放電加工における 放電痕形成メカニズムの解明 平成29年度 筑波技術大学大学院技術科学研究科 産業技術学専攻 辻田 容希 目次 第1章 緒論 1 1.1 放電加工 1 1.1.1 放電加工の原理 1 1.1.2 放電痕の形成プロセス 1 1.2 極間現象の観察について 2 1.3 極間現象の観察に関する先行研究 2 1.4 本研究の目的 3 1.5 本論文の構成 3 第2章 極間現象の観察の基礎実験 5 2.1 緒言 5 2.2 実験装置・方法 5 2.3 実験結果および考察 7 2.3.1 バンドパスフィルターの効果 7 2.3.2 極間現象の観察 8 2.4 結言 11 第3章 気中単発放電における極間現象の観察 13 3.1 緒言 13 3.2 実験装置・方法 14 3.3 実験結果および考察 16 3.3.1 加工屑の発生形態 16 3.3.2 加工屑の発生のタイミング 17 3.3.3 短パルス放電における溶融材料の挙動および放電痕形態 18 3.3.4 極性による加工屑の発生形態の違い 20 3.3.5 加工物材料による加工屑の発生のタイミングの違い 21 3.3.6 材料の除去メカニズムの推定 24 3.4 結言 25 第4章 液中環境における単発放電による極間現象の観察 27 4.1 緒言 27 4.2 液中単発放電における極間現象の観察 27 4.2.1 実験装置・方法 27 4.2.2 実験結果および考察 29 4.3 液滴単発放電における極間現象の観察 30 4.3.1 実験装置・方法 31 4.3.2 実験結果および考察 31 4.4 アークプラズマの観察 34 4.4.1 実験装置・方法 34 4.4.2 実験結果および考察 35 4.5 結言 36 第5章 総括 39 謝辞 43 参考文献 45 研究業績 49 筑波技術大学 修士(工学)学位論文 第1章 緒論 1.1 放電加工 1.1.1 放電加工の原理 放電加工(Electrical Discharge Machining:EDM)は油や水を加工液とし,加工液中で電極と加工物を数[μm]~数十[μm]隔てた状態に対向させ,極間(電極と加工物の間)に放電を発生させる方法である.この放電による熱的作用と加工液の気化爆発作用により,溶融材料を除去し,微細な放電痕を形成させることを繰り返して金属材料を加工する [1].放電加工の概略図をFig.1.1に示す.一発の放電によって加工物に形成される放電痕の大きさは材料の物性や加工時の電気条件などによるが,直径が数[μm]~数百[μm],深さが数[μm]~数十[μm]程度[2]であり,多数の微細な放電痕の累積によって精密な形状加工が行われる. Fig.1.1 Principle of EDM 1.1.2 放電痕の形成プロセス 現在までに考えられている一発の放電による放電痕形成プロセス[3]をFig.1.2に示す.まず,極間で放電が発生し,電流密度の高いアーク柱となる.アーク柱の温度が6000~7000[K][4]と高温となるため,電極および加工物の材料が溶融・蒸発する.この時,加工液の気化爆発により極間には大きな圧力が発生する.最後に,発生した圧力によって溶融材料が飛散し,放電痕が形成される.これらのプロセスを毎秒数千回から数百万回[5]繰り返すことにより加工が進行する. Fig.1.2 Process of form a discharge crater 1.2 極間現象の観察について 第1章の1.1で述べたとおり,放電加工は一発一発の放電によって形成される多数の微細な放電痕の累積によって加工が行われており,放電加工における加工特性を向上させるためには,一発の放電による放電痕形成プロセスを正確に把握する必要がある.しかしながら,放電時間が数[μs]~数百[μs],極間距離が数[μm]~数十[μm],溶融材料の挙動範囲が数[μm3]~数百[μm3]とごく短時間の過渡現象であり,かつ微小領域での溶融材料の挙動であるため,一発の放電によって生じる極間現象の直接的な観察は非常に困難である.そのため,オシロスコープによる放電波形の測定や放電後の電極および放電痕の形状解析などの間接的な計測からの放電痕形成メカニズムの考察がほとんどであり,現状では放電痕形成メカニズムが十分に解明されているとはいえない. しかし,近年,測定機器の進歩に加え,ハイスピードカメラによる極間現象の直接観察や新しいシミュレーション手法による解析などによって,Fig.1.2に示したように現在までに考えられている一発の放電による放電痕形成プロセスと実際の極間現象とは一致しない場合もあることが様々な先行研究により報告されている. 1.3 極間現象の観察に関する先行研究 千種ら[6]は2枚の金属薄板を対向させて連続加工を行い,その極間隙における加工屑の飛散の様子をハイスピードカメラで観察し,その結果を報告している.草深ら[7]は箔電極を用いて,細線電極から放電を発生させ,放電中に溶融材料が除去される様子をハイスピードカメラで観察し,その結果を報告している.北村ら[8]は透明体材料を電極として用い,ハイスピードカメラで極間現象を直接観察し,その結果を報告している.小島ら[9]はハイスピードカメラによるアークプラズマの観察とアークプラズマの分光分析を行い,アーク柱の膨張速度について述べている.楊ら[10]は分子動力学シミュレーションにより,溶融材料が加工屑として排出されるメカニズムについて述べている. 以上の研究により,加工メカニズムの推定は行われているが,一発の放電中にどのようなタイミングで材料が除去されているかは明らかとなっていない.また,分子動力学シミュレーションは,計算量の問題から現実的オーダーでのシミュレーションは行われておらず,除去メカニズムは未だ推定の段階である. 1.4 本研究の目的 第1章の1.3で述べたとおり,極間現象の観察に関する研究は既に行われている.これらの先行研究によって放電加工における放電痕形成メカニズムが少しずつ解明されつつあるが,放電痕形成メカニズムには未だ不明な点が多く残っているのが現状である.これまでのハイスピードカメラによる観察から,放電中に溶融材料が加工屑として排出している様子は観察されているが,その加工屑の排出のタイミングや加工屑の飛散の詳細な様子は不明であり,一発の放電中に具体的に溶融した材料がどのように除去されているかは十分に観察されるに至っていない. そこで,本研究では数[μs]~数百[μs]程度のパルス幅の単発放電によって生じる極間現象をハイスピードカメラにより観察し,単発放電による放電痕形成メカニズムについて考察することを目的とした. 1.5 本論文の構成 第1章 緒論 放電加工の原理とともに本研究の背景と目的について述べた. 第2章 極間現象の観察の基礎実験 放電による発光の影響を受けずに極間現象を明確に観察できる観察系を構築し,単発放電による極間現象の観察を行った結果について述べる. 第3章 気中単発放電における極間現象の観察 第2章で示した実験装置の問題点を示し,実験装置の改善を行ったことについて述べる.そして,気中において様々な電気条件および加工物材料で単発放電を発生させ,極間現象の観察を行った結果について述べる.最後に,一発の放電による材料除去モデルを示す. 第4章 液中環境における単発放電による極間現象の観察 実際の放電加工環境における極間現象を検討するため,液中および液滴において単発放電を発生させ,極間現象の観察を行った結果について述べる.最後に,アークプラズマを直接観察した結果について述べる. 第5章 総括 本研究で得られた結果を総括する. 第2章 極間現象の観察の基礎実験 2.1 緒言 第1章で述べたように,ハイスピードカメラを用いた極間現象の観察は既に行われており,研究成果も報告されている.しかし,放電中に溶融材料が加工屑として飛散するタイミングやその飛散の詳細な様子は不明であり,一発の放電中における極間現象を十分に観察されるに至っていない. 筆者も学部4年生の時の卒業研究でハイスピードカメラを用いた極間現象の観察を行った.しかし,放電による発光の影響により,放電中の極間現象を明確に観察することが困難であった.そこで,伊藤らによって開発された方法[11]により,放電による発光の影響を受けずに放電中の極間現象を明確に観察できるようにした.なお,ハイスピードカメラ(KEYENCE Co. Ltd,カメラ:VW-600M,モニター:VW-9000)には,高倍率の光学レンズ(KEYENCE Co. Ltd,VH-Z50L,倍率:500倍,WD:85[mm])を装着し,高倍率で極間現象の観察を行えるようにした. 2.2 実験装置・方法 本実験で使用した実験装置の概略図をFig.2.1に示す.伊藤らによって開発された方法であり,特定のレーザー光を照明光として,この波長のみを通過させるバンドパスフィルターを介した観察系を構築した.本実験では波長532[nm]の半導体レーザーと中心波長532[nm],半値幅1.0[nm]のバンドパスフィルターを組み合わせた.加工形態は気中において針形状電極対平面とした.電極はタングステン,加工物は亜鉛合金とした.放電はFETのゲートを開いて,極間に電源電圧を印加した状態で電極側のZステージのモーターを手動で回すことによる微小送りによって電極を加工物に近付け,放電を発生させた. パルス幅は放電が発生した時の電流を検出して,放電時間をカウントして,FETのゲートを閉じることによって設定した.パルス幅を設定するためのシステムをFig.2.2に示す.放電時間のカウントにFPGAを用いた.FPGAとはField Programmable Gate Arrayの略語であり,プログラムで書き換えが可能なデバイスである[12].「LabVIEW」と呼ばれる制御支援ソフトを用いて,放電時間をカウントするためのプログラムを作成し,FPGAにコンパイルさせた.LabVIEWとはグラフィカルなプログラミング言語で,アイコンとワイヤーを用いてプログラムを作成するソフトウェアである[13].放電時間のカウントのプログラムをFig.2.3に示す.Fig.2.3(b)に示すブロックダイアグラムと呼ばれるウインドウで放電時間をカウントするためのプログラムを作成した.プログラムを実行させた時に,まず,FPGAからFETに信号を出力し続け,FETのゲートを常時開いている状態とした.その後,放電の発生とともに電流を検出し,比較回路を通過してFPGAに信号を入力した.この時,Fig.2.3(a)に示すフロントパネルと呼ばれるウインドウで入力した放電時間をカウントし,パルス幅を決定した.放電の終了はFPGAからFETへの信号の出力を停止させ,FETのゲートを閉じることによって行った. Fig.2.1 System for a single discharge observation Fig.2.2 System for the pulse duration setting Fig.2.3 Pulse duration count program 加工条件をTable 2.1,撮影条件をTable 2.2に示す. Table 2.1 Machining conditions Power supply voltagev 200 [V] Current limiting resistance 10 [Ω],30 [Ω] Pulse duration 100 [μs],300 [μs] Electrode polarity Negative Table 2.2 Photographing conditions Exposure time 1.11 [μs] Frame rate 2.3×10^5 [fps] Resolution 160×32[px] Magnification 100 2.3 実験結果および考察 2.3.1 バンドパスフィルターの効果 構成した観察系を使用して放電中の極間現象を撮影した様子をFig.2.4に示す.最初はバンドパスフィルターなしで極間現象を撮影した.その結果,Fig.2.4(a)に示すように放電による発光の影響により極間現象を明確に観察することができなかった.そこで,光学レンズの前にバンドパスフィルターを取り付けて極間現象を撮影した.その結果,Fig.2.4(b)に示すように放電中であるにも関わらず,放電による発光の影響を受けずに極間現象を明確に観察することが可能となった. Fig.2.4 Observation of the gap during the single discharge using a band pass filter 2.3.2 極間現象の観察 Table 2.1に示した加工条件の抵抗とパルス幅の組み合わせにより,4通りの条件でそれぞれ単発放電を発生させ,極間現象を観察した.それぞれの条件において放電波形より実測した電流値およびパルス幅をまとめたものをTable 2.3に示す. Table 2.3 Current and pulse duration Table 2.3に示した4つの条件全てにおいて放電中に同じような傾向の加工屑の飛散が観察されたので,本論文では①と④の条件において観察された極間現象について述べる. 条件①の場合の単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.2.5に示す.また,この条件の単発放電によって形成された放電痕をFig.2.6に示す. Fig.2.5 Gap phenomena observed during the single discharge with its discharge waveform (discharge current:6[A],pulse duration:100[μs]) Fig.2.6 Photograph of a single discharge crater(discharge current:6[A],pulse duration:100[μs]) 放電開始と同時に,放電点の周囲に溶融した材料が加工屑として飛散している様子が観察された.その後,25.8[μs]程度の間は材料への加熱となり,溶融した材料が飛散する様子は観察されず,放電開始から25.8[μs]のタイミングにおいて再び溶融した材料が飛散した.2回目の溶融材料の飛散後,51.6[μs]程度の間は材料の加熱状態となり,放電開始から77.4[μs]のタイミングにおいて再び溶融した材料が飛散した.放電開始から放電終了までの一発の放電中に溶融材料が加工屑として飛散している様子が複数回,間欠的に観察された.また,この条件の単発放電によって形成された放電痕を観察すると,材料が複数回除去されたような跡が観察された. 次に,条件④の場合の単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.2.7に示す.また,この条件の単発放電によって形成された放電痕をFig.2.8に示す. 条件①の結果と同様に,放電開始と同時に,放電点の周囲に溶融した材料が加工屑として飛散している様子が観察された.その後,8.6[μs]程度の間は材料への加熱となり,溶融した材料が飛散する様子は観察されず,放電開始から8.6[μs]のタイミングにおいて再び溶融した材料が飛散した.放電開始後,8.6[μs]~279.5[μs]の間に溶融材料の飛散と材料の加熱が繰り返し行われている様子が観察された.条件①の結果と同様に一発の放電中に溶融材料が加工屑として飛散している様子が複数回,間欠的に観察され,パルス幅を長くした場合,溶融材料が加工屑として飛散する回数が増加した.また,撮影画面の左右に向かって同時に加工屑が飛散する場合もあれば,左右のどちらかのみに向かって飛散する場合もあった. また,この条件の単発放電によって形成された放電痕を観察すると,電流が6[A]の時に形成された単発放電痕と比較して,直径が大きい放電痕が形成された.また,パルス幅が100[μs]の時に形成された単発放電痕と比較して,多くの回数によって除去されたような跡が観察された. Fig.2.7 Gap phenomena observed during the single discharge with its discharge waveform (discharge current:18[A],pulse duration:300[μs]) Fig.2.8 Photograph of a single discharge crater (discharge current:18[A],pulse duration:300[μs]) 2.4 結言 伊藤らによって開発された方法を用いて,気中において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 特定のレーザー光を照明光として,この波長のみを通過させるバンドパスフィルターを介した観察系を構築することにより,放電による発光の影響を受けずに極間現象を明確に観察することができた. ② 全ての電気条件において,一発の放電中に溶融した材料が加工屑として飛散している様子が複数回,間欠的に観察された. ③ それぞれの電気条件によって形成された単発放電痕を観察すると,全ての単発放電痕において,材料が複数回除去されたような跡が観察された. 第3章 気中単発放電における極間現象の観察 3.1 緒言 加工物材料による極間現象の変化を調べるために,加工物を炭素鋼(S50C)とし,第2章の2.2で述べた加工条件および撮影条件で極間現象を観察した.放電電流18[A],パルス幅100[μs]に設定した場合の単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.3.1に示す.また,この条件の単発放電によって形成された放電痕をマイクロスコープで3D形状に計測した結果をFig.3.2に示す. Fig.3.1 Gap phenomena observed during the single discharge with its discharge waveform(S50C,discharge current:18[A],pulse duration:100[μs]) Fig.3.2 3D photograph of a single discharge crater(S50C,discharge current:18[A],pulse duration:100[μs]) Fig.3.1より,放電開始と同時に,放電点の周囲に溶融した材料がわずかに盛り上がり,次いで加工屑として飛散している様子が観察された.放電開始から34.4[μs]後までの間,溶融した材料が動いている様子が観察され,放電開始から34.4[μs]後のタイミングにおいて,短絡(電極と加工物の接触)が発生した.短絡が発生した場合には,単に電流が流れる状態となるため,短絡が発生した後の極間現象に変化は見られなかった.この場合の単発放電痕を観察すると,放電痕の中心部が盛り上がっている状態であった.この盛り上がった部分が電極と接触したため,短絡が発生したと考えられる.加工物を亜鉛合金とした場合,上記のような短絡は見られなかった.しかし,第2章の2.2で述べたように電極側のZステージのモーターを手動で回すことによる微小送りで電極を加工物に近付けることにより放電を発生させる方法では,放電が発生した時の極間距離が一定とはならない.そこで,極間距離による実験結果への影響をなくすために,実験装置に極間距離制御を加え,極間距離を設定できるようにした. また,第2章の2.2で述べた撮影条件の場合,撮影は4.3[μs]毎に行われるが,放電開始のタイミングとハイスピードカメラの撮影開始のタイミングが同期していないため,放電開始時のフレームを判断することが困難であった.そこで,放電開始のタイミングとハイスピードカメラの撮影開始のタイミングを同期させ,放電開始時のフレームを判断した. 3.2 実験装置・方法 極間距離制御を加えた実験装置の概略図をFig.3.3に示す.加工形態は気中において針形状電極対平面とした.電極はタングステン,加工物は炭素鋼(S50C)とした.極間現象の観察方法は第2章の2.2で述べた方法を用いた. Fig.3.3 System for a single discharge observation added gap width control 単発放電を発生させる前にFPGAから電極側のZステージ(1)に取り付けているステッピングモーターに1パルスずつ出力することによる微小送りで電極を加工物に近付け,端面検知用回路により,電極と加工物との接触を電気的に検知した.FPGAからパルス信号を出力するプログラムをFig.3.4に,端面検知用回路をFig.3.5に示す.端面検知用回路は電極と加工物との接触を検知する時のみ使用するので,取り外しが簡易に行えるように電極および加工物との接続には磁石を用いた.また,端面検知用回路による極間電圧の波形をFig.3.6に示す.電極と加工物が接触していない時は,極間に電源電圧が印加されている状態のため,Fig.3.6(a)に示すように5[V]の信号が表示される.電極と加工物が接触している時は,電流が流れ続けている状態のため,Fig.3.6(b)に示すように0[V]の信号が表示される.上記の方法により,電極と加工物との電気的な接触を検知した後,接触を検知した位置を基準として,加工物側に設置したZステージ(2)を降下することによって極間距離を設定した. Fig.3.4 Pulse generation program Fig.3.5 Reference plane detection circuit Fig.3.6 Waveform of gap voltage using reference plane detection circuit 極間距離を設定後,極間に放電用の電源電圧を印加した状態でF/GからFETにパルス信号を出力することにより,単発放電を発生させた.パルス幅はF/Gの周波数を調整することにより設定した.さらに,F/Gとハイスピードカメラが同期しているため,F/Gから出力されたパルス信号がFETに入力されるのと同時に撮影も開始される.加工条件をTable 3.1,撮影条件をTable 3.2に示す. Table 3.1 Machining conditions Power supply voltage 400 [V] Current limiting resistance 15 [Ω] Gap width 5 [μm] Pulse duration 100 [μs] Electrode polarity Negative Table 3.2 Photographing conditions Exposure time 1.11 [μs] Frame rate 2.3×10^5 [fps] Resolution 160×32[px] Magnification 100 3.3 実験結果および考察 3.3.1 加工屑の発生形態 上記の実験装置により,気中単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.3.7に示す.Fig.3.7の中央が実測した放電波形であり,その周囲に時間を追って特徴的な現象が現れたフレームを抜き出した結果を示している.撮影は4.3[μs]毎に行われ,1枚目のフレームには0~4.3[μs]の間において生じた現象が撮影される.F/Gとハイスピードカメラが同期しているため,放電発生のタイミングについては,放電波形により推定された放電遅れ時間から放電開始時のフレームを判断した. Fig.3.7 Gap phenomena observed during the discharge with its discharge waveform 上記の結果の場合,放電開始と同時に,放電点の周囲に溶融した材料がわずかに盛り上がり,次いで加工屑として飛散している様子が観察された.その後,10.0[μs]程度の間は溶融した材料が飛散する様子は観察されず,撮影開始から17.2[μs]のタイミングにおいて再び溶融した材料が飛散した.2回目の溶融材料の飛散後,30.1[μs]程度の間は溶融した材料が飛散する様子は観察されず,撮影開始から47.3[μs]のタイミングにおいて再び溶融した材料が飛散した. 3.3.2 加工屑の発生のタイミング 3.3.1で述べた極間現象の再現性を調べるために,一発の放電中に溶融した材料が加工屑として飛散した回数および発生時間について検討した.7回の単発放電実験を行い,加工屑の飛散が発生した時間をまとめたものをFig.3.8に示す. 100[μs]のパルス幅の条件において,2回から4回の加工屑の飛散が確認された.全ての結果において,放電開始と同時に1回目の加工屑の飛散が発生した.2回目の加工屑の飛散は25[μs]前後に多く発生しており,3回目以降の加工屑の飛散はさらに約50[μs]後に発生する場合と発生しない場合があった.放電中に溶融材料が加工屑として飛散する時間にばらつきはあるが,全ての実験において一発の放電中に複数回,間欠的な加工屑の飛散が確認された.なお,飛散回数が多い放電においては,撮影画面の左右に偏って加工屑が飛散する傾向を示した. Fig.3.8 Time and number of the debris occurrence during a single discharge 3.3.3 短パルス放電における溶融材料の挙動および放電痕形態 3.3.2で述べた加工屑の飛散が発生した時間の結果から,数[μs]程度の短いパルス幅の条件においては,加工屑の飛散回数は1回となると予想される.パルス幅が9[μs]の条件における単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.3.9に示す. Fig.3.9 Gap phenomena observed under the short pulse duration with its discharge waveform Fig.3.9 にはパルス制御信号および撮影開始から4.3[μs]毎のフレームを全て示している.この時の放電遅れ時間は約3[μs]程度であり,最初のフレームは放電開始前と比べて変化がなかったため,まだ放電が発生していない状態である.2フレームにおいて,放電の発生とともに周囲に盛り上がりが生じている.その後のフレームにおいて,溶融した材料の飛散あるいは盛り上がりが成長している様子が観察された.パルス幅を短くした場合,確認された加工屑の飛散回数は1回となった.この時に形成された単発放電痕をFig.3.10(a)に示す.また,100[μs]のパルス幅の単発放電において,加工屑の飛散が2回確認された時の単発放電痕をFig.3.10(b)に示す. Fig.3.10 SEM image of a single discharge crater Fig.3.10(a)に示すように,短いパルス幅の条件において1回の加工屑の飛散が確認された単発放電痕は比較的奇麗な円形となっており,爆発的な材料の除去が1回のみであった様子が分かる.これに対し,Fig.3.10(b)に示すように,長いパルス幅の条件において2回の加工屑の飛散が確認された単発放電痕の場合は,最初に中心部にFig.3.10(a)と同様な除去が発生し,その後の2回目の爆発的な材料の除去によって,除去領域が広がり,周囲に盛り上がりも観察された.撮影された加工屑の飛散回数に対応した放電痕が形成されていることから,本実験の撮影結果は極間現象を正確に表していると考えられる. また,短いパルス幅の単発放電によって生じた極間現象を詳細に観察すると,放電終了後も加工屑が継続して飛散している様子が観察された.Fig.3.9(d)に示す3フレーム以降において,既に放電が終了しているにもかかわらず,図中の矢印で示すように加工屑の飛散や材料の盛り上がりが進行している様子が観察された.このことから,放電遅れ時間3[μs]を差し引いて考えても,放電によって材料が溶融状態にまで達した場合には,その後,放電終了しても,溶融材料が加工屑となって排出されるまでの駆動力は維持されると考えられる.また,この現象は繰り返し放電において,放電の位置が移動した後でも,その前の放電によって短絡に至ることや休止時間中に生じる橋絡[14], [15]などとも共通した現象と考えられる.極間の電気信号のみでは捉えられないこれらの挙動は放電加工における極間制御の困難さの一因となっていると考えられる. 3.3.4 極性による加工屑の発生形態の違い これまで,加工物を陽極とした場合の極間現象の観察結果を述べた.本節では,加工物を陰極とした場合の極間現象について検討する.加工物を陰極とした場合,陰極点におけるアーク柱の挙動は,電流密度の高い点が不規則に移動していることが観察されている[8].そのため,これまでに観察した加工物を陽極とした場合の極間現象とは異なると推測される. 加工物を陰極として,これまでと同様の電気条件で単発放電を発生させ,極間現象の観察を行ったが,溶融した材料が加工屑として飛散する様子は見られず,電流を50[A]と高くした場合も同様に観察することはできなかった.そこで,材料の除去量が多く,溶融材料の挙動を観察しやすいと予想される融点の低い亜鉛合金を加工物として,電流を30[A]に設定して単発放電実験を行った.この場合の単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.3.11に示す.また,この単発放電によって形成された単発放電痕をSEMで観察した結果をFig.3.12に示す. Fig.3.11 Gap phenomena observed under the condition of workpiece(−) with waveform Fig.3.12 SEM image of a single discharge crater (workpiece polarity:(−)) Fig.3.11は加工物を陰極として,100[μs]のパルス幅の条件における単発放電の波形とともに放電発生から21.5[μs]までの極間現象および放電の途中である64.5[μs] ~81.7[μs]について4.3[μs]毎に抜き出した撮影結果を示している.加工物を亜鉛合金とした場合,放電中に陰極において材料表面が動く様子を観察することができた.各フレームにおいて,溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが生じたと思われる箇所を矢印で示す.このように,加工物を陽極とした場合の極間現象とは異なり,新しい溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが間を置かずに次々と発生している様子が観察された.この現象はパルス幅全体にわたって継続した. また,図中の点線で示すように,陰極側の飛散領域は放電開始とともに拡がりを見せ,定常拡がりに落ち着いた.さらに,陽極側の針形状電極は放電中に時間の経過とともに消耗していく様子が観察され,電極を陰極とした場合と比較して大きく消耗した. Fig.3.12に示した単発放電痕を観察すると,全体として円形の放電痕が形成されている.さらに,放電痕表面を詳細に観察すると,細かく何度も材料が除去されたような跡が観察された.これは,電流密度の高い点が表面を不規則に移動した結果であると考えられる. 3.3.5 加工物材料による加工屑の発生のタイミングの違い これまで,加工物を炭素鋼(S50C)とし,様々な電気条件による極間現象の観察結果を述べた.しかし,放電加工で加工する材料は炭素鋼(S50C)のみとは限らない.そこで,炭素鋼(S50C)以外の加工物材料として,亜鉛合金,チタン,黄銅,銅,タングステンを選定し,気中単発放電において各種材料による極間現象および単発放電痕の違いについて観察した.炭素鋼(S50C)を含む6つの材料の物性を融点θと熱伝導率λに着目してまとめたものをTable 3.3に示す.なお,放電加工では𝜆�θ^2の値が大きい材料ほど加工が困難であるといわれている[16].Table 3.3では,上から𝜆θ^2の値が小さい順に示している. Table 3.3 Physical properties and 𝜆θ^2 value of materials[17], [18] 各種材料において,それぞれTable 3.1に示した加工条件で5回の単発放電実験を行い,加工屑の飛散が発生した時間をまとめたものおよび単発放電痕の一例をFig.3.13に示す.なお,炭素鋼(S50C)については,Fig.3.8に示した7つのデータのうちNo.1~No.5を抜き出して示す. Fig.3.13 Time and number of the debris occurrence during a single discharge with its discharge crater Fig.3.13に示した結果より,𝜆θ^2の値が小さい材料である亜鉛合金やチタンの場合,100[μs]のパルス幅の単発放電において,5~7回の加工屑の飛散が見られたのに対し,𝜆θ^�2の値が大きい材料である銅やタングステンの場合,加工屑の飛散が1~2回と亜鉛合金やチタンと比較して少なかった.𝜆θ^2の値が大きくなるほど加工屑の飛散が発生する回数が少なくなる傾向を示している.加工物材料を黄銅としたFig.3.13(c)の結果より,加工屑の飛散の回数が1回の場合,加工物材料を銅とした時に形成された単発放電痕と似ている放電痕,加工屑の飛散の回数が2回の場合,加工物材料を亜鉛とした時に形成された単発放電痕と似ている放電痕が得られた.黄銅は銅と亜鉛の合金であるため,放電が発生した時の放電点に銅あるいは亜鉛のどちらかが多く含まれているかによって2種類の単発放電痕が形成されると考えられる.加工物材料をタングステンとした場合,短いパルス幅での加工において加工効率が良いといわれている[3].その理由のひとつとしては,放電開始とともに加工屑の飛散が見られるが,その後はパルス幅を長くしても,放電が終了するまでの間は加工物材料を加熱しているだけで加工は進行していないためと考えられる. 複数回の加工屑の飛散が見られた材料の場合,加工屑の飛散が発生したタイミングにばらつきはあったが,一発の放電中に材料の除去が複数回,間欠的に行われていることが分かった.また,𝜆θ^2の値が小さい材料において,溶融材料の飛散回数が多くなる傾向を示した. 3.3.6 材料の除去メカニズムの推定 これまでの気中単発放電おける極間現象の観察結果から,一発の放電によって,陽極側および陰極側において材料の除去が生じるメカニズムを考察する.推定した材料除去モデルをFig.3.14に示す. 陽極側における最初の溶融材料の飛散は,入熱密度が非常に高く,最表面は瞬時に蒸発状態となり,これによって溶融材料の盛り上がりあるいは飛散が生じる.その後,アーク柱は膨張によって入熱密度は低下するが,表面への加熱は継続され,伝導熱により内部に溶融域ができる.表面の蒸気圧がある限界を超えると,表面蒸発による反跳力[19]が生じ,溶融した内部の材料が吹き飛ばされる.反跳力によって溶融材料が飛散する時に,熱も一緒に持っていかれる.そのため,溶融材料が飛散した後,新しく出現した面が再び加熱されることになる.なお,表面加熱によって沸点に達する時間は,放電点の電流密度(加熱流密度)と沸騰潜熱および沸点と加熱開始時点での温度差などが効いてくる.また,反跳力による溶融材料の挙動は,本実験と同程度のエネルギー密度の条件下でのレーザー加工においてシミュレートされた結果である. このようなプロセスが放電中に繰り返し発生するため,一発の放電中に複数回の材料の除去が行われる.また,材料の加熱されやすさを示している𝜆θ^2値が小さいほど,材料除去が多く発生する傾向にあることも確認された.なお,陰極側については,電流密度の高い放電点が表面を不規則に移動したため,陽極における1回目の除去プロセスが放電中に繰り返し生じたと考えられる.このように,陰極側における除去プロセスは蒸発が主体であるが,陽極側では蒸発に加え溶融材料を加工屑として排出している.この除去プロセスの違いが,極性による加工効率の違いの原因の一つと考えられる. Fig.3.14 Model of the material removal mechanism 3.4 結言 極間距離制御を実験装置に加え,気中において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 実験装置に極間距離制御を加えることによって,単発放電を発生させる前に極間距離を設定することができた.また,F/Gとハイスピードカメラを同期させることによって,F/Gから出力されたパルス信号がFETに入力するのと同時に撮影が開始され,放電波形により放電遅れ時間を推定した上で,放電が発生したと思われるフレームを判断することができた. ② 加工物を陽極とし,長いパルス幅の条件においては,第章で述べたのと同様に一発の放電によって行われる溶融材料の除去は1回だけではなく,複数回であった.溶融材料が加工屑として飛散する回数および発生時間にばらつきはあるが,一発の放電中に溶融材料の除去が複数回,間欠的に行われた. ③ 加工物を陽極とし,短いパルス幅の条件においては,溶融材料の除去は1回のみであったが,放電によって,一旦蒸発,溶融状態にまで達した場合は,その時点で放電が終了しても溶融材料の飛散あるいは盛り上がりの成長が生じることが確認された. ④ 加工物を陰極とした場合は,放電中に,パルス幅全体にわたって溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが間を置かずに次々と発生している様子が観察された. ⑤ 𝜆θ^2の値が小さい材料の場合,加工屑の飛散が複数回見られたのに対し,𝜆θ^2の値が大きい材料の場合,加工屑の飛散は1~2回であった.𝜆θ^2の値が大きくなるほど加工屑の飛散が発生する回数が少なくなる傾向を示している. ⑥ 加工物を陽極とした場合,材料が異なっても,一発の放電中に溶融材料の除去が複数回,間欠的に行われた. ⑦ 陽極において一発の放電中に複数回の材料除去が生じる理由は,放電による材料の表面加熱,蒸発を伴う溶融材料の飛散,溶融材料の飛散による新しい面の出現,再加熱のサイクルを繰り返すためと考えられる. ⑧ 陰極においては,放電中は連続的に溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが生じる.陽極における初期の状態が放電中に継続して行われるため,陰極側は蒸発を中心とした除去が主体となる. 第4章 液中環境における単発放電による極間現象の観察 4.1 緒言 第3章で気中単発放電における極間現象について述べたが,実際の放電加工は加工液中で行われることがほとんどである.放電加工における加工液の役割は放電後における極間の絶縁状態の回復,高温となった材料表面の冷却,加工屑の効率的な排出,加工屑の再付着防止などである[20]. そこで,本章では液中環境における単発放電による極間現象の観察を行った. 4.2 液中単発放電における極間現象の観察 4.2.1 実験装置・方法 アクリル板により作製した加工槽を組み込んだ実験装置の概略図をFig.4.1に示す.加工形態は液中において針形状電極対平面とした.電極はタングステン,加工物は炭素鋼(S50C),加工液は灯油とした.極間現象の観察方法は第2章の2.2で述べた方法を用いた. Fig.4.1 System for a single discharge observation in EDM oil gap 透明のアクリル板を重ねて作製した加工槽をFig.4.2に示す.また,同図には実際の加工槽の写真も示す.加工物に放電用の回路を接続するため,接続に用いるボルトの頭の部分やリード線を入れることができるスペースの確保が必要となる.Fig.4.2の水色で示したアクリル板の真ん中に加工物を入れることを想定し,オレンジ色で示したアクリル板でボルトの頭の部分やリード線が入るスペースを確保した.4枚のアクリル板を両端からボルトとナットで締め,その加工槽を加工物側のZステージ(2)にあるバイスで固定し,実験装置に組み込んだ. Fig.4.2 Work tank 実験方法は基本的に第3章3.2で述べた方法と同じである.極間距離を設定した後,加工槽に加工液を満たした.その後,極間に放電用の電源電圧を印加した状態でF/GからFETにパルス信号を出力することにより,単発放電を発生させた.加工条件をTable 4.1,撮影条件をTable 4.2に示す. Table 4.1 Machining conditions Power supply voltage 400 [V] Current limiting resistance 15 [Ω] Gap width 5 [μm] Pulse duration 100 [μs] Electrode polarity Negative Dielectric working fluid EDM oil (Kerosene) Table 4.2 Photographing conditions Exposure time 1.11 [μs] Frame rate 2.3×10^5 [fps] Resolution 160×32[px] Magnification 100 4.2.2 実験結果および考察 上記の実験装置により,液中単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.4.3に示す.また,この単発放電によって形成された単発放電痕をFig.4.4に示す. Fig.4.3 Gap phenomena observed during the single discharge in EDM oil with its discharge waveform Fig.4.4 Photograph of a single discharge crater (EDM oil) Fig.4.3は実測した単発放電の波形とともに放電発生から21.5[μs]までの極間現象について4.3[μs]毎に抜き出した撮影結果および放電の途中である43.0[μs] ,64.5[μs], 86.0[μs]について,それぞれの時間において撮影された結果を示している. 観察の結果,放電開始から時間が経過するにつれて極間を明確に観察することができない状況であった.また,Fig.4.3の(g)~(k)に示したように,放電中も放電終了直後も極間を明確に観察することができなかった.極間現象を明確に観察できない原因として,気泡,加工屑の浮遊,油の分解生成物などが考えられるが,シャドウグラフ法による撮影のため,その原因を特定することは困難である. 液中の条件において形成された単発放電痕を観察すると,Fig.4.4に示すように気中において同様の電気条件で形成された単発放電痕と比較して,その直径も大きく,溶融部分が多く除去されたような放電痕が形成された.また,放電痕の周囲に溶融材料の再付着が見られなかった. 4.3 液滴単発放電における極間現象の観察 第4章の4.2より液中単発放電において,極間現象を明確に観察することはできなかった.しかし,様々な先行研究として,液滴において単発放電を発生させ,液中と同様の極間現象となることを観察した例がある[21].また,実際の放電加工中は,極間はほとんど気泡で満たされるという研究報告もある[8], [22], [23].よって,液滴中での極間現象が,液中とほとんど同じ現象であると仮定すれば,液滴での極間現象の観察によって液中の状態を把握できる可能性がある.そこで,本節では,まずそれぞれの環境における放電痕形状の比較を行った.Table 4.1に示す加工条件において,気中,液中,液滴それぞれにおいて単発放電を発生させ,それぞれの単発放電痕を観察した結果をFig.4.5に示す. Fig.4.5 Photograph of a single discharge crater Fig.4.5(b)に示した液中単発放電において形成された単発放電痕とFig.4.5(c)に示した液滴単発放電において形成された単発放電痕を比較すると,ほぼ同様な形状であった.また,両条件とも気中での単発放電痕と比べ,かなり大きな放電痕形状となった.気中での放電痕には,加工屑の再付着や熱影響層が確認されたが,液中と液滴中ではそのような形態は見られず,それぞれの条件ではかなり近い極間現象であると思われる. 以上の結果から,液滴中における単発放電による極間現象の観察をし,これによって液中での極間現象を考察することとした. 予備実験として,パルス幅を100[μs]として単発放電を発生させ,極間現象の観察を行ったが,パルス幅全体にわたって加工液の飛散状態が継続し,この時間内では極間現象を明確に観察することができなかった.そこで,パルス幅を200[μs]に設定して,単発放電を発生させ,極間現象の観察を行うこととした. 4.3.1 実験装置・方法 実験装置は第3章の3.2のFig.3.3に示した実験装置を用いた.加工形態は液滴において針形状電極対平面とした.電極はタングステン,加工物は炭素鋼(S50C),加工液は灯油とした.極間現象の観察方法は第2章の2.2で述べた方法を用いた. 実験方法は基本的に第3章3.2で述べた方法と同じである.極間距離を設定した後,マイクロピペットを用いて極間に加工液を一滴(容量:約5[μl])加えた.その後,極間に放電用の電源電圧を印加した状態でF/GからFETにパルス信号を出力することにより,単発放電を発生させた.加工条件をTable 4.3に示す.撮影条件はTable 4.2に示したとおりである. Table 4.3 Machining conditions Power supply voltage 400 [V] Current limiting resistance 15 [Ω] Gap width 5 [μm] Pulse duration 200 [μs] Electrode polarity Negative Dielectric working fluid EDM oil (Kerosene) 4.3.2 実験結果および考察 液滴単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.4.6に示す.また,この単発放電によって形成された単発放電痕をFig.4.7に示す.放電開始と同時に,極間に滴下した加工液が飛散している様子が観察された.放電開始から86.0[μs]までの間は加工液の飛散により,極間現象を明確に観察することができなかった.放電開始から86.0[μs]のタイミングにおいて極間がはっきりと見えるようになった. この条件においては,放電開始から98.9[μs]のタイミングにおいて溶融した材料が加工屑として飛散している様子が観察された.その後は,加工屑が飛散する様子は観察されず,放電が終了した.このように放電中の前半は加工液の飛散により極間現象を明確に観察することができなかったが,後半に材料が除去されている様子を観察することができた.その除去過程は気中と同様に間欠的な爆発現象であり,液中においても同様の除去過程であると思われる.また,Fig.4.7に示した単発放電痕を観察すると,液中において形成された単発放電痕とほぼ同様な形状をしており,放電痕の周囲に溶融した材料の再付着や熱影響層が見られず,液中加工に特有な放電痕形態であった. Fig.4.6 Gap phenomena observed during the single discharge in oil droplet with its discharge waveform Fig.4.7 Photograph of a single discharge crater (oil droplet) 上記より,液滴において加工物を陽極とした場合の極間現象を観察できたことから,加工物を陰極とした場合の液滴における極間現象の観察を行った.加工物材料は気中において加工物を陰極とした場合の単発放電実験時に用いたのと同じ亜鉛合金とした.液滴において加工物を陰極とした場合の単発放電の波形および各時間における極間を観察した結果をFig.4.8に示す.また,この単発放電によって形成された単発放電痕をFig.4.9に示す. Fig.4.8 Gap phenomena observed during the single discharge in oil droplet with its discharge waveform (workpiece polarity:(−)) Fig.4.9 SEM image of a single discharge crater (oil droplet, workpiece polarity:(−)) Fig.4.8より,放電開始から73.1[μs]までの間は加工液の飛散により,極間現象を明確に観察することができなかった.放電開始から73.1[μs]のタイミングにおいて極間がはっきりと見えるようになった.そして,第3章の3.3の3.3.4で述べたのと同様に新しい溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが間を置かずに次々と発生している様子が観察された.この現象はパルス幅全体にわたって継続した.加工物を陰極とした場合も除去過程は気中と同様であり,液中においても同様の除去過程であると思われる.また,Fig.4.9に示した単発放電痕を観察すると,加工物を陽極とした場合と単発放電痕の形状と異なり,放電痕の内部に何度も細かく材料が除去されたような跡が観察された. 4.4 アークプラズマの観察 第4章の4.3より液滴単発放電において,放電中の後半に材料が除去されている様子を観察することができ,気中と同様の除去過程であることが確認され,液中であっても同様の加工メカニズムであると推定される.しかしながら,第4章の4.3のFig4.5に示した単発放電痕のうち,気中において形成された単発放電痕と液滴において形成された単発放電痕を比較すると,同一加工条件であるにも関わらず,気中よりも液滴の方が大きい.このことは,気中と液中の条件で比較したこれまでの研究によっても示されている[24].材料の除去の主体が加工液の気化爆発力ではなく,材料自身の蒸発による反跳力が主体であることを考えると,この違いの説明は困難である.また,加工液の気化爆発によって溶融された領域がある程度効率的に除去されることは考えられるが,溶融した領域がこのように大きくなるとは考えにくい.その理由を考察するためにアークプラズマを直接観察することとした. 4.4.1 実験装置・方法 アークプラズマを直接観察する時の実験装置の概略図をFig.4.10に示す. Fig.4.10 System for the arc plasma observation during single discharge これまでは放電中の極間現象を観察するために,特定のレーザー光を照明光として,この波長のみを通過させるバンドパスフィルターを介した観察系を構築したが,今回はアークプラズマを直接観察するため,レーザーおよびバンドパスフィルターを実験装置から外した.加工形態は気中および液滴において針形状電極対平面とした.電極はタングステン,加工物は炭素鋼(S50C),加工液は灯油とした.実験方法は第3章3.2で述べた方法と同じである. 加工条件はTable 4.1に示したとおりである.撮影条件をTable 4.4に示す.撮影条件については,アークプラズマの全体の様子を詳細に観察できるように,倍率およびフレームレートを調整した. Table 4.4 Photographing conditions Exposure time 1.11 [μs] Frame rate 8.0×10^4 [fps] Resolution 160×80[px] Magnification 50 4.4.2 実験結果および考察 Fig.4.10に示した実験装置で気中単発放電および液滴単発放電におけるアークプラズマを直接観察した結果をFig.4.11に示す. Table 4.4に示した撮影条件では,撮影は12.5[μs]毎に行われる.Fig.4.11は撮影開始から125.0[μs]までのアークプラズマの様子を12.5[μs]毎に抜き出した撮影結果を示している.気中と液滴の両方において,放電発生後,時間の経過とともにアークプラズマが膨張していく様子が観察された.しかし,Fig.4.11に示すように気中と液滴ではアークプラズマの形状が異なることが分かった.気中では横長く,丸い形状であったのに対し,液滴では上向きに火を噴いたような形状であった.また,液滴におけるアークプラズマを観察すると,加工物と接触しているアークプラズマの下部分の膨張が抑制されているようにも見える.液滴の場合,50.0[μs]時に代表されるようにアークプラズマの膨張が抑制されているため,気中と比較してエネルギー密度が高く,それによって溶融部分が拡大し,材料の蒸発反跳力や加工液の気化爆発などにより,気中において形成された単発放電痕より大きく,溶融部分が多く除去されたような単発放電痕が形成されると考えられる.ただし,アークプラズマの形状やアークプラズマの下部分の膨張の抑制などが放電痕の形状に直接的に影響を与えたのかは不明である.なお,液中と気中環境におけるアークプラズマの膨張に関しては,国枝ら[25]によっても観察されているが,このようにプラズマの形状までを捉えた例はほとんどない. Fig.4.11 Arc plasma observed during a single discharge in air gap and oil droplet gap 4.5 結言 実際の放電加工は加工液中で行われることがほとんどである.そこで,液中環境において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 透明のアクリル板を重ねた数[mm]の奥行の加工槽により,液中において単発放電を発生させ,極間現象を観察したが,気泡,加工屑の浮遊,油の分解生成物などのどれかはっきりと断定することは困難であった。それらが原因で放電中の極間現象を明確に観察することができなかった. ② 液中の場合,気中において形成された単発放電痕と比較して,大きく,溶融部分が多く除去されたような放電痕が形成された.また,溶融材料の再付着が見られなかった. ③ 液滴における単発放電の場合,パルス幅を100[μs]に設定した場合,パルス幅全体にわたって加工液の飛散により極間現象を明確に観察することができなかった.パルス幅を200[μs]に設定した場合,放電中の前半は加工液の飛散により極間現象を明確に観察することができなかったが,後半に材料が除去されている様子を観察することができた. ④ 液滴単発放電において,放電中の後半に観察された材料の除去過程が気中と同様に間欠的な爆発現象であり,液中においても同様の除去過程であると思われる. ⑤ 液滴において形成された単発放電痕は,液中において形成された単発放電痕とほぼ同様な形状をしており,溶融材料の再付着が見られなかった. ⑥ 気中および液滴において,アークプラズマを直接観察した結果,アークプラズマの形状が異なることが分かった. ⑦ 液滴におけるアークプラズマの場合,加工物と接触しているアークプラズマの下部分の膨張が抑制されているように見えた. ⑧ アークプラズマの形状やアークプラズマの下部分の膨張の抑制などが放電痕の形状に直接的に影響を与えたのかは不明であるが,何らかの影響を及ぼしたと思われる. 第5章 総括 本研究では,高倍率でかつ長いワーキングディスタンスを持つ光学レンズをハイスピードカメラに装着し,様々な加工条件の単発放電によって生じる極間現象の観察を行った.またそれぞれの条件において形成された単発放電痕をマイクロスコープあるいはSEMにより観察した.最後に,極間現象および単発放電痕の観察結果から単発放電による放電痕形成メカニズムについて考察した.本研究により得られた結果を総括して以下に述べる. 第1章 緒言 放電加工の原理とともに本研究の背景と目的について述べた. 第2章 極間現象の観察の基礎実験 伊藤らによって開発された方法を用いて,気中において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 特定のレーザー光を照明光として,この波長のみを通過させるバンドパスフィルターを介した観察系を構築することにより,放電による発光の影響を受けずに極間現象を明確に観察することができた. ② 全ての電気条件において,一発の放電中に溶融した材料が加工屑として飛散している様子が複数回,間欠的に観察された. ③ それぞれの電気条件によって形成された単発放電痕を観察すると,全ての単発放電痕において,材料が複数回除去されたような跡が観察された. 第3章 気中単発放電における極間現象の観察 極間距離制御を実験装置に加え,気中において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 実験装置に極間距離制御を加えることによって,単発放電を発生させる前に極間距離を設定することができた.また,F/Gとハイスピードカメラを同期させることによって,F/Gから出力されたパルス信号がFETに入力するのと同時に撮影が開始され,放電波形により放電遅れ時間を推定した上で,放電が発生したと思われるフレームを判断することができた. ② 加工物を陽極とし,長いパルス幅の条件においては,第2章で述べたのと同様に一発の放電によって行われる溶融材料の除去は1回だけではなく,複数回であった.溶融材料が加工屑として飛散する回数および発生時間にばらつきはあるが,一発の放電中に溶融材料の除去が複数回,間欠的に行われた. ③ 加工物を陽極とし,短いパルス幅の条件においては,溶融材料の除去は1回のみであったが,放電によって,一旦蒸発,溶融状態にまで達した場合は,その時点で放電が終了しても溶融材料の飛散あるいは盛り上がりの成長が生じることが確認された. ④ 加工物を陰極とした場合は,放電中に,パルス幅全体にわたって溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが間を置かずに次々と発生している様子が観察された. ⑤ 𝜆θ^2の値が小さい材料の場合,加工屑の飛散が複数回見られたのに対し,𝜆θ^2の値が大きい材料の場合,加工屑の飛散は1~2回であった.𝜆θ^2の値が大きくなるほど加工屑の飛散が発生する回数が少なくなる傾向を示している. ⑥ 加工物を陽極とした場合,材料が異なっても,一発の放電中に溶融材料の除去が複数回,間欠的に行われた. ⑦ 陽極において一発の放電中に複数回の材料除去が生じる理由は,放電による材料の表面加熱,蒸発を伴う溶融材料の飛散,溶融材料の飛散による新しい面の出現,再加熱のサイクルを繰り返すためと考えられる. ⑧ 陰極においては,放電中は連続的に溶融材料の飛散あるいは盛り上がりが生じる.陽極における初期の状態が放電中に継続して行われるため,陰極側は蒸発を中心とした除去が主体となる. 第4章 液中環境における単発放電による極間現象の観察 実際の放電加工は加工液中で行われることがほとんどである.そこで,液中環境において単発放電を発生させ,極間現象および単発放電痕を観察した.結果を以下に要約する. ① 透明のアクリル板を重ねた数[mm]の奥行の加工槽により,液中において単発放電を発生させ,極間現象を観察したが,気泡,加工屑の浮遊,油の分解生成物などのどれかはっきりと断定することは困難であった。それらが原因で放電中の極間現象を明確に観察することができなかった. ② 液中の場合,気中において形成された単発放電痕と比較して,大きく,溶融部分が多く除去されたような放電痕が形成された.また,溶融材料の再付着が見られなかった. ③ 液滴における単発放電の場合,パルス幅を100[μs]に設定した場合,パルス幅全体にわたって加工液の飛散により極間現象を明確に観察することができなかった.パルス幅を200[μs]に設定した場合,放電中の前半は加工液の飛散により極間現象を明確に観察することができなかったが,後半に材料が除去されている様子を観察することができた. ④ 液滴単発放電において,放電中の後半に観察された材料の除去過程が気中と同様に間欠的な爆発現象であり,液中においても同様の除去過程であると思われる. ⑤ 液滴において形成された単発放電痕は,液中において形成された単発放電痕とほぼ同様な形状をしており,溶融材料の再付着が見られなかった. ⑥ 気中および液滴において,アークプラズマを直接観察した結果,アークプラズマの形状が異なることが分かった. ⑦ 液滴におけるアークプラズマの場合,加工物と接触しているアークプラズマの下部分の膨張が抑制されているように見えた. ⑧ アークプラズマの形状やアークプラズマの下部分の膨張の抑制などが放電痕の形状に直接的に影響を与えたのかは不明であるが,何らかの影響を及ぼしたと思われる. 第5章 総括 本研究で得られた結果を総括する. 材料除去モデルをまとめた図をFig.5.1に示す.Fig.5.1の上図が現在までに考えられている一発の放電による放電痕形成プロセスであり,下図が極間現象の観察結果から推定した一発の放電による放電痕形成プロセスである.本研究の成果により,新たな材料除去モデルを示すことができた.液中環境における単発放電による極間現象の観察は困難を極めたが,液滴単発放電における極間現象の観察結果から液中環境においても気中環境と同様の材料除去過程であると考えられる結果に至った.しかしながら,溶融材料の蒸発による反跳力やアークプラズマの形状による放電痕への影響など極間現象には未だ不明な点が多く残っている. Fig.5.1 Model of the material removal mechanism 謝辞 本論文は,筆者が筑波技術大学大学院技術科学研究科産業技術学専攻の修士課程において行った研究の成果をまとめたものである.本研究の遂行および本論文をまとめるにあたり,筑波技術大学産業技術学部産業情報学科 谷貴幸教授には主指導教員として,後藤啓光准教授には副指導教員として終始懇切なるご指導およびご鞭撻を賜り,深く感謝申し上げます. また,筑波技術大学産業技術学部産業情報学科 岡田昌章教授には主査として,谷貴幸教授と明松圭昭准教授には副査として,貴重な時間を割いて本論文をご精読頂き,多くのご指導およびご助言を頂きました.深く感謝申し上げます. 本研究に関して多くの有益なご指導およびご助言を頂きました東京大学 毛利尚武名誉教授に深く感謝申し上げます. 2016年に名古屋工業大学にて開催された電気加工学会全国大会(2016)の講演発表およびポスターセッションにおいて,手話通訳をして頂きました筑波技術大学聴覚障害系支援課 小貫美奈氏に心から感謝いたします. 筆者の本学大学院での研究生活を温かい目で見守り,研究,生活,進路など様々な面でご助言を頂きました筑波技術大学産業技術学部産業情報学科システム工学専攻機械工学領域の教員の皆さんに心から感謝いたします. 筆者と同じ生産加工分野の研究を行っており,実験に有益なアドバイス,ワイヤ放電加工機の使用方法を教えて頂いた筑波技術大学大学院技術科学研究科産業技術学専攻の後輩 菅野啓太君に心から感謝いたします.また,苦楽を共にし,励ましてくれた院生の皆さんに心から感謝いたします. 最後に,本学大学院に進学するにあたり,筆者の背中を押し,研究生活を様々な面で支え,温かい目で見守ってくださった両親をはじめとする家族,親戚の皆様に心から感謝いたします. 参考文献 [1] 齋藤長男,毛利尚武,高鷲民生,古谷政典:放電加工技術 基礎から将来展望まで,日刊工業新聞社,(1997) [2] 武沢英樹:トコトンやさしい 放電加工の本,日刊工業新聞社,(2014) [3] 齋藤長男:放電加工のしくみと100%活用法,技術評論社,(1979) [4] 橋本浩明,国枝正典:分光分析による放電加工アークプラズマの温度変化の観察,電気加工学会誌,Vol.31,No.68,1997,pp.32-40,(1997) [5] 今井祥人,鈴木俊雄,河津秀俊,後藤昭弘:使いこなす放電加工,技術評論社,(2010) [6] 千種法人,早川伸哉,糸魚川文広,中村隆:放電加工の極間隙における加工くず飛散の観察,電気加工学会全国大会(2011)講演論文集,pp.79-82,(2011) [7] 草深友佑,早川伸哉,糸魚川文広,中村隆:放電加工の放電点における溶融金属除去の直接観察,電気加工学会全国大会(2013)講演論文集,pp.3-6,(2013) [8] 北村朋生,国枝正典:透明体電極を用いた放電加工極間現象の直接観察,精密工学会誌,Vol.81,No.11,2015,pp.983-986,(2015) [9] 小島彰,国枝正典:放電加工におけるアーク柱の膨張速度,2006年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,pp.671-672,(2006) [10] 楊暁冬,韓笑,国枝正典:分子動力学を用いた放電加工の除去メカニズムの解明,電気加工技術,Vol.37,No.116,2013,pp.25-37,(2013) [11] 田辺里枝,伊藤義郎,毛利尚武:大電流単発放電における微細軸形成現象の時間分解観察とその形成ダイナミクス,精密工学会誌,Vol.73,No.6,2007,pp.682-687,(2007) [12] 阿部真之:LabVIEW FPGAではじめる計測・制御,オーム社,(2012) [13] 小澤哲也:図解 LabVIEWデータ集録プログラミング,森北出版株式会社,(2008) [14] 谷貴幸,後藤啓光,木下大地,齋治男,毛利尚武,齋藤長男:放電加工における橋絡現象の観察,2009年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,pp.861-862,(2009) [15] 宇野義幸,岡田晃,中島利勝,高木俊:チタン合金の高能率放電加工に関する研究,電気加工学会誌,Vol.27,No.56,1993,pp.1-11,(1993) [16] 山下正英,北村朋生,山下健,福澤康:形彫り放電加工の加工速度に及ぼす材料物性の影響,電気加工学会誌,Vol.45,No.109,2011,pp.71-79,(2011) [17] 大上光生:金型用亜鉛合金ZAPRECの特性―鋼材では達成できない金型加工速度と成形品質―,電気加工学会誌,Vol.37,No.84,2003,pp.39-44,(2003) [18] 日本機械学会:機械工学便覧 デザイン編β2 材料学・工業材料,日本機械学会編,(2006) [19] 野口暁,大村悦二,平田好則:レーザの多重反射と蒸発を考慮したレーザ穴あけ加工の熱流体解析―第2報,レーザの多重反射と材料の蒸発を考慮したレーザ穴あけシミュレーションー,レーザ加工学会誌,Vol.14,No.2,2007,pp.113-119,(2007) [20] 早川伸哉,糸魚川文広,中村隆:放電加工における加工液の役割に関する考察,電気加工技術,Vol.34,No.108,2010,pp.21-28,(2010) [21] 武沢英樹,毛利尚武,伊藤義郎,田辺里枝,堀尾健一郎:単発放電による微細電極の瞬時成形(第2報)―微細化現象の動的挙動の観察―,精密工学会誌,Vol.69,No.5,2003,pp.716-720,(2003) [22] Y. 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