p.13 第2章 基礎編2 大学について学ぼう  基礎編1では、障害者差別解消法が、聴覚障害学生の学生生活にどのように影響するかを学びました。  とはいえ、高校生にとって大学は未知の世界。支援が受けられることはわかったけれど、じゃあどうしたらいいの?と思っている人もいるかもしれません。この章を読むことで、オープンキャンパスから、支援を受けながら学び始めるまでの、イメージトレーニングをしてみましょう。  支援をまだ受けていない、または相談をし始めたばかりの大学生にも参考になります。 基礎編2大学について学ぼう 高校と大学の違いは? p.14  対象者:高校生 大学で過ごす4年間 p.18  対象者:高校生、大学生 支援ってどうやって利用するの? 知っておこう!大学の組織と運営 p.21  対象者:高校生、大学生 支援を受けるまでの流れを確認しよう! p.24  対象者:高校生、大学生    p.14 基礎編2 高校と大学の違いは?  みなさんは大学にどんなイメージを持っていますか?専門的な勉強をするところ?確かにそれも正解ですが、それだけではありません。  大学では、専門的な知識・技術を学びますが、これをいかして社会で活躍するためには、幅広い教養を身に付け、さらに難しい課題を解決するための問題解決能力、研究的な物事の考え方や姿勢を身に付けることが必要です。  そのため、高校までの学びと、大学での学びは、いろいろなことが異なります。ポイントは以下の5つです。 【ポイント1 時間割は自分で作る!】  大学では、自分で受けたい授業を選び、時間割を作ることができます。ただし、専攻や取得を希望する資格によって、必ず取らなくてはいけない科目(必修科目)と、自分の目標や興味に応じて取る科目(選択科目)があり、卒業までに取らなくてはいけない単位の数が決まっています。ルールにそって自分で作った時間割は、大学に届け出る(履修申請)必要があります。 【ポイント2 教員や受講生、教室が授業ごとに違う!】  大学では授業ごとに教員が異なり、教室も変わります。また、授業は学ぶことを希望した(大学の言葉で「履修を申請した」と言います)学生のみが受けるので、一緒に学ぶ学生も授業ごとに変わります。 p.15 【ポイント3 さまざまな授業の形態がある!】  代表的な授業の形態として、以下のようなものがあります。 講義 教員が多くの学生に対して一斉に教えます。 画像:複数の学生が講義を受けている場面のイラスト。 ゼミ・演習 少人数でディスカッションしたり、作業をしたりします。 画像:5人の学生が資料を見ながらゼミでディスカッションしているイラスト。 フィールドワーク 大学の外に出て調査をしたり、実践をしたりします。 画像:2人の学生が大人の女性にインタビューしているイラスト。 実習(教育実習など) 主に資格取得のため、学んだことを活かし、現場で実践します。 画像:学生が学校で子どもを前に授業を行っているイラスト。 実験 グループまたは一人で、課題に取り組みます。 画像:白衣を着た学生が試験管を手にして実験を行っているイラスト。 実技 競技、芸術系の製作など、実際に手や身体を動かします。 画像:2人の学生がバスケットボールをしているイラスト。 p.16 各形態で考慮すべき合理的配慮については、以下に詳しく説明していますので、参考にしてください。 PEPNet-Japan発行『トピック別聴覚障害学生支援ガイド―PEPNet-JapanTipSheet集』「授業における教育的配慮」p.43〜 URL:http://www.pepnet-j.org/web/modules/tinyd1/index.php?id=353&tmid=447 画像:QRコード(上記URLをQRコードに変換したもの) 【ポイント4 進め方と成績評価の方法が授業ごとに違う!】  大学では、必ずしも教科書があるとは限りません。レジュメ(話す内容の要旨がまとめられたもの)、スライドを印刷したもの、参考資料が必要に応じて配付されるケースや、特に資料がなく時折板書があるケース、教科書の指定はあっても教科書通りには進まないケースなど、授業や担当教員によってさまざまです。  大学を卒業した聴覚障害者からよく聞く体験談として 画像:困った顔の男子学生の横に吹き出しがあり、その中に以下のセリフが書かれている。 「高校までは、授業中に先生が話していることがよくわからなくても、教科書や参考書を使って独学で乗り切れたけど、大学に入ると全く通用しなかった」 というものがあります。教員が重要なことを口頭のみで説明することはよくありますし、枝葉のように見える内容も、実はある事柄を理解するための必要なパーツとして扱われていることがあります。  また成績評価の方法も、テスト、小論文、実技、レポート、制作物の提出など様々です。  各授業でどのような方法で学び、何を評価するのかは、シラバス(開講される授業の概要がまとめられたもの)で公開されていて、履修申請をする前に確認することができます。 p.17 【ポイント5 大人としての振る舞いを求められる!】  社会はさまざまなルールのもとに動いていて、大学もその中のひとつです。障害の有無に関わらず、全ての学生に言えることですが「決められた期日は守る」「時間に遅れない」「無断で休まない」など、大人としての基本的なルールを守りましょう。  もちろん、これは支援を受けるときにも同じです。 画像:上に「大人としての基本的なルールを守ろう」と書かれ、その下に苦笑いしている男子学生がいる。そして学生の周りに「決められた期日は守る!」「時間に遅れない!」「無断で休まない!」と書かれている。 p.18 基礎編2 大学で過ごす4年間 【4年間をイメージしてみよう】  大学生活の4年間では、入学から卒業まで、さまざまなイベントがあります。あらかじめ知っておくことで、支援が必要な場面を見通し、先回りして動くことができます。  4年間でどんなことが起こるのか、おおまかな流れを見てみましょう。  ここで取り上げる4年間のスケジュールは、ある大学の一例です。大学や専攻によって、4年間のスケジュールは異なります。入学前後に、自分が入学する専攻の大まかなスケジュールを確認しましょう。 【1年次】 入学前 <勉強のスケジュール> ・入学前相談 ※入学前相談入学が決まったら、早めに支援担当部署と入学後の支援について相談を。入学式やオリエンテーションでの情報保障についても忘れずに! <就活・進学・その他> (一人暮らしの場合) ・引越、地域のリソースの確認(福祉制度、通訳派遣依頼先、補聴器店、等) 前期 <勉強のスケジュール> ・入学式 ・オリエンテーション ・合理的配慮の検討 ・授業開始・履修登録 ・テスト期間 ※いよいよ入学!授決まったら、支援者と合理的配慮にて相談しましょう。   <就活・進学・その他> ・部活、サークル新歓 画像:二人の学生が楽しそうに話すイラスト ・アルバイト探し 夏休み <勉強のスケジュール> ・補講、集中講義 ・合理的配慮の振り返り 後期 <勉強のスケジュール> ・授業開始 ・合理的配慮の検討 ※合理的配慮はいつでも見直すことができます。気になることは遠慮なく伝えましょう。 画像:聴覚障害学生が支援課で職員と手話で話しているイラスト ・履修登録 ・テスト期間 <就活・進学・その他> ・学祭 春休み <勉強のスケジュール> ・補講、集中講義 ・合理的配慮の振り返り p.19 【2年次】 前期 <勉強のスケジュール> ・授業開始・履修登録 ・合理的配慮の検討 ・テスト期間 画像:図書館で勉強している学生のイラスト。 夏休み <勉強のスケジュール>  ・合理的配慮の振り返り 後期 <勉強のスケジュール> ・授業開始・履修登録 ・合理的配慮の検討 ・3年次のゼミ・研究室の希望調査(時期は専攻により異なる) ・テスト期間 ※3年次からテーマ別のゼミに所属する場合は、後期に希望調査が。事前に興味のあるゼミの先生にアポを取って、話してみましょう。ゼミに参加させてもらい、雰囲気を見る方法もあります。 <就活・進学・その他> ・インターン(希望者) 春休み ・合理的配慮の振り返り 【3年次】 ※3年次になると、学ぶ内容が専門的になり、発表やディスカッションの機会も増えます。授業の内容、形式、自分のニーズに合わせて、支援の方法の検討を。 前期 <勉強のスケジュール> ・授業開始 ・履修登録 ・合理的配慮の検討 ・専門テーマ別のゼミ・演習がスタート ・資格取得のための実習(時期や期間は実習先により異なる) ・テスト期間 <就活・進学・その他> ・就職ガイダンススタート ※秋から本格的に始まる就職活動を見据え、学内でガイダンス(説明会)が行われます。就活の進め方など大切なことが話されるので、必要に応じ情報保障を検討しましょう。 夏休み <勉強のスケジュール> ・合理的配慮の振り返り <就活・進学・その他> ・インターン(希望者) 後期 <勉強のスケジュール> ・授業開始 ・履修登録 ・合理的配慮の検討 ・テスト期間 <就活・進学・その他> ・就職活動スタート、説明会参加、エントリー、試験、面接、内定 ・進学希望の場合は、進学先のリストアップ受験勉強 春休み <勉強のスケジュール> ・合理的配慮の振り返り p.20 【4年次】 ※卒業にむけて、これまでの学びのまとめをする一年間。卒業論文は、必修の専攻とそうではない専攻がありますが、多くの学生がテーマを決めて、1年間かけて研究し執筆します。また、資格取得のための実習や試験も、多くは4年次に行われます。これらの合理的配慮は、支援担当者や先方とよく相談しましょう。 前期 <勉強のスケジュール> ・卒業や資格取得に必要な単位の再確認 ・卒業論文のテーマ決定、研究 ・資格取得のための実習(時期や期間は実習先により異なる) ※多くの学生は履修しなければならない授業数が減るが、授業がある場合は3年までと同様に合理的配慮の検討を。 <就活・進学・その他> ・就職活動 ・資格試験対策講座(希望者のみ) 後期 <勉強のスケジュール> ・卒業論文執筆 ・資格取得のための試験(該当者のみ) ・卒業論文提出 ・卒論発表会 画像:パソコンに向かって卒業論文を書いている学生のイラスト。 <就活・進学・その他> ・就職活動秋採用スタート ・大学院入試(秋〜冬)(進学希望者のみ)  卒業 画像:眼鏡をかけた男子学生「自分の専攻の4年間のスケジュールを確認してみよう!」 p.21 基礎編2 支援ってどうやって利用するの?知っておこう!大学の組織と運営 画像:大学の校舎外観  第1章基礎編1では、障害のある学生の大学生活を支えてくれる法律について学びました。さらに、支援を活用し充実した学生生活を送るためには、自分の通う大学の支援の仕組みや組織を知っておくことが大切です。皆さんがふだんの生活の中で足を運ぶ場所は、授業が行われる教室、手続きを行う事務室の窓口、食堂、図書館などが中心になるかもしれません。しかし「大学」は、ふだん学生が直接触れることの少ないさまざまな部署やそこで働く教職員で成り立っています。 【大学の組織とは?】  組織の形や細かな体制は各大学によって違いますが、役割ごとに大きく分けると、教育組織、研究組織、事務組織、その他の組織によって構成されています。 教育組織  ○○学部、□□学科、△△研究科など、分野ごとに教育が行われるところです。  学生はこの教育組織に所属していて、授業を履修し卒業に必要とされる単位を取得していきます。 研究組織  教育組織とは別に、研究を行うための組織があります。「○○学系」など研究分野ごとに分かれた教員組織がある場合もありますし、「○○研究センター」など、特定の研究を行うための機関もあります。 事務組織  大学運営のための事務を行うところです。部署ごとの名称や役割分担は各大学で決められていますが、一般的には、 ・総務(大学の運営全体、全学行事など) ・財務(予算や財産、施設の管理など) ・教務(授業に関わる業務) ・学務(学生生活に関わる業務) などが主な事務部署です。 その他  図書館、国際交流センター、保健管理センター、情報処理センターなど、大学の教育や運営に関わるもののほか、地域連携など社会貢献の業務を担うものなど、大学によって特色ある組織を有している場合もあります。 p.22 <もっと知ろう!>  事務部署以外にも、大学を運営するシステムがあります。「委員会」や「室」と言い、委員として選ばれた教員が協議して、事務職員と一緒に運営の方針決定や実務を行います。入試について扱う「入試委員会」や大学のPR全体を取り仕切る「広報室」などがありますが、障害学生の支援について検討するために、こうした委員会や室を設ける大学もあります。 【障害学生支援の体制とは?】  障害学生支援の体制は、前頁で述べたような大学組織の中に、位置づけられています。それぞれの大学の規模、組織の特徴、国公立・私立の別などによって、事情に合わせた体制づくりがなされています。  皆さんの大学では、支援について相談したいと思った時、最初に訪れる窓口はどこなのか確かめておきましょう。 障害学生支援を専門に担当する部署がある場合  障害学生の支援を担当する専門の部署がある場合は、どの学部の学生も一つの窓口で対応がなされます。「障害学生支援室」という名前の場合もありますし、「学生支援センター」など大きな機関の中の一部署として位置づけられている場合もあります。 画像:障害学生が支援室の職員と、座って対面で話し合いをしているイラスト   専門部署ではないが、障害学生支援を担当する部署が決まっている場合  障害学生支援以外の業務も行っている部署が、障害学生の対応窓口になっている場合です。学生課などの事務、学生相談室、保健室などが担当しているケースが比較的多く見られます。 画像:障害学生が支援課職員とカウンターで手話で相談しているイラスト p.23 必要に応じて担当する部署や人が定められている場合  支援室や担当部署の位置づけがない大学でも、大学の規定(ルール)として、「障害学生への支援が必要になった場合には、委員会を設置して対応する」「支援業務が必要になったときには〇〇課が担当する」などと定めている場合があります。障害学生支援の窓口が見当たらない場合は、学生課などの事務や学部・学科の先生などに問い合わせてみましょう。  多くの大学はウェブサイトで、「〇〇大学について」「組織」など組織体制の説明を公開しています。また、障害学生支援に関するページを設けている大学も増えています。大学全体がどのような組織になっていて、障害学生支援はどこでどのように運営されているのか、全体像を知っておくことで学生生活や支援の利用がより円滑になるでしょう。 →ワーク1−1 p.60 <もっと知ろう>  文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告」(2017)では、障害者差別解消法を踏まえ、大学がどのような体制を作っていくべきかについて方向性を示しています。 ・障害学生支援に関する学内規定を作成すること ・障害学生支援に関する意思決定を行う委員会を設けること ・障害学生支援の専門部署・窓口を設けること ・障害学生と大学の間で支援内容の決定が難しい場合に調整を行う、第三者機関を設けること などが挙げられています。現状では専門部署が設けられていなかったり学内のルールが決められていない大学も、今後はそうした体制を整えていくことが求められています。 →解説編 p.133 p.24 基礎編2 支援ってどうやって利用するの?支援を受けるまでの流れを確認しよう! 【支援を受けて学びたい!と思ったら・・・】  ここまでの内容で、大学によって支援体制が違ったり、また支援担当部署も違うこともわかってきたかと思います。自分の大学(または入学を希望する大学)の支援担当部署は、ワーク 1-1を参考に探してみましょう。 →ワーク1-1 p.60  では、実際に「この大学で学びたい!」もしくは「支援を受けながら学びたい!」と思ったときに、どんなことをすればよいのでしょうか?  ここでは、大学入学前オープンキャンパス、入試、実際に入学してから支援を受けるまでの一連の流れを解説します。 【オープンキャンパス】  各大学では夏休みを中心に、オープンキャンパスが開かれます。オープンキャンパスは自分の興味のある分野の授業を体験したり、キャンパスの雰囲気や特色などをその場で感じたりすることができる貴重な機会です。参加の際に、障害のある参加者を対象に合理的配慮の提供が行われることがあります。利用を希望する場合には、事前に参加する予定の大学のオープンキャンパスのウェブページを確認して、文字通訳や手話通訳を受けたいと確認の連 絡を入れましょう(ワーク1-2をやってみよう!)。 →ワーク1-2 p.62  オープンキャンパスで支援を体験することで、その大学で提供されている支援を体験することができます。また、支援担当部署とのやりとりを通して、支援室の雰囲気を知ったり、実際に大学に入った後の支援について相談したりすることもできます。さらに、同じ障害のある在学生がいる場合は、在学生と会って、大学の入試の時に受けた合理的配慮や、授業の様子など生の声を聞くことができる可能性もあります。  是非、積極的に参加し、大学の情報を集めましょう。 p.25 【入試】  大学に入学するためには、志望校の指定するセンター試験もしくは、AO入試、推薦入試、一般入試等を受け、合格する必要があります。それぞれ、試験時の合理的配慮の申請方法が異なりますので、事前にしっかり調べておく必要があります。 □センター試験の支援の申請  センター試験の時に支援が必要な場合は、センター試験の申込みとは別に申請が必要です。大学入試センターのウェブページの中に、「障害等のある方への受験上の配慮」という項目がありますので、確認の上、〆切に間に合うように早めに申請を行ってください。 □各大学の入試の支援の申請  各大学の入試の時の合理的配慮の申請は、大学によって申請方法が異なります。入試要項や、希望する大学の入試について記載されているウェブページを確認し、申請に必要な書類を揃えましょう。 画像:試験会場で、聴覚障害学生が試験官から伝達事項の書かれた紙を配布されている様子  一般的に下記の書類が求められる傾向があります。 ・受験上の合理的配慮申請書(指定の書式があるケースもあり) ・身体障害者手帳等の写し、または障害等の状況が確認できるもの ・大学入試センターからの通知書の写し(大学入試センター試験の受験上の配慮の決定を受けた者) ・医師の診断書  医師の診断書は、「センター試験の受験上の配慮申請」の〆切に間に合うように、夏休み中に取得しておくとよいでしょう。多くの大学では写しでの提出が可能なケースが多いですが、正本の提出を求められるケースもありますので、事前に必要枚数を確認して作成してもらってください。診断書の作成を依頼する際に、試験を受けるときに必要となる支援方法などを具体的に記載するようにお願いしてください。診断書に具体的な支援の方法が記載さ れていれば、大学側が試験時に必要な支援の種類を判断する助けとなります。 p.26  また、面接試験がある場合は、面接の時に希望する支援方法(手話通訳や文字通訳など)を具体的に記してもらうとよいでしょう。リスニング試験についても、高校までの対応を振り返り、希望する方法を記入してもらって下さい。  最後に、大学の担当者と直接連絡が取れるように、受験上の配慮申請書の中にメールアドレスを記載し、「聴覚障害があるため、連絡がある場合は電子メールでお願いします」と添えておくと、スムーズに連絡を取り合えます。 【入学前相談から授業開始まで】 画像:合格者の番号が掲示されている掲示板の前で、多くの学生が掲示を見つめている。中央の一人の学生は、自分の番号を見つけた様子。  大学生活で合理的配慮を受けるためには、「本人からの申請」を行なう必要があります。晴れて合格が決まったら、入学手続きが終わり次第、障害学生の支援を担当する部署に連絡を入れ、入学前相談の日程調整を依頼してください。入学前相談の日時が決まったら、支援を受けるために必要な書類について合わせて確認しましょう。  大学によって提出する申請書や資料が異なるので、担当者に確認をして、事前に用意を進めておきましょう。 1.支援を受けるための申請書(定型の書式がある場合もあります) 2.身体障害者手帳等の写し,または障害等の状況が確認できるもの 3.医師の診断書 4.自分が希望する支援の方法をまとめた文書(ワーク 3をやってみよう) →ワーク3 p.89 5.高校までの『個別の教育支援計画』(入手できる場合) 6.ガイダンスや学力試験等で支援が必要になる日時と時間のメモ  入学前相談では、支援担当部署の教職員や学部の教員が同席して一緒にお話しをすることになります。大学によって、過去に障害者の受け入れ経験がなく、どのように対応したらよいのかわからないというケースもあります。逆に、障害学生自身が支援を受けた経験がなく、支援の種類や特性をこれから学ぶという状況もあるかもしれません。どのような支援があれば授業を理解する上で助けとなるのか、支援担当教職員と話しながら一緒に考えてみてください。 p.27  その時に、高校までの「個別の教育支援計画」等の書類があれば支援を決めるときの参考になるでしょう。このように、支援担当部署や大学の関係者と話し合い(建設的対話)を重ねて、大学で受ける支援について合意を得てください。 →ワーク3−1 p.89 □ガイダンスでの支援の確認  授業開始までの間、大学の中では様々なイベントが行われます。特に、ガイダンスでは、学部の説明、履修する授業の注意事項など、大学生活で必要となる重要な説明が行われます。担当者と一緒に支援が必要な時間を確認し、支援者を派遣してもらえるよう依頼を行ってください。 □履修する授業の支援の申請  履修する授業が決まった後に、支援が必要な授業を支援担当部署に伝えて、支援者の用意を進めてもらう必要があります。支援の申請方法は大学によって違いますので、各大学で定められた手順に従って、支援の申請を行ってください。  どの授業を履修すべきかわからない場合には、聴覚障害のある先輩や支援者を紹介してもらい、先輩の履修した授業や、自分の学びたい内容に近い授業、聴覚障害者にとってわかりやすい授業をしてくれる先生などを紹介してもらう方法もあります。先輩達は、過去の経験からいろいろなアドバイスをしてくれますので、是非積極的に声をかけてみましょう。 □支援当日の流れの確認  授業当日の支援者との待ち合わせ方法や、支援に必要なものを持って行くのは誰かなど、大学ごとにルールが違います。初めての場合は支援担当職員も一緒に行ってくれることもありますので、わからない場合は遠慮なく確認をとりましょう。 p.28 【授業・支援開始】  授業の始まる5分前までには教室に向かいましょう。教室で支援者と合流したら、挨拶をし、支援で必要な伝達事項や、支援の時の通訳方法の希望があれば、その場で伝えましょう。支援を受け終わった後は支援者と簡単に情報交換をし、次回の支援で必要な情報交換をしておくと、次回もスムーズに支援を受けることができます。また、使用した機材にトラブルが発生している場合は、早めに支援担当職員に連絡をしましょう。 □遅刻・欠席・休講・補講の連絡  やむを得ない事情で遅刻・欠席する場合は、わかり次第早めに支援担当部署に連絡しましょう。もし、連絡がない場合、支援担当職員や教室で待っている支援者は、あなたに何かが起こったのではないかと、心配をしてしまいます。最低限のマナーとして、早めにメール等で連絡を入れましょう。 画像:電車が遅延して駅のホームで待つ障害学生と、教室でパソコンを用意してい待っている支援学生のイラスト。支援学生の心の声として「まだかな?大丈夫かな?」と書かれている。 <メール文(例)> 支援担当部署の担当者様、支援者の皆様 利用者の○○です。本日、大雪の関係で電車が遅れています。あともう少しで駅に着きますので、○時○分ぐらいに教室に到着出来る見込みです。 お待たせすることになりますが、よろしくお願いします。 p.29  休講になる、もしくは補講等が行われる場合は、判明した段階ですぐに支援担当部署が定めた手順で連絡を入れましょう。早めに連絡を入れることで、支援担当部署も余裕をもって支援者に断りの連絡や、支援者を配置することができます。 <メール文> 支援担当部署の担当者様  利用者の〇〇です。毎週火曜日の〇〇概論の講義が、〇月〇日は休講になります。代わりに、〇月〇日〇時限目に補講が行われることになりました。 お手数おかけしますが、支援のキャンセルと、補講日の支援者の募集をお願いします。 p.30 【支援内容の見直し】  実際に授業でノートテイク等の支援を受け始めた後、受けている支援が自分に合っていない、授業の内容が理解しにくいと感じる場合は、早めに支援担当教職員に相談しましょう。その時に、「どのような状況で困難な状況が起こっているのか」、「このように改善してくれたら理解しやすくなる」等、具体的な提案も合わせて行うと、支援室担当の教職員も一緒に対応方法を検討しやくなります。(ワーク3-2、3-3をやってみよう) →ワーク3-2 3-3 p.96  困っていることを放っておくと、授業の理解ができなくなるだけでなく、単位を落としてしまう可能性もあります。早めに支援担当部署に相談することで、悩みを解決することができます。遠慮せずに担当者に相談しましょう。 画像:聴覚障害学生と支援担当教職員が、手話通訳を利用して話し合いを行う様子。