5] T.Miura, H.Matsuzaka, M.Sakajiri, T.Ono, ”Usages and de- mands to touchscreen interface: a questionnaire survey in Japanese visually impaired people,” IEEE Int. Conf. Syst. Man Cybern. 2012, pp:2927-2932, 2012. 10, Seoul, Korea. 第4章 ユーザインタフェースの提案 4.1 背景と問題点  スマートフォンやタブレット端末のようなタッチスクリーン端末が,世界的に急速に普及している.これらの端末は,直感的な操作性と高いカスタマイズ性とを特徴とする.パソコンと同様に,ユーザは数多くのアプリケーションの中から自分好みのものを選択可能である.現状では,AppleによるiOS,GoogleによるAndroidがこれら端末の大半を占める.これらのOSは視覚に障害を持つ者の使用を想定したアクセシビリティ機能が搭載されている.iOSのVoiceOver[1]やAndroidのTalkBack[2]といった画面音声読み上げ機能の他,画面拡大機能が挙げられる.これらのアクセシビリティ機能は,バージョンアップされるごとに性能が向上している.iOSはバージョン5より ,上肢に障害がある者を支援する機能としてAssistiveTouchが追加され,バージョン6ではVoiceOverでの漢字の詳細読みが可能になった.Androidにおいても,ドキュメントトーカ(クリエートシステム開発)[3]やN2TTS(KDDI研究所)[4]のような日本語音声読み上げ機能をインストールすることで,日本語の読み上げが可能である.  このようなアクセシビリティ強化にも関わらず,視覚障害者におけるタッチスクリーン端末の使用には様々な問題が残っている.これらの端末の場合,パソコンのハードウェアキーボードの操作とは異なり,フラットな画面の操作に慣れることが必要である.このため,初心者の場合は入力ミスが多発し,操作を覚えるには時間と労力が必要である.ただ,晴眼者の場合は熟達者も多く,学習資料も数多くあるために自学自習しやすい.しかし,視覚障害者の場合,これら資料が不足しているために操作方法の習得はより困難である. これは,音声読み上げ機能を使用した際の操作に関して,資料が少ないことに起因する. 音声読み上げ機能を利用する場合,晴眼者が用いるようなジェスチャとは異なる操作が要求されるためである.この他,アプリケーションによってはアクセシビリティ対応が不十分であることもある.音声読み上げ対応をしていないことの他,ボタンやアイコンが押しやすく設計されていないといった問題もある.  しかし,視覚障害者が利用しやすいタッチスクリーン端末のためのアプリケーション設計指針は具体化されていない.また,彼らが現状でどのような操作をしているのかも詳しくは分かっていない. 4.2 目的・部分課題の設定  本研究では,視覚障害者にとって利用しやすいタッチスクリーン端末の設計指針を具体化することを最終目的とする.このために ,タッチスクリーン端末における視覚障害者の利用状況および操作状況について明らかにすることを目指す.具体的な手法としては,大まかな利用状況・操作方法について具体化するためにアンケート調査を実施した.次に,様々なボタンサイズや操作方法における ,操作のしやすさについて実験的に調査することとした. 4.3 調査及び実験方法 4.3.1 アンケート調査  本アンケートでは,視覚障害者におけるスマートフォンやタブレット端末の利用状況について調査するために具体的な質問項目を作成し,全盲や弱視の方に協力してもらうことにした.以下に,具体的な状況を示す. 4.3.2 アンケート協力者  視覚障害(全盲や弱視)の者を対象とし,弱視33名,全盲者28名合計51名から回答を得た.性別や年齢・タッチスクリーン端末の使用経験は問わないが,なるべく多くのタッチスクリーン端末の利用者から回答を集められるようにした.   4.3.3 アンケート項目  アンケートは,5つの大問から構成されており,それぞれの大問には複数の小問が付属している.それぞれの大問の概要を,以下に示す.なお,詳細なアンケート内容は付録Bに示した.また,本アンケートの作成にあたっては,文献[5],[6]および[7]を参考にした.  1.個人特性:年齢・性別・障害状況・日常生活訓練の受講状況などに関する質問.  2.情報機器の利用状況:パソコン,携帯電話,スマートフォン,インターネットについて,それぞれの利用状況,利用端末・OS,利用機能・サービス,利用しているアクセシビリティ機能などの質問  3.タッチスクリーン端末の利用状況:これら端末の使い方,利用場所,利用アクセシビリティ機能などに関する質問.  4.タッチスクリーン端末における具体的な操作:特定の操作の際に利用するジェスチャや,アクセシビリティ機能などに関する質問.  5.その他の意見等 4.3.4 アンケート方法  アンケートは,電子メールにより配布した.配布先は機縁法に基づく.回答は,電子メールに添付した回答用テキストファイルに記入し,返送させた.  調査期間は,2012年12月から2013年2月である. 4.3.5 結果と考察  本調査の参加者におけるタッチスクリーン機器の所持率は47.1%であった.また,使用経験が無い者で,これら機器をぜひ使ってみたい・使ってみたいと答えた者は60.9%であった.Miuraら[6]が行ったアンケート結果(所持率:12.9%)と比較すると,タッチスクリーン機器への関心が高まっていることがわかる.また,これら端末を利用する状況については,自宅での利用が95.8%と最も多く,次に喫茶店や駅の無線LANスポットが62.5%であった.松坂らの結果と比べ,外出時の使用率の上昇が確認できた.  利用されるアクセシビリティは,音声読み上げ機能が75.0%と最も多かった.なお,ハードウェアキーボードの使用率は29.2%であった.自由記述より,ソフトウェアキーボードでの入力しにくさを感じている人が多いと推察された.  使用ジェスチャについて確認すると,ボタン/アイコンを選択して押す操作では,画面をなぞった上でダブルタップをする者が61%,左右フリックの後ダブルタップで入力するものが28%,画面をなぞった上でスプリットタップをする者が17%であった.編集モードに切り替える操作や文字入力においても,利用者が多い方からダブルタップ,フリック,スプリットタップの順であった.なお,全盲および弱視者で比較すると,双方ともに画面をなぞってダブルタップする者が多かったが,特に全盲者でフリックの利用者が多いと分かった.画面をなぞる場合は,残存視力を元に画面上のオブジェクト位置が把握出来る一方で,全盲の場合はオブジェクトの順序を元に操作をしていることが原因と考えられる.ページ送りの方法については,三本指スワイプが最も多く(83%),それ以外の者(17%)は一 本指でのフリックを多用していた.こちらは全盲・弱視での違いは無かった. スマートフォン・タブレット端末の音声読み上げ機能に対する評価については,概ね満足している・かなり満足していると答えた者は44パーセント,どちらともいえないは33パーセント,あまり満足していない・全く満足していないと答えた者は22パーセントであった.  それに対し,音声読み上げ機能を使う際に感じることとして,音声ガイドしないアプリケーションもあると答えた者は最も多い94パーセントであった.また,動作・反応が遅いと感じるものは67パーセント,ボタン・アイコンを読まなかったりすると答えた方は72パ ーセント,英文などが聞き取りづらいは50パーセントであった.  これは画面読み上げ機能等の性能が向上し,アクセシビリティ機能が強化されたにも関わらず,アプリケーションによってはアクセシビリティ対応が不十分であるために多くのユーザが不便さを感じていると推察できる. 4.4 タッチスクリーン端末における押しやすいボタンサイズに関する調査  本調査では,音声読み上げ機能を使用している状況下において,視覚障害者にとって押しやすいボタンのサイズや配置場所を調べることとした . 4.4.1 実験協力者  視覚に障害のある若年層5名,高齢層5名の合計10名である.若年層は全員が全盲で19〜30歳程度であった.高齢層は3名が全盲で2名が弱視であり,全員が60歳以上であった. 4.4.2 実験アプリの概要  本アプリケーションの概要を図3-1に示す.開発環境はXcode 4.5であり,iOSに搭載できるよう開発されたものである.また,本アプリケーションの開発にあたっては,Kobayashi et al.が行った高齢者のジェスチャ調査[8]の際に用いたものを改良した.  横幅320px,縦幅480pxのタッチスクリーン端末の画面上に,ランダムに一つボタンが配置され,このボタンが押されるとまた別な場所にボタンが配置されるというものである.ボタンサイズは9種類でこれらがランダム提示される.形状は3種類(正方形,横長および縦長の長方形)であり,各3種類ずつサイズがある(合計9種類,図3-1中央部を参照)(図3-1右部を参照).  これらのボタンは,ダブルタップ,スプリットタップ,もしくはフリックで選択後にダブルタップするという3種類の入力により押下することが可能である(図3-1右部を参照).  入力された結果は,全てtsv形式で保存される.記録される内容は,押された時間(ボタン押し時間の計測のため),指が触れた位置や本数,タッチイベントやボタンが正しく押下されたかどうかなどである. 図3-1 実験アプリケーションの概要 4.4.3 実験方法と分析方法  実験は,実験協力者をテーブルに座らせて行わせる.この際,タッチスクリーン端末はテーブルに置かせ,片手で把持,もう一方の手で操作するよう教示する.用いる機材はiPod Touch 4Gとした.次に,アプリケーションを起動し,3種の入力方法のうち1種類でボタン押し試行をさせる.一定の試行回数のあとに休憩を挟んで,他の入力方法でも同一試行を行わせる.ボタンの押下回数は,一つのボタン種および入力方法につき10回ずつとする.このため,合計回数は270回(=3(ボタン形状)×3(ボタンサイズ)×3(入力方法)×10(回数))とする. 4.4.4 結果の要約  ここでは,正方形ボタンの探索時間について述べる.図3-2に,高齢層および若年層におけるジェスチャごとのボタン探索時間の結果を示す.なお,統計的検定には,t検定を用い,Bonferroniの補正を適用した.高齢層と若年層を比較すると,ダブルタップに限り ,若年層が有意に早かった.ジェスチャ間で比較すると,フリックがダブルタップ・スプリットタップより有意に早い一方で,この二つのタップ操作には有意差はなかった. 図3-2 高齢層と若年層におけるジェスチャごとのボタン探索時間 図3-3 高齢層と若年層におけるボタンサイズごとのボタン探索時間.各グラフは,左:ダブルタップ,中央:スプリットタップ,右:フリックの場合の結果を示している. 図3-4 高齢層と若年層におけるボタン提示場所ごとのボタン探索時間.各グラフは,左:ダブルタップ,中央:スプリットタップ,右:フリックの場合の結果を示している. ボタンごとの探索時間を図3-3に示す.ここでも,統計的検定にはt検定を用い,Bonferroniの補正を適用した.ダブルタップ・スプリットタップ共にボタンサイズが大きくなると,探索時間が減少する傾向にあった.特に,ダブルタップ・スプリットタップの際に,8mmのボタンでは20〜30秒程度かかっていた一方で,12mmのボタンでは10〜20秒程度に減少した.ただし,16mmのボタンでは概ね10〜15秒程度であった.フリックの場合はボタンサイズの影響はなかった. ボタンの提示場所ごとの探索時間を図3-4に示す.ダブルタップ・スプリットタップの場合,左上・中央部での探索時間が短い一方で,特に右上側で探索時間が長くなった.これは右利きが多かったのが原因と思われる.  この他,観察およびインタビュー結果より,画面のなぞり方によって押しやすいボタンの形状が異なることが分かった.多くの実験協力者は横なぞりを行なっており,縦長のものの探索時間が短い傾向にあった.なお,ジェスチャごとの試行しやすさを聞くと,フリック>ダブルタップ>スプリットタップの順であった.なお,本実験結果では,フリックの探索時間が最短であったが,これは単一ボタンの条件を検討したことが一因と言える.複数のボタンが画面上にある場合は,別途検討が必要と言える. 以上の結果から,視覚障害者向けインタフェースのガイドラインは,以下のように要約できる. 右側にあまりボタンを配置しない(スプリットタップしにくいため) 操作時間の短縮のため,ボタンサイズは可能な限り大きくする.   例えば,若年者が約10秒で75px(12mm)程度のボタンを発見可能である. 4.5 本章のまとめ  本研究では,タッチスクリーン端末における視覚障害者の利用状況および操作状況を明らかにするために,この端末に関するアンケート調査と,押しやすいボタンサイズに関する調査を行った. アンケート調査の結果は,以下のように要約できる. 本結果と,松坂らの実施したアンケート結果[6,7]とを比較して,視覚障害者におけるタッチスクリーン機器の所持率が増加していることがわかった.音声読み上げ機能や,画面拡大機能の性能の向上が一因と考えられる. また,これら端末を利用する状況については,自宅での利用が最も多く,次に喫茶店や駅の無線LANスポットを使っての利用が多かった.松坂らの結果[6,7]と比べ,外出時の使用率の上昇が確認できた. ジェスチャごとの使用率を見ると,多くの操作方法で,画面をなぞった上でダブルタップ,フリック後にダブルタップ,画面をなぞった上でスプリットタップの順になった.なお,全盲および弱視者で比較すると,双方ともに画面をなぞってダブルタップする者が多かったが,特に全盲者でフリックの利用者が多いと分かった. また,タッチスクリーン端末における押しやすいボタンに関する検討の結果は,以下のように要約できる.本稿では,正方形ボタンの場合について述べる. 高齢層と若年層を比較すると,ダブルタップに限り,若年層がボタンの探索時間は有意に早かった. ジェスチャ間でボタンの探索時間を比較すると,フリックがダブルタップ・スプリットタップより有意に早い一方で,この二つのタップ操作には有意差はなかった.この傾向は,若年者・高齢者ともに同様であった. ダブルタップ・スプリットタップ共にボタンサイズが大きくなると,ボタンの探索時間が減少する傾向にあった.特に,ダブルタップ・スプリットタップの際に,8mmのボタンでは20〜30秒程度かかっていた一方で,12mmのボタンでは10〜20秒程度に減少した.ただし,16mmのボタンでは概ね10〜15秒程度であった.フリックの場合はボタンサイズの影響はなかった. ボタンの提示場所ごとの探索時間について,ダブルタップ・スプリットタップの場合,左上・中央部での探索時間が短い一方で,特に右上側で探索時間が長くなった.これは右利きが多かったのが原因と思われる. 視覚障害者向けインタフェースのガイドラインを導いた.具体的内容は以下である.   右側にあまりボタンを配置しない   操作時間の短縮のため,ボタンサイズは可能な限り大きくする.  本調査で得られた知見が,今後のスマートフォンやタブレット端末の視覚障害者向けアクセシビリティの改善に活用されることを願っている. 第5章 まとめ 5.1 本論文のまとめ  本研究において,まず初めに視覚障害者の情報機器の使用状況とニーズに関するアンケート調査を実施し,スマートフォン・タブレット端末の現状を明らかにした.次に,全盲者の体験型講習会を実施し,視覚障害者向けタッチスクリーン端末の講習会ための運営指針を得ることができた.さらに,視覚障害者に利用しやすいユーザインタフェースについて評価実験を行い,押しやすいボタンサイズや配置位置についての視覚障害者向けインタフェースのガイドラインを得ることができた. それぞれをまとめると次のようになる. (1)視覚障害者の情報機器の使用状況とニーズに関するアンケート調査  スマートフォンまたはタブレット端末の所有者が1割強であったが,これにより視覚障害者にもタッチスクリーン端末が普及しつつあるということが確認された.タッチスクリーン端末使用したことがないという回答は7割程度であったが,その半数は使ってみたいと回答した.全回答者の内3割強が使ってみたいと回答していることになるので,視覚障害者のタッチスクリーン端末利用に関する潜在的ニーズは低くないことが確認された.この結果は、本研究の第2の目的である視覚障害者向けタッチスクリーン端末の講習会の必要性を支持する結果となっているとも言える.  約半数ものタッチスクリーン端末の使用者は,触覚フィードバックを必要と答えていた.彼らの意見によると,枠の位置をガイドするような位置固定のフィードバック機能も有効であると示唆された.例えば,ディスプレイの枠やディスプレイの中心位置の触覚提示が挙げられる.  大半の調査協力者は移動条件においては,大きい画面で重い端末よりも,小さな画面で軽い端末を選択する傾向にあった.全盲者においては,静止および移動条件において,全員が小さな画面で軽い端末を選択していた.この結果より,視力が低下するに従い必要とするディスプレイサイズは大きくなるが,スクリーンリーダのみでの使用となる全盲者の場合,ディスプレイサイズは小さい方が好まれるということがわかった.全盲者から購入に関する相談を受けたときには,このことを説明し,まずはディスプレイサイズの小さい端末を勧めることとなる.  本アンケート調査の結果,視覚障害者のタッチスクリーン端末の使用状況とニーズについて,タッチスクリーン端末の教育・訓練,関連する相談等に役立つ基礎データを得ることができた. (2)全盲者向け体験型講習会の実施  スクリーンリーダを用いる全盲者向けの操作マニュアルがなかったので,それを作成した上で体験型講座を実施した.その結果,大半の受講者が講習会の内容を理解できた.特に,ジェスチャ操作を手のひらに提示する方法は,支援者および参加者に好評であった.大きな画面/小さな画面の端末を使わせたが,全盲者/弱視者は操作領域が小さい/大きい方が良いとあった.ボタンの探索方法は 画面をなぞって探す方法が好まれた.ただし,熟練者の場合は左右フリックを使っていることが多く,初心者と熟練者とで好まれる使用方法が異なるといえる.一方で,スクリーンリーダの音の混信や,マンツーマンで無いために講習内容が行き渡らないケースがあった.このため,使用端末の音に集中しやすい状況を作ることが必要といえる.  以上の結果から,講習会を進める上での体制や方法等の「全盲者向け講習会のための運営指針」を得ることができた.運営指針は次のようになる.  受講者1名に対して,なるべく支援者が1名は付けられるようにすること.  ジェスチャは掌をなぞって伝達すること.  スクリーンリーダの音声に集中しにくくなるのを防ぐため,イヤホンを導入すること.  操作可能領域を具体化するために,スクリーンの枠部分などを触って分かるようにすること.  画面の説明の際,マニュアルのほかに補助として立体コピーを用いて画面に表示されるオブジェクトを触れるようにすること.  今後は、上記指針をもとにパソボラの現場で全盲者向け講習会を実施していきたい. (3)押しやすいボタンサイズや配置位置についての視覚障害者向けインタフェース  ダブルタップ入力もしくはスプリットタップ入力では,ボタンサイズは大きいほど,発見時間が短くなった.ボタン形状が正方形の場合,サイズが約4.7mmでは特に発見までに時間がかかった一方で,約8mm以上では発見時間に大きな変化はなかった.なお,画面のなぞり方によって,押しやすいボタンの形状が異なると言えた.多くの者はボタン探索の際,実験開始時はランダムでなぞったが,ある程度時間が経つと横に画面をなぞって左上から右下へと探る傾向があった.一方で,フリック入力の場合はボタンサイズごとの発見時間に差はなかった.  以上の結果から,次に示す視覚障害者向けインタフェースのガイドラインが得られた.   右側にあまりボタンを配置しない(スプリットタップしにくいため)   操作時間の短縮のため、ボタンサイズは可能な限り大きくする。   若年者であれば75px(12mm)程度のボタンを発見可能である。  視覚障害者向けのユーザインタフェースを設計する上では,上記のガイドラインに従って設計することが望ましいと言える.  以上で述べたように,本研究の結果,タッチスクリーン端末を視覚障害者に普及させるために必要な指針等を具体化することができた. 5.2 今後の展望  タッチスクリーン端末の利用は,今後ますます拡大することが予想される.特に全盲者において,使いやすいタッチスクリーン端末は,高齢者社会におけるシニア層にも使いやすいと推測できる.全盲者の体験型講習会の運営指針が確立されたので,NPO法人SPANにおける視覚障害者向けパソコンボランティアの活動に組み入れて,スマートフォン・タブレット端末の普及に努めたい.また,高齢のシニア層にこれらの活動で得られた知見をどのように活かしていくかも考えていきたい.  視覚障害者によるUIの評価を実施し,タッチスクリーン端末におけるボタンの配置やサイズ等の視覚障害者向けガイドラインに関する知見を得たが,これは電話やskypeの応答ボタン等音が鳴っている場合の操作に特に有効であるので,このガイドラインに従ってボタンが配置されるように関係方面に働きかけていきたい.複数のボタンの場合,どのような結果になるかは今後の課題である.また,スクリーンリーダ使用時のオブジェクトを「探す」動作を短時間にできるようなユーザインタフェースを考えていきたい.  本研究を遂行する上で,視覚障害者向け講習会や評価実験の被験者として協力して頂いた方の中には,実際の体験をすることにより自分に使用できると確認し,講習会あるいは実験終了後にタッチスクリーン端末を購入した方が6名いた.これは,ジェスチャ操作を実際に体験することが視覚障害者にとって非常に重要であることを示唆している.  修士課程修了後は,視覚障害者向けパソボラの現場での活動に専念する予定であるが,今後も本研究で得られた知見を有効に活用し,視覚障害者の情報端末の利用促進のための活動に邁進し,微力ではあるが視覚障害者の自立に少しでも寄与していく活動を続ける所存である. 謝辞  本修士論文は ,筆者が平成23年度から24年度までに在籍した筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻情報システム学コースの修士課程においておこなった研究をまとめたものです.本論文をまとめるまでに多くの方々のご指導・ご支援・ご協力を頂きました.  指導教員の坂尻 正次准教授には,研究に対する心構えの持ち方から本論文の完成まで,多くのご指導を頂きました.小野 束名誉教授・前副学長には,修士課程への入学から入学後の研究の実施まで多くの場面で多大なるご指導・ご助言を頂きました.東京大学大学院情報理工学系研究科の三浦 貴大特任助教には,研究を遂行する上で様々なご助言・ご支援を頂きました.主査である大西 淳児教授,副査である巽 久行教授には,論文の執筆において多くのご指導を頂きました.また,情報システム学コースの教職員の方々には様々なご指導・ご支援・ご協力を頂きました. 情報システム学科のムルタダ・エルジャイラニさん,酒谷 千春さん,その他の情報システム学科の学生の皆様には評価等に際してご協力を頂きました.  社会福祉法人日本盲人職能開発センター施設長の杉江 勝憲氏には,講習会・研究の打ち合わせの場所を快く提供して頂きました.また,同センター職員の伊吾田 伸也さん,佐藤 利昭さん,駒沢 史さん,坂田 光子さん,海田 展子さんには,アンケート収集にご協力頂きました.  日本ユニシス株式会社様には講習会開催に際して多大なるご援助を頂きました.  NPO法人視覚障害者パソコンアシストネットワークの北神 あきら氏,新井 愛一郎氏,その他の会員の皆様方には講習会の実施等でご協力を頂きました.また,末吉 和子さんには,アンケートの集計作業をして頂きました.  アンケート調査に際しては,NPO法人タートル(中途視覚障害者の復職を考える会),NPO法人視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN),社会福祉法人日本盲人職能開発センター,弱視問題研究会,NPO法人札幌チャレンジドの各団体の皆様方にご協力を頂きました.また,多くの視覚障害を持つ仲間の皆様方にアンケートに対してのご回答を頂くことができました.  このように多くの方々のご指導・ご支援・ご協力により本論文をまとめあげることができました.心より感謝申し上げます.  最後に,これまで様々な場面でお世話になった多くの方々に深く感謝申し上げるとともに,これまで支えてくれた家族,父(三郎),母(好子),妻(妙子),息子(典明)に心から感謝します. 2013年2月 松坂 治男 業績目録 A.研究業績 [1]平原 尚武,園 順一,松坂 治男,新井 愛一郎:視覚障害者を対象にした,パソコン指導方法について,電話による遠隔講座の可能性を探る;第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議(2007) [2]北神 あきら,園 順一,松坂 治男,新井 愛一郎,村山 慎二郎:視覚障害者指導者支援セミナーおよび遠隔サポートの全国展開;第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会(2009) [3]松坂 治男:iPadで,どこまで読めるか;Pin,Vol.31,視覚障害情報機器アクセスサポート協会,pp.35-39(2010) [4]松坂 治男:視覚障害者によるスマートフォンの試用;Pin,Vol.32,視覚障害情報機器アクセスサポート協会,pp.39-47(2011) [5]坂尻 正次,酒谷 千春,松坂 治男,小野 束:タッチスクリーン端末におけるキーボード入力の現状;ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会(2011) [6]松坂 治男,酒谷 千春,坂尻 正次,小野 束:タッチスクリーン端末における音声読み上げの現状;ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会(2011) [7]松坂 治男,三浦 貴大,坂尻 正次,小野 束:視覚障害者におけるスマートフォンの利用状況とニーズに関するアンケート調査;第21回ライフサポート学会フロンティア講演会,p.129(2012) [8]T. Miura, H.Matsuzaka, M.Sakajiri, T.Ono:Usages and needs of current touchscreen interfaces in Japanese visually impaired people: a questionnaire survey; 2012 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics, pp.2927-2932(2012) [9]松坂 治男,北村 直也,中岫 謙, 松尾 政輝, 坂尻 正次, 巽 久行,小野 束,三浦 貴大:iOSのバージョンアップに伴う漢字詳細読み機能の付加等;ライフサポート学会視聴覚障害者バリアフリー技術研究会研究発表会(2012) [10]松坂 治男,坂尻 正次,三浦 貴大,巽 久行,小野 束:視覚障害者へのタブレット端末の操作方法の教示~全盲者向け講習会を通じて~;HCGシンポジウム2012,pp.468-471(2012) [11]T.Miura, H.Matsuzaka , M.Sakajiri, H.Tatsumi, T.Ono:A questionnaire survey on usage of and requirements fortouchscreen interfaces among the Japanese visually impaired population; NTUT Education of Disabilities, vol.10, 2013(accepted). B.受賞 電子情報通信学会 HCGシンポジウム 2012年度 学生インタラクティブ奨励賞 松坂 治男・坂尻 正次(筑波技大)・三浦 貴大(東大)・巽 久行・小野 束(筑波技大)「視覚障害者へのタブレット端末の操作方法の教示~全盲者向け講習会を通じて~」:HCGシンポジウム2012(2012年12月12日熊本森都心プラザ,熊本市) HCGシンポジウム 受賞者リスト http://www.hcg-symposium.org/award 付録 A. アンケート質問票 スマートホン (タブレット端末)・携帯電話利用状況調査票 ■説明 このアンケートは,視覚障害者のスマートフォンやタブレット端末,携帯電話といった携帯端末の利用状況について調査するために作成しました.今後,アンケートの回答結果を基に,視覚障害者にとって使いやすいタッチスクリーン型コンピュータの提案・開発に生かす予定です.回答方法は,選択肢の中から最も当てはまるものを一つもしくは複数選ぶ方式,一部記述する方式の二種類があります.各質問の末尾に,「単一選択」,「複数選択可」,「記述部分あり」と付記がありますので,こちらもご参照下さい.選択式の質問には,最も当てはまる箇所の選択記号の前にアットマーク(@)をつけて下さい.なお,質問は全部で大問6題(小問を含めて51題)あり,各大問の中に小問がいくつか含まれています.答えられない項目,答えたくない項目に関しては,未記入で構いません.所要時間は45~60分程度を見込んでいます. ■質問項目 問1 あなたご自身の年齢・性別・障害の状況や,日常生活訓練の受講状況についてお聞きします. 問1-1 あなたの年齢は,次の範囲のいずれに属しますか.最も当てはまるものをお選び下さい.(単一選択)  ア 10歳~19歳  イ 20歳~29歳  ウ 30歳~39歳  エ 40歳~49歳  オ 50歳~59歳  カ 60歳以上   問1-2 性別をお選び下さい.(単一選択)  ア 男性  イ 女性 問1-3 現在の障害状況と,身体障害者手帳による障害等級をお書き下さい.全盲の方の場合,差し支えなければ,失明時期などもお書き下さい.なお,身体障害者手帳をお持ちでない場合は,障害等級欄には「無し」とお書き下さい.(記述部分あり)  障害状況(弱視・全盲など):  障害等級:  失明時期(全盲の方のみ): 問1-4 あなたの歩行訓練の習得状況は次のうちどれですか.最も当てはまるものをお選び下さい.(単一選択)  ア 盲学校の授業で習得した  イ リハビリテーションセンターの訓練の中で習得した  ウ 専属の歩行訓練師による訓練で習得した  エ 自己流での訓練を行った (単独での外出は出来る )  オ 特に訓練は行っていないが,単独で外出できる  カ 全く歩行訓練を受けていない (単独での外出は出来ない )  キ その他 問1-5 あなたの点字の習得状況は次のうちどれですか.最も当てはまるものをお選び下さい.(単一選択)  ア 幼少時代からずっと点字を使用している  イ 中学・高校くらいから点字を使用している  ウ 現在習得中である  エ その他(自由記述)  オ 点字を使用していない 問1-6 あなたは視覚を使って文字の読み書きができますか.(単一選択)  ア できる  イ できない 問1-7 お勤め先は下記のうち,選択肢より一つお選び頂くか,あるいは具体的にご記入下さい.(単一選択)  ア 自営  イ 民間企業  ウ 大学およびその他学校  エ 官公庁  オ 公益法人およびその他の団体職員  カ 福祉施設  キ 病院および治療院(ただし自営の人は除く)  ク 学生  ケ 仕事に就いていない  コ その他(その他の場合は具体的にご記入下さい) 問1-8 問1-7で「ケ 仕事に就いていない」以外を選ばれた方にお尋ねします.職種を下記の選択肢より一つお選び下さい.(単一選択)  ア 理療(自営,病院勤務,ヘルスキーパーを含む)  イ 教員(指導員を含む)  ウ 技術職(コンピュータ関連を含む)  エ 営業・販売職  オ 事務職  カ その他(その他の場合は具体的にご記入下さい) 問1-9 以下の情報機器のうち,利用されているものをお選び下さい.また,利用期間についてもご記入下さい.(複数選択可,記述部分あり)  ア 携帯電話またはPHS( 年 月)  イ パソコン( 年 月)  ウ スマートフォンまたはタブレット端末( 年 月) 問2 携帯電話の利用状況について,お聞きします. 問2-1 利用している携帯電話またはPHSの製品名をお答え下さい.(複数選択可,記述部分あり)  ア FOMAらくらくホン4(F883iES)  イ FOMAらくらくホンプレミアム(F884i)  ウ FOMAらくらくホン5(F884iES)  エ FOMAらくらくホンベーシック2(F-07A)  オ FOMAらくらくホン6(F-10A)  カ FOMAらくらくホン7(F-09B)  キ FOMAらくらくホンベーシック3(F-08C)  ク その他(機種名をお書き下さい) 問2-2 携帯電話またはPHSの各機能を使う頻度を下記の選択肢よりお選び下さい. 問2-2-1 通話(単一選択)  ア 毎日  イ 時々  ウ 使わない  問2-2-2 メール(単一選択)  ア 毎日  イ 時々  ウ 使わない 問2-2-3 インターネット(i-modeによる情報検索など)(単一選択)  ア 毎日  イ 時々  ウ 使わない 問2-2-4 予定表(単一選択)  ア 毎日  イ 時々  ウ 使わない 問2-2-5 時計 (アラーム,タイマー)(単一選択)  ア 毎日  イ 時々  ウ 使わない 問2-2-6 その他(その他の場合は,具体的にご記入下さい).(記述部分あり,単一選択) (       )  ア 毎日  イ 時々 問2-3 携帯電話またはPHSの利用を補助する機能のうち,ご利用のものを選び,該当する項目の前に印をつけるか,あるいは具体的にご記入下さい.ご利用の機能が複数の場合は,複数の項目に印を付けて下さい.(複数選択可)  ア 音声読み上げ.  イ 文字サイズの拡大.  ウ 色設定の変更.  エ その他(その他の場合は具体的にご記入下さい). 問2-4 携帯電話またはPHSに望む機能があれば,以下よりご選択下さい.また,よろしければ具体的な機能を各選択肢の後ろの括弧の中にお書き下さい.(複数選択可,記述部分あり)  ア 読み上げ機能や音声化の充実( )  イ GPSによる支援機能( )  ウ メール関連機能の追加( )  エ 画面表示に関する機能( )  オ 文字入力時や閲覧時の読み上げ機能の充実( )  カ ボタンの押しやすさや電池の持ち時間など,ハードウェア側の機能改善( )  キ アドレス帳,スケジュール帳,カレンダー機能など,電子手帳のような機能( )  ク パソコンソフトやGoogleなどとの連携機能( )  ケ パソコンのように自分でアプリケーションを追加できること( )  コ その他,上記で挙げた以外の機能の追加( ) 問2-5 携帯電話を利用されていない方にお聞きします.その理由は,以下のうち当てはまるものをお選び下さい.(複数選択可)  ア 固定電話やパソコンなどで機能を十分にまかなえるため  イ 利用料金の節約のため  ウ どんなことができるかの情報がないため  エ 音声のサポートがあることを知らないため  オ 携帯電話のボタン操作ができない,もしくはやりにくいと感じているため  カ その他 (ご自由にお書きください ) 問3 パソコンの利用状況についてお聞きします. 問3-1 現在利用しているパソコンのOS(基本ソフト)をお選び下さい.利用しているパソコンが複数台ある場合は,利用している時間が長い順にそのOSをすべて挙げて下さい. お分かりのかたはOSのバージョンを分かる範囲でお答えください.(複数選択可) 【Windows】  ア Windows 98/98SE  イ Windows Me  ウ Windows 2000  エ Windows XP  オ Windows Vista  カ Windows 7 【Mac OS】  キ Mac OS 9以前  ク Mac OS X以降 【その他】  ケ Linux系 OS  コ その他(具体的にお書きください) 問3-2 ご利用のアプリケーションソフトを種類別にご記入ください.例を参考に製品名をご記入ください.同一種類で複数のソフトをお使いの場合は主にお使いの製品名をお書きください.使用していない種類には「なし」とお答えください.(複数選択可,記述部分あり)  ア ワープロ及びエディタ(例:Microsoft Word 2010)  イ 表計算ソフト(例:Microfsoft Excel 2010)  ウ データベースソフト(例:Microfsoft Access 2010)  エ プレゼンテーションソフト(例:Microfsoft PowerPoint 2010)  オ メールソフト(例:Microfsoft Outlook 2010)  カ ウェブブラウザ(例:Internet Explolrer 9)  キ その他(製品名をご記入ください.) 問3-3 スクリーンリーダをお使いの方にお聞きします.現在使用されているものを以下よりお選び下さい.ご利用のソフトのバージョンまでご存知の方は,各選択肢の後ろの括弧の部分にバージョンをご記入下さい.複数のスクリーンリーダをお使いの方は,使用頻度の順位も括弧の部分にご記入下さい.お使いでない場合はなしをお選び下さい.(複数選択可)  ア 95Reader/XP Reader( )  イ PC-Talker( )  ウ FocusTalk( )  エ JAWS( )  オ VDM( )  カ CatWalk( )  キ その他( )  ク なし 問3-4 画面拡大ソフトをお使いの方にお聞きします.現在使用されているものを以下よりお選び下さい.ご利用のソフトのバージョンまでご存知の方は,各選択肢の後ろの括弧の部分にバージョンをご記入下さい.複数の画面拡大ソフトをお使いの方は,使用頻度の順位も括弧の部分にご記入下さい.お使いでない場合はなしをお選び下さい.(複数選択可)  ア ZoomText()  イ MAGiC()  ウ Windows拡大鏡()  エ マウスルーペ()  オ その他 (具体的にお書きください )  カ なし 問3-5 Windowsのユーザー補助などをお使いの方は,その機能の名称をお答え下さい. 複数の機能をお使いのかたは,すべて挙げて下さい.お使いでない場合は,なしとお答え下さい.(複数選択可)  ア ハイコントラスト  イ 拡大鏡  ウ マウスポインタの設定  エ 文字サイズの設定  オ カーソルの設定  カ 画面解像度  キ その他 (具体的にお書きください)  ク なし 問3-6 パソコンを利用されていない方にお聞きします.その理由は,以下のうちどれが最も当てはまりますか.(単一選択)  ア 携帯電話などで機能を十分にまかなえるため  イ 利用料金の節約のため  ウ どんなことができるかの情報がないため  エ 音声のサポートがあることを知らないため  オ パソコンのキーボード/マウス操作ができない,もしくはやりにくいと感じているため  カ その他 (ご自由にお書きください) 問4 スマートホン (タブレット端末)の利用状況について,お聞きします. 問4-1 スマートフォン・タブレット端末の使用経験とそれをお持ちかについてお聞きします. (単一選択)  ア 使用したことがない(次の問4-2へお進みください.)  イ 使用したことがあるが持っていない(問4-3へお進みください.)  ウ 持っている(問5へお進みください.) 問4-2 スマートホンやタブレット端末を使ってみたいと思いますか.(単一選択 )  ア ぜひ使ってみたい  イ 使ってみたい  ウ あまり使いたくない  エ 全く使いたくない  オ よく分からない 問4-3 問4-2で,「ウ あまり使いたくない」,「エ 全く使いたくない」,「オ よく分からない」とお答えの方にお聞きします.スマートホンに対しての興味・感心はお持ちですか.(単一選択 )  ア 大変に魅力的であり強い感心があるので積極的に情報を得るようにしている  イ 興味・感心はあるが自分から情報を得ることはしていない  ウ 興味・感心はあまり持っていない  エ 興味・感心は全くない  オ 聞いたことがない・分からない  カ その他(具体的にお書きください): 問4-4 問4-2で「ウ あまり使いたくない」「エ 全く使いたくない」「オ よく分からない」を選ばれ方にお聞きします.そのように思う理由を,以下からお選び下さい.(複数選択可 )  ア フラットなタッチスクリーンなので操作ができないとあきらめている  イ どんなことができるか情報がない  ウ 音声のサポートがあることを知らない  エ 画面拡大のサポートがあることを知らない  オ 今の携帯 電話の機能で満足している  カ 今までの携帯電話のように凹凸のあるキーボード付きの発売を待っている  キ その他 (ご自由にお書きください)   使用したことがないとお答えの方は,最後の問6へお進みください.自由記述で本アンケートの感想などをお聞きします. 問4-5 使用したことがあるが持っていないとお答えの方にお伺いします.スマートホンやタブレット端末を所有してみたいと思いますか.(単一選択)  ア ぜひ所有してみたい  イ 所有してみたい  ウ あまり所有したくない  エ 全く所有したくない  オ よく分からない   問4-6 問4-5で「ウ あまり所有したくない」「エ 全く所有したくない」「オ よく分からない」を選ばれ方にお聞きします.そのように思う理由を,以下からお選び下さい.(複数選択可)  ア フラットなタッチスクリーンなので操作ができないとあきらめている  イ どんなことができるか情報がない  ウ 音声のサポートがあることを知らない  エ 画面拡大のサポートがあることを知らない  オ 今の携帯電話の機能で満足している  カ 今までの携帯電話のように凹凸のあるキーボード付きの発売を待っている  キ 操作の上で触覚フィードバックなどの触覚的手がかりがない  ク 端末価格が高い  ケ その他(ご自由にお書きください) 使用したことがあるが持っていないとお答えの方は,最後の問6へお進みください.自由記述で本アンケートの感想などをお聞きします. 問5 スマートフォン・タブレット端末などをお持ちの方にお伺いします. 問5-1 スマートフォン・タブレット端末を利用する状況や利用目的についてお聞きします. 主に利用する場所についてお選び下さい.(複数選択可)  ア 自宅で利用する  イ 電車等の移動時に利用する  ウ オフィスで利用する  エ 喫茶店や駅の無線LANスポットで利用する  オ その他(具体的にお書き下さい)   問5-2 お持ちのスマートフォン・タブレット端末を,以下から全てお選び下さい.併せて問5-1でお答え頂いた利用する場所についてもア~オでご記入ください.1つの端末で複数の場所でご利用の場合はその全ての場所をご記入ください.(複数選択可) 【iOS機器】  ア iPhone(携帯電話)  イ iPad(タブレット端末)  ウ その他のiOS搭載機器(iPod Touch, iPod nano) 【Android機器】  エ Android搭載の携帯電話(例:SONY Xperia, Samsung Galaxy, HTC Desire)  オ Android搭載のタブレット端末(例:Samsung Galaxy Tab, Fujitsu ARROWS Tab)  カ その他のAndoroid搭載機器(例:SONY Walkman Z Series, NEC LifeTouch NOTE) 【Windows機器】  キ Windows Phone(携帯電話)  ク Windows搭載のタブレット端末(例:NEC LaVie Touch, オンキョー TW シリーズ) 【その他】  ケ BlackBerry端末  コ E-book専用端末(Amazon Kindle, Sony reader)  サ その他(具体的にお書きください)   問5-3 問5-1で「ア 自宅で利用する」,「ウ オフィスで利用する」,「エ 喫茶店や駅の無線LANスポットで利用する」とお答えの方に,この状況での使用についてお聞きします. なお,「イ 電車等の移動時に利用する」のみを選んだ方は問5-4にお進みください. 問5-3-1 この状況での操作の際,どちらの手を使いますか.主に使用する手をお答え下さい.(単一選択)  ア 右手  イ 左手  ウ 両手 問5-3-2 この状況で,どのように端末を固定しますか.主な方法をお答え下さい.(単一選択)  ア 片手で操作も固定もする  イ 操作する手と固定する手を分ける  ウ 膝の上で固定する  エ テーブルまたは机の上  オ その他(具体的にお書き下さい) 問5-3-3 この状況で,どのようなアプリケーションをお使いですか.(複数選択可)  ア 電話  イ メール  ウ チャット,Skype,テレビ電話  エ カレンダー(スケジュール機能)  オ 住所録・連絡先管理  カ 時計(アラーム,ストップウォッチ,タイマー)  キ メモ  ク 電子ブックアプリ  ケ 写真撮影  コ 音楽を聴く  サ 動画を見る  シ 経路案内  ス 料理  セ 国語辞典,英和辞典  ソ ゲーム  タ 天気予報  チ インターネット検索  ツ ラジオを聴く  テ その他(具体的なアプリケーションをお書き下さい) 問5-3-4 操作はどのように行いますか.以下から当てはまるものをお選び下さい.(複数選択可)  ア 音声サポートで画面を操作する  イ 目で見て操作する  ウ 外部キーボードで操作する  エ その他(具体的にお書き下さい) 問5-3-5 この状況で,文字の入力方法はどのように行いますか.以下から当てはまるものをお選び下さい.(複数選択可)  ア スクリーンキーボード  イ テンキー方式  ウ 外部キーボード  エ 音声入力  オ 入力はしない   問5-3-6 一連の操作(一本指でタップしたり,なぞったりする場合や,キーボードでの入力時)で,触覚的手がかりがあった方がよいと思いますか.以下からあてはまるものをお選びください.(単一選択)  ア あった方がよい  イ ない方がよい  ウ どちらでもよい  エ わからない 問5-3-7 問5-3-6で「ア あった方がよい」を選んだ方にお聞きします.どのような情報を触覚提示して欲しいですか.(自由記述) 問5-3-8 この状況下で利用するに際して,改善して欲しいと思うことは何ですか.(具体的にお書き下さい) 問5-4 「電車内等の移動時に利用する」とお答えの方に,この状況での使用についてお聞きします. 問5-4-1 この状況での操作の際,どちらの手を使いますか.主に使用する手をお答え下さい.(単一選択)  ア 右手  イ 左手  ウ 両手 問5-4-2 この状況で,どのように端末を固定しますか.主な方法をお答え下さい.(単一選択)  ア 片手で操作も固定もする  イ 操作する手と固定する手を分ける  ウ 膝の上で固定する  エ その他 (具体的にお書き下さい) 問5-4-3 この状況で,どのようなアプリケーションをお使いですか.(複数選択可)  ア 電話  イ メール  ウ チャット,Skype,テレビ電話  エ カレンダー(スケジュール機能)  オ 住所録・連絡先管理  カ 時計(アラーム,ストップウォッチ,タイマー)  キ メモ  ク 電子ブックアプリ  ケ 写真撮影  コ 音楽を聴く  サ 動画を見る  シ 経路案内  ス 料理  セ 国語辞典,英和辞典  ソ ゲーム  タ 天気予報  チ インターネット検索  ツ ラジオを聴く  テ その他 (具体的なアプリケーションをお書き下さい) 問5-4-4 操作はどのように行いますか.以下から当てはまるものをお選び下さい.(複数選択可)  ア 音声サポートで画面を操作する  イ 目で見て操作する  ウ 外部キーボードで操作する  エ その他(具体的にお書き下さい) 問5-4-5 この状況で,文字の入力方法はどのように行いますか.以下から当てはまるものをお選び下さい.(複数選択可)  ア スクリーンキーボード  イ テンキー方式  ウ 外部キーボード  エ 音声入力  オ 入力はしない 問5-4-6 一連の操作で,触覚的手がかりがあった方がよいと思いますか.以下からあてはまるものをお選びください.(単一選択)  ア あった方がよい  イ ない方がよい  ウ どちらでもよい  エ わからない 問5-4-7 問5-4-6で「ア あった方がよい」を選んだ方にお聞きします.どのような情報を触覚提示して欲しいですか.(自由記述) 問5-4-7 この状況下で利用するに際して,改善して欲しいことは何ですか.(具体的にお書き下さい) 問5-5 今後スマートフォンやタブレット端末を,どのような場面でどのような利用の仕方をしたいか,お答え下さい.(自由記述) 問5-6 上記での質問の回答を踏まえ,スマートフォン・タブレット端末の操作一般についてお聞きします. 問5-6-1 静止時に使用する端末は,以下の2つのうち,どちらが良いかお答え下さい(単一選択).理由も宜しければお答え下さい(自由記述)  ア 重くても大きいほうが良い  イ 小さいが軽いほうが良い 自由記述欄: 問5-6-2 移動時に使用する端末は,以下の2つのうち,どちらが良いかお答え下さい(単一選択).理由も宜しければお答え下さい(自由記述)  ア 重くても大きいほうが良い  イ 小さいが軽いほうが良い 自由記述欄: 問5-7 改善してほしい点をお書きください.(自由記述) 問6 本アンケートを通じて,何か他にお気付きの点や感想などありましたら,下記にご記入下さい.(自由記述) アンケートは以上です.ご協力ありがとうございました. 付録 B. 簡易マニュアル 全盲者でも使えるスマートフォンの簡易マニュアル はじめに  このマニュアルは、アップル社製iPad・iPhone・iPod tachをVoiceOver(ボイスオーバー)の音声サポートにより、フラットなタッチスクリーンを操作するための簡易マニュアルです。  視覚障害者でも弱視者と全盲者では、操作方法が異なります。弱視の場合、画面の拡大や画面の白黒反転などを使い大きい画面のiPadが有効で、全盲の場合、VoiceOverの音声が必要ですので、iPhoneやiPod tachのような小さい画面の方が有効と思われます。残念ながら、拡大と音声は現在の仕様では併用できません。  VoiceOverを起動すると操作するジェスチャが通常の操作と異なります。それは指で触れて探すという動作が生じるからです。それと、VoiceOverは、日本語特有の同音異義語の詳細読みがないため、入力するような場合にはまだまだ問題があります。しかし、それでも手軽に情報の入手をするツールとしてはとても便利です。 なお、このマニュアルは、iPad・iPhone・iPod tachのヘルプを抜粋。わかりにくいところは手順を追って書き直してあります。 2012年5月 目次 1. iPhone の外観説明 2. 晴眼者によるVoiceOverの設定 3. iPhoneの起動と終了 4. iPhoneの初期画面 5. VoiceOverを使いこなす上で、ぜひ知っておきたいジェスチャ 6. iPhoneのジェスチャの練習 7. 時計アプリの起動と設定 8. Safariでインターネット iPhoneとは  2007年1月に発表された、Apple社の〈スマートフォン〉。〈PDA〉の機能を内蔵した携帯電話端末で、同社の〈携帯音楽プレーヤー〉〈iPod〉の機能も内蔵しています。  〈OS〉には同社の〈Mac OS X〉を携帯端末向けに縮小したサブセットが使われており、標準で〈Webブラウザ〉の〈Safari〉、アド レスブック、カレンダー、メモ、〈Google Maps〉をアプリケーション化した地図ソフトなどが提供されています。  筐体サイズは縦115mm×横61mm×厚さ11.6mm、重量約135gの手のひらサイズ。前面に3.5インチの〈タッチパネル〉〈液晶ディスプレイ〉を備え、320×480〈ピクセル〉の表示が可能。〈記憶装置〉は内蔵〈フラッシュメモリ〉で、センサーで筐体の向きを検知して縦横を自動的に切り替える〈ユニーク〉な機能を備えています。周囲の明るさを検知するセンサーも備え、画面の輝度を最も見やすい値に自動的に調整してくれます。  筐体にボタンや〈スイッチ〉などはほとんど無く、ほとんどの操作はタッチパネルを使って画面に指を触れることで行う。画面上に〈キーボード〉を表示してタッチパネルで操作するソフトウェアキーボード機能を備えています。 1. iPhoneの外観説明  iPhoneは、通常の携帯電話同様、外部にいくつかのボタンとコネクタがあります。  まずディスプレイのある表向き側ですが、スクリーンの下にホームボタンがあります。そして、上部側面にヘッドセットジャックとスリープボタンがあります。スリープ機能を使用したい人は、ここのスリープボタンを押すことで移行できます。  左部側面には、ボリュームボタンとマナーモードスイッチがあります。ボリュームの調整がしたい場合はボリュームボタンで調整し、マナーモードにしたい場合、マナーモードスイッチを押します。  下部側面にはiPodコネクタがあります。iPodとつなげて音楽データなどをやり取りする場合に、このコネクタを使用します。そして、裏側の左上部にカメラのレンズがあります。 2. 晴眼者によるVoiceOverの設定  iPhoneやiPadなどのiOS機器には、VoiceOver(ボイスオーバー)という音声読み上げ機能(スクリーンリーダー)が搭載されています。「〈Mac OS Xにおける音声読み上げ(VoiceOver)〉」でご紹介したものと同様ですが、パソコンで音声読み上げをする場合は様々なキーボード操作(キーの組み合わせ)を覚える必要があるのに対し、iOS機器の場合、タッチスクリーン上でのジェスチャによって音声読み上げをコントロールします。  iOS機器には、あらかじめ日本語音声合成エンジンもインストールされているので、別途音声合成エンジンを購入する必要はありません。 iPhoneやiPadが手元にあれば、即座に音声読み上げが可能なので、Webサイトのアクセシビリティ検証ツールとしても気軽に使うことができます。 VoiceOverの起動  VoiceOverを起動するには、 1. iPhone/iPadの「設定」で「一般」を選び、その中の「アクセシビリティ」を選びます。 2.「アクセシビリティ」の設定画面で、「VoiceOver」のオン/オフを選択できるので、オンに切り替えます。 これでVoiceOverが起動し、音声読み上げが可能になります。 なお、「アクセシビリティ」画面で、「フォーム」をトリプルクリックボタンでVoiceOverを切り替える設定をしておくと、音声を出したくないときに、「ホームボタン」をトリプルクリックすることにより、VoiceOverのオン/オフの切り替えが可能となります。 3. iPhoneの起動と終了 手順1 iPhoneを「ホームボタン」が手前側に来るように、テーブルに置きます。そして、上部側面右側にある「スリープボタン」を4秒間長押しします。約30秒後に「VoiceOverがオンです」と読み上げられます。 手順2 「ホームボタン」のすぐ上に「ロック解除」と読み上げるところを、人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。これで操作可能となります。 ワンポイト  なにも操作しないと、1分で画面がロックされて操作できなくなります。その場合、「ホームボタン」を押して、ロック解除の操作をします。 iPhoneの終了 手順1 上部側面右側にある「スリープボタン」を長押しします。電源オフと言ったらボタンから手を離します。画面上部中央部を人差し指で「電源オフ」と言うところを人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。これで完全に終了となります。 ワンポイト  iPhoneは、待ち受け状態が基本なので、「操作しないときは「スリープボタン」をポンと押し、ロック状態にします。なお、VoiceOverを使用していると消費電力がかかるので、毎日1回充電をした方がよろしいです。 4. iPhoneの初期画面  画面上部には、左側から、電波の状態、現在時刻、バッテリー残量が表示されています。その下に、4列4行に各種オブジェクト(アプリケーション)のアイコンが表示されています。カレンダー、写真、カメラ、設定等があります。その下に、ページ数の帯が配置されています。「ホームボタン」のすぐ上には、電話、メール、サファリ、ミュージュックのアイコンが配置されています。 画面全部を読み上げるには  人差し指と中指2本を画面にタッチし、上方向にスワイプします。スワイプとは、上方向に擦り上げます。 1項目ごとに読み上げさせるには  右または左に1本指でスワイプします。  オブジェクト(アプリケーション)を開くには、人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。この操作をスプリットタップと言います。または、人差し指で探し、その位置で停止し、その位置で人差し指をトントンとダブルタップしても同じことです。   5. VoiceOverを使いこなす上で、ぜひ知っておきたいジェスチャ  ① ページ全体を読み上げるには    2本指で、上方向にスワイプします。  ② 読み上げを停止するには    2本指で、タップします。  ③ 現在位置から読み上げを開始するには    2本指で、下方向にスワイプします。  ④ 読み上げ対象箇所を前後移動するには    左または右にスワイプします。見出し、段落、リンク、箇条書き、といった情報の「まとまり」単位で、読み上げ対象箇所を前後に移動することができます。 一時的に消音するには  3本指で、ダブルタップします。もういちど、3本指でダブルタップすると、消音状態が解除されます。 スクリーンカーテンを有効にする(画面を真っ暗にする)には  3本指で、トリプルタップします。もういちど、3本指でトリプルタップすると、画面が表示されます。 「ローター」機能  上記に加えiOSのVoiceOverには、「ローター」という便利機能が用意されています。VoiceOverがオン(起動状態)になっているときに、SafariのWebコンテンツ表示エリアで、2本指でひねるジェスチャ(つまみを回すような感じで) をすると、ローターが表示されます。 ローターが表示されている状態で  続けて2本指でつまみを回すジェスチャをすると、「見出し」「リンク」「フォ ームコントロール」「表」「ランドマーク」「読み上げ速度」「 文字」「単語」「行」…といった具合に機能を切り替えることができます。切り替え選択された機能は、1本指で上下方向にスワイプすることによって、コントロールすることができます。 たとえば「読み上げ速度」を選択して上下にスワイプすると、音声読み上げスピードを速くしたり遅くしたりすることができます。それ以外の機能、たとえば「見出し」や「ランドマーク」を選択して上下にスワイプすると、前後の見出しやランドマークにジャンプすることができます。ちなみにここで言う「ランドマーク」とは、〈WAI-ARIAのLandmarkRoles〉のことです。 6. iPhoneのジェスチャの練習 手順1 「ホームボタン」を押してホームに戻ります。 手順2 「設定」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「設定」アプリケーションが開きます。 手順3 「一般」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「一般」アプリケーションが開きます。 手順4 「アクセシビリティ」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「アクセシビリティー」アプリケーションが開きます。 手順5 「VoiceOver」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。 「VoiceOver」アプリケーションが開きます。 手順6 「VoiceOverの操作練習」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「VoiceOverの操作練習」アプリケーションが開きます。 ワンポイト1  「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」は下にありスクロールが必要です。 ★スクロールは三本指で上下フリックです。素早くフリックするとスクロールします。 右フリックで「次」を繰返し「アクセシビリティ」を選択することもできます。 ワンポイト2  ジェスチャは、1本指から4本指で、シングルからトリプルまでのいろいろの操作があります。その操作の機能を説明してくれますので十分に練習して下さい。 手順7 練習完了後には、右上の「完了」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。これで完了です。 7. 時計アプリの起動と設定 手順1 「ホームボタン」を押してホームに戻ります。 手順2 「時計」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「時計」アプリケーションが開きます。 手順3 「ホームボタン」のすぐ上の左から、「世界時計」、「アラーム」、「ストップウオッチ」「タイマー」の中から、「タイマー」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。これで「タイマー」が開きます。 手順4 右または左にフリックして、「何分」と読み上げるところで、上または下にフリックして、「1分」に設定します。 手順5 タイマー終了時の音は、初期値はマリンバに設定してあります。(必要に応じて設定変更は可能です。) 手順6 「開始」を人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。「タイマー」が作動します。 手順7 「1分」後にマリンバの音で、知らせます。音を止めるには画面中央部の「OK」ボタンを人差し指で探し、その位置で停止し、中指を画面にタッチします。アラームが停止します。 8. Safariでインターネット  「safari」とは、タイトルのとおりインターネットを見るためのいわゆる「ブラウザー」です。ボイスオーバーを使って操作するに は、7.の練習で学習したもので十分操作することができます。  さてsafariで覚えておきたい操作について説明します。その操作は、ウェブページをブックマークに登録する方法です。 手順1 気になるページが見つかったらホームボタンの少し上を触ります。 手順2 そうすると、「戻る」や「進む」などと読み上げると思います。そこで画面を右にフリックしていき、「ユーティリティー「を見つけます。 手順3 「ユーティリティー」が見つかったら中指でタップすると警告メッセージが表示されます。 手順4 そこで、人差し指で右にフリックしていき(ブックマークに追加」を選択して中指でタップします。 手順6 そうすると名前の入力ボックスが出てくるのですが、ページのタイトルがそのテキストボックスに入っているので、人差し指で右や左にフリックしていき「保存」という項目を探します。 手順7 項目が見つかったら中指でタップすると保存が完了します。 ブックマークへの登録は以上で終了です。