聴覚障害者に配慮された全面ガラス窓を有する片廊下の視環境評価とガラス面積率が及ぼす熱的影響に関する研究 平成 30年度 筑波技術大学大学院技術科学研究科産業技術学専攻 佐竹広希 目次 第1章 序論 4 1.1 研究背景 4 1.2 研究目的 4 1.3 本論文で使用する言葉の定義 6 1.4 本論文の構成 6 第2章 片廊下の窓ガラス条件が聴覚障害を有する学生の心理量へ及ぼす影響 10 2.1 実験概要 10 2.2 REAL実験方法 14 2.2.1 実験対象施設 14 2.2.2 実験時の歩行経路及び窓ガラスの条件変更箇所 18 2.2.3 窓ガラスの変更条件 (1)疑似壁の種類 19 2.2.4 窓ガラスの変更条件 (2)ガラス面積率 20 2.2.5 実験パターン 22 2.2.6 REAL実験の評価モデル 24 2.2.7 疑似壁の設置方法 28 2.2.8 実験の流れ 30 2.3 VR実験方法 32 2.3.1 使用したVR機器 32 2.3.2 実験モデル作成から評価実験までのフロー 32 2.3.3 実験の流れ 39 2.3.4 VR実験時の VRモデル内の歩行経路 39 2.3.5 VR実験実施時の室内環境 40 2.3.6 VR実験の評価モデル 41 2.4 アンケート記入項目 45 2.5 REAL実験結果及び考察 48 2.5.1 被験者 48 2.5.2 校舎棟の片廊下に関する普段の使用状況 50 2.5.3 心理量変化 52 2.5.4 考察 62 2.5.5 まとめ 68 2.6 VR実験結果と REAL評価実験結果の比較及び考察 70 2.6.1 VR実験結果と REAL評価実験の比較 70 2.6.2 考察及びまとめ 76 第3章 片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響 80 3.1 数値計算概要 80 3.2 数値計算モデル及び条件 81 3.3 パラメータ1窓ガラス面積率の数値計算結果 88 3.3.1 冷房期の片廊下及び研究室の日平均温度 88 3.3.2 暖房期の片廊下及び研究室の日平均温度 92 3.3.3 各室の時系列温度変化及び環境評価 96 3.4 パラメータ2建物方位の数値計算結果 105 3.4.1 冷房期の片廊下の時系列温度変化 106 3.4.2 暖房期の片廊下の時系列温度変化 108 3.4.3 研究室の暖冷房負荷 110 3.5 パラメータ3窓仕様の数値計算結果 112 3.5.1 冷房期の片廊下の時系列温度変化 112 3.5.2 暖房期の片廊下の時系列温度変化 114 3.5.3 研究室の暖冷房負荷 116 3.6 窓ガラス面積率と不満足率及び温熱環境との関係 118 3.6.1 不満足率と建物方位による熱的影響との関係 119 3.6.2 不満足率と窓仕様による熱的影響との関係 121 3.6.3 まとめ 123 第4章 総括 126 参考文献 129 謝辞 130 筑波技術大学 修士(工学)学位論文 第1章 序論 第1章 序論 1.1研究背景  聴覚障害を有する学生の為のバリア対策がなされた筑波技術大学天久保キャンパスの校舎棟について断面図と 4F平面図を図1に、外観を写真1にそれぞれ示す。また校舎棟 4Fの片廊下と外通路の様子を写真2~3に示す。  写真1や3のように校舎棟片廊下の外皮は床から天井の高さまで透明単板ガラスで構成されている。建物外皮が窓ガラスで覆われた建築物は多くみられるが、筑波技術大学天久保キャンパスの校舎棟は、各階の共用片廊下の外部に他棟へ通じる外通路を並行して配置している点で大きく異なる。これは聴覚障害を有する学生が片廊下及び外通路間で互いに見通せるようにと配慮して設計され、手話等によるコミュニケーションも可能になると思われる。こうした配慮により、聴覚障害を有する学生が人の存在認識のし易さや、外の様子を掴み易く視覚的に情報を補うことが容易な空間と考えられている。また、この片廊下の幅は約 2.4mとやや広く、学生同士あるいは教員と学生が気軽に立ち話ができるコミュニケーションの場でもある。しかし、片廊下内には空調設備がなく、外部とガラス1枚で広い面積を接している為、温熱環境的には日射や外気温などの外部の影響を受けやすい。また、長山[1]らによる研究でまだガラス面積の大きさが片廊下の夏の暑さや冬の寒さだけでなく、片廊下に隣接する研究室の空調エネルギー消費量とも無関係ではない事が明らかにされている。さらに、片廊下の窓ガラスが西向きに面している他、視線や日射を遮るブラインドがなく、ガラス面積が空間容積に対して大きい事がその影響を一層顕著にしていると考えられる。さらに須山 [2]らによる筑波技術大学の校舎棟のPOE調査 (入居後施設評価)で、大学施設を使用する教員が夏場の片廊下の温熱環境に対して暑さを感じている事や、足元が見えるのは不安という結果を得ていることから、片廊下の温熱環境改善として外皮のガラス面積を減少する方法が考えられる。しかし、ガラス面積と利用者の心理量、特に聴覚障害者の心理量との関係について行われた研究は少ない。またそれに関する設計資料も見当たらない。 1.2 研究目的 本研究では、片廊下の窓ガラス面積を変えた際、聴覚障害を有する学生の心理量がどのように変化するか、現実空間で行う実験と VR機器を使用して仮想空間で行う実験の視環境評価実験より明らかにすると共に、その窓ガラス面積を変えた場合の片廊下への温熱環境の影響を把握する事を目的とする。 図 1 筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟の断面図と4F平面図 写真 1 筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟の外通路 (左側)と片廊下 (右側)位置関係 写真 2 校舎棟の外通路から片廊下を見た時 写真 3 校舎棟の片廊下から外通路を見た時 1.3 本論文で使用する言葉の定義 REAL実験 現実空間で実験条件の変更を行いその空間内で行った視環境評価実験。 VR実験 仮想空間で実験条件の変更を行いその空間内で行った視環境評価実験。 疑似壁 実際の壁に見立てた仮の壁。スチレンボードで代用。 壁種類 壁無し、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁、スリット状に配置した壁の種類を指す。 ガラス面積率 片廊下の外皮面積に占める窓ガラス面積の割合を指す。 窓ガラス条件 壁種類とガラス面積率を組み合わせた片廊下の窓ガラスの条件。 不満足率 満足度の否定側申告者数の全体に占める割合。 1.4 本論文の構成 第1章 序論 聴覚障害者に配慮された筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟の建物の特徴とそのメリット及び問題点について述べた。 第2章 片廊下の窓ガラス条件が聴覚障害を有する学生の心理量へ及ぼす影響 聴覚障害を有する学生を被験者として REAL実験及び VR実験の視環境評価実験を行った。壁無し、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁、スリット状に配置した壁の 5種類の壁種類を想定した時、各壁種類の面積を増やして片廊下の窓ガラスの面積を小さくした場合、開放感や安心感などの視環境評価にどのような違いが見られるのか。実験による結果とそれに対する考察を述べた。実験対象施設はは筑波技術大学天久保キャンパス4階片廊下と外通路の空間で行った。また VR実験を行う目的及びREAL実験との実験結果の違いとその考察を述べた。 第3章 片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響 窓ガラスを小さくした場合、片廊下及び外通路にどのような影響が出るのか、数値計算により室内環境評価を行い、その結果と考察を述べた。また視環境と熱環境との関係についても述べた。 第4章 総括 第1章から第 3章までの各章のまとめと総括を述べた。 第2章 片廊下の窓ガラス条件が聴覚障害を有する学生の心理量へ及ぼす影響 第2章 片廊下の窓ガラス条件が聴覚障害を有する学生の心理量へ及ぼす影響 2.1 実験概要 表1 REAL実験とVR実験の詳細 表1にREAL実験とVR実験の詳細を示す。視環境評価実験は現実空間で窓ガラス条件を変更して評価を行う REAL実験と、仮想空間内の実験モデルの窓ガラス条件を変更して評価を行う VR実験の 2種類を実施した。1章で述べたように、筑波技術大学天久保キャンパスの校舎棟は聴覚障害を有する学生に配慮された室内環境となっている。この片廊下の窓ガラスに壁を入れてガラス面積を小さくした場合、窓ガラス面積と聴覚障害を有する学生の心理量との関係にどのような違いが表れるのか視環境評価実験により明らかにする。 まずREAL実験についての実験概要を記す。実験は筑波技術大学天久保キャンパスの校舎棟 4F片廊下と外通路で行い、 4F片廊下の窓ガラスを変更条件として、1回目:H29.10月~H30.3月と 2回目:H30.10~11月の 2回に分けて行った。実験の被験者条件は聴覚障害を有する学生を対象とした。各実験の被験者数は、 1回目:38名(男:20名、女 :18名)、2回目: 30名(男:15名、女 :15名)であった。REAL実験は午前中の 8:50~11:00の時間帯で行った。この理由は、校舎棟の 4F片廊下の窓ガラスが西側に面している為である。正午過ぎから夕方にかけての時間帯になると、西日が校舎棟廊下の窓ガラスに差し込みまぶしい環境となり視環境評価に影響しする為、西日ができるだけ差し込まない午前中に実験を行った。 1回当たりの実験所要時間は 1回目が約 60分、 2回目は約 40分であった。 次にVR実験についての実験概要を記す。実施場所について、 1回目は筑波技術大学天久保キャンパスの校舎棟 4F426室、2回目は筑波技術大学天久保キャンパス総合研究棟 1F 101室で、VR 機器を使用した仮想空間内の実験モデルに対する視環境評価行った。実験期間は、1回目が H29.10月~H30.3月、2回目は H30.11月に行った。被験者は 1回目 VR実験:1回目の REAL実験を受けた被験者、 2回目:2回目の REAL実験を受けた被験者とし、各実験の被験者数は、 1回目: 36名(男:19名、女 :17名)、2回目: 30名(男:15名、女 :15名)であった。 1~2回目 VR実験で実施した窓ガラス条件は 1~2回目の REAL実験と同様である。研究倫理について、 REAL実験及び VR実験で取得するデータは自動暗号化・パスワード認証機能を備えた据置型外付けハードディスクに保存した上で施錠可能な書架で保管した。また VR実験では人によって VR酔い(車酔いのような症状)を引き起こす場合があり、研究対象者が疲労や体調不良を訴えた場合は直ちに実験を中止した。 図 2 REAL実験及び VR実験で評価する窓ガラス条件 図2に REAL実験及び VR実験で評価する窓ガラス条件を示す。 変更条件である窓ガラスは 5つの壁種類 (腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁、スリットに配置した壁、壁無し)と各ガラス面積率 (33%、50%、67%、 83%、100%)を組み合わせた。窓ガラス条件を (壁種類:ガラス面積率 )とした時、 1回目に壁無し: 100%、腰壁: 83%・67%・50%、垂れ壁: 83%・ 67%・50%、腰・垂れ壁: 67%・50%・33%の合計 10種類の窓ガラス条件を実施した。 2回目に実施した窓ガラス条件は壁無し: 100%、スリット:83%・67%・50%・33%、の 5種類である。この時の壁は 7mmのスチレンボードで代用し、本実験ではこれを疑似壁と呼ぶ。 表2 外通路から片廊下を見た時の視環境評価項目とその定義 外通路(6項目) 視環境評価項目 定義 開放感  外通路から片廊下の窓ガラスを見た時の開放感 目安心感 片廊下内の様子の把握のしやすさ 窓ガラス面積 片廊下の窓ガラス面積の大きさの感じ方 見通し 外通路から窓ガラスを通して片廊下内を見た時の見通し 許容度 その窓ガラス条件を許容出来るかどうか 満足度 外通路から片廊下を見た時の総合評価 表3 片廊下から外通路を見た時の視環境評価項目とその定義 片廊下(8項目) 視環境評価項目 定義 廊下の幅 廊下幅の感じ方 廊下の高さ 廊下の天井高さの感じ方 開放感 片廊下内の開放感 安心感 外の様子の把握のしやすさ 窓ガラス面積 片廊下の窓ガラス面積の大きさの感じ方 見通し 片廊下から外通路を見た時の見通し 許容度 その窓ガラス条件を許容出来るかどうか 満足度 片廊下空間内の総合評価  REAL実験及び VR実験で評価する視環境評価項目について、表2に外通路から片廊下を見た時の視環境評価項目とその定義、表3に片廊下から外通路を見た時の視環境評価項目とその定義を示す。  REAL実験及び VR実験は外通路から片廊下を見た時と、片廊下から外通路を見た時の評価をそれぞれ行う。この時の視環境評価項目は表2~3の通りで、通路及び片廊下の共通する視環境評価項目は、開放感、安心感、窓ガラス面積の大きさ、見通し、許容度、満足度である。片廊下のみ廊下の幅と廊下の高さについて追加して評価を行う。 図3 REAL実験及びVR実験の窓ガラス条件の変更フロア  図3にREAL実験及びVR実験の窓ガラス条件の変更フロアを示す。  REAL実際では4Fの片廊下の窓ガラスに疑似壁を設置した状態で行ったが、外通路から片廊下を見た時 3Fや 5Fの片廊下の上下の見え方の評価は困難である。 VR実験を行う理由は、その評価を補完することが目的である。しかし、 VR実験結果が REAL実験結果とで差が見られるかどうか不明である。また、VR実験は現実空間で困難な条件の統一や変更を仮想空間内では容易に出来る点優れている。REAL実験結果と VR実験結果の比較を行いその差が見れらなければ、今後更なる検討を行う際に VR実験は有効な実験手法だと考えられる。 2.2 REAL実験方法 2.2.1実験対象施設 茨城県つくば市天久保 4-3-15筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟 4F片廊下・外通路 図4 筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟断面図 A-A’ 図5 筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟 4F平面図  図4~5に筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟 4Fの断面図と平面図を示す。また図5内の a地点及び b地点は、2F外通路から各矢印方向の向きで校舎棟の片廊下及び外通路を見た時であり、その時の様子を写真 4~5に示す。地点1~6は外通路又は片廊下から矢印方向に見た時であり、その時の建物の様子を写真6~11に示す。 写真4 2F外通路のa地点から見る校舎棟 写真5 2F外通路のb地点から見る校舎棟 写真6 外通路(1地点より ) 写真7 外通路(2地点より ) 写真8 外通路(3地点より ) 写真9 片廊下(4地点より ) 写真10 片廊下(5地点より ) 写真11 片廊下(6地点より ) 写真12 校舎棟5F外通路から遮熱フィルムありの5F窓ガラスを見た時 写真13 校舎棟4F外通路から遮熱フィルムなしの4F窓ガラスを見た時 写真14 校舎棟5F片廊下から遮熱フィルムありの窓ガラスを通して外を見た時  写真12に校舎棟5F外通路から遮熱フィルムありの5F窓ガラスを見た時、写真13に校舎棟4F外通路から遮熱フィルムなしの4F窓ガラスを見た時、写真14に校舎棟 5F片廊下から遮熱フィルムありの窓ガラスを通して外を見た時の様子をそれぞれ示す。  実験対象施設である筑波技術大学天久保キャンパス校舎棟は1~6Fで構成されている。その内 1Fに関しては半地下に位置している。その中 4Fで実験を実施する理由は、校舎棟 5~6Fの片廊下の窓ガラスが、写真 12のように遮熱フィルムが貼付されていることが影響する。5~6Fの片廊下は夏場の日差しが強く差し込み暑熱な室内環境になる為、その対策として貼られている。この遮熱フィルムは反射率が大きい事が原因となり、外通路から片廊下を見る時に校舎棟 5~6Fの窓ガラスには、ヒトや周りの風景が反射して映り込む。その結果、片廊下内の様子を把握することが写真 13の遮熱フィルムなしと比較して困難となる。また、写真 14のように遮熱フィルムありの状態を片廊下内から外を見た時に、遮熱フィルムにより景色は青みがかって見える。よって校舎棟 5~6Fの外通路と片廊下では、今回の視環境評価を目的とした実験の実施場所としては適当でないと判断した。また 2Fの場合、外通路ではなく広場的空間になっていることや、3Fでは実験に必要な窓ガラスが不足していることが影響して、校舎棟 4Fの片廊下と外通路が最も相応しいと判断した。 2.2.2 実験時の歩行経路及び窓ガラスの条件変更箇所 図6 1回目及び2回目のREAL実験の評価歩行経路 写真15 校舎棟4F外通路から片廊下をみた時の窓ガラスと窓ガラス条件の変更区間  図6に1回目及び 2回目のREAL実験の評価歩行経路、写真15に校舎棟 4F外通路から片廊下をみた時の窓ガラスと窓ガラス条件の変更区間を示す。 図6及び写真15で示すように、柱スパン毎で区間分けして区間1~3とした。この区間1~3の内、区間1と区間3に疑似壁を設置して窓ガラス条件を変更する。区間2は現状の窓ガラスのまま(壁無し)とした。被験者が評価を行う際に、疑似壁がない時 (区間2 )とある時 (区間1と3)の比較をしやすくする為に区間2は疑似壁を設置していない。また区間2は他の区間と比較して窓ガラス形状や柱スパンの長さが異なり実験環境が異なることも疑似壁を設置しない理由である。評価時の実験経路は、図 6内の426室内で被験者に実験内容の説明後、外通路の「Start」地点へアンケート用紙を持って移動する。その地点から実験開始となり、最初に外通路から片廊下を見た時の評価を歩きながら行う。疑似壁を設置した区間1と区間3の各窓ガラス条件についての評価後、被験者はアンケート用紙にその評価を記入する。その後、校舎棟に入り外通路の時と同じ窓ガラス条件下で、片廊下から外通路を見た時の評価を行う。評価後アンケート用紙に記入して、片廊下の「Finish」地点にて評価終了となる。校舎棟 4階の通路を周回する際には、出来るだけ普段通りの使用イメージで歩く事を心がけるよう被験者に伝えた。また普段の使用感を出すために、被験者が外通路を歩く際には片廊下内に歩行者を配置した。逆も同様である。 2.2.3 窓ガラスの変更条件 (1)疑似壁の種類 表4 1・2回目の REAL実験で使用する疑似壁の壁種類 図7 1回目の実験で使用した4種類の壁種類 図8 2回目の実験で使用した2種類の壁種類  表4に窓ガラスの変更条件である疑似壁の壁種類について、実験で使用する壁種類と 1回目及び 2回目のREAL実験で実施した壁種類を示す。図7~8には実験で使用した壁種類を 1回目と 2回目と分けて示す。  実験で評価を行った壁種類は、図 7の1壁無し、2腰壁、3垂れ壁、4腰垂れ壁と、図 8の5スリット状に配置した壁の5種類である。日常生活で比較的よく見かける形状の壁種類を選定した。これらを 1回目に壁無し、腰壁、垂れ壁、腰垂れ壁の 4種類、2回目に壁無し、スリット状に配置した壁の 2種類でそれぞれ実験を行った。 2.2.4 窓ガラスの変更条件(2)ガラス面積率 表5 実験を行った壁種類とガラス面積率の組み合わせの一覧表 図9 外通路から片廊下を見た時の区間1~3の各窓ガラス寸法  表5に実験を行った壁種類とガラス面積率の組み合わせの一覧表、図 9に外通路から片廊下を見た時の区間1~3の窓ガラス寸法を示す。  各壁種類で実施したガラス面積率は壁無し: 100%、腰壁: 83%・67%・50%、垂れ壁: 83%・ 67%・50%、腰・垂れ壁: 67%・50%・33%、スリット: 83%・67%・50%・33%である。ガラス面積率算出に当たって、図 9のように窓ガラス幅とサッシ幅 (1つ 40mm)を含む各区間の幅は、区間1が 6000㎜、区間2が 5000㎜、区間3が 6300㎜とそれぞれ異なる。窓ガラスの高さは下窓が 800㎜、上窓が 1600㎜、サッシ高さが 100㎜の計 2500㎜である。  ガラス面積率の算出の流れについて、次ページの表 6に垂れ壁、表 7に腰壁、表 8に腰・垂れ壁、表 9にスリット状に配置した壁をそれぞれ示す。まずガラス面積率算出に当たって、区間1または区間3に設置する疑似壁高さと窓ガラス高さを求める。その後、区間内の窓ガラスの総幅を求め、疑似壁の高さ又は窓ガラスの高さを乗して疑似壁及び窓ガラスの面積を求める。その後、壁無し: 100%の時と除してガラス面積率を算出した。 表6 垂れ壁のガラス面積率の算出 表7 腰壁のガラス面積率の算出 表8 腰・垂れ壁のガラス面積率の算出 表9 スリット状に配置した壁のガラス面積率の算出  スリット状に配置した疑似壁のガラス面積率について、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁で行ったガラス面積率 (83%、67%、50%、33%)に厳密に揃える事は困難であった。スリット状に配置した疑似壁が他の疑似壁種類のガラス面積率と近い条件下になるよう配慮した。 2.2.5 実験パターン 表10 各区間の窓ガラス条件及び実験パターン 図10 1回目の実験パターン1~6 (外通路から片廊下を見た時の各区間の窓ガラス条件 ) 図11 2回目の実験パターン1~5 (外通路から片廊下を見た時の各区間の窓ガラス条件 )  表10に各区間の窓ガラス条件及び実験パターンを示す。また表 10を図示したものを、図 10に 1回目の実験パターン1~6、図11に2回目の実験パターン1~5をそれぞれ示す。  1回目のREAL実験での各壁種類の配置区間は、垂れ壁は区間1、腰壁は区間3、腰・垂れ壁は区間1と3である。2回目のREAL実験では区間1と3は同じ実験条件となり、スリット状に配置した壁種類を設置する。スリットのみ区間1と3に同じ窓ガラス条件を設置した理由は評価のし易さを考慮した結果である。2回目のREAL実験を実施する前に行った予備実験では、1回目のREAL実験と同じように区間1と区間3で異なる窓ガラス条件で疑似壁を設置して行った。しかし、予備実験に参加した 2名の被験者から、区間1又は区間3だけでは距離が短い為、視環境評価が難しいという意見があった。スリット状の壁種類は、水平方向に窓と疑似壁が並ぶ為、歩行距離が短ければ視環境評価が難しい事が影響したと思われる。これらの理由により、スリットのみ区間1と3に同じ窓ガラス条件を設置した。 2.2.6 REAL実験の評価モデル 写真16~30にREAL実験で評価した各窓ガラス条件の設置様子を示す。 1回目(H29.10月~H30.3月) 写真 16 1回目 REAL実験の壁無し:100%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 17 1回目 REAL実験の区間3の腰壁:83%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 18 1回目 REAL実験の区間3の腰壁:67%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 19 1回目 REAL実験の区間3の腰壁:50%(左:片廊下、右 :外通路 ) 写真 20 1回目 REAL実験の区間1の垂れ壁:83%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 21 1回目 REAL実験の区間1の垂れ壁:67%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 22 1回目 REAL実験の区間1の垂れ壁:50%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 23 1回目 REAL実験の区間1の腰・垂れ壁:67%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 24 1回目 REAL実験の区間3の腰・垂れ壁:50%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 25 1回目 REAL実験の区間3の腰・垂れ壁:33%(左:片廊下、右:外通路 ) 2回目 REAL実験(H30.10~11月) 写真 26 2回目の REAL実験の壁無し:100%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 27 2回目の REAL実験のスリット:83%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 28 2回目の REAL実験のスリット:67%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 29 2回目の REAL実験のスリット:50%(左:片廊下、右:外通路 ) 写真 30 2回目の REAL実験のスリット:33%(左:片廊下、右:外通路 ) 2.2.7 疑似壁の設置方法 疑似壁として使用している 7㎜のスチレンボードを校舎棟 4F片廊下の窓ガラスに設置する際、写真 31の吸盤付きクリップを使用した。またクリップだけでは長時間スチレンボードを支える際に力不足になる可能性もあり、強度不足な箇所は、透明なマスキングテープ又はセロハンテープで補強した。腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁とで設置方法が異なるためそれぞれ説明していく。 写真31 吸盤付きクリップ (1)腰壁の疑似壁設置方法 写真32 腰壁の各ガラス面積率の時のクリップ設置個所 (赤点)  写真32に腰壁の各ガラス面積率の時の吸盤付きクリップの設置個所を赤点で示す。 【ガラス面積率 83%】  各窓ガラス幅でカットしたスチレンボードを、高さh= 400㎜でカットした 2枚のスチレンボードを用意する。その 2枚を折りたためるようにセロハンテープであらかじめ接続 (ガラス面積率 67%内の黒破線が接続箇所 )する。ガラス面積率 83%の時には、これを折りたたんだ状態で窓に立てかけるように設置する。この時、スチレンボードの高さも 400㎜と低いことから安定性が高く吸盤付きクリップを使用せずに自立する。 【ガラス面積率 67%】 ガラス面積率 83%の時に折りたたんでいたスチレンボードを開き、高さh= 800㎜の疑似壁にする。この時窓ガラスのサッシに丁度はまるようにカットしてある為、ガラス面積率 83%と同様に吸盤付きクリップを使用せずにある程度自立する。しかし、箇所によっては疑似壁が倒れる恐れがあった為、その箇所のみ透明なマスキングテープ又はセロハンテープで補強した。 【ガラス面積率 50%】 ガラス面積率 67%の状態で、各窓ガラス幅と高さh= 400㎜でカットしたスチレンボードを新たに設置する。この時、高さh=400mmのスチレンボードの上の二隅に、それぞれ吸盤付きクリップを 1つずつ取り付ける事で、スチレンボードを窓ガラスに設置した。 (2)垂れ壁の疑似壁設置方法 写真33 垂れ壁の各ガラス面積率の時のクリップ設置個所 (赤点)  写真33に垂れ壁の各ガラス面積率の時のクリップ設置個所を赤点で示す。 【ガラス面積率 83%】 垂れ壁の際には各ガラス面積率で共通して、スチレンボードの下の二隅 (赤点の箇所 )に吸盤付きクリップをそれぞれ 2つずつ使用する。上の二隅には透明なマスキングテープ又はセロハンテープで倒れないように補強する。まずガラス面積率 83%は、腰壁のガラス面積率 83%と同様に、各窓ガラス幅と高さh= 400㎜でカットしたスチレンボードを 2枚用意してセロハンテープであらかじめ接続 (破線が接続箇所)し折りたためる状態にする。折りたたんだ状態で赤点の箇所に吸盤付きクリップを取り付け窓ガラスに設置する。 【ガラス面積率 67%】 腰壁と同様にガラス面積率 83%の時に折りたたんでいたスチレンボードを開き、高さh= 800㎜の疑似壁にする。 【ガラス面積率 50%】 ガラス面積率 66%とは別に、下の二隅(赤点の箇所 )に吸盤付きクリップを付けた高さh= 400㎜のスチレンボードを窓ガラスに張り付ける。 (3)腰・垂れ壁設置方法 写真34 腰垂れ壁の各ガラス面積の時のクリップ設置個所 (赤点)  写真34に腰・垂れ壁の各ガラス面積率の時のクリップ設置個所を赤点で示す。  腰壁と垂れ壁の設置方法を組み合わせてスチレンボードを設置する。 2.2.8 実験の流れ 図12 1回目及び2回目のREAL実験時の被験者の歩行経路 表11 実験の流れ 場所 内容 (1)校舎棟4F426室 被験者に実験内容の説明 (2)校舎棟4F426室 アンケート用紙の基礎事項の項目を記入 (3)外通路:START地点 外通路へ移動 (4)校舎棟4F外通路 パターン1の実施 (5)校舎棟4F外通路 区間1の窓ガラス条件の評価➡アンケート用紙記入 (6)校舎棟4F外通路 区間3の窓ガラス条件の評価➡アンケート用紙記入 (7)校舎棟4F片廊下 区間3の窓ガラス条件の評価➡アンケート用紙記入 (8)校舎棟4F片廊下 区間1の窓ガラス条件の評価➡アンケート用紙記入 (9)校舎棟4F片廊下 パターン1の終了 (10)片廊下:FINISH 426室へ移動 (11)校舎棟4F426室 被験者は次の実験パターンの準備が終わるまで待機[(3)への↑] (12)校舎棟4F426室 全パターン実施後被験者にヒアリング調査  図12に1回目及び2回目のREAL実験時の歩行経路、表11に1・2回目のREAL実験の流れを示す。  最初に校舎棟 4Fの426室内で被験者に実験の説明を行う。その後、アンケート用紙の基礎事項(「所属」、「性別」、「身長」、「聴力 (左右それぞれ記入)」、「普段最も使用する階」、「ガラス越しに外を見る頻度」、「現段階の視環境の満足度」)の8項目を記入する。記入後、図12の外通路「Start」地点に移動してパターン1( 壁無し:100%)の視環境評価実験を始める。最初に外通路から片廊下を見た時の区間1の窓ガラス条件の評価後アンケート用紙に記入。その後、続けて区間3の窓ガラス条件の評価を記入する。記入後校舎内に入り、同じ窓ガラス条件下で片廊下から外通路も見た時評価を行う。区間3の評価記入後、区間1の評価を記入する。今回の実験場所である校舎棟4F片廊下と外通路は貸し切って行っている訳ではない。その為、被験者が外通路から片廊下を見る際、実験中に歩行者が通ることもある。最低でも一人の歩行者がいるように用意した。片廊下から外通路を見る際も同様である。片廊下から外通路を見た時の評価記入後パターン1の終了となり、次のパターン2(区間1 垂れ壁:83%、区間3 腰壁:83%)の疑似壁を設置している間、被験者には 426室で待機してもらう。パターン2の準備が出来次第、パターン1と同様な流れでパターン2の評価実験を実施する。これを1回目の実験ではパターン1~6、2回目の実験ではパターン1~5まで実施する。全パターン実施後、426室内で被験者を対象としたヒアリング調査を実施した。 2.3 VR実験方法 2.3.1 使用したVR機器 写真35 VRヘッドセット 写真36 コントローラー 写真37 ベースステーション 写真35~37にVR実験で使用するVR機器をそれぞれ示す。写真 35のVRヘッドセットは VR空間を見る際に使用する。写真36のコントローラーはVR空間内で明るさや現在地の変更などが可能である。写真 37のベースステーションは VRヘッドセットとコントローラーに信号を送信する役割を果たす。 2.3.2 実験モデル作成から評価実験までのフロー 図13 実験モデル作成から実施までのフロー図 図13にVR実験モデルの作成から実験実施までのフロー図を示す。各段階での詳細について説明していく。 (1)ArchiCAD2019 図面を基に各窓ガラス条件の実験モデルを作成。 図14 ArchiCAD2019内での各窓ガラス条件の配置列 図14にArchiCAD2019内での各窓ガラス条件の配置列を示す。 VR実験では校舎棟の 1~6Fの窓ガラスを 1つの窓ガラス条件に統一した。図 14内の壁無し: 100%、腰壁: 83%・67%・50%、垂れ壁: 83%・67%・50%、腰・垂れ壁: 67%・50%・33%、スリットの舎棟の 83%・67%・50%・33%の合計 14種類の箇所は、実際に評価した実験モデルである。その 14棟の実験モデルを囲むように (図 14の赤枠 )、実験で使用しない校舎棟のモデルが配置した。これは、校舎棟の片廊下から外通路を見た際に、どの窓ガラス条件でも外を見た時に景色が同じにする為である。 (2)Fuzor BIM(Building Information Modeling)のビジュアライズソリューションソフトウェアである。建物やプラントなどの建築データをリアルタイムで表示し、各シミュレーション(天候コントロール /計測/オブジェクトの編集等)を実行可能。また、BIM ツールである Autodesk Revit 2016/2017/2018/2019および GRAPHISOFT ArchiCAD 18/19/20/21、 Autodesk Navisworks Manageと連携できる。Fuzorの設定は以下の通りである。 設定日時: 2018.10.15 午前 10:30 緯度:36.104706 経度:140.11042 天候:晴れ (3)VR設定[5] 図15 VR設定のフロー図 1ベースステーションの設置→2ルームスケールの設定→3トラッキングの確立→4モニター位置の指定→5床の位置の指定→6プレイエリアの設定  図15にVR設定のフロー図を示す。図16~22には VR設定の詳細を示す。 1 ベースステーションの設置 2m以上の高さで室内の対角線上にベースステーションを 2つ設置する。 2 ルームスケールの設定 「ルームスケール」(歩き回る)か「立位のみ」かで「ルームスケール」(歩き回る)を選択。 図16 ルームスケールの設定 3 トラッキングの確立 コントローラーのペアリング後、コントローラー・ヘッドセットが利用可能である事を確認。 図17 トラッキングの確立 4 モニター位置の指定 コントローラーをモニターに向けトリガーボタンを長押しして位置を決める。 図18 モニター位置の指定 5 床の位置の指定 コントローラーを部屋の中央に置いて、VR空間内での床レベルを設定。 図19 床の位置の指定 6 プレイエリアの設定 コントローラーを持って、トリガーを引きながらプレイエリアの枠を歩きまわる事で範囲指定。 図20 プレイエリアの設定 プレイエリアの枠の設定後図 21のような表示になり VRの設定は終了となる。 図21 プレイエリアの枠の設定後 7 セットアップの完了 図22 セットアップの完了 6 本実験 表12 実験実施場所と実験様子写真  表12に1回目及び 2回目の VR実験実施場所と VR実験の実施の様子を示す。  1回目の VR実験は校舎棟 4Fの 426室、2回目の VR実験は 1回目の VR実験実施後に竣工した総合研究棟 1Fの実験室で行った。1回目と2回目で実施場所が異なるのは、総合研究棟の竣工時期が理由の 1つでもあるが、それ以上にスリット状に配置した窓ガラス条件の、水平方向に窓とガラスが交互に並ぶ性質が大きい。スリット状に配置した窓ガラスは水平方向に窓とガラスが交互に並ぶ為、ある程度歩かないとガラス面積率毎の違いを感じる事が出来ない。その為、被験者は視環境評価が困難となる。最低でも区間2の 5mの長さが最低でも必要となる。その条件を満たす為には、校舎棟 4Fの426室では広さが不十分だった為、十分な広さを確保できる総合研究棟 1Fの実験室で実験を行った。また表 12内の 1回目及び 2回目の実験の様子について、写真のように被験者には、 VRヘッドセットに繋がっているケーブルを背中側に置いて歩くように説明した。ヘッドセットを装着すると現実空間の把握が困難になるため、誤ってケーブルを踏み被験者が転倒する恐れがあるからである。被験者がヘッドセット装着時には、実験実施者が VRヘッドセット付属のケーブルによる転倒がないよう実験実施者が注視して行った。これらの実験環境で VR実験モデルの視環境評価実験を実施した。 2.3.3 実験の流れ  実験の流れは以下の通りである。 (1)被験者に VR実験の内容および VR機器使用時の注意点を説明する (2)VRヘッドセットを装着 (3)校舎棟 4F外通路を歩行しながら片廊下を見る (4)VRヘッドセットを外して評価記入 (5)VRヘッドセットを装着 (6)校舎棟 4F片廊下を歩行しながら外通路を見る (7)VRヘッドセットを外して評価記入 (8)同様の流れで次の窓ガラス条件の評価を行う 2.3.4 VR実験時の VRモデル内の歩行経路 図23 VR空間内での評価位置及び歩行範囲  図23にVR空間内での評価位置及び歩行範囲を示す。VR空間内での評価位置について、 1回目は「⇔3m」、2回目「 ⇔5m」の範囲で、REAL評価実験時と同じ歩行向きで外通路及び片廊下をそれぞれ歩き評価を記入してもらう。 2.3.5 VR実験実施時の室内環境  図24に校舎棟 426室の平面図、図25に総合研究棟 101室の平面図を示す。その図内にVR機器のベースステーションの設置位置やプレイエリアの範囲、及び実験の流れを示す。 図24 校舎棟 4F426室平面図及び VR機器のベースステーション設置位置とプレイエリア範囲 図25 総合研究棟 R101室平面図及び VR機器のベースステーション設置位置とプレイエリア 2.3.6 VR実験の評価モデル 写真38~50に VR実験の外通路から見た時と片廊下から見た時の評価モデルを示す。 写真 38 1回目 VR実験の腰壁: 83%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 39 1回目 VR実験の腰壁: 67%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 40 1回目 VR実験の腰壁: 50%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 41 1回目 VR実験の垂れ壁: 83%(左:外通路、右 :片廊下 ) 写真 42 1回目 VR実験の垂れ壁: 67%(左:外通路、右 :片廊下 ) 写真 43 1回目 VR実験の垂れ壁: 50%(左:外通路、右 :片廊下 ) 写真 44 1回目 VR実験の腰・垂れ壁: 67%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 45 1回目 VR実験の腰・垂れ壁: 50%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 46 1回目 VR実験の腰・垂れ壁: 33%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 47 2回目 VR実験のスリット: 83%(左:外通路、右 :片廊下 ) 写真 48 2回目 VR実験のスリット: 67%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 49 2回目 VR実験のスリット: 67%(左:外通路、右 :片廊下) 写真 50 外 2回目 VR実験のスリット: 33%(左:外通路、右 :片廊下) 2.4 アンケート記入項目 表13 アンケート用紙内の記入項目 表13に視環境評価実験で使用するのアンケートの記入項目を示す。まず実験を開始する前に、被験者には基礎事項の「所属」、「性別」、「身長」、「聴力 (左右それぞれ記入 )」、「普段最も使用する階」、「ガラス越しに外を見る頻度」、「現段階の視環境の満足度」の 8項目を記入してもらう。その後、実験パターン1から視環境評価を始める。外通路から片廊下を見た時、または片廊下から外通路を見た時の評価時には、主に「開放感」、「安心感」、「ガラス越しの見通し」、「ガラス面積の大きさの感じ方」、「ガラス面積の許容度」、「満足度」の 6項目に関して、それぞれ表 13の評価尺度で申告してもらう。特に「満足度」はその通路環境に対する総合的な評価項目とする。また片廊下から外通路を見た時は、この 6項目の他に、「廊下の幅」、「天井の高さ」の 2項目を追加して、計 8項目に関しての評価を記入してもらう。疑似壁を設置することで、今まで見る事が出来た場所が損なわれ、空間の奥行の感じ方に影響すると考えられる。次ページに 1・2回目の REAL実験時に使用したアンケート用紙を示す。 REAL評価実験の評価記入用紙 全面ガラス窓及び疑似壁を設置した校舎棟 4Fの片廊下内・外通路を歩行後の、視環境に関する評価をこの用紙に記入して頂きます。つきまして、以下の設問に該当する番号に〇、または記入をお願いします。 基礎質問項目各項目 内の当てはまるものに〇を付けて下さい。 1.所属 氏名(1 ) 性別(1.男 2.女) 身長( cm) 聴力(右: dB左: dB) 学年(1.1年 2.2年 3.3年 4.4年) 学科(1.産業情報 2.総合デザイン 3.産業科学研究科) 専攻(1.情報科学 2.システム工学 3.産業技術学) 領域・コース(1.情報科学 2.機械工学 3.建築工学 4.環境デザイン 5.製品デザイン 6.視覚伝達デザイン) 2.校舎棟の片廊下に関する普段の使用状況 2-1最も使用する校舎棟の階はどこですか (1.1階 2.2階 3.3階 4.4階 5.5階 6.6階) 注1)214教室のある階が2階になります。注 2)〇を付けるのは一つのみです。 2-2片廊下内を通る際に、窓の外を見る頻度は? (1.全く見ない 2.あまり見ない 3.時々見る 4.よく見る) 2-3通行時、窓から情報を積極的に得ようとしていますか? (1.していない 2.あまりしていない 3.時々している 4.よくしている) 2-4視環境に関して現状の校舎棟の片廊下は、あなたにとっていかがですか ? (1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 3.外廊下から片廊下内を見た視環境に関する評価実験の質問・解答項目 3-1片廊下側を見た時の開放感はいかがでしたか? (1.閉鎖的 2.やや閉鎖的 3.ふつう 4.やや開放的 5.開放的) 3-2片廊下側を見た時の安心感はいかがでしたか? (1.不安 2.やや不安 3.ふつう 4.やや安心 5.安心) 3-3窓ガラスの面積はいかがでしたか? (1.狭い 2.やや狭い 3.ふつう 4.やや広い 5.広い) 3-4外廊下から室内の様子の見通しはいかがでしたか?(1.悪い 2.やや悪い 3.ふつう 4.やや良い 5.良い) 3-5その窓ガラスの面積は許容できますか?(1.許容できない 2.やや許容できない 3.やや許容できる 4.許容できる) 3-6あなたにとってその窓ガラスは総合的にどうでしたか?(1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 基準(評価位置✖3~4、疑似壁設置位置1と3) 4.片廊下内から外を見た視環境に関する評価実験の質問・解答項目 4-1廊下の幅はどのように感じましたか? (1.狭く感じる 2.やや狭く感じる 3.ちょうど良い 4.やや広く感じる 5.広く感じる) 4-2廊下の高さはどのように感じましたか? (1.低く感じる 2.やや低く感じる 3.ちょうど良い 4.やや高く感じる 5.高く感じる ) 4-3 開放感はいかがでしたか? (1.閉鎖的 2.やや閉鎖的 3.ふつう 4.やや開放的 5.開放的 ) 4-4 安心感はいかがでしたか? (1.不安 2.やや不安 3.ふつう 4.やや安心 5.安心 ) 4-5窓ガラスの面積はいかがでしたか?(1.狭い 2.やや狭い 3.ふつう 4.やや広い 5.広い) 4-6窓からの外の様子の見通しはいかがでしたか?(1.悪い 2.やや悪い 3.ふつう 4.やや良い 5.良い) 4-7その窓ガラスの面積は許容できますか?(1.許容できない 2.やや許容できない 3.やや許容できる 4.許容できる) 4-8あなたにとってその窓ガラスは総合的にどうでしたか?(1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 4-7で「3.やや許容出来ない」、「4.許容できない」と答えた方に聞きます。 4-9そのように答える理由を教えてください。下の選択しで「 4.その他」と回答した方は、番号を上の表に記後、その内容を下の表に記入してください。※複数回答可。複数回答の場合、一つの記入欄の中に左から最も影響の強い順に番号を記入してください。 (1.垂れ壁で上の様子がよく見えない 2.腰壁で下の様子がよく見えない 3.視覚情報をもっと多く得たい 4.その他) 「4その他」の理由: 2.5 REAL実験結果及び考察 2.5.1被験者 被験者の条件は以下の項目とする 1 聴覚障害を有する学生 2 20歳以上であること (研究倫理の面を考慮して ) 3 2回目の実験は 1回目の実験を受けた者 表14 1回目の実験の被験者数 (天候・男女別 ) 表15 2回目の実験の被験者数 (天候・男女別 ) 図26 1回目の被験者数 (天候・男女別 ) 図27 2回目の被験者数 (天候・男女別 )  表14に1回目の実験の被験者数 (天候・男女別 )、それを図化したのを図 26に示す。また表 15には2回目の実験の被験者数 (天候・男女別)、それを図示したのを図 27に示す。  1回目の被験者数は 38名(男性:20名、女性 18名)、2回目は 30名(男性: 15名、女性 15名)のデータ数である。被験者条件3の「2回目の実験は 1回目の実験を受けた者」を実験条件とした理由としては、被験者を同一人物とすることで 1回目と 2回目の実験条件を揃える為である。しかし、2回目の被験者数が1回目より少ないのは、卒業した学生と都合が合わない学生が若干名おり、その人数を差し引いた為である。 表16 1回目のREAL実験の被験者の身長分布 表17 2回目のREAL実験の被験者の身長分布 図28 1回目のREAL実験の被験者の身長分布 図29 2回目のREAL実験の被験者の身長分布 表18 1回目の被験者の左右聴力平均値の分布 表19 2回目の被験者の左右聴力平均値の分布 図30 1回目の被験者の左右聴力平均値の分布 図31 2回目の被験者の左右聴力平均値の分布  表16と17に1回目と2回目の被験者の身長分布、それを図示したのを図28と29に示す。表18と19には1回目と2回目の実験の被験者の左右聴力平均値の分布、同様に図化したのを図30と31に示す。  被験者の身長の平均値について1回目の被験者の男女平均は 165.8㎝、男性が 173.0㎝、女性が 157.8㎝。2回目の被験者の男女平均は 165.8㎝、男性が173.5㎝、女性が158.0㎝となった。左右の聴力平均値については 1回目の被験者の男女平均が 101.4db、男性が 101.6dB、女性が 101.2dB。2回目の被験者の男女平均が 101.9db、男性が 101.9dB、女性が 101.8dBであった。 2.5.2 校舎棟の片廊下に関する普段の使用状況 2-1 最も使用する校舎棟の階はどこですか (1.1階 2.2階 3.3階 4.4階 5.5階 6.6階) 図32 被験者が普段最も使用するフロア  図32に被験者が普段最も使用するフロアの集計結果を示す。 1階は 9人、2階は 0人、3階が 6人、4階が 14人、5階が 5人、4階が 4人であった。 2階は主に 1年次に使用すること多く、2階の申告者数が 0人だったのは、今回の実験の被験者条件で 20歳以上の為 1年次の被験者はいなかったことが影響した。 2-2 片廊下内を通る際に、窓の外を見る頻度は? (1.全く見ない 2.あまり見ない 3.時々見る 4.よく見る) 図33 片廊下内を通る際に窓の外を見る頻度  図33に片廊下内を通る際に窓の外を見る頻度の集計結果を示す。被験者の中に「 1.全く見ない」という該当者はなく、全員少なからず片廊下から外通路を見る際に情報を得ていることが分かった。最も多いのは「 3.時々見る」で申告者数が 18人で、その次が「4.よく見る」の 11人、次いで「2.あまり見ない」の 9名であった。 REAL実験終了後のヒアリング調査より、窓の外を見る目的は、人の気配や手話でのコミュニケーションの為、外の様子特に天候の把握、気分転換、の報告があった。 2-3 通行時、窓から情報を積極的に得ようとしていますか? (1.していない 2.あまりしていない 3.時々している 4.よくしている) 図34 窓から情報を得る積極性  図34に窓から情報を得る積極性ついての集計結果を示す。「3.時々している」の 17人が最も多く、「1.していない」の 3人が最も少ない結果であった。また積極的に情報を得ようとしている (3.時々している、 4.良くしている )の該当者数は計 25名/38名中となり、全体の約 65%の被験者が、普段から積極的に窓から情報を得る機会があることが分かった。 2-4視環境に関して現状の校舎棟の片廊下は、あなたにとっていかがですか ? (1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 図35 普段の使用感に関する満足度  図35に普段の使用感に関する満足度の集計結果を示す。満足よりの申告者数 (4.やや満足、 5.満足)は 20名/38名中と半数以上であった。しかし、残りの約半数は「 3.どちらでもない」の回答結果であった。 2.5.3 心理量変化 【開放感】 開放感はいかがでしたか? (1.閉鎖的 2.やや閉鎖的 3.ふつう 4.やや開放的 5.開放的) 図36 外通路から見た時の「開放感」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図37 片廊下から見た時の「開放感」に各壁種類の評価平均値の比較  図36に外通路から片廊下を見た時、図 37に片廊下から外通路を見た時の「開放感」に関する各窓ガラス条件での評価平均値についてそれぞれ示す。  評価平均値を窓ガラス条件で比較すると図 36と図 37で共通して、ガラス面積率 66%の時の垂れ壁のみ「閉鎖的」寄りの結果となった。この時の評価平均値は図36の外通路で 2.32、図37の片廊下では 2.13であった。他の壁種類と比較して垂れ壁は開放感を損なわれやすいことが分かる。また図37の垂れ壁 83%ではすでにほかの壁種類と差が出始めている。垂れ壁が庇的役割を果たし片廊下内に入る日射が制限され明るさが変わったことが原因だと考えられる。 【安心感】 安心感はいかがでしたか? (1.不安 2.やや不安 3.ふつう 4.やや安心 5.安心) 図38 外通路から見た時の「安心感」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図39 片廊下から見た時の「安心感」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図38に外通路から片廊下を見た時、図39に片廊下から外通路を見た時の「安心感」に関する各窓ガラス条件での評価平均値についてそれぞれ示す。  「開放感」ではガラス面積率増加に伴い、評価平均値が比較的常に比例した形で増加した。対して「安心感」では、各ガラス面積率の時の腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の評価平均値と、ガラス面積率 100%の評価平均値とで比較すると、ある一定のガラス面積率 (腰壁: 66%、垂れ壁: 83%、腰・垂れ壁: 50%)まではガラス面積率 100%の評価平均値との差が小さい。しかし、そのある一定のガラス面積率を境に、ガラス面積率が減少すると、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の評価平均値に不安になる傾向が見られた。スリットに関してはガラス面積率が増加すると、評価平均値も比較的緩やかな曲線を描く形で増加が見られた。 【窓面積の大きさの感じ方】 窓ガラスの面積はいかがでしたか? (1.狭い 2.やや狭い 3.ふつう 4.やや広い 5.広い) 図 40 外通路から見た時の「窓面積」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図 41 片廊下から見た時の「窓面積」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図40に外通路から片廊下を見た時、図 41に片廊下から外通路を見た時の「窓面積の大きさの感じ方」に関する各窓ガラス条件での評価平均値についてそれぞれ示す。  ガラス面積率が減少しても窓面積の大きさの感じ方は変わらないというような特異な例は見られず、壁種類に関係なくガラス面積率が減少すると、ガラス面積の大きさの感じ方も小さく感じる結果となった。但し垂れ壁は同じ面積率でもほかの壁種類よりも狭く感じる傾向にあった。 【見通し】 見通しはいかがでしたか? (1.悪い 2.やや悪い 3.ふつう 4.やや良い 5.良い) 図 42 外通路から見た時の「見通し」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図 43 片廊下から見た時の「見通し」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図42に外通路から片廊下を見た時、図43に片廊下から外通路を見た時の「窓面積の大きさの感じ方」に関する各窓ガラス条件での評価平均値についてそれぞれ示す。  全体的な傾向として、同じガラス面積率で見通しの良い壁種類は、腰・垂れ壁、スリット、腰壁、垂れ壁の順に良い傾向にあった。また図 43の片廊下からスリット:ガラス面積率 50%と 67%間で同等の見通しが確保されている事が分かった。その他、図 42の腰壁:ガラス面積率 83%を同じガラス面積率 83%の垂れ壁及びスリットと比較した時に評価平均値に差が見られる。他の項目でも同様に評価平均値の値は見られ腰壁がやや少し低い傾向ではあったが、「見通し」の評価項目程はっきりとした差ではなかった。腰壁 83%の疑似壁高さ 400mmはちょうどヒトの膝ぐらまでの高さだが、その部分が見えなくなるだけでも見通しに影響があることが分かった。 【廊下の幅・天井の高さ】 廊下の幅はどのように感じましたか? (1.狭く感じる 2.やや狭く感じる 3.ちょうど良い 4.やや広く感じる 5.広く感じる ) 廊下の高さはどのように感じましたか? (1.低く感じる 2.やや低く感じる 3.ちょうど良い 4.やや高く感じる 5.高く感じる ) 図 44 片廊下の「廊下の幅の感じ方」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図 45 片廊下の「廊下の天井高さの感じ方」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図44に片廊下の「廊下の幅の感じ方」、図 45に「廊下の天井高さの感じ方」の集計結果を示す。幅の感じ方で壁種類毎に大きな差は見られなかったが、高さの感じ方については垂れ壁がほかの壁種類よりも低く感じる傾向にあった。 【許容度】 その窓ガラスの面積は許容できますか? (1.許容できない 2.やや許容できない 3.やや許容できる 4.許容できる) 図 46 外通路から見た時の「許容度」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図 47 片廊下から見た時の「許容度」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図46に外通路から片廊下を見た時、図 47に片廊下から外通路を見た時の「窓ガラス面積の許容度」に関する各窓ガラス条件での評価平均値についてそれぞれ示す。  各窓ガラス条件で評価平均値の値が 2.5未満の「許容できない」側となったガラス面積率を見ていくと、図 46の外通路では腰壁:50%、垂れ壁: 50%・67%、腰・垂れ壁: 33%、スリット 33%となった。図 47の片廊下でも同様であった。つまり、評価平均値の値が 2.5より大きい「許容できる」側に該当するガラス面積率の範囲が最も狭い壁種類は垂れ壁である。その次は腰壁で、腰・垂れ壁とスリットはほぼ同等であった。 【満足度】 あなたにとってその窓ガラスは総合的にどうでしたか? (1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 図 48 外通路から見た時の「満足度」に関する各壁種類の評価平均値の比較 図 49 片廊下から見た時の「満足度」に関する各壁種類の評価平均値の比較  図48に外通路から片廊下を見た時、図 49に片廊下から外通路を見た時の「満足度」に関する各窓ガラス条件での評価平均値について示す。 図 48と図 49の全体的な傾向に、各ガラス面積率でスリットの壁種類の満足度が高い傾向にある。またガラス面積率 83%未満のガラス面積率では、常に垂れ壁の評価平均値が最も低く「不満」よりの評価平均値であった。 【晴れと曇りの日の評価結果の違い】 図 50 片廊下の晴れと曇りの日のデータ比較 図 51 外通路の晴れと曇りの日のデータ比較  各評価項目のデータを晴れの日と曇りの日のに分けて、評価平均値を比較したのを図 50に片廊下から見た時、図 51に外通路から見た時をそれぞれ示す。各図ともに各壁種類のガラス面積率の時の開放感、安心感、窓ガラス面積の大きさの感じ方、見通し、許容度、満足度の評価項目の各評価平均値を、横軸に晴れの日のデータ、縦軸に曇りの日のデータをプロットした図である。  図 50の晴れの日と曇りの日のデータを比較した時、曇りの日のデータより晴れの日のデータの方が、評価平均値が大きい結果となっている。図 51も同様である。このような結果になったのには日射による明るさが影響した為と考えられる。晴れの日と曇りの日で視環境評価に違いが出る事を把握する必要性がある。 【不満足率】  満足度に関して、否定側申告者数 (やや不満、不満 )が全体に占める割合を不満足率として分析を行う。表 20に「満足度」の否定側申告者数と肯定側申告者数を示す。 表 20「満足度」の否定側申告者数と肯定側申告者数 図 52 外通路及び片廊下から見た時のガラス面積率に対する「不満足率」の関係  図52に表20で示した否定側申告者数について、外通路から片廊下を見た時と、片廊下から外通路を見た時の、不満足率をそれぞれ示す。図内の実線は片廊下から外通路を見た時の不満足率、破線は外通路から片廊下を見た時の不満足率を示している。  図52の外通路の不満足率に関して、垂れ壁はガラス面積率 83%から 67%へ減少した時、不満足率が 2.6%から 31.6%と急激な増加が見られる。腰壁はガラス面積率 67%から 50%の時、不満足率が 13.2%から 60.5%へ増加、腰・垂れ壁はガラス面積率 50%から 33%の時、不満足率が 10.5%から 76.3%へ増加、スリットはガラス面積率 67%から50%の時、不満足率が 10.0%から 30.0%へ増加した。各壁種類であるガラス面積率に達した時、それぞれ大きく不満足率が増加する傾向にある。  この傾向は片廊下も同様で、垂れ壁はガラス面積率 83%から 67%へ減少した時、不満足率が 7.9%から 57.9%と急激な増加、腰壁はガラス面積率 67%から 50%の時、不満足率が 18.4%から 42.1%へ増加。腰・垂れ壁はガラス面積率 50%から 33%の時、不満足率が 10.5%から 63.2%へ増加。スリットはガラス面積率 67%から 50%の時、不満足率が 6.7%から 23.3%へ増加した。 壁無し:100%と各窓ガラス条件での有意差 表 21 壁無し 100%と各窓ガラス条件のカイ二乗検定条件 自由度 1 N 腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁=38、スリット=30 有意水準 p<0.01 要因 1否定側解答者数、2肯定側解答者数 要因 否定側解答 1.不満2.やや不満 肯定側解答要因3.どちらでもない4.やや満足5.満足 帰無仮説 壁無し:100%と各窓ガラス条件とで差はない 対立仮説 壁無し:100%と各窓ガラス条件とで差はある  表21にカイ二乗検定の有意差検定についての検定条件を示す。  自由度=1、有意水準P <0.01の時に、壁無し: 100%と各窓ガラス条件に有意差があるかどうかカイ二乗検定より表 21の条件で検定を行った。表22に「満足度」の壁無し: 100%と各窓ガラス条件のχ二乗検定結果を示す。 表 22「満足度」の壁無し 100%と各窓ガラス条件のχ二乗検定結果  表22内の黄色で塗りつぶした箇所は、有意水準が 1%を下回り有意差が見られた窓ガラス条件である。満足度の外通路及び片廊下のカイ二乗検定による有意差検定の結果は、外通路は垂れ壁:67%と 50%、腰壁:50%、腰垂れ壁:33%、スリット:50%と 33%で有意差が見られた。片廊下は、垂れ壁: 67%と 50%、腰壁:50%、腰垂れ壁:33%、スリット:33%で有意差が見られた。 2.5.4考察 外通路に関する考察 図 53 垂れ壁の各ガラス面積率で外通路からから片廊下内のヒトを見た時の様子 図 54 腰壁の各ガラス面積率で外通路からから片廊下内のヒトを見た時の様子 図 55 腰・垂れ壁のガラス面積率で外通路からから片廊下内のヒトを見た時の様子  図53に垂れ壁の各ガラス面積率で外通路からから片廊下内のヒトを見た時の様子を示す。同様に図54には腰壁、図55に腰・垂れ壁をそれぞれ示す。  2.5.3の心理量変化より、外通路から片廊下を見た時の各評価項目の評価平均値に関して、壁種類毎で比較した時、各ガラス面積率で「垂れ壁」が最も評価平均値が低い傾向にあるという共通点が見られた。「垂れ壁」が基も評価平均値が低い傾向にある点に対する考察を述べる。  外通路から片廊下を見た時に、垂れ壁の評価平均値が最も小さくなる理由として、ヒトの顔高さ付近の情報がガラス面積率の減少に伴い制限されていくからと考えられる。被験者は日常的に手話を使う環境で生活している。手話でコミュニケーションを取る際にはヒトの胸の高さ付近で行われることが多い。また手の動きだけでなく顔の表情も重要になってくる。手話でコミュニケーション取る際には、胸から顔の高さ範囲で情報伝達を行う為、ヒトの顔高さ付近の情報が重要だと考えられる。  図 54の腰壁、図 55の腰・垂れ壁の各窓ガラス面積率では、外通路から片廊下内のヒトを見た時にヒトの身体の見えなくなる範囲について、腰壁 83%と腰・垂れ壁 67%では床面から疑似壁の高さがh=400㎜である為ヒトの膝の高さ付近まで見えなくなる。同様に腰壁 67%と腰・垂れ壁 50%は床面から疑似壁高さがh=800mmでヒトの腰の高さ付近となり、腰壁 50%と腰・垂れ壁 33%では床面から疑似壁高さがh=1200mmであるため、ヒト胸の高さ付近までヒトの身体が見えなくなる。疑似壁高さが高くなりガラス面積率が減少するにつれて、片廊下内のヒトの見えなくなる範囲が大きくなるが、常に片廊下内の人の顔が把握できる状態となっている。しかし、胸の高さ付近まで疑似壁がくる腰壁 50%・腰・垂れ壁 33%では、ヒトの顔高さ付近の情報がガラス面積の減少に伴い制限される為、各評価平均値に急激な減少が見られた。  対して、図 53の垂れ壁の場合、腰壁及び腰・垂れ壁の窓ガラス条件の時と比較して、ヒトの身体について見る事が出来る範囲は大きい。それにも関わらず、垂れ壁が最も評価平均値が低い傾向になったのは、片廊下内のヒトの顔高さ付近の情報がガラス面積の減少に伴い制限されていくからと考えられる。その観点で垂れ壁の各評価項目の評価平均値を見た際、垂れ壁:83%では、「開放感」や「窓面積の大きさの感じ方」のような窓ガラス面積率が減少する物理的変化の評価項目に関しては、壁無し:100%と比較して評価平均値が減少している。しかし、その他の「安心感」「見通し」「許容度」「満足度」の 4項目では、壁無し: 100%の評価平均値と比較してその差は小さい。外通路から片廊下内の見る事が出来る範囲は狭まったが、片廊下内の歩行者のヒトの顔高さ付近の情報量の変化は小さい為だと考えられる。ここから垂れ壁: 67%へガラス面積率が減少すると、各評価項目の評価平均値にそれぞれ大きな減少が見られる。この窓ガラス条件下の場合、男女平均身長 165.8cm人の顔を把握することは可能だが、頭頂部付近に垂れ壁の下端部が迫っている状態となり、顔高さ付近の情報が狭まった状態となる。その為、 165.8cmより高い身長の場合、片廊下の人の顔の把握が困難になる可能性がある。男女平均身長 165.8cmの顔が把握できなくなる垂れ壁:ガラス面積率 50%では、同様に評価平均値の大きな減少が見られた。 片廊下に関する考察  図 56に4F片廊下から3~5F外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度を示す。片廊下及び外通路の通路中央にヒトがいると仮定した時、そのヒトの身長を被験者の男女平均身長 165.8㎝と想定した場合、視線高さ 155.0㎝[6]を基準高さとする。 4F片廊下のヒトの視線高さを基準に、4F片通路から 5F外通路のヒトを見た時の角度を A角、3F外通路のヒトを見た時の角度を B角とした時、それぞれのヒトとの視線を結ぶには 30°の角度が必要になると考えられる。また図56内の a角及びb角について、 a角は基準高さから窓の上端を結んだ角度、b角は基準高さから窓の下端を結んだ角度である。 図 56 4F片廊下から 3~5F外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度 表 23 片廊下の各評価項目の評価平均値 図 57 垂れ壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角度 図 58 腰壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角 図 59 腰・垂れ壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角度  表23に片廊下から外通路を見た時の各評価項目の評価平均値を示す。表 23内で各評価項目の評価平均値が否定側となった箇所を分かり易くする為に黄色で塗りつぶした。また、片廊下中央に在室者がいる場合を想定して、その地点からヒトの視線高さ 155.0㎝を基準とした場合、外の様子が把握できる視線角度について、各窓ガラス条件での窓ガラスの上端と下端でそれぞれ結んだ時の a角とb角の角度を、図 57に垂れ壁、図 58に腰壁、図 59に腰・垂れ壁をそれぞれ示す。また表 23の黄色塗りつぶしの箇所の窓ガラス条件は、図 57~59でも同様に片廊下内を黄色で塗りつぶしてある。  図56で示したように、壁無し: 100%では 4F片廊下中央から 3Fまたは 5Fの外通路中央にいるヒトと視線を合わせるのに、A角=30°、B角=30°の角度が必要だと考えられる。これらの角度と各窓ガラス条件での a角及び b角の比較を行う。  片廊下の各評価項目の評価平均値について表 23に示すように各評価項目の評価平均値が否定側に該当する窓ガラス条件の時の a角と b角を見る。まず図 57垂れ壁の評価平均値が否定側解答になったガラス面積率 67%の a角と b角について、 a角=8.2°、b角=54.3°と a角が 30°を大きく下回る。同様にガラス面積率 50%では、 a角=-13.5°、b角=54.3°と a各が 30°を確保出来ていない。  同様に腰壁の時の a角及び b角を見ていく。 a角は各ガラス面積率一定で 42.3°と 30°を常に超える状態である為、5F片廊下の様子が常に把握できる状態と考えられる。b角はガラス面積率 83%で 45.2°、67%で 31.9°と 30°以上または同等の角度となる。しかし、表 23で評価平均値が否定側に該当した、ガラス面積率 50%ではb角が 13.5°と 30°を下回り著しく小さくなる。 腰・垂れ壁では、各ガラス面積率で a角は常に一定で 27.8°である。 b角はガラス面積率 67%で 45.2°、ガラス面積率 50%で 31.9°と 30°を上回っている。しかし、表 23で評価平均値が否定側に該当した、ガラス面積率 33%では、b角が 13.5°と 30°を大きく下回っていた。  以上の分析より評価平均値が否定側の回答結果となる各窓ガラス条件では、a角またはb角のどちらか一方の角度が 30°を下回ると、外の上下の様子を把握する事が困難になると予想される為、評価が低くなる傾向になると考えられる。また a角およびb角がどちらとも 30°を下回る場合は著しく評価が下がる傾向にある。 表 24 壁無し:ガラス面積率 100%と各窓ガラス条件の評価平均値の差が -0.5以内の窓ガラス条件 図 60 垂れ壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角度 図 61 腰壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角 図 62 腰・垂れ壁の各ガラス面積率で視線高さと窓ガラス上端・下端をそれぞれ結んだ時の上下の角度  ここまで評価平均値の否定側解答に着目してきたが、壁無し: 100%と各窓ガラス条件の評価平均値の差が -0.5以内と比較的差が小さい窓ガラス条件について表 24の青色塗りつぶしの箇所で示す。また同様に表 24の青色で塗りつぶした箇所の窓ガラス条件は、図 60~62内でも示す。  表 24の青で塗りつぶしがよく見られた評価項目は「安心感」、「許容度」、「満足度」の 3項目であった。それらが見られた窓ガラス条件は、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%と 67%、腰・垂れ壁: 67%の時であった。これらの窓ガラス条件の時の a角とb角の合計角に着目する。  まず図 56の 4F片通路から 5F外通路及び 3F外通路の人との視線を結ぶには a角=30°、b角=30°で合計 60°であった。青色塗りつぶしの窓ガラス条件について、垂れ壁: 83%では 82.1° (a=27.8 ° ,b=54.3 ° )、腰壁: 83%で 87.6 ° (a=42.3 ° ,b=45.2 ° )、腰壁: 67%で 74.2 ° (a=42.8°,b=31.3°)、腰・垂れ壁: 83%で 73.0°(a=27.8°,b=45.2°)と、これらの窓ガラス条件の a角及びb角の合計角は全て 60°以上であった。しかし、これらの窓ガラス条件の他に垂れ壁:67%で a角と b角の合計が 62.5°と上回っているにも関わらず、壁無し: 100%との評価平均値の差は小さくない窓ガラス条件がある。これは a角が 30°を大きく下回っていることが原因と考えられる。  よって壁無し: 100%と各窓ガラス条件の評価平均値の差が小さくなる条件として、a角と b角の合計角が 60.0°以上で且つ、a角又はb角が著しく 30°を下回らない場合だと予想される。 2.5.5 まとめ 各評価項目の傾向をまとめる。 「開放感」 他の壁種類と比較して垂れ壁は開放感が損なわれやすい。 「安心感」 腰壁: 66%、垂れ壁: 83%、腰・垂れ壁: 50%までは壁無し: 100%の評価平均値との差が小さい。しかし、このガラス面積率より減少すると、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の評価平均値が不安側になる傾向が見られた。 「窓面積」 壁種類に関係なくガラス面積率が減少すると大きさの感じ方も狭く感じる結果となった。但し垂れ壁は同じ面積率でもほかの壁種類よりも狭く感じる傾向にあった。 「見通し」 全体的な傾向として、同じガラス面積率で見通しの良い壁種類は、腰・垂れ壁、スリット、腰壁、垂れ壁の順に良い傾向にあった。また片廊下から外通路を見た時、スリット: 50%と 67%間で評価平均値の差がほとんど見られなかった。 「廊下の幅と高さ」 廊下の幅の感じ方で壁種類ごとに大きな差は見られなかったが、高さの感じ方については垂れ壁がほかの壁種類よりも低い側に感じる傾向にあった。 壁無し:100%と各窓ガラス条件での有意差  壁無し: 100%と各窓ガラス条件の不満足率の有意差をカイ二乗検定より検定を行った。有意水準が 1%とした時それを下回り有意差が見られた窓ガラス条件は、外通路は垂れ壁: 67%と 50%、腰壁: 50%、腰垂れ壁: 33%、スリット: 50%と 33%で有意差が見られた。片廊下は、垂れ壁: 67%と 50%、腰壁: 50%、腰垂れ壁: 33%、スリット: 33%で有意差が見られた。 外通路から片廊下を見た時  外通路から片廊下内のヒトを見た時に見えなくなる範囲について、腰壁:83%と腰・垂れ壁: 67%では床から疑似壁高さがh=400㎜でヒトの膝の高さ付近まで見えなくなる。同様に腰壁: 67%と腰・垂れ壁:50%は床から疑似壁高さがh=800mmでヒトの腰の高さ付近となり、腰壁: 50%と腰・垂れ壁:33%では床から疑似壁高さがh=1200mmでヒト胸の高さ付近までとなり、ヒトの身体の一部が見えなくなる。各評価項目の評価平均値に関して、壁種類毎で比較した時、各ガラス面積率で「垂れ壁」が最も評価平均値が低い傾向にあるという共通点が見られた。この理由にヒトの顔高さ付近の情報がガラス面積率の減少に伴い制限される事が影響したと考えられる。 片廊下から外通路を見た時  4F片廊下の中央にいるヒトを被験者の男女平均身長 165.8㎝と想定した場合、視線高さ 155㎝を基準高さとして、そこから 5Fの外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度を a角=30°、3Fの外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度をb角= 30°とした時、その角度の合計は 60°となる。この a角及びb角に着目した時、垂れ壁: 67%では a角=8.2と 30°を著しく下回る。 50%では a角とb角共に 30°を下回る。腰壁: 50%と腰・垂れ壁 33%もb角が 30°を下回っている。また、壁無し :100%と評価平均値の差が比較的小さい、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%と 67%、腰・垂れ壁 67%の窓ガラス条件では a角とb角の合計角が 60°を上回り且つ、 a角とb角の角度が 30°を著しく下回っていない。これらの結果より、 a角とb角のどちらか、又は双方が 30°を下回りその合計角が 60°を下回る場合、各評価項目の評価平均値が低くなると予想される。 今後の課題  本実験では聴覚障害者に配慮された建物に対して、主な使用者である聴覚障害者の心理量変化に着目して視環境評価実験を行った。しかし、校舎棟は大学の事務の方や先生方など健聴者も日常的に使用する。この健聴者と聴覚障害者の心理量の変化の違いについては明らかにされておらず今後の課題と言える。 2.6 VR実験結果と REAL評価実験結果の比較及び考察 2.6.1 VR実験結果と REAL評価実験の比較 【開放感】 開放感はいかがでしたか? (1.閉鎖的 2.やや閉鎖的 3.ふつう 4.やや開放的 5.開放的) 図 63 外通路「開放感」の VRと REAL実験の評価平均値の比較 図 64 片廊下「開放感」の VRと REAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「開放感」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図63に外通路から片廊下を見た時、図64に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  全体的な傾向として、 VR実験結果よりもREALの方が開放的な評価結果となっている。また図63と図64で共通して 2回目VR実験で行ったスリット状に配置した窓ガラス条件の時は、 VR実験とREAL実験の各評価平均値の差が小さい。しかし、それ以外の壁種類では各ガラス面積率でVR実験とREAL実験の各評価平均値で差が見られる。 【安心感】 安心感はいかがでしたか? (1.不安 2.やや不安 3.ふつう 4.やや安心 5.安心) 図 65 外通路「安心感」の VRと REAL実験の評価平均値の比較 図 66 片廊下「安心感」の VRと REAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「安心感」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図 65に外通路から片廊下を見た時、図 66に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  図65と図66共に腰・垂れ壁: 66%の時に、REALと VRとで差が大きい。腰・垂れ壁: 66%は垂れ壁: 83%と、腰壁: 83%の疑似壁を組み合わせた窓ガラス条件だ。垂れ壁: 83%と腰壁: 83%を見ると、 VRとREALとで差が大きいだけでなく、壁無し: 100%よりも評価が良い結果となった。また垂れ壁は各ガラス面積率で常に VRの方が安心感よりの回答結果となった。スリットに関しては、ガラス面積率 67%の時に、VRより REALの方がとやや安心という結果となった。 【窓面積の大きさの感じ方】 窓ガラスの面積はいかがでしたか? (1.狭い 2.やや狭い 3.ふつう 4.やや広い 5.広い) 図 67 外通路「窓面積」の VRとREAL実験の評価平均値の比較 図 68 片廊下「窓面積」の VRとREAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「窓面積の大きさの感じ方」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図67に外通路から片廊下を見た時、図68に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  図67と図68で共に REALとVRとで差が最も小さい壁種類はスリットであった。腰壁及び腰垂れ壁、スリットの壁種類のガラス面積率ではREALとVRの評価平均値の値とで一致する箇所も見受けられたが、垂れ壁では常に REALより VRの方が窓面積を大きく感じる結果となった。 【見通し】 見通しはいかがでしたか? (1.悪い 2.やや悪い 3.ふつう 4.やや良い 5.良い) 図 69 外通路「見通し」の VRと REAL実験の評価平均値の比較 図 70 片廊下「見通し」の VRと REAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「見通し」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図 69に外通路から片廊下を見た時、図 70に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  図 69では垂れ壁及び腰壁:83%と67%、腰・垂れ壁:66%で REALと VRと差が見られ VRの方が見通しがよいという結果となった。その他の窓ガラス条件では比較的差は小さい。図 70の片廊下では、垂れ壁及び腰壁:83%、垂れ壁及び腰垂れ壁:67%で比較的大きな差が見受けられた。垂れ壁及び腰壁とスリットの各ガラス面積率 50%でもやや差が見られた。垂れ壁は全体的な傾向として VR方が良い側になる傾向に当てはまるが、腰壁とスリットでは、やや、 REALの方が良いという傾向であった。 【許容度】 その窓ガラスの面積は許容できますか? (1.許容できない 2.やや許容できない 3.やや許容できる 4.許容できる) 図 71 外通路「許容度」の VRと REAL実験の評価平均値の比較 図 72 片廊下「許容度」の VRと REAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「許容度」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図71に外通路から片廊下を見た時、図72に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  図71では腰壁:50%と腰・垂れ壁:33%以外の窓ガラス条件では、REALよりVRの方の評価平均値が高い。スリットでも同様の傾向であるが、他の壁種類のガラス面積率とで比較した時REALとVRとの差は小さい。図72でも同様な結果であった。 【満足度】 あなたにとってその窓ガラスは総合的にどうでしたか? (1.不満 2.やや不満 3.どちらでもない 4.やや満足 5.満足) 図 73 外通路「満足度」の VRと REAL実験の評価平均値の比較 図 74 片廊下「満足度」の VRと REAL実験の評価平均値の比較  REAL実験及び VR実験の「満足度」の評価項目に関する評価平均値の比較について、図73に外通路から片廊下を見た時、図74に片廊下から外通路を見た時、をそれぞれ示す。  垂れ壁、腰壁、腰・垂れ壁は今までと同じような傾向が見られたが、スリットでは REALより VRの方評価が低い結果となった。 2.6.2 考察及びまとめ 図 75 各壁種類での VR実験結果と REAL実験結果の差の簡略図  図75に図63~74の外通路及び片廊下での VR実験結果とREAL実験結果との差の傾向を簡略化したものを示す。各壁種類での全体的な傾向を述べる。  まず垂れ壁の特徴について、図 63~74の外通路及び片廊下の結果ですべての図で平均値は重なることはなく、REAL実験結果より VR実験結果の方の評価平均値が高いまま平行線をたどるような傾向となっている。またガラス面積率 67%と 83%の時では、VR実験結果と REAL実験結果との差が大きくなることがある。  腰壁は全体的にガラス面積率 67%と 83%で VR実験結果と REAL実験結果との差が大きく、ガラス面積率 50%と 100%で評価平均値が一致して一部一致・平行型になる傾向にある。また他の壁種類では外通路及び片廊下では同じような傾向であったが、腰壁の VRでは外通路と片廊下とで傾向が異なる。 VR外通路では常に REALの結果よりも評価平均値が高い結果であった。しかし、VR片廊下ではガラス面積率 67%の時に、 REAL実験結果と VR実験結果が一致若しくはその差が小さくなり、ガラス面積率 50%の時に REAL実験結果を下回る数値となる。  腰・垂れ壁では、ガラス面積率 33%と 50%までは、REAL実験結果と VR実験結果が一致若しくはその差が小さく、ガラス面積率 67%の時に分岐するかのように、 REAL実験結果より VR実験結果の方の評価平均値が高い傾向にある。  スリットではほかの壁種類と比較して、各ガラス面積率で VR実験結果と REAL実験結果が一致若しくはその差が小さい傾向にあった。腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁よりも評価平均値が一致した理由として、 VR実験時の歩行距離が 1つの可能性として考えられる。スリットの壁種類の VR実験を行う際、 REAL実験の予備実験で被験者より、「水平方向に窓と疑似壁が並ぶ為歩行距離が短ければ視環境評価が難しいという」知見を得ていたことから、スリットの VR実験を行う際、腰壁、垂れ壁、腰垂れ壁の VR実験を行った校舎棟 4F426室では、最大で歩行距離を 3mしか確保できない事から、より歩行距離を確保できる実験室でスリットの評価実験を行った。この歩行距離の実験条件の違いによってこのような結果になった事も考えられる。  VR実験では壁の色や窓の大きさなど様々な条件変更が容易であり、現実空間では本来困難な実験条件を VR実験では可能となる。その点でこのような窓ガラス条件などの検討を行う際に有効な実験方法であると考えられるが、VRで得た実験結果と現実空間で得た実験結果に差が大きく見られるようでは有効的手段と言えない。その結果に差が見られた原因に、 VR空間内での評価歩行距離が可能性として考えられる。またそれだけでなく、 VRヘッドセットの視野角が 110°[3]であり現実空間でみる視野角と異なることで見え方に影響が出る可能性も考えられる。但し VR実験は条件変更が容易な他に、天候や明るさなどの条件統一が可能な点や、実験時間の短縮により多くのサンプルデータ数の収集が可能な点で優れている。今後 VR実験で更なる検討を行う際には、REAL実験と VR実験の結果に差が見られた原因に考えられる評価歩行距離の長さに留意して VR実験を行う必要がある。この評価歩行距離や視野角の違いによる実験結果への影響は現段階で把握できておらず今後の課題と言える。 第3章 片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響 第3章 片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響 3.1数値計算概要  感度分析とは建築で言えば、構造物の計算モデルを構成する要因に着目し、その要因に変更を加えたとき、その構造物のアウトプットがどれだけ変化するかを調べる手法である。本数値計算では共用空間である片廊下の窓ガラス面積や仕様、建物方位を変更した場合、片廊下の温熱環境や研究室の暖冷房負荷に及ぼす影響を定量的に把握することを目的とする。以下にパラメータの詳細を示す。 パラメータ1 ガラス面積率 ガラス面積率 100%、83%、67%、50%、33%を実施。本計算では外通路やガラス屋根などによる片廊下内へ差し込む影の影響を考慮していない為壁種類については考慮しない。 パラメータ2 建物方位 片廊下の向きについて西向き、東向き、南向き、北向きの時の各ガラス面積率での計算を行う パラメータ3 窓仕様 単板ガラス熱貫流率 6ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 85.6%,日射反射率 7.7% ペアガラス熱貫流率 3.49ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 73.7%,日射反射率 13.4% 遮熱シート熱貫流率 4.5ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 54%, 日射反射率 25% 使用ソフト…NETS(Network Model Simulation Program)[8]  建築伝熱・換気予測計算プログラムである。建物の用途や形状に関わりなく建築モデル作成の自由度が高く、実際に起こる様々な変化を想定でき現実に近い予測が可能である。居室の温冷感、空調負荷算出、空気質の検討、結露の検討が可能。NETSでは熱回路網や換気回路網として計算モデルの作成が可能で、対象とする系を連立方程式的なシステムで扱われる。通常、建築の伝熱や換気の現象を構成要素に分解し、壁一枚の伝熱や、開口一つの空気通過を計算するだけであれば、必ずしも連立方程式で考える必要はない。しかし個々の要素は単純でも、連成した全体の挙動になれば難しくなる。この問題に適した理論がシステム理論であり、システム理論の基本方程式はベクトル・マトリックス表示の状態方程式である[9]。この基本方程式を構成するのが熱・換気回路網モデルである。また建築学会でも金政秀らによる「ガラス建築群の将来予測モデルによるファサード熱性能に関する研究」 [10]や、伊藤浩士らによる「東京都のガラス建築におけるファサード熱設計手法の設計意図と熱性能」 [11]、大西由哲らによる「交詢ビルディング・ダブルスキンの結露対策法とその検討」 [12]など、NETSを使用した研究実績が多く報告されている。 NETS計算プログラム[13] [14]  図76にNETS計算プログラムを示す。 NETSは数値的な入力データを受け取り、数値的な出力データとして計算結果を出すソルバーである。 Netsgenはユーザーがお絵かき感覚でモデルデータの作成が可能であり、そのモデルの計算の実行後にNetsoutでは計算結果を図形的に表示できるプログラムである。 図 76 NETS計算プログラム 3.2 数値計算モデル及び条件 プロジェクト情報及び計算モデルの入力寸法  表25にNETS計算モデルのプロジェクト情報を示す。研究室内の空調機について冷房期間を 6月 20日~9月 30日とし、暖房期間は 11月 10日~3月 10日とした。この期間は筑波技術大学で実際に行われている期間である。空調機の稼働時間帯は 9:00~18:00とした。また休日は研究室の空調をOFFと設定する。気象データは 2000年版標準年 EA気象データ・つくば市 (長嶺)を使用する。  次に図77と図78にそれぞれ計算モデルの平面図及び断面図を示す。これらの寸法は大学施設図面を基に入力を行った。また計算モデルは、筑波技術大学の中でも特に暑熱な環境な 5~6階の片廊下と研究室を対象に数値解析を行った。 表25 プロジェクト情報 プロジェクト情報 冷房期間 6月20日~9月30日(※1) 暖房期間 11月10日~3月10日(※2) 休日定義 土曜日、日曜日(※3) 気象データ 茨城県つくば市長峰(緯度36.42、経度140.00) (※1~2)筑波技術大学で実施されている冷房期間と暖房期間 (※3)休日は空調機器を使用しない 図 77 計算モデルの研究室及び片廊下の平面図 図 78 計算モデル校舎棟 5~6Fの断面図 壁体構成  図77~78で示した窓の構成と窓透過後の日射分配率を表 26と 27に示す。1屋根~7間仕切り壁2の壁構成の詳細については図 79~85に示す。 窓ガラス…透明フロートガラス 3㎜(日射透過率 85.6%、日射反射率 7.7%) 表 26 廊下窓ガラス透過後の日射分配率 表 27 研究室窓ガラス透過後の日射分配率 図 79 1屋根の材料構成 図 80 2天井の材料構成 図 81 3床の材料構成 図 82 4外壁の材料構成 図 83 5外壁(腰壁)の材料構成 図 84 6間仕切り壁1の材料構成 図 85 7間仕切り壁 2の材料構成 日パターンの実施スケジュール  表28に内部発熱条件の詳細スケジュール、表 29に空調の詳細スケジュールをそれぞれ示す。  まず研究室の内部発熱条件について、照明器具 (144W)、PC(100W)、人(75W)の発熱を想定した。片廊下は人為与条件について照明器具のみである。照明の点灯時間について暖房期の方が 1時間早いのは、季節により日照時間が異なるためである。次に空調スケジュールついて、空調機器は研究室のみとした。空調の稼働期間や設定値は施設で実際に使用されている条件を入力した。設定湿度は暖冷房期共に 40%、設定温度は冷房期 28℃、暖房期 21℃とした。また空調の仕事率は実際に使用している機器の 900Wとした。 表 28 内部発熱条件の詳細スケジュール 表 29 空調の詳細スケジュール 換気条件 表30 換気条件 自然換気条件  廊下 ⇋ 外気 :1.0回/h 研究室 ⇋ 外気 :0.5回/h 廊下 ⇋ 研究室:0.2回/h  表30に片廊下及び研究室の自然換気条件を示す。また片廊下と外気、研究室と外気との自然換気の他に、研究室のドアによるによる片廊下間との自然換気も想定した。 数値計算モデル  図86~88に NETSで作成した計算モデルを示す。 図 86 数値計算モデル 1(熱回路網モデル ) 図 87 数値計算モデル 2(換気回路網モデル ) 図 88 数値解析モデル 3(ガス回路網モデル ) 3.3 パラメータ1窓ガラス面積率の数値計算結果 3.3.1 冷房期の片廊下及び研究室の日平均温度 5~6階片廊下(冷房期:7月 15日~8月 15日)  冷房期( 6月 20日~9月 30日)のうち、特に暑い日が続く 7月 15日~8月 15日の 1か月間の期間に関して、大学施設がよく使用される 9:00~18:00の時間帯の室内温度データを抽出し、各窓ガラス面積率での日平均を求めた。その結果を表 31に 5階片廊下の各ガラス面積率での日平均気温、表 32に 6階片廊下の各ガラス面積率での日平均気温を示す。また図 89に各日の積算水平面全天日射量、図 90~91に表 31と表 32を図示したものをそれぞれ示す。図90~91の「片廊下_(数字)%」の「(数字)%」は片廊下の窓のガラス面積率 (100%,83%,67%,50%,33%)を示す。  図90及び図 91の全体的の特徴に、ガラス面積率が小さくなる事で片廊下内に侵入する日射量が制限される為、片廊下内の温度上昇が小さくなる点が見られた。日射量と照らし合わせて、各ガラス面積率の気温データを比較すると、積算水平面全天日射量が 15000KJ/日を超えると各ガラス面積率の日平均気温に温度差が見られ始めた。比較的日照時間が長い天候が晴れの時は、各ガラス面積率間の温度差が大きくなり、その差はガラス面積率 100%とその他のガラス面積率とで最大で、ガラス面積率 83%が 0.8℃、ガラス面積率 67%で 1.7℃、ガラス面積率 50%で 2.7℃、ガラス面積率 33%で 3.5℃であった。積算水平面全天日射量が 15000KJ/日を下回った時、各ガラス面積率の日平均気温に差が見られなくなるのは天候が曇りの為だと予想される。 表 31 冷房期 5F片廊下の 9~18時の日平均気温 表 32 冷房期 6F片廊下の 9~18時の日平均気温 図 89 7/16~8/15の積算水平面全天日射量 図 90 冷房期 5F片廊下の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 図 91 冷房期 6F片廊下の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 5~6階研究室(冷房期:7月 15日~8月 15日)  7月15日~8月 15日の 9:00~18:00の大学が良く使用される時間帯において、 5階及び 6階の研究室の室内空気温度の日平均を、表 33に 5階研究室の各ガラス面積率での日平均気温、表 34に 6階研究室の各ガラス面積率での日平均気温を示す。また図92各日の積算水平面全天日射量、表33と表 34をグラフ化したのを図 93~94にそれぞれ示す。図93~94の「研究室 _(数字)%」の「(数字)%」は片廊下の窓のガラス面積率 (100%,83%,67%,50%,33%)を示す。  図93及び図 94の研究室の日平均温度グラフで 28℃が続くのは、平日の研究室内の空調機は 9:00~18:00の時間帯は 28℃に設定している為である。休日は冷房を設定していない為温度上昇が見られる。休日の 5~6階研究室と片廊下の日平均を比較すると、研究室では片廊下ほどガラス面積率毎での温度差が小さい結果となった。また日平均の最大値を見ても片廊下では約 38℃付近まで温度が上昇する日が見られるのに対して、研究室では約 35℃付近で最大値にも違いが見られる。その理由に、研究室の窓ガラスが片廊下程大きくない事や、東に面していることが影響していと考えられる。 表 33 冷房期 5F研究室の 9~18時の日平均気温 表 34 冷房期 6F研究室の 9~18時の日平均気温 図 92 7/16~8/15の積算水平面全天日射量 図 93 冷房期 5F研究室の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 図 94 冷房期 6F研究室の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 3.3.2 暖房期の片廊下及び研究室の日平均温度 5~6階片廊下(暖房期:12月 16日~1月 15日)  暖房期( 11月 10日~3月 31日)のうち、特に寒い日が続く12月 16日~1月15日の 1か月間の期間に関して、大学施設がよく使用される 9:00~18:00の時間帯の室内温度データを抽出し、各窓ガラス面積率での日平均を求めた。その結果を表 35に5階片廊下の各ガラス面積率での日平均気温、表 36に6階片廊下の各ガラス面積率での日平均気温を示す。また図 95に各日の積算水平面全天日射量、図 96~97に表35と表36を図示したものをそれぞれ示す。図96~97の「片廊下_(数字)%」の「(数字)%」は片廊下の窓のガラス面積率 (100%,83%,67%,50%,33%)を示す。 冷房期の積算水平面全天日射量は最大で 25000KJ/日付近に達する日もあったが、暖房期で日照時間や太陽高度の影響により、晴れている時の積算水平面全天日射量が 10000KJ/日と冷房期より半分以下である。 表 35 暖房期 5F片廊下の 9~18時の日平均気温 表 36 暖房期 6F片廊下の 9~18時の日平均気温 図 95 12/16~1/16の日積算水平面全天日射量 図 96 暖房期 5F片廊下の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 図 97 暖房期 6F片廊下の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 5~6階研究室(暖房期:12月 16日~1月 15日)  12月16日~1月15日の9:00~18:00の大学が良く使用される時間帯において、 5階及び 6階の研究室の室内空気温度の日平均を、表 37に5階研究室の各ガラス面積率での日平均気温、表 38に 6階研究室の各ガラス面積率での日平均気温をそれぞれ示す。また図 98に各日の積算水平面全天日射量、図 99~100に表 37と表 38を図示したものをそれぞれ示す。図 99~100の「研究室_(数字)%」の「(数字)%」は片廊下の窓のガラス面積率 (100%,83%,67%,50%,33%)を示す。  研究室内では 9:00~18:00で暖房 21℃にしているため、図 99と図 100の日平均温度グラフで 21℃が続く日は平日を表している。休日は冷房を設定していないため気温低下が見られる。しかし、片廊下のガラス面積率毎での差はほとんど見られなかった。 表 37 暖房期 5F研究室の 9~18時の日平均気温 表 38 暖房期 6F研究室の 9~18時の日平均気温 図 98 12/16~1/16の日積算水平面全天日射量 図 99 暖房期 5F研究室の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 図 100 暖房期 6F研究室の各ガラス窓面積率での日平均気温(9~18時の時間帯 ) 3.3.3各室の時系列温度変化及び環境評価  冷房期の8月16日(水)~22日(火)の 1週間と、暖房期の 12月 25日(月)~31(日)の 1週間の時系列温度グラフについて、室内空気温度 Taの他、MRT、OT、PMVの温熱指標を用いて、窓ガラス面積率の変化による室内の温熱環境環評価を行う。各温熱指標について下に記す。 MRT(平均放射温度)(Mean Radiation Temperature)  平均放射温度のことであり、周囲の全方向から受ける熱放射を平均化して温度表示したものである。端的に人が周囲のモノから感じる温度のことで、MRTが気温よりも高いと、周囲から受ける放射熱により暑さを感じ、逆に気温よりも低いと涼しさを感じる。室内の壁・床・天井の表面温度の平均で MRTを求めた OT(作用温度)(operative temperature)  乾球温度、気流速度、MRT、および有効体表面積などから算出する生理的温度指標である。静穏な気流条件の室内において作用温度の算出式は、(室温+MRT)/2となる。気温(空気温度)にMRT (平均放射温度 )を加算して 2で除して算出する。MRTが「人が周囲のモノから感じる温度」に対してOTは「体感温度」を示す。 PMV(予測温冷感申告 )(Predicted Mean Vote)  PMVは予測温冷感申告とも呼ばれ、人間がその時暖かいと感じるか、または寒いと感じるかを7段階の評価尺度による数値で表したものである。PMVの算出には熱的快適感に影響する 6つの要素を用いる。それは、空気温度、MRT (平均放射温度 )、相対湿度、平均風速の 4つの物理的要素と、在室者の着衣量 (clo値)と代謝量 (met値)の 2つの人間側の要素である。 表 39 PMVの 6つの要素の影響範囲及び 7段階の評価尺度  表39に空気温度、MRT (平均放射温度 )、平均風速、相対湿度、及び在室者の着衣量と代謝量の 6つの適用範囲とPMVの 7段階評価尺度 [15]の内容を示す。これら 6つの要素に関して、その複合効果をどのように評価するかについて示した理論がPMVであり温熱環境評価指数である。だが注意点として、 PMVはオフィスなど通常人が居住する比較的快適温度範囲に近い温熱環境を評価するのに適している。研究室は空調が稼働した状態で PC業務や事務作業が行われる環境である為オフィス空間と想定できる。しかし、片廊下内は室移動が目的の空間であり、オフィス作業を行う環境とは想定できない。その為片廊下の PMVはあくまでも参考値として扱う。 PMV算出数値設定条件について、空気温度、MRT (平均放射温度 )、相対湿度はモデル内の計算結果を付与するものとする。平均風速、着衣量、活動量は固定条件とした。設定値は平均風速が 0.1m/s、 在室者の着衣量 clo値は冷房期が 0.6(夏姿)、暖房期は 1.2とし、代謝量は安静状態の 1.0metを固定条件として計算を行った。 冷房期(8月 16日(水)~8月22日(火)):5~6階片廊下の時系列温度データ  図101に8月16日(水)~8月22日(火)の水平面全天日射量の時系列グラフを示す。5階及び 6階の片廊下の温熱指標について、図102~103に空気温度 Ta、図104~105に MRT、図 106~107に OT、図108~109に PMVをそれぞれ、左側に5階片廊下、右側に6階片廊下のデータを並べて各窓ガラス面積率のデータを示す。  まず5階と6階の片廊下の共通点について述べる。図 102~107の空気温度 Ta、MRT、OT、各指標を比較した時、 Ta、MRT、OTの値はほぼ等しく、指標間での差はほとんど見られなかった。水平面全天日射量が多くなる正午過ぎになると、ガラス面積率ごとでの数値差が顕著に表れる。ガラス面積率が大きくなるほど片廊下内の温度は高い。また日射が差し込まない夜間の時間帯では温度低下が激しくなる。 5階片廊下より 6階片廊下のとでフロアでの比較した時では、6階の方の数値がやや高い結果となった。 図 101 8月16日(水)~8月22日(火)の水平面全天日射量の時系列グラフ 空気温度Ta(8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 102 5階片廊下の Ta時系列グラフ (8/16~22) 図 103 6階片廊下の Ta時系列グラフ (8/16~22) MRT(平均放射温度)(8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 104 5階片廊下の MRT時系列グラフ(8/16~22) 図 105 6階片廊下の MRT時系列グラフ(8/16~22) OT(作用温度)(8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 106 5階片廊下の OT時系列グラフ(8/16~22) 図 107 6階片廊下の OT時系列グラフ (8/16~22) PMV(予測温冷感申告 )(8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 108 5階片廊下の PMV時系列グラフ(8/16~22) 図 109 6階片廊下の PMV時系列グラフ(8/16~22) 冷房期(8月 16日(水)~8月 22日(火)):5~6階研究室の時系列温度データ 図110に8月 16日(水)~ 8月 22日(火)の水平面全天日射量の時系列グラフを示す。 5階及び6階の片廊下の温熱指標について、図111~112に空気温度 Ta、図113~114に MRT、図 115~116に OT、図 117~118に PMVをそれぞれ、左側に5階片廊下、右側に 6階片廊下のデータを並べて各窓ガラス面積率のデータを示す。 まず 5階と 6階の片廊下の共通点について述べる。図111~116の空気温度 Ta、MRT、OT、各指標を比較した時、 Ta、MRT、OTの値はほぼ等しく、指標間での差はほとんど見られなかった。図 117~118のPMVについて、平日の空調が稼働している時の温冷感は「中立」又は「やや暖かい」だが、休日の空調が稼働していない日を見ると、研究室ないの温冷感は「暖かい」又は「暑い」の評価となり空調が無い場合、研究室内は暑熱な環境になることが予想される。 図 110 8月16日(水)~8月 22日(火)の水平面全天日射量の時系列グラフ 空気温度 Ta(8月16日(水)~8月22日(火)) 図 111 5階研究室の Ta時系列グラフ(8/16~22) 図 112 6階研究室の Ta時系列グラフ(8/16~22) MRT(平均放射温度 ) (8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 113 5階研究室の MRT時系列グラフ(8/16~22) 図 114 6階研究室の MRT時系列グラフ(8/16~22) OT(作用温度) (8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 115 5階研究室の OT時系列グラフ(8/16~22) 図 116 6階研究室の OT時系列グラフ(8/16~22) PMV(予測温冷感申告) (8月 16日(水)~8月 22日(火)) 図 117 5階研究室の PMV時系列グラフ(8/16~22) 図 118 5階研究室の PMV時系列グラフ(8/16~22) 暖房期(12月 25日(月)~12月 31日(日)):5~6階片廊下の時系列温度データ 図119に 12月25日(月)~12月31日(日)の水平面全天日射量の時系列グラフを示す。 5階及び6階の片廊下の温熱指標について、図120~121に空気温度 Ta、図 122~123に MRT、図 124~ 125に OT、図 126~127にPMVをそれぞれ、左側に 5階片廊下、右側に 6階片廊下のデータを並べて各窓ガラス面積率のデータを示す。 図120~125の Ta、MRT、OTについて各指標を比較した時ほとんど差は見られなかった。しかし、各指標をガラス面積率で比較すると、日射量が少ない夜間から朝にかけてはガラス面積率が大きい程気温低下が激しい。反対に日射量が多い正午過ぎになると、ガラス面積率が大きい程温度が大きくなる。つまり、ガラス面積率が大きくなるほど 1日の最高気温と最低気温の差による日較差が大きい。ガラス面積が大きいと片廊下内への日射の侵入が増加する為、片廊下内の空気は温められる。また、ガラス面積が大きいと夜間の熱損失量も大きくなる為日較差が大きくなると考えられる。 図 119 12月 25日(月)~12月 31日(日)の水平面全天日射量の時系列グラフ 空気温度 Ta(12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 120 5階片廊下の Ta時系列グラフ(12/25~31) 図 121 6階片廊下の Ta時系列グラフ(12/25~31) MRT(平均放射温度 ) (12月 (月)~12月 31日(日)) 図 122 5階片廊下の MRT時系列グラフ(12/25~31) 図 123 6階片廊下の MRT時系列グラフ (12/25~31) OT(作用温度) (12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 124 5階片廊下の OT時系列グラフ(12/25~31) 図 125 6階片廊下の OT時系列グラフ(12/25~31) PMV(予測温冷感申告 ) (12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 126 5階片廊下の PMV時系列グラフ(12/25~31) 図 127 5階片廊下の PMV時系列グラフ((12/25~31) 暖房期(12月 25日(月)~12月 31日(日)):5~6階研究室の時系列温度データ  図128に12月 (月)~12月 31日(日)の水平面全天日射量の時系列グラフを示す。 5階及び6階の片廊下の温熱指標について、図129~130に空気温度 Ta、図 131~132に MRT、図133~134にOT、図 135~136にPMVをそれぞれ、左側に 5階片廊下、右側に 6階片廊下のデータを並べて各窓ガラス面積率のデータを示す。  まず 5階と 6階の片廊下の共通点について述べる。図 129~134の空気温度 Ta、MRT、OT、各指標を比較した時、Ta、MRT、OTの値はほぼ等しく、指標間での差はほとんど見られなかった。図 135~136の PMVについて、平日の空調が稼働している時の温冷感は「やや涼しい」だが、休日の空調が稼働いていない日を見ると、研究室内の温冷感は「涼しい」又は「寒い」の評価となり空調が無い場合、研究室内は温度低下も大きくなる。 図 128 12月25日(月)~12月 31日(日)の水平面全天日射量の時系列グラフ 空気温度 Ta(12月25日(月)~12月 31日(日)) 図 129 5階研究室の Ta時系列グラフ(12/25~31) 図 130 6階研究室の Ta時系列グラフ(12/25~31) MRT(平均放射温度 ) (12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 131 5階研究室の MRT時系列グラフ(12/25~31) 図 132 6階研究室の MRT時系列グラフ(12/25~31) OT(作用温度) (12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 133 5階研究室の OT時系列グラフ(12/25~31) 図 134 6階研究室の OT時系列グラフ(12/25~31) PMV(予測温冷感申告 ) (12月 25日(月)~12月 31日(日)) 図 135 5階研究室の PMV時系列グラフ(12/25~31) 図 136 5階研究室の PMV時系列グラフ((12/25~31) 3.4 パラメータ2建物方位の数値計算結果 図 137 片廊下の建物方位が西向きの平面図 図 138 片廊下の建物方位が東向きの平面図 図 139 片廊下の建物方位が南向きの平面図 図 140 片廊下の建物方位が北向きの平面図 片廊下の建物方位を変更した時の計算モデルの平面図を、図137に片廊下が西向きの時、図138に片廊下が西向きの時、図139に片廊下が南向きの時、図140に片廊下が北向きの時をそれぞれ示す。 現状の校舎棟の片廊下は図 137のように西向きに面している。この建物方位を変えた際に片廊下の空気温度Taと研究室内の暖冷房負荷がどのように変化するのかけいさんを行う。また建物方位と同時に片廊下の窓のガラス面積率を変更した時の計算も行った。 3.4.1 冷房期の片廊下の時系列温度変化 図 141~145に冷房期の各ガラス面積率の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化をそれぞれ示す。 図 141~145で窓ガラス面積率の減少に伴い、日最高気温の温度低下が各方位で確認出来る。図内の 8/6及び 8/8の曇りの日では各方位で温度差はほとんど見られなかったが、 8/7の晴れの日では各方位差での温度差が見られた。日最高気温が最も大きくなる方位は西向きであった。その次に南向き、東向き、北向きの順となった。 図 141 冷房期:ガラス面積率 100%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 142 冷房期:ガラス面積率 83%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 143 冷房期:ガラス面積率 67%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 144 冷房期:ガラス面積率 50%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 145 冷房期:ガラス面積率 33%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 3.4.2 暖房期の片廊下の時系列温度変化 図146~150に暖房期の各ガラス面積率の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化をそれぞれ示す。 図146~150で窓ガラス面積率の減少に伴い、日最高気温の温度低下が各方位で確認出来る。図内の 1/19及び 1/20の曇りの日では各方位で温度差はほとんど見られなかったが、 1/21の晴れの日では各方位差での温度差が見られた。日最高気温が最も大きくなる方位は南向きであった。その次に西向き、東向き、北向きの順となった。冬場は夏場と比べて日射量が少ない為、日中を通して安定して日射が差し込む南向きが最も日最高気温が高くなったと考えられる。 図 146 暖房期:ガラス面積率 100%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 147 暖房期:ガラス面積率 83%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 148 暖房期:ガラス面積率 67%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 149 暖房期:ガラス面積率 50%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 150 暖房期:ガラス面積率 33%の時の各建物方位による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 3.4.3研究室の暖冷房負荷 図151~155に各ガラス面積率 (100%、83%、67%、50%、33%)の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷をそれぞれ示す。 図151~155で片廊下が東向き又は西向きの時、 6F研究室の暖冷房負荷が比較的大きく、南向きの時が最も小さい。 図 151 ガラス面積率 100%の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷 図 152 ガラス面積率 83%の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷 図 153 ガラス面積率 67%の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷 図 154 ガラス面積率 50%の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷 図 155 ガラス面積率 33%の時の各建物方位による 6F研究室の暖冷房負荷 3.5 パラメータ3窓仕様の数値計算結果 単板ガラス熱貫流率 6ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 85.6%,日射反射率 7.7% ペアガラス熱貫流率 3.4ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 73.7%,日射反射率 13.4% 遮熱シート熱貫流率 4.5ワット毎平方メートル毎ケルビン,日射透過率 54%, 日射反射率 25% 3.5.1 冷房期の片廊下の時系列温度変化 図156~160に冷房期の各ガラス面積率の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化をそれぞれ示す。  図156~160で窓ガラス面積率の減少に伴い、日最高気温の温度低下が各窓仕様で確認出来る。また図内の 8/6及び8/8の曇りの日と8/7の晴れの日共に窓仕様間での温度差が見られた。日最高気温が最も大きくなる窓仕様は複層ガラス (ペアガラス )で、その次に単板ガラス、遮熱シート有の順となった。複層ガラス(ペアガラス )の日最高気温が最も高くなったのは、熱還流率が小さくなる事で断熱性が高まり外へ逃げる熱が他の窓仕様と比較して少なくなった為と考えられる。反対に遮熱シート有では片廊下内への日射の侵入を防ぐ為日最高気温が他の窓仕様と比較して小さくなったと考えられる。 図 156 冷房期:ガラス面積率 100%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 157 冷房期:ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 158 冷房期:ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 159 冷房期:ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 160 冷房期:ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 3.5.2 暖房期の片廊下の時系列温度変化 図161~165に暖房期の各ガラス面積率の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化をそれぞれ示す。 図161~165でこれまでと同様に窓ガラス面積率の減少に伴い、日最高気温の温度低下が各窓仕様で確認出来る。また図内の 8/6及び 8/8の曇りの日と 8/7の晴れの日共に窓仕様間での温度差が見られ、日射量が多い程その温度差は大きくなる。日最高気温が最も高くなる窓仕様は複層ガラス(ペアガラス )で、その次に単板ガラス、遮熱シート有の順となった。遮熱シートは、夏場の片廊下内への日射の侵入を防ぐため温度低下を期待出来るが、日射量が少ない冬場では片廊下内に日射が入らない為他の窓仕様より片廊下内の温度が低くなる。 図 161 暖房期:ガラス面積率 100%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 162 暖房期:ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 163 暖房期:ガラス面積率 67%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 164 暖房期:ガラス面積率 50%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 図 165 暖房期:ガラス面積率 33%の時の窓仕様による 6F片廊下 Taの時系列気温変化 3.5.3 研究室の暖冷房負荷 図166~170に各ガラス面積率 (100%、83%、67%、50%、33%)の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷をそれぞれ示す。 図166~170で窓ガラス面積率の減少に伴い年間の暖冷房負荷が小さくなる事が確認出来る。また複層ガラス (ペアガラス)は単板ガラスと比較して冷房負荷が大きくなるが暖房負荷が小さくなる。逆に遮熱シート有では冷房負荷が小さくなり、暖房負荷が大きくなる。年間の暖冷房負荷を見た時、複層ガラスが最も小さく、遮熱シート有が最も大きくなる。片廊下の窓ガラス仕様やガラス面積率により研究室室の暖冷房負荷に影響があることが数値計算結果より定量的に把握した。 図 166 ガラス面積率 100%の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷 図 167 ガラス面積率 83%の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷 図 168 ガラス面積率 67%の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷 図 169 ガラス面積率 50%の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷 図 170 ガラス面積率 33%の時の窓仕様による 6F研究室の暖冷房負荷 3.6 窓ガラス面積率と不満足率及び温熱環境との関係 第2章では聴覚障害を有する学生の心理量 (開放感、安心感、窓ガラス面積の大きさの感じ方、見通し、許容度、満足度 )が、片廊下の窓ガラス条件を変えた際にどのように変化するのか明らかにした。またその空間の総合的な評価「満足度」に関して、全体の回答数に占める否定側申告者数の割合を不満足率として求めた。この不満足率に着目して、現状の壁無し: 100%と比較して不満足率の差が比較的小さい窓ガラス条件を明らかにした。 第3章では片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響を、建築伝熱・換気予測計算プログラム NETS(Networt Model Simulation Program)で数値計算を行いその影響を定量的に明らかにした。計算時のパラメータは1ガラス面積率、2建物方位、3窓仕様とした。これらの条件の時の片廊下内の空気温度や研究室内の暖冷房負荷を求めた。  本章では第2章の視環境評価結果と第 3章の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響の関係性を述べる。まず熱的影響については、各ガラス面積率の時に建物方位又は窓ガラスの仕様を変更したとき時の 8月の月平均最高気温と 1月の月平均最低気温を求めた。この平均を算出する際、片廊下が主に使用される 9:00~18:00の時間帯の最高気温及び最低気温を抽出した。これらの結果と視環境評価実験より明らかにした不満足率との関係を検討する。 3.6.1 不満足率と建物方位による熱的影響との関係 図 171 不満足率と各建物方位の時の8月の月平均最高気温の関係 表 40 壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件での最高い気温と温度差 図171に不満足率と各建物方位の時の 8月の月平均最高気温の関係、表40に建物方位で壁無し:100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件の時の月平均最高気温と温度差を示す。ガラス面積率100%以外の各ガラス面積率をn%とした時、表内のカッコ内の数字は、ガラス面積率n% ガラス面積率 100%の時の最高気温の温度差を算出した。n%は 100% 壁無し: 100%と各窓ガラス条件の不満足率の差について、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%、スリット 67%、腰・垂れ壁 50%までならガラス面積率が減少してもその差は比較的小さい。この時の各方位の 8月の平均最高気温とガラス面積率 100%の時の最高気温の温度差は表 40の通りである。どの建物方位でもガラス面積率が減少することで、8月の月平均最高気温が減少する。特にガラス面積率の減少による温度低下が最も大きいのは西向きの時であった。 図172 不満足率と各建物方位の時の 1月の月平均最低気温の関係 表41 壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件での最低気温と温度差 図172に不満足率と各建物方位の時の 1月の月平均最低気温の関係、表 41に建物方位で壁無し:100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件の時の月平均最低気温と温度差を示す。ガラス面積率 100%以外の各ガラス面積率をn%とした時、表内のカッコ内の数字は、カッコ内はガラス面積率n% -ガラス面積率 100%の時の最低気温の温度差を算出した。 壁無し: 100%と各窓ガラス条件の不満足率の差について、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%、スリット 67%、腰・垂れ壁 50%までならガラス面積率が減少してもその差は比較的小さい。この時の各方位の 1月の平均最低気温とガラス面積率 100%の時の最低気温の温度差は表 41の通りである。建物方位が西向きと北向きの時は、ガラス面積率の減少に伴い最低気温の上昇が見られた。しかし、南向き又は東向きの時はガラス面積率が減少すると最低気温が低下していく。 3.6.2 不満足率と窓仕様による熱的影響との関係 図173 不満足率と各窓仕様の時の 8月の月平均最高気温の関係 表42 壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件での最高気温と温度差 図173に不満足率と各窓仕様の時の 8月の月平均最高気温の関係、表 42に壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件の時の月平均最高気温と温度差を示す。ガラス面積率 100%以外の各ガラス面積率をn%とした時、表内のカッコ内の数字は、カッコ内はガラス面積率n% -ガラス面積率 100%の時の最高気温の温度差を算出した。 壁無し: 100%と各窓ガラス条件の不満足率の差について、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%、スリット 67%、腰・垂れ壁 50%までならガラス面積率が減少してもその差は比較的小さい。この時の各窓仕様の 8月の平均最高気温とガラス面積率 100%の時の最高気温の温度差は表 42の通りである。各窓仕様でガラス面積率が減少することで、8月の月平均最高気温が減少する。最も月平均最高気温が低かったのは遮熱フィルム有であった。 図174 不満足率と各窓仕様の時の 1月の月平均最低気温の関係 表43 壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件での最低気温と温度差 図174に不満足率と各窓仕様の時の 1月の月平均最低気温の関係、表 43に壁無し: 100%と不満足率の差が小さい窓ガラス条件の時の月平均最低気温と温度差を示す。ガラス面積率 100%以外の各ガラス面積率をn%とした時、表内のカッコ内の数字は、カッコ内はガラス面積率n% -ガラス面積率 100%の時の最低気温の温度差を算出した。 壁無し:100%と各窓ガラス条件の不満足率の差について、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%、スリット 67%、腰・垂れ壁 50%までならガラス面積率が減少してもその差は比較的小さい。この時の各方位の 1月の平均最低気温とガラス面積率 100%の時の最低気温の温度差は表 43の通りである。各窓仕様でガラス面積率が減少することで、 1月の月平均最低気温が高くなる。最も月平均最低気温が高いのはペアガラスの時であった。 3.6.3 まとめ  片廊下のガラス面積による学生の心理量と熱環境との関係を実験及び計算により明らかにした。ガラス面積率が小さくなると視環境の不満足率が指数関数的に増加するが、 8月の月平均最高気温の低下及び 1月の月平均最低気温の上昇し温熱環境的に改善が見られた。この計算条件で現状の西向きから建物方位を変えた場合、各方位で 8月の月平均最高気温の低下が見られるが、 1月の月平均最低気温の上昇は西向きと北向きのみで見られた。同じように、現状の単板窓ガラスの仕様を変更して計算を行った場合、各窓ガラス仕様で 8月の月平均最高気温の低下と 1月の月平均最低気温の上昇し全体的に温熱環境の改善が見られた。不満足率がガラス面積率 100%の時とあまり変わらないガラス面積率の条件で設計し、温熱環境を改善するのも 1つの方法と考えられる。 第4章 総括 第4章 総括 第1章 序論 聴覚障害者に配慮された建築設計に、1~6F建てで構成され、各階の片廊下と同レベルの高さに他棟へと通じる外通路が並行して配置された筑波技術大学天久保キャンパスの例がある。加えて、片廊下の外皮を床から天井の高さまで透明単板ガラスで構成することで、片廊下と外通路間でも相互に見通す事が可能となり、片廊下と外通路にいる人同士で手話等によるコミュニケーションも可能となる。聴覚障害を有する学生の耳からの情報不足を、視覚的に補うことが容易になると考えられている。しかし、片廊下には空調がなく、外部とガラス1枚で広い面積を接している為、温熱環境的には日射や外気温などの外部の影響を受け易く、夏の暑さや冬の寒さだけでなく、片廊下に隣接する研究室の空調エネルギー消費量とも無関係ではない。温熱環境改善案として外皮のガラス面積を減少する方法が考えられるが、ガラス面積と利用者の心理量との関係については明らかにされていない。本研究では片廊下の現状のガラス面積を種々変えた際、本学部の学生の心理量がどのように変化するかを明らかにするとともに、そのガラス面積を変えた場合の片廊下への温熱環境の影響を把握する事を目的とした。 第2章 片廊下のガラス面積率と設置パターンが聴覚障害を有する学生の心理量へ及ぼす影響 聴覚障害を有する学生を被験者として、筑波技術大学天久保キャンパス 4階片廊下の窓ガラスを変更条件とした視環境評価実験を行った。窓ガラスの変更条件は、5種類の壁種類(壁無し、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁、スリット状に配置した壁)とガラス面積率 (33%、50%、67%、83%、100%)を組み合わせて、4F外通路から片廊下を見た時と、片廊下から外通路を見た時の視環境について主に「開放感」、「安心感」、「窓ガラス面積の大きさの感じ方」、「見通し」、「許容度」、「満足度」についてそれぞれ評価してもらった。以下にこれらの結果の要点を示す。また、視環境評価実験は REAL実験と VR実験の 2種類を実施しており、これらの結果の比較についても述べる。 「開放感」他の壁種類と比較して垂れ壁は開放感が損なわれやすい。 「安心感」腰壁: 66%、垂れ壁: 83%、腰・垂れ壁: 50%までは壁無し: 100%の評価平均値との差が小さい。しかし、このガラス面積率より減少すると、腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の評価平均値が不安側になる傾向が見られた。 「窓面積」壁種類に関係なくガラス面積率が減少すると大きさの感じ方も狭く感じる結果となった。但し垂れ壁は同じ面積率でもほかの壁種類よりも狭く感じる傾向にあった。 「見通し」全体的な傾向として、同じガラス面積率で見通しの良い壁種類は、腰・垂れ壁、スリット、腰壁、垂れ壁の順に良い傾向にあった。また片廊下から外通路を見た時、スリット: 50%と67%間で評価平均値の差がほとんど見られなかった。 「廊下の幅と高さ」 廊下の幅の感じ方で壁種類ごとに大きな差は見られなかったが、高さの感 じ方については垂れ壁がほかの壁種類よりも低い側に感じる傾向にあった。 壁無し:100%と各窓ガラス条件での有意差 壁無し: 100%と各窓ガラス条件の不満足率の有意差をカイ二乗検定より検定を行った。有意水準が 1%とした時それを下回り有意差が見られた窓ガラス条件は、外通路は垂れ壁: 67%と 50%、腰壁: 50%、腰垂れ壁: 33%、スリット: 50%と 33%で有意差が見られた。片廊下は、垂れ壁: 67%と 50%、腰壁: 50%、腰垂れ壁: 33%、スリット: 33%で有意差が見られた。 外通路から片廊下を見た時 外通路から片廊下内のヒトを見た時に見えなくなる範囲について、腰壁: 83%と腰・垂れ壁: 67%では床から疑似壁高さがh= 400㎜でヒトの膝の高さ付近まで見えなくなる。同様に腰壁: 67%と腰・垂れ壁: 50%は床から疑似壁高さがh= 800mmでヒトの腰の高さ付近となり、腰壁: 50%と腰・垂れ壁: 33%では床から疑似壁高さがh= 1200mmでヒト胸の高さ付近までとなり、ヒトの身体の一部が見えなくなる。各評価項目の評価平均値に関して、壁種類毎で比較した時、各ガラス面積率で「垂れ壁」が最も評価平均値が低い傾向にあるという共通点が見られた。この理由にヒトの顔高さ付近の情報がガラス面積率の減少に伴い制限される事が影響したと考えられる。 片廊下から外通路を見た時 4F片廊下の中央にいるヒトを被験者の男女平均身長 165.3㎝と想定した場合、視線高さ 155㎝を基準高さとして、そこから 5Fの外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度を a角=30°、3Fの外通路歩行者と視線を交わすのに必要な角度をb角= 30°とした時、その角度の合計は 60°となる。この a角及びb角に着目した時、垂れ壁: 67%では a角=8.2と 30°を著しく下回る。 50%では a角とb角共に 30°を下回る。腰壁: 50%と腰・垂れ壁 33%もb角が 30°を下回っている。また、壁無し :100%と評価平均値の差が比較的小さい、垂れ壁: 83%、腰壁: 83%と 67%、腰・垂れ壁 67%の窓ガラス条件では a角とb角の合計角が 60°を上回り且つ、 a角とb角の角度が 30°を著しく下回っていない。これらの結果より、 a角とb角のどちらか、又は双方が 30°を下回りその合計角が 60°を下回る場合、各評価項目の評価平均値が低くなると予想される。 VR実験結果と REAL実験結果の比較 全体的な傾向として腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の窓ガラス条件で REAL実験結果より VR実験結果の方が良い側の評価となった。しかし、スリットの窓ガラス条件のみ、 REAL実験結果と VR実験結果の差は比較的小さい結果であった。この理由に VR実験時の評価歩行距離が 1つの可能性として考えられる。スリットの VR実験を行う際に、予備実験より「スリットは水平方向に連続して交互に窓と疑似壁が並ぶ為、歩行距離が短いと視環境評価が難しいという」意見を被験者より得ていた。よってスリットでは評価歩行距離が 5mで行った。 REAL実験結果より VR実験結果に差が見られた腰壁、垂れ壁、腰・垂れ壁の VR実験の時は、実験環境の制限上 3mの評価歩行距離しか確保できなかった。この 2mの評価歩行距離の差が結果に影響したと予される。これだでなく、 VRヘッドセットの視野角が 110°であり現実空間でみる視野角と異なる事や、VR実験モデルの再現率も影響したと考えられる。しかし、本研究では REAL実験結果と VR実験結果の差が見られるその原因を特定するには至らなかった為今後の課題と言える。 第3章 片廊下の窓ガラス面積の大きさによる熱的影響  ガラス面積率の減少が片廊下及び研究室の温熱環境に与える影響を、建築伝熱・換気予測計算プログラム NETSを使用して暖冷房期の数値計算を行った。この結果を用いて、現状の状態からガラス面積率の減少した時の 8月の月平均日最高気温と 1月の月平均日最低気温を求めた。次に、各ガラス面積率で建物方位や窓ガラスの仕様を変えた場合の熱的影響を明らかにした。また、ここでの日最高気温がと日最低気温は片廊下が主に使用される 9:00~18:00の時間帯において抽出したものである。これらの結果と視環境評価実験より明らかにした不満足率との関係を最後に示した。 数値計算結果 片廊下の冷房期及び暖房期の温度変化について、冷房期では空気温度 Ta、MRT、OTに大きさなさは見られなっかたが、各温度指標で窓ガラス面積率が小さくなることで、特に晴れの日では日射量の侵入を制限することから温度上昇を小さくする効果を期待できる。冷房期同様に暖房期の空気温度 Ta、MRT、OTに大きさなさは見られなっかた。暖房期では窓面積が大きい程昼間は温度が高く、夜間から早朝にかけて最も下がる傾向にあった。この時間帯では窓を通しての熱の出入りが行われるた為、窓が大きくなるにつれ熱損失量が大きくなるのではないかと思われる。また建物方位や窓仕様を変えた時の温度変化や暖冷房負荷を定量的に明らかにした。建物方位のときでは、夏場は日最高気温が最も大きくなる方位は西向きであった。その次に南向き、東向き、北向きの順となった。冬場は日最低気温が最も大きくなる方位は南向きであった。その次に西向き、東向き、北向きの順となった。窓仕様のときでは、夏場は日最高気温が最も大きくなる窓仕様は複層ガラス (ペアガラス )で、その次に単板ガラス、遮熱シート有の順となった。冬場は複層ガラス(ペアガラス )で、その次に単板ガラス、遮熱シート有となった。 窓ガラス面積率と不満足率及び温熱環境との関係 片廊下のガラス面積による学生の心理量と熱環境との関係を実験及び計算により明らかにした。ガラス面積率が小さくなると視環境の不満足率が指数関数的に増加するが、 8月の月平均最高気温の低下及び 1月の月平均最低気温の上昇し温熱環境的に改善が見られた。この計算条件で現状の西向きから建物方位を変えた場合、各方位で 8月の月平均最高気温の低下が見られるが、1月の月平均最低気温の上昇は西向きと北向きのみで見られた。同じように、現状の単板窓ガラスの仕様を変更して計算を行った場合、各窓ガラス仕様で8月の月平均最高気温の低下と 1月の月平均最低気温の上昇し全体的に温熱環境の改善が見られた。不満足率がガラス面積率 100%の時とあまり変わらないガラス面積率の条件で設計し、温熱環境を改善するのも1つの方法と考えられる。 参考文献 [1]長山健太H27筑波技術大学卒業論文「大学施設における片廊下の温熱環境実態と隣接研究室への熱的影響に関する研究」 [2]須山直子三浦寿幸佐竹広希山脇博紀今井計「デフスペースの室内環境計画に関する研究その 2聴覚障害者に配慮された片廊下と外通路に関するPOE調査結果」日本建築学会大会学術講演梗概集 (東北)2018年 9月 [3]清川清「バーチャルリアリティにおける視覚提示技術」知能と情報 (日本知能情報ファジィ学会誌 )Vol.19,No.4,pp.318-325(2007) [4]Fuzor 2019 VR操作ガイド [5]SteamVRソフトルームセットアップの設定 [6]真辺春蔵長町三生「人間工学概論」 P177出版社:泉文堂出版年: 1992年 [7]産総研情報・人間工学領域日本人頭部寸法データベース 2001 https://unit.aist.go.jp/hiri/dhrg/ja/dhdb/head/index.html [8]奥山博康「建築物の熱回路網モデルに関する理論的研究」 1987年 12月早稲田大学博士論文 [9]NETS-Clubホームページ >NETS概要の NETS(熱・換気回路網モデル計算プログラム) http://www.nets-club.com/shim-lab/nets.html#s5 [10]金政秀、伊藤浩士、田辺新一「ガラス建築群の将来予測モデルによるファサード熱性能に関する研究」日本建築学会環境系論文集第 74巻第646号 1283-1289 2009年 12月 [11]伊藤浩士、米田拓郎、川田康介「東京都のガラス建築におけるファサード熱設計手法の設計意図と熱性能」日本建築学会環境系論文集第 74巻第646号 1347-1354 2009年 12月 [12]大西由哲、奥山博康、坂井和秀「交詢ビルディング・ダブルスキンの結露対策法とその検討」日本建築学会大会学術講演梗概集巻号 2004 481-482 2004年 7月 [13]熱・換気回路網計算プログラム NETS用プリ /ポスト処理システム Netsgen/Netsout操作説明書 [14]NETS(熱・換気回路モデル)詳細ページ http://www.nets-club.com/shim-lab/nets.html#top [15]日本冷凍空調学会 66.PMVと PPD指標 https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/66.html 謝辞 本論文は、筆者が筑波技術大学大学院技術科学研究科産業技術学専攻の修士課程において行った研究の成果をまとめたものである。本研究の遂行および本論文をまとめるにあたり、筑波技術大学産業技術学部産業情報学科三浦寿幸教授には主指導教員として、筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科山脇博紀教授には副指導教員として終始懇切なるご指導およびご鞭撻を賜り、深く感謝申し上げます。 また、筑波技術大学産業技術学部産業情報学科丹野格准教授には主査として,筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科長島一道教授と筑波技術大学産業技術学部産業情報学科三浦寿幸教授には副査として、貴重な時間を割いて本論文をご精読頂き、多くのご指導およびご助言を頂きました。深く感謝申し上げます。 また視環境評価の REAL実験を行う際にご助言を頂きました筑波技術大学産業技術学部産業情報学科今井計准教授に深く感謝申し上げます。 視環境評価実験に当たって貴重な時間を割いて被験者として快く協力して頂いた、筑波技術大学産業技術学部の在学生の皆さんに心より深く感謝致します。この協力なくして本研究は成り立ちませんでした。 視環境評価実験を行う際に補助として手伝ってくれた、筑波技術大学産業技術学部産業情報学科 H29年卒の須山直子さんに心より深く感謝致します。 また,苦楽を共にし、励ましてくれた院生の皆さんに心から感謝いたします。特に学部時代からの同期である設楽明寿君には私生活・研究面共に大変お世話になりました。 最後に、本学大学院に進学するにあたり、快く進学も認め、研究生活を様々な面で支え、いつでも温かい目で見守ってくださった両親に心から感謝いたします。