弱視特別支援学級における学習指導等に関する研究 近藤 宏 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 キーワード:視覚障害教育,弱視特別支援学級,学習指導,Information and Communication Technology 1.研究背景と目的 全国で弱視特別支援学級を設置している学校は,335校(平成24年度)であり,小学校に262学級,中学校に73学級が設置されている[1]。近年,少子化にもかかわらず特別支援教育を受ける児童生徒は,増加傾向にある。一人ひとりの障害の状況に応じて個別の教育支援計画や指導計画が立てられる特別支援教育への転換によって理解が進み,保護者からは,子どもの可能性を伸ばせ,きめ細かな対応が得られる教育が求められていることが要因の一つとしてあげられる。 これまでのところ,全国の弱視特別支援学級数や担当教員数,点字・拡大文字等の使用教科書分類に関する調査は行われている[1]が,弱視特別支援学級の学習や進路に係る指導の具体的な実態については十分に把握されてない。弱視特別支援学級の現場では,担当教員が児童生徒の学習等の指導に関する様々な問題や課題を抱え込んでいることが推測される。本研究の目的は,弱視特別支援学級における視覚障害教育の支援方法について検討するための基礎資料を資することである。 2.成果の概要 2.1 研究方法平成27年度に弱視特別支援学級を有していた小学校および中学校 446 校を対象に調査を行い,308校から回答が得られた。研究デザインは,郵送法による無記名自記式調査とした。調査票の回答は,弱視特別支援学級の担任,または弱視特別支援学級の状況に詳しい教職に依頼した。調査票の回答方式は,調査項目により単一または複数回答式,および数値記入回答式とした。調査項目および選択肢は,@視覚障害のある児童・生徒への支援内容,AICT(Information and Communication Technology)機器や設備の状況,B学習指導上の課題や困っていること,C視覚障害のある児童・生徒のキャリア教育に関する課題についてなどとした。 2.2 研究結果弱視特別支援学級担当教員の視覚障害教育歴は1年(38.7%)が最も多いことが明らかとなった。また,視覚障害のある児童・生徒への支援内容は,教科指導(93.6%)が最も多く,次いで,日常生活技能の指導(40.4%),教材・教具の情報提供(40.4%)と続いた。ICT機器や設備の状況は,視覚障害のある児童・生徒が持ち運びできる情報端末がある(48.9%)が最も多く,次いで,弱視特別支援学級の教室に,児童・生徒が使えるパソコンがある(41.6%),と続いた。学習指導上の課題や困っていることについては,板書されたもの等についてのノートテイクの困難さ(41.6%),児童・生徒の見え方がわからない(41.6%)が最も多かった。 3.成果の今度における教育研究上の活用および予測される効果 視覚障害のある児童生徒を指導する際には,様々な専門的な知識や技能が必要であり,高い専門性が求められる。しかしながら,本研究から,学級を担当する教員の視覚障害教育経験年数が浅いことが明らかとなった。また,弱視特別支援学級における学習指導の実態や課題を把握することができた。今後,本研究の結果が,弱視特別支援学級における視覚障害教育に関する支援方法を検討するための基礎資料として活用されることが望まれる。 謝辞 本研究は, 平成28年度 競争的教育研究プロジェクト事業の助成を受けて行われた。ここに深く謝意を表する。 参照文献 [1] 澤田真弓.全国小・中学校弱視特別支援学級及び弱視通級指導教室実態調査(平成24年度)研究成果報告書. 平成25年3月独立行政法人 国立特別支援教育総合研究.http://www.nise.go.jp/cms/7,8210,16.html(2017.3.24アクセス)