国立大学法人 筑波技術大学 National University Corporation Tsukuba University of Technology 文部科学省認定 教育関係共同利用拠点 障害者高等教育研究支援センター 教育アクセシビリティの向上を目指すリソース・シェアリング ~合理的配慮がなされた環境における高等教育修学の保証~ 「障害者高等教育拠点」事業 H30年度報告書 目 次 事業概要 2 平成30年度の活動実績 3 活動報告 5  他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催 6  キャリア発達支援 15  ろう者学教育コンテンツ 17  情報保障 20  視覚障害学生の修学支援 27  体育・スポーツ 29  語学・アカデミックアドバイス 33 メールマガジン 35 取組担当者一覧 51 教育関係共同利用拠点「障害者高等教育拠点」事業概要 教育アクセシビリティの向上を目指すリソース・シェアリング ~合理的配慮がなされた環境における高等教育修学の保証~  筑波技術大学(以下、本学)は、わが国で唯一の聴覚障害者と視覚障害者のための高等教育機関です。開学以降、聴覚や視覚に障害のある学生に対する様々な情報保障技術や教育プログラムの開発、教育方法の研究開発を行ってきました。これらの成果が認められ、平成22年に文部科学省から「教育関係共同利用拠点[障害者高等教育拠点]」として認定を受けました。  本事業は、本学がこれまで蓄積してきた指導・支援ノウハウを全国の高等教育機関に提供する取組であり、聴覚・視覚障害学生が在籍する大学等からの相談に対応するほか、障害特性に応じた教育コンテンツ・情報保障技術の提供、他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催、他大学で開催される各種講習会への講師派遣等を実施しております。  本事業の教育的リソースが活用されることにより、これから聴覚・視覚障害学生の支援を開始する大学等においても、情報授受のバリアのない修学環境の構築が促進されることで、全国の高等教育機関の教育アクセシビリティ向上の実現を目指します。 参考Webサイト  文部科学省 教育関係共同利用拠点の認定について  http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakukan/1292089.htm 「障害者高等教育拠点」事業4本の柱 他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催 聴覚・視覚障害学生支援に関する相談対応 指導・支援に関する リソース・ライブラリ 各種講習会への講師派遣 「FD/SD研修会」の各回のテーマ、「指導・支援に関するリソース・ライブラリ」で作成するコンテンツのテーマ: ■キャリア発達支援 ■視覚障害学生支援 ■ろう者学 ■語学教育の指導・支援(聴覚障害関連) ■情報保障(聴覚障害関連) ■体育・スポーツ科目への支援 平成30年度の活動実績 本事業の実績総数(利用者数・支援件数) ※各取組間実績の重複分を除いた数 利用 ●FD/SD研修会参加者 ●広報(見学対応等) ●各種講習会開催への講師派遣 ●コンテンツ利用   ●支援技術提供 のべ利用人数1,141 大学実数161 支援 ●相談およびアドバイス のべ支援件数45 大学実数26 「障害者高等教育拠点」事業「四本の柱」の実績 (表) 各取組の実績一覧 (表) 各取組の実績のうち、大学等高等教育機関(本学を除く)を対象とした活動のみを記載する。 活動報告 【活動報告】 ■各取組の大学等高等教育機関(本学除く)の利用または支援について記載する。 他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催 1.取組の目的  本取組では全国の大学における障害学生指導・支援担当教職員を対象に、本事業および本センターで蓄積してきた聴覚・視覚障害学生の指導・支援に関するノウハウや情報を全国の大学に提供することを目的として、各種のFD/SD研修会を開催した。研修会の開催にあたっては、これまで本学を中心に構築してきた障害学生支援ネットワーク(PEPNet-Japan(※1)、VISS-Net(※2))と連携して広く情報を共有し、本事業について周知と利用の促進を図ることで、全国の大学における聴覚・視覚障害学生の修学環境の向上に資することを目指した。  本事業は文科省より「大学の職員の組織的な研修等の実施機関(共同利用拠点)」として認定を受けていることから、他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催および講師派遣については、本事業の主たる取組とする。そのため、取組毎に他大学教職員を対象として実施した研修会や講習会、および他大学で開催された研修会等への講師派遣についても記載する。 (※1)・本センターに事務局を置く「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク」。 (※2)・本センター障害者支援研究部・・支援交流領域が運営する「視覚障害学生支援メーリングリスト」。 2.活動報告 1)他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催(企画・運営) ①日本特殊教育学会 第56回大会 自主シンポジウム企画  「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」 2)講師派遣 ①他大学で開催されたFD/SD研修会等への講師派遣 ②他大学で開催された講習会(支援学生等が対象)への講師派遣 3)広報活動 ①平成29度事業報告書Web公開 ②「障害者高等教育拠点」メールマガジンの配信 ③パンフレット等配付 ④事業Webサイト更新 ⑤展示ブースへの出展 4)教育関係共同利用拠点間ネットワーク 1)他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催(企画・運営)  本事業全体の取組として、平成30年9月22日~24日に開催された日本特殊教育学会第56回大会において、キャリア発達支援の取組の一環として「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」をテーマとした自主シンポジウムを企画・実施した。 開催月 9月 場所 大阪国際会議場 研修会等のタイトル 日本特殊教育学会第56回大会 自主シンポジウム企画「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」キャリア発達支援 ※日本特殊教育学会第56回大会で企画した自主シンポジウムは、学会参加者が特別支援学校、大学等の教員等を含むことから、本事業のFD/SD研修会として位置づけた。 ①日本特殊教育学会 第56回大会 自主シンポジウム企画  「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」 【開催概要】 開催日時:平成30年9月23日(日) 13:15~14:45 会場:・大阪国際会議場(大阪府大阪市北区中之島5丁目3番51号) 司会:筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 石原 保志 話題提供:広島大学 大学院教育学研究科 森 まゆ      筑波技術大学 産業技術学部産業情報学科 河野 純大      筑波大学 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター 宇都野 康子 指定討論:摂南大学 経済学部経済学科 平尾 智隆 【開催報告】  キャリア発達支援の取組として、9月の日本特殊教育学会第56回大会にて自主シンポジウム「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」・を実施した。視覚障害学生の意思表明支援、聴覚障害学生への指導、パソコンノートテイクをとおした事例の話題提供の後、企業の人的資源管理の視点での障害学生のキャリア発達支援に関する指定討論、フロアとのディスカッションと進行した。フロアとのやり取りでは学内のキャリア支援部門と障害学生支援部門との連携に課題があることなどが示され、今後の本取組に関する示唆が得られたシンポジウムとなった。   2)講師派遣 他大学で開催されたFD/SD研修会等への講師派遣  他大学で開催された障害学生支援、聴覚・視覚障害学生の修学支援に関する公開講座およびFD/SD研修会等へ講師を派遣した。   表 開催月 地域・大学種別 研修会等のタイトル 6月 関東・私立大学 特別講義「多様性社会における心理支援を学ぶ」の「障がいと共に生きる(2)視覚障がい」回 ※授業に支援関係の教職員が参加 視覚障害学生支援 9月 関東・私立大学 「障害学生への合理的配慮と聴覚障害学生支援における情報保障」【教職員対象】 12月 関東・私立大学 「視覚障害学生の修学環境の整備と考え方」【教職員対象】 視覚障害学生支援 2月 関東・私立大学 「視覚障害学生への合理的配慮について」【教員対象】 視覚障害学生支援 ※取組名を記載した講習会は、各取組報告にも記載する。 講師派遣  学生を対象とした講習会への講師派遣についても、本取組報告へ記載する。 表 開催月 内容 4月■視覚障害者スポーツに関する講義と実習:[体育・スポーツ]2件 6月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]2件  ■聴覚障害者スポーツに関する講義:[体育・スポーツ]1件  ■視覚障害者スポーツに関する講義と実習:[体育・スポーツ]1件  ■大学の特別講義において講演:[視覚障害学生支援]1件 7月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]1件  ■視覚障害者スポーツに関する講義と実習:[体育・スポーツ]2件 8月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]1件 9月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]2件 11月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]1件 12月■パソコンノートテイク講習会:[情報保障]3件  ■パソコンノートテイク関連企画イベント 「パソコンノートテイクフェア」ファシリテーター:[情報保障]1件  ■聴覚障害者スポーツに関する講義:[体育・スポーツ]2件 1月■視覚障害者スポーツに関する講義と実習:[体育・スポーツ]1件 2月■支援学生を対象とした障がい学生支援技術養成講座: [視覚障害学生支援]1件 3月(予定)■学生・学習支援研究会において講演:[視覚障害学生支援]1件  ■障害者スポーツに関する講義と実習:[体育・スポーツ]2件 ※取組名を記載した講習会は、各取組報告にも記載する。 学会等での発表  本事業における取組実績を下記の学会で発表した。 表 開催月 内容 8月 ■「日本体育学会第69回大会」において拠点事業の実践内容を学会発表:[体育・スポーツ] ※取組名を記載した講習会は、各取組報告にも記載する。 3)広報活動  本事業の利用促進に向け、各取組について紹介することを目的として、下記の活動を行なった。 ①平成29度事業報告書Web公開  平成30年3月に発行した「平成29年度事業報告書」を、本学の機関リポジトリWebサイトにおいて閲覧・ダウンロードが可能な形で公開した。  Web公開(本学機関リポジトリ)している事業報告書 1、平成22~26年度事業報告書http://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1486/5/309.pdf 2、平成27年度事業報告書http://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1485/5/308.pdf 3、平成28年度事業報告書http://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1575/1/330.pdf 4、平成29年度事業報告書https://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1713/1/352.pdf 5、Let's Try Laptop Note-taking!http://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1491/1/314.pdf 【各事業報告書の閲覧(ダウンロード)数】・※左端番号は上記記載の各報告書番号を示す (表) ②「障害者高等教育拠点」メールマガジンの配信  全国の高等教育機関教職員を対象に、本事業の活動や障害学生支援・指導に関するノウハウ、最新情報を発信することを目的として、「『障害者高等教育拠点』メールマガジン」の配信を月1回(第三金曜日)行なった。  本メールマガジンについては、研修会や広報活動の際にも案内し、登録希望者に対して手続き等、随時対応した。(平成31年2月現在の登録者数:他大学教職員317名・156大学、関連機関28名・11機関)  メールマガジンでは毎号、FD/SD研修会や各取組が行なう講習会・イベント・ポスター発表等の告知および報告、また、各取組で作成したコンテンツの紹介や活動報告等の情報を掲載した。また、毎号各取組の担当者が交替で執筆を担当する「プロジェクトコーナー」では、活動紹介や支援・相談事例の紹介、ワンポイントアドバイス、関連情報等を掲載することで、より具体的に各取組の活動や関連情報、指導や支援方法のノウハウが提供できるよう努めた。  定期的な情報発信を行うことで、コンテンツの利用問合せや、相談件数の増加など、各取組の利用の促進に繋げることができた。 【各号の概要】 表 配信日 内容 第24号4月20 日 1.平成29年度事業報告書の発行について 2.プロジェクトコーナー「遠隔情報保障システム「T-TAC・Caption」の運用状況について」 三好 茂樹[情報保障]担当 第25号5月18日 1.利用者の声のご紹介 2.プロジェクトコーナー「身近な便利グッズのご紹介」 飯塚 潤一[視覚機器評価]担当 第26号6月15日 1.【お知らせ】ポスター発表について 2.プロジェクトコーナー「学外集中授業における障害学生への配慮」 向後 佑香[体育・スポーツ教育]担当 第27号7月20日 1.利用者の声のご紹介 2.プロジェクトコーナー「墨字から点字への移行」 宮城・愛美[視覚障害学生の修学支援]担当 第28号8月17日 1【実施報告】「AHEAD・JAPAN第4回大会」ポスター発表 2.プロジェクトコーナー「障害学生の就労移行支援」 石原 保志[キャリア発達支援]担当 第29号9月21日 1.「第・14回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」の開催について 2.プロジェクトコーナー「スポーツ分野における指導案開発の検討」 門脇 翠[ろう者学]担当 表 配信日 内容 第30号10月19日 1.【活動報告】「日本特殊教育学会第56回大会」における本事業企第画実施について 2.プロジェクトコーナー「初修外国語と語学支援」 須藤 正彦[語学教育]担当 第31号11月16日 1.【ご案内】聴覚障害学生を対象としたろう者学講座開催について 2.プロジェクトコーナー「聴覚障害学生に対するさまざまな情報保障支援」 三好 茂樹[情報保障]担当 第32号12月21日 1.【活動報告】障害者スポーツに関する講習会について 2.プロジェクトコーナー「ゴーグル型の視覚障害支援機器がブーム?」 飯塚 潤一[視覚機器評価]担当 第33号1月18日 1.ご挨拶 2.【ご案内】聴覚障害学生を対象としたろう者学講座開催について 3.プロジェクトコーナー「聴覚障害者スポーツを通した障害の理解」 中島 幸則[体育・スポーツ教育]担当 第34号2月15日 1.【開催報告】聴覚障害学生、支援学生、教職員を対象とした「ろう者学講座」 2.プロジェクトコーナー「就職に関する最近の話題から」 宮城 愛美[視覚障害学生の修学支援]担当 第35号3月15日(配信予定) 1.平成30年度事業報告書の発行について 2.プロジェクトコーナー [ろう者学]担当 ②パンフレット等配付  本事業が開催するFD/SD研修会のほか、他大学で開催されるFD/SD研修会への講師を派遣した際の配付資料として、パンフレットおよびアドバイスシートを配付した。また、障害学生支援に関連するシンポジウム等の展示ブースで配付した。 表 開催月 内容 6月■「AHEAD・JAPAN 第4回大会」ポスター発表会場 事業パンフレット・アドバイスシート配布 80部 10月■第14回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム 事業パンフレット・メールマガジン・事業ホームページ案内配布 450部   ■茨城コンソーシアム 障害学生支援委員会 委員へのパンフレット配布 15部 2月■他大学の障害学生担当教員   事業パンフレット・アドバイスシート配布 10部    メールマガジン・事業ホームページ案内配布 10部    事業と実績案内配布 10部 (図) 他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会開催・講師派遣実績およびメールマガジン案内(リーフレット) ④事業Webサイト更新  平成29年度事業報告書を本学リポジトリで公開し、本事業ホームページにリンクさせた。また、事業の利用促進を図るため、動画コンテンツを作成し、年度内に事業ホームページ内で公開する予定である。   ⑤展示ブースへの出展  平成30年6月に行なわれたAHEAD-JAPAN「全国高等教育障害学生支援協議会第4回大会」において、ポスターや成果物を展示し、本事業の活動を紹介した。また、関連するイベント(PEPNet-Japan主催「第14回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」等)においても広報活動を行なった。   4)教育関係共同利用拠点間ネットワーク  平成28年9月に設立された「大学教育イノベーション日本」の活動として、加盟校同士の情報共有や、シンポジウム開催等の活動を行なった。  本団体は、国公私立の設置形態の区別なく、「文部科学省より教育関係共同利用拠点として認定を受けている大学」「大学等の教職員を対象としたFD/SD研修を実施している機関・団体」で構成されている。大学の教職員の能力開発、カリキュラムや教育方法の開発等の促進のほか、加盟している組織間の相互連携、交流を目的としており、加盟組織は全国の国公私立17組織(16大学、1ネットワーク団体※平成30年4月現在)である。  本事業も教育関係共同利用拠点「障害者高等教育拠点」として文部科学省より認定を受けており、また「教職員の組織的な研修等の共同利用拠点」としても活動をしていることから、本団体に「障害者高等教育拠点」事業として加盟している。  大学教育イノベーション日本 ホームページ http://heij.ihe.tohoku.ac.jp/index.cgi キャリア発達支援 1.取組の目的  卒業後を見据えた障害学生のキャリア発達支援について、主にFD/SD研修会や講習会の開催等をとおして、具体的なノウハウを各機関へ提供するとともに、他大学の事例等について共有する。また、社会からのニーズを考慮し、障害特性に応じた社会的スキル習得を含め、大学としてのキャリア教育・支援のあり方について情報共有を図る。併せて、他大学で障害学生の修学支援・就職支援に関わる教職員からの相談に対応する。 2.活動報告  1)日本特殊教育学会 第56回大会 自主シンポジウム企画・実施  本企画は、本取組の目的として掲げている「障害特性に応じた社会的スキル習得を含め、大学としてのキャリア教育・支援のあり方」をテーマとして「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」を実施した。  本報告では、発表者ごとに発表の概要を記載する。 【企画趣旨:石原 保志】  企画趣旨と障害学生のキャリア発達に関する説明が行われた。改正障害者雇用促進法の施行に伴い、雇用分野での障害者差別の禁止と合理的配慮の提供が義務化された。合理的配慮の提供は障害者の申出(意思表明)に基づき、必要な措置について建設的対話がなされ支援が決定される。大学等で学ぶ障害学生にとっては、自分自身に必要な支援措置について事業所に対し応募時に自ら申し出ることが求められ、そのためのスキル習得が必要になる。 【話題提供1:森 まゆ】  視覚障害学生支援の実践事例について話題提供が行われた。合理的配慮の意思表明から支援提供の流れの説明に続き、問題解決能力や障害を軽減する技術の習得を目指した社会に出る前の支援や面談等での留意点について説明された。大学在学時に障害に配慮された環境を経験することで「力を発揮できた経験」「配慮されていることの自覚」を経験する重要性、相談できる機関の存在を知り、障害のある仲間の存在や支援につながる人の存在を知ることの重要性について話題提供された。 【話題提供2:河野 純大】  本学の聴覚障害学生が学ぶ天久保キャンパスでの学生指導の体制と実践時に留意していることに関して報告された。本学では少人数教育の強みを活かし、担任制やAA(アカデミックアドバイザー)制を導入し、個別の学生指導を充実している。学生面談の実践では、エンパワメント面の指導を考慮し、学生のアイデアを尊重しつつ課題解決能力の育成に留意している例が報告された。 【話題提供3:宇都野 康子】  聴覚障害学生への情報保障支援に関する相談対応の事例から、聴覚障害学生の主体性を引き出す支援に関する発表が行われた。支援を利用するまでの流れの説明に続き、聴覚障害学生が情報保障支援を受ける中で支援を自ら「利用する」に変化させていく取組を通して「支援の主体は聴覚障害学生自身」であることを認識させた事例についても報告された。支援活動の中で障害学生、支援学生双方の関わりを通して、大学におけるキャリア発達支援は障害の有無によらない視点が必要であるとの発表がなされた。 【指定討論:平尾 智隆】  指定討論では、障害学生のキャリアについて労働供給側(学生)のキャリア発達支援と労働需要側(企業)の人的資源管理の2点を結びつける重要性についての発表が行われた。新規学卒者に求められることに加え障害者雇用では障害学生にとってAbilityや経験の明確化が必要なこと、企業の人的管理が男性正社員モデルからダイバーシティ・マネジメントへの転向が図られていることが報告された。上記の2点を結びつける際に大学と企業での格差の生じる程度の差や学校から職業への移行支援の難しさによって困難が生じること、労働市場の今後の方向性・課題としては、法定雇用率達成のインセンティブの明確化などが挙げられるとの報告がなされた。  最後に、会場とのディスカッションでは、キャリア支援部門と障害学生支援部門との連携が課題との指摘があり、両部署や教員との連携の必要性が確認された。 まとめと平成31年度の活動に向けて  平成30年度は、日本特殊教育学会第56回大会において自主シンポジウムを企画・実施した。本シンポジウムにおいて報告された事例や、障害者雇用に関する調査結果等を踏まえ、平成31年度以降も同テーマで継続していきたいと考えている。また、本事業として講師派遣の依頼を受けているFD/SD研修会等においても、障害学生の修学支援と併せて本取組のテーマについても取扱う。大学在籍中の障害学生支援・キャリア支援について理解を深めてもらうことで、障害学生支援の充実につながることを期待する。 執筆者:石原 保志・(宇都野 康子) ろう者学教育コンテンツ 1.取組の目的   「ろう者学」は、聴覚障害学生を対象とするエンパワメント指導としても非常に重要な学問であるものの、一般大学においては指導ノウハウや指導者の不足から講義などの開設が困難とされているのが現状である。そこで、平成22年度~平成26年度に実施された「聴覚・視覚障害学生のイコールアクセスを保障する教育支援ハブの構築」事業にて「ろう者学」の指導カリキュラム及びコンテンツを制作し、大学の教職員・聴覚障害学生が活用できる電子ライブラリのプラットフォームを開発した。  平成27~31年度の事業においては、さらなるコンテンツの充実・強化を図るとともに、キャリア発達支援に係る学内プロジェクトと合同で全国の高等教育機関において聴覚障害学生にキャリア指導を行う教職員が利用できる教材を開発し、本学での試用による改善作業を経て、電子ライブラリを通して各機関とのリソース・シェアリングの可能な環境を整えることを目標とする。[参考:平成27年度第1回定例会議提出資料・計画書(案)]  平成27年度は前事業で開発した電子ライブラリの整備・メンテナンスを行い、必要に応じてリソース(動画等)を制作・追加した。また、学内の他プロジェクトと合同で聴覚障害者のキャリア発達支援に関する教材リソースの検討を行い、平成28年度においてこれらのリソースを活用する(1)研修会の実施3件、及び(2)学生指導モデル案のウェブサイト公開と、取り組みを進めた。合わせて、本学におけるランチトーク等の実施によって得たネットワークを活かしてのキャリアインタビューのウェブサイト公開も始めた。平成30年度は、昨年度に引き続き、学生指導モデル案(指導略案・教材・参考文献のセット)のさらなる拡充と新しいウェブサイトの公開、利用促進に力を入れた。   2.活動報告 本取組の主な活動は以下の通りである。  1.学生指導モデル案のさらなる拡充  2.学生指導モデル案の利用促進  3.ろう者学ランチトークの開催   1.学生指導モデル案のさらなる拡充 ①「デフコミュニティと社会参加」指導案の公開サイトの拡充  平成29年度に新たに設置した本学の産業技術学部で学ぶ聴覚障害学生を対象に提供されている「デフコミュニティと社会参加」という授業科目の公開ページに、小林が担当する2回分「遺伝子」と「優生思想」を追加した。http://www.deafstudies.jp/info/dcss-index.html(H30.4/1~H31.2/15アクセス数:785)   ②聾学校(聴覚特別支援学校)を対象とした自立活動の学習指導モデル案サイトの拡充  昨年度(14個)に引き続き、今年度は指導略案を新たに5個追加した。http://www.deafstudies.jp/info/jiritsu-index.html(H30.4/1~H31.2/15アクセス数:1035) ③きこえない大学生や手話言語の通訳養成講座の受講生などを対象とするろう者学関連講義の指導モデル案サイトの新設  本学大学院開講科目「ろう者学教育コンテンツ特論」などで院生が作成した学習指導案には、聾学校(聴覚特別支援学校)の自立活動授業のみならず、きこえない大学生や手話言語の通訳養成講座の受講生を対象にしたものも含まれているため、聾学校(聴覚特別支援学校)の教員の方々は「自立活動」授業の参考に、大学の教職員の方々はきこえない学生への個別指導などの参考にしていただけるのではないかと考え、新設した。http://www.deafstudies.jp/info/usti-index.html(H30.4/1~H31.2/15アクセス数:740) ④キャリアインタビューページの追加 「私たちのキャリア未来地図」 ・窪田祥子さん ⑤「時を超えて」先輩方のインタビューページを新設 2.学生指導モデル案の利用促進 ①第66回全国ろうあ者大会inおおさか「聴覚障害者の生活に関するバリアフリー展」  平成30年6月8~10日に大阪で開かれた第66回全国ろうあ者大会の「聴覚障害者の生活に関するバリアフリー展」に産業技術学部産業情報学科と共にブース出展を行った。その際に使用したポスターをHPにも公開して、利用促進を図った。http://www.deafstudies.jp/info/news0127.html・(H30.4/1~H31.2/15アクセス数:603) ②第14回日本聴覚障害学生教育支援シンポジウム  平成30年10月28日に早稲田大学で開催された第14回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウムの教職員実践発表にて、ポスター展示と発表を行った。展示されたポスターをHPにも公開して、利用促進を図った。http://www.deafstudies.jp/info/res0008.htm(lH30.4/1~H31.2/15アクセス数:187) ③一般大学に通う聴覚障害学生と支援学生、教職員を対象とした「ろう者学講座」の開催  平成31年2月13日に明治学院大学と共催で、明治学院大学白金キャンパスで開催したろう者学講座にて、教育コンテンツ教材(指導案と映像)を紹介、利用しながら講義を行った。   ④利用申込状況(2月18日現在)  大分県立ろう学校・北海道札幌聾学校・愛媛県立松山聾学校・北海道高等聾学校・栃木県立聾学校(高等部)・長崎県立ろう学校(高等部)・京都府立聾学校(高等部)・宮崎県立都城さくら聴覚特別支援学校(中学部)・愛知県豊橋市立石巻中学校・新潟聾学校(中学部) (計10校)※下線部は平成30年度の新たな利用申込 3.ろう者学ランチトークの開催  ろう者学の啓発、聴覚障害学生に必要なロールモデルの検討、そして活躍している社会人などと本学学生が交流する機会を設けることを目的として、ろう者学ランチトークを定期的に開催した。今年度は合計4回実施し、のべ参加者は地域の方々も含めて、163名であった(昨年度は計5回、のべ195名)。今年度は昨年度より実施回数が減少したが、内容は昨年度に引き続き、タイ、フィンランド、米国のそれぞれの世界で活動するろう者による自身のキャリアやそれぞれの国の現状、ろう教育、手話言語についてお話しいただき、異なる国際色溢れる内容となった。最後の回では、本学の卒業生を招いて行い、学生に自身の卒業後のキャリアについて考える機会を提供することができた。また、ランチトークの内容をろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトのウェブサイトに掲載することによりろう者学の啓発を推進した。http://www.deafstudies.jp/info/news_index.html(H30.4/1~H31.2/15内容報告ページ(実施4回分)アクセス数:2672) 表 平成29年度ろう者学ランチトーク実施内容 第1回5月10日(木)カォクン・タンティピシックン氏(タイ出身、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業19期生)「タイのろう者の現状について」 第2回5月16日(水)ヨハンナ・メッシ氏(フィンランド出身、ストックホルム大学言語学部手話部門学科長)「私の生い立ちとスウェーデン手話言語研究について」 第3回6月5日(火)ルイス・アップルゲート氏(中国出身、ロチェスター工科大学在籍)「私の生い立ちとアメリカでの生活について」 第4回7月19日(木)太田・吉裕氏(NTTクラルティ株式会社勤務)「私のキャリアと現在の活動について」 執筆者:門脇 翠 情報保障 1.取組の目的  これまで学内の情報保障において養ってきた文字入力スキルや遠隔情報保障システムの運用スキルに関するノウハウを広く他大学に普及させ、教育アクセス環境の向上に資することを目的とする。 2.活動報告 ・宇都野康子氏を中心とする学内養成チームによる今年度の学内情報保障の実績は、下記のとおりである。 歴史学 15コマ 品質管理論 15コマ 社会学 15コマ エコ環境システム 15コマ 日本国憲法 15コマ 熱・空気環境工学 見学時の情報保障 2コマ分 就職講演会 2コマ×2講座=4コマ 合計 81コマ(1コマあたり90分) ・学内情報保障経験に基づいた学外講師派遣・相談対応  3大学(東京都内の1大学、埼玉県内の1大学、沖縄県内の1大学)からの情報保障関連の講師派遣・相談依頼  内訳:    2018年4月13日 青山学院大学    2018年11月20日 十文字学園女子大学    2018年12月5日 名桜大学    他、私立2大学より聴覚障害学生支援、パソコンノートテイク講習会への講師派遣に関する相談 執筆者: 三好 茂樹  本取組では、聴覚障害学生支援の体制の充実を目指し、他大学で開催されたPCノートテイク講習会や研修会への講師派遣を行った。講習会では、PCノートテイクを基礎から学び、聴覚障害学生のサポートができる支援スキルをもつ人材の養成を目的としてカリキュラムの作成を行っている。以下は、講習会等の講師担当者から報告する。 2-2.活動報告  1)他大学におけるPCノートテイク講習会等の講師担当および相談対応 ①PCノートテイク講習会の講師 ②PCノートテイク・スキルアップ講習会の講師担当 ③PCノートテイクに関するイベントのファシリテーター担当 ④PCノートテイク導入、聴覚障害学生支援に関する相談対応 2)学内において実施されるPCノートテイクに関する取組 ①PCノートテイカーのスキルアップを目指した活動 (本学で開講された講義における情報保障支援・講義支援終了後の振り返り・課題抽出) 1)他大学におけるPCノートテイク講習会等の講師担当および相談対応 ①他大学におけるPCノートテイク講習会等の講師 担当:宇都野  他大学からの依頼に応じて、PCノートテイクで支援を行う学生を養成する目的で開催されたPCノートテイク講習会の講師を担当した。指導を実施するにあたり、依頼のあった大学の担当者と実施時間や回数、受講者情報(初心者のみor経験者が含まれる、等)に合わせてカリキュラムを検討した。PCノートテイク講習会への講師派遣の際には、講習会の時間や開催校で準備可能な機材を確認するとともに、講習会終了後の活動の目標等についてヒアリングを行った。なるべく実施時間内でPCノートテイクの活動に必要となる基礎的な技術を習得できるように指導案を作成し、講習会前に担当者と確認を行うこととした。講習会の場には、利用する聴覚障害学生のニーズの把握のため、手書きやPCノートテイクなどの情報保障を利用している学生(聴覚障害学生)に同席を依頼し、利用学生本人が見やすい字幕(フォントサイズ、色等)や、提示される字幕に関する意見(速度や誤字の修正等)、感想を発表してもらうことで、受講生の情報保障や支援に関する意識の向上を目指した。  そのほか、平成28年度から継続している方法で、受講生2名が入力している状況をスクリーン等に提示し、入力していない学生は音声教材が聞こえない状態(iPodでホワイトノイズを聞く)で、提示される字幕から情報を取得する利用者体験を実施している(図:1-1、1-2)。講習会の時間やパソコンの接続状況にもよるが、受講人数が多い場合には、4~6人のグループ分けをして、入力ペアと利用者体験ペア、6人グループの場合には音声を聞きながら入力状況を確認するペアも設定し、情報保障(字幕に提示される内容やタイミング、一度に提示される文字の量など)に関する利用学生の立場で、提示される情報について考える機会とした。「講師が何かを話しているが、字幕に情報が提示されない」という体験をとおして、受講生からは「いかに速く字幕に情報を伝えるか」の必要性を理解してもらうことができた。   図1-1:利用者体験を取り入れた4人グループの例 図1-2:利用者体験を取り入れた6人グループの例  初心者を対象としたPCノートテイク講習会には、すでに支援活動をしている学生にアシスタントとして参加を依頼した。講習会の中では利用学生への情報保障、PC操作のフォロー等を担うほか、受講生の入力についてコメントをもらった。また、PCノートテイクの活動について説明をする時間を設け、支援活動を始めたきっかけやPCノートテイクを始めた頃の様子、活動をとおして感じたことなどについて発表してもらった。これにより、受講生がPCテイクの活動に興味を持ち、その後の支援活動につながっている状況が多く見られた。 ②PCノートテイク・スキルアップ講習会の講師担当 担当:宇都野  支援回数(担当したコマ数)が増え、IPtalkを使用した連係入力に慣れてきた学生を対象とした講習会へ講師を派遣した。当該大学の職員をとおして、事前に受講予定の支援学生に、質問(IPtalkの機能、トラブルシューティング等)やPCノートテイク担当時に困難だと感じた場面のとりまとめを依頼したところ、グループディスカッションの際のPCノートテイクを含めた情報保障に困難を感じたという意見が多く見られた。このため、スキルアップ講習会ではグループディスカッション時の支援について、講師・利用学生・支援学生で意見交換を行った。PCノートテイカーがむずかしいと感じた場面を挙げて、利用学生に対応方法や表出してほしい文字情報について意見を聞き、支援学生ごとで対応が異なることがないように情報共有を図る場とした。  また、初心者向け講習会以降に学ぶ機会がなかったとして、基本的なIPtalkの操作や機能を扱って欲しいという意見があった。講習会や授業におけるPCノートテイクでは、保存されている設定を使用していることから、機能を使いこなせていない、授業の方法、利用学生に合わせた設定変更が難しいとのことだった。このため、授業におけるPCノートテイクの際に使用する機能(表示部の行数やフォントサイズを変更できること、F8キーで入力しなくても「」が表示できること、等)について説明したあと、IPtalkの画面を初期化し、講師側で設定した条件と同じように入力・表示ができる状態に構成させる時間を設けた。これにより、「自分のPCで練習できる」「授業によって行数が変えられれば、授業担当の先生の話速が速い場合でも、すぐに文字情報が見えなくなることがないので活用したい」という意見が聞かれた。さらに【応用編】として、式典などで活用できる「テンプレート前ロール」「テンプレート前ロールモニタ」を使用した情報保障支援についても説明した。あらかじめ原稿が用意されることが多い式典では、原稿を事前に入手することができれば、IPtalkの機能を活用して、その場で入力せずに文字情報を提示することができるため、今後利用学生が出席する式典などを想定し、講習会内で扱った。「テンプレート前ロール」「テンプレート前ロールモニタ」について説明を行ったあと、2人1組となり、講師が用意した原稿を前ロールとして活用するために加工する作業を手分けして行わせた。その後、講師が原稿を読み上げ、ペアの1人が「前ロールモニタ」で表出を行う。もう1人は、「テンプレート前ロールモニタ」を発話と同じで内容であることを確認し、原稿にない発話について入力をさせ、利用学生からも感想を発表してもらい、「テンプレート前ロール」を体験する時間とした。受講生からは、「式典以外にも、字幕のないDVD教材などの原稿が入手できれば、活用できる」「他の学生が発表する際や、授業担当の先生が用意してくれる資料なども活用できると、より正確な情報を提供できると感じた」という意見が聞かれた。 ③PCノートテイクに関するイベントのファシリテーター担当 担当:宇都野  PCノートテイクの活動を学内に周知する、また新たな支援学生の募集を目的として開催されたPCノートテイクに関するイベントにおいてファシリテーターを担当した。第1部では、大学で学ぶ聴覚障害学生をテーマにした映画を鑑賞し、第2部で利用学生・PCノートテイカーで行われたパネルディスカッションのファシリテーターを担当した。パネルディスカッションでは、利用学生からPCノートテイクの必要性について発表してもらい、PCノートテイカーからは支援活動の中でのやりがいや利用学生とのコミュニケーションの楽しさ等について発表してもらった。利用学生からは、「PCノートテイクがあることで、授業から少し脱線した先生の話も、他のみんなとほぼタイムラグなく得られることができることが嬉しい」という意見があり、PCノートテイカーの配置の必要性や新たな支援学生の養成について、参加者全員で共有できる場となった。   平成30年度 他大学におけるPCノートテイク講習会等への講師派遣実績(10件、受講生のべ91名、4大学)  同年度に2~5回程度の講習会を開催する大学もあったほか、支援学生のスキルアップ講習会へも講師を派遣した。 表 実施日 参加者等 備考 担当者 1平成30年6月受講者7名(うち利用学生1名)スキルアップ講習会 宇都野 2平成30年6月受講者10名 宇都野 3平成30年7月受講者10名(うち利用学生1名)1と同大学 宇都野 4平成30年8月受講者8名1と同大学 宇都野 5平成30年9月受講者12名 宇都野 6平成30年9月受講者10名 宇都野 7平成30年11月受講者8名(うち利用学生1名)1と同大学 宇都野 8平成30年12月受講生6名2と同大学 宇都野 9平成30年12月受講生8名(うち利用学生1名)1と同大学 宇都野 10平成30年12月受講生12名(うち利用学生1名)1と同大学 宇都野 ※講習会を実施する大学の障害学生支援に携わる教職員からの呼びかけにより、近隣の大学の障害学生の支援に携わる部署の職員が情報交換を行ったことから、近隣の大学の職員が見学として参加する回があった。 ④PCノートテイク導入、聴覚障害学生支援に関する相談対応 担当:宇都野  平成29年度に引き続き、PCノートテイクを初めて導入する大学へ、講座運用や支援学生の募集、基本的な必要機材等に関する相談対応を行った。また、すでにPCノートテイクのサポート活動をしている学生がいる場合には、PCノートテイク講習会にアシスタントを兼ねて出席を依頼した。  1年の間に数回のPCノートテイク講習会を開催し、継続的に支援学生の増員を目指している大学も多い。こういった大学とは、学生が参加しやすい曜日・時間帯に合わせて講習会日時を決定するなど、依頼のあった大学の要望に対して、可能な限り対応を行った。内容や講習会運用方法、支援学生の養成に関する相談に対応したほか、講義における情報保障(PCノートテイク)の実践に関連した相談以外にも、聴覚障害学生が在籍している大学の学内間連携や、1・2年次では特に支援を必要としていなかった聴覚障害学生より授業形態の変化に伴い、支援を求めてきた際の対応についてアドバイスを行った。  また、平成31年度に実施するPCノートテイク講習会への講師派遣、実施時期等に関する相談に対応した。 2)学内において実施されるPCノートテイクに関する取組 ①PCノートテイカーのスキルアップを目指した活動 担当:宇都野、PCノートテイカー  平成23年度~26年度までに実施していた前事業および平成27~28年度において養成したPCノートテイカー(7名※平成31年3月時点)は、平成29年度まで本学で雇用し、支援活動を行っていたが、平成30年4月より任意団体として活動を開始した。平成29年度までと同様に、本学で開講されている講義(教養科目、専門科目)や就職活動に関連した講座の情報保障支援を担当した。PCノートテイカーのスキルアップ・情報共有(次回への引き継ぎ等)を目的として、担当した講義支援の終了後にメーリングリスト(以下「ML」)を活用した個人での振り返りを継続した。MLは実施日・科目ごとに投稿することで、投稿者や次回の担当者を含め、とりまとめの利便性にも考慮した。  記載する項目は下記の4点で、支援終了後3日以内に投稿した。  (1)担当した回の授業に出てきたキーワード   (2)事前準備・支援中の入力で工夫したところと結果   (3)今後の改善点   (4)共有事項(小テストの実施や配付資料の進捗状況)  学内で開講される授業の情報保障支援を担当する際に、授業担当教員の許可を得て、授業の全景およびPCノートテイクの入力状況がわかるPC画面の撮影を行っている。PCノートテイカー個人だけではなく、チーム全体としての対応方法を検討するために活用しており、今後は表出された文章の内容や質(発話情報との比較等)を行っていく。   情報保障支援を担当した科目 表 前期 歴史学15コマ 品質管理論15コマ 合計30コマ 後期 社会学15コマ エコ環境システム15コマ(1)(※1) 日本国憲法3コマ×5回=15コマ 熱・空気環境工学2コマ(2)(※2) 就職活動に関連した講座2コマ×2講座 合計51コマ(3) ※1~2:( )内の数字は研究所見学のため、遠隔情報保障支援を実施したコマ数 まとめと平成31年度の活動に向けて  他大学で開催されるPCノートテイクの講習会への講師派遣、相談対応について報告を行った。  平成30年度に講師を担当した講習会は、平成29年度までに講師派遣の依頼があった大学が多かったことから、これまでのPCノートテイク講習会の受講生のアンケートの感想等を参考にして、指導案を作成した。また、講習会内でも利用学生や支援活動をしている学生から意見を聞く時間を多く設けた。  引き続き平成31年度も、他大学で開催されるPCノートテイク講習会からの依頼に応じ、講師派遣を行うとともに、講習会終了後のアンケートに記載された受講生の感想などを踏まえ、講習会の内容・教材等を検討する。  平成30年度は、他大学で開催されたPCノートテイクに関するイベントのファシリテーターも担当した。この中で、利用学生の「情報は目で見るものという意識がある」というコメントで、あらためて文字情報が必要であることを感じた。また、支援学生の「自分自身の中に誰かのために何かをするパワーが生まれた気がする」というコメントが印象に残った。情報保障支援に限らず、障害学生支援は障害学生支援に携わる教職員・利用学生・支援学生の協働作業でもある。PCノートテイクがボランティア活動にとどまることなく、利用学生、支援学生ともに今後社会人として活躍する中で活きてくる経験となる機会になるよう、本事業の「キャリア発達支援」の取組と連携して取り組む。 執筆者:宇都野 康子 視覚障害学生の修学支援 1.取組の目的   本取組は、視覚障害学生の支援に関する相談全般に対応することにより、視覚障害学生を受け入れている他大学等に対する支援を行なう。大学間ネットワークを充実させるために、各大学における視覚障害学生支援の状況を把握し、また、支援の技術や考え方を発信することにより、本学を介した大学間の連携構築を図る。・ 2.活動報告  1)視覚障害学生の修学に関する相談対応  全国の大学から修学に関する各種の相談(教材作成、授業・学習、進学・受け入れ、支援機器、バリアフリー、その他)を受け、メール、電話、来訪、往訪による対応を行なった。  視覚障害学生の修学に関する相談対応は、計43件(20大学・機関)であり、昨年度の同じ時期の相談件数(36件)と比較して、数はやや増加したものの、差別解消法施行前年度にあたる2016年度の相談件数よりは少なかった。昨年度に比べて増加した理由は、継続的な広報活動によって本事業の知名度が上がったこと、障害者差別解消法の下、視覚障害者自身が進学希望する大学へ積極的に受験相談を行った、また、相談を受けた大学が合理的配慮の提供のため準備を検討した、という背景があると考えられる。今後も、視覚障害学生の支援に関する様々なニーズに本支援センターのリソースを活かして応えていきたい。相談内容の内訳を以下に示す。 ■授業、学習(11件)・ 法律や音楽を専攻する全盲学生に対する支援、中途障害の学生への読み書きを含めた支援などの問い合わせがあった。 ■教材作成(10件) 英語、中国語等の語学の学習資料や辞書の確保について相談があった(近年では、アラビア語、ロシア語に関する相談もあった)。期末試験の点訳依頼先に関する問い合わせがあり、試験的に本学で点訳を行った事例もあった。 ■進学・受け入れ(5件) 大学院生、科目等履修生、留学生などの受け入れについて相談があった。 ■支援機器(4件) 点字ディスプレイ等支援機器に関する内容のほか、統計ソフトのスクリーンリーダー対応に関する問い合わせがあった。 ■入試(4件) 入学試験の実施方法(時間延長や持ち込める機器など)について、合理的配慮の考え方に関する相談があり、他大学や公的な試験などの事例を基に情報提供した。 ■就職(3件) 公務員試験受験や履歴書作成など、就職活動に関連した相談があった。 ■バリアフリー(1件) 点字ブロック敷設に関する相談があった。 ■その他(3件) 近隣のロービジョンクリニックと視覚障害学生の修学と障害補償に関する情報交換を行った。 2)視覚障害学生の支援に関するFD/SD研修会への講師派遣  視覚障害学生が在籍または入学予定のある大学からの要請を受け、FD講演会等において、視覚障害学生の修学に関する講演を行なった。また、学生の授業の一環として視覚障害に関する解説を行った。派遣内容を以下に示す。 ・東京経済大学特別講義「多様性社会における心理支援を学ぶ」の「障がいと共に生きる(2)視覚障がい」回の講師(平成30年6月19日) ・全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD・JAPAN)第4回大会においてポスター発表「視覚障害学生の外国語学習のための環境構築の方法」(平成30年6月29日) ・日本特殊教育学会第56回大会自主シンポジウム「高等教育機関における盲ろう学生の研究生活支援」話題提供(平成30年9月23日) ・東京農業大学教職員向け障害学生対応講座「視覚障害学生の修学環境の整備と考え方」講師(平成30年12月7日) ・目白大学FD研修会講師「視覚障害学生への合理的配慮について」(平成31年2月20日) 執筆者:宮城 愛美 体育・スポーツ 1.取組の目的   全国の高等教育機関に在籍する聴覚・視覚障害学生の体育・スポーツ活動に関する教育支援の充実に資することを目的とする。  上記の目的を達するため、以下の4項目に重点を置いて事業を展開する。 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集および提供 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣 3)聴覚・視覚障害学生の体育授業に関する相談・助言・支援 4)アダプテッド・スポーツ実践の場の提供 2.活動報告  事業計画に基づき、以下の4項目を実施した 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集および提供  聴覚・視覚障害者スポーツに関する情報の収集、提供、発信を行った。情報の提供として、本事業で制作した映像資料(写真1)である、聴覚障害者スポーツ・DVD「トップアスリートを目指して~聴覚障がい者スポーツの紹介」ならびに、視覚障害者スポーツDVD「広がる、世界へ!~視覚障害者スポーツの紹介」を全国の大学体育教員や、障害学生支援に携わる教職員を対象に配付した。また、情報の発信として、体育関係や視覚障害関係の学会において、本事業の取り組みの紹介と利用事例の報告を目的とした発表を実施した。 (写真1:DVD) 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣  聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催や講師派遣として、大学体育教員を対象としたFD研修会への講師派遣、将来の指導者や支援者となる体育や教育、福祉、医療などを専攻する学生を対象とした障害者スポーツに関する講習、一般の大学教職員や学生を対象とした聴覚・視覚障害者スポーツ体験を目的とした講習会等の開催ならびに講師派遣を実施した。 3)聴覚・視覚障害学生の体育授業に関する相談・助言・支援  体育授業の相談・助言として依頼元大学の障害学生支援体制や体育授業の内容や指導体制・体育施設に合わせた支援方法の提案、新年度に障害学生の入学を予定している大学での支援体制構築や、聴覚・視覚障害者に対する運動指導時における一般的な配慮に関する相談と助言の実施を計画した。 4)アダプテッド・スポーツ実践の場の提供  本取組の実施・運営にも携わる立場として、技術補佐員(アダプテッド・スポーツ推進担当)を任用した。当補佐員は本取組の実施・運営に携わり、本学での授業や他大学での事業、各種イベントの利活用により、聴覚・視覚障害者スポーツを中心としたアダプテッド・スポーツ実践・実習を通して、この分野の資質向上を図った。 3.実績・成果 ※平成30年4月1日~平成31年2月18日現在 利用件数・利用述べ人数・大学実数:9件・574名・5大学 支援件数・大学実数       :1件 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集および提供 表 日時 対象・件数 内容 通年 全国の大学体育教員・障害学生支援担当職員など 聴覚障害者スポーツDVD「トップアスリートを目指して~聴覚障がい者スポーツの紹介」、視覚障害者スポーツDVD「広がる、世界へ!~視覚障害者スポーツの紹介」の送付【担当:香田・天野・中島・向後・小森園】 8月24日~26日 日本体育学会 日本体育学会第69回大会において拠点事業の実践内容を学会発表【担当:香田・天野・中島・向後・小森園】 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣 表 日時 対象・件数 内容 4月19日 筑波大学(11名・1大学) 筑波大学体育専門学群ならびに筑波大学大学院人間総合科学研究科開講授業(アダプテッド体育・スポーツ学演習Ⅰ)での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣 テーマ:視覚障害者スポーツからアダプテッドを考える【担当:香田・天野・小森園】 4月26日 筑波大学(11名・1大学) 筑波大学体育専門学群ならびに筑波大学大学院人間総合科学研究科開講授業(アダプテッド体育・スポーツ学演習Ⅰ)での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣 テーマ:視覚障害者スポーツからアダプテッドを考える【担当:香田・天野・小森園】 6月21日 順天堂大学(50名・1大学) 順天堂大学スポーツ健康科学部4年生対象授業での聴覚障害者スポーツに関する講義への講師派遣 テーマ:聴覚障害者の教育・デフスポーツから学ぶ【担当:中島】 6月28日 順天堂大学(92名・1大学) 順天堂大学スポーツ健康科学部4年生対象授業での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣 テーマ:視覚障害者スポーツの実際と工夫(ブラインドサッカー、ブラインドテニス、サウンドテーブルテニス)【担当:天野・小森園】 7月5日 順天堂大学(92名・1大学)順天堂大学スポーツ健康科学部4年生対象授業での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣 テーマ:視覚障害とは【担当:天野・小森園】 7月12日 順天堂大学順天堂大学スポーツ健康科学部4年生対象(92名・1大学)授業での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣テーマ:視覚障害者の体育・スポーツの現状・課題とアダプテッド【担当:天野・小森園】 表 日時 対象・件数 内容 12月3日 了徳寺大学(50名・1大学)了徳寺大学健康科学部1年生対象授業での聴覚障害者スポーツに関する講義への講師派遣 テーマ:障害者スポーツ~聴覚障害~【担当:中島】 12月11日 帝京平成大学(89名・1大学)帝京平成大学現代ライフ学部1年生対象授業での聴覚障害者スポーツに関する講義への講師派遣テーマ:障害者スポーツ~聴覚障害~【担当:中島】 1月10日 流通経済大学(87名・1大学)流通経済大学スポーツ健康科学部2年生対象授業での視覚障害者スポーツに関する講義と実習への講師派遣 テーマ:視覚障害者スポーツの紹介と体験(ブラインドサッカー、卓球バレー、サウンドテーブルテニス)【担当:香田・天野・小森園 また、3月12日、13日につくば国際大学および、東海大学への講習が決定している。 3)聴覚・視覚障害学生の体育授業に関する相談・助言・支援  本学産業技術学部において、1年生授業「健康・スポーツB」において、神経系の疾患により、跛行のある学生の授業支援を行った。   4)アダプテッド・スポーツ実践の場の提供 表 日時 対象・件数 内容 通年 筑波技術大学 本取組の実施・運営にも携わる立場として、技術補佐員(アダプテッド・スポーツ推進担当)を任用した。 執筆者:香田 泰子、中島 幸則、天野 和彦、向後 佑香、小森園 一樹 語学・アカデミックアドバイス 1.取組の目的  全国の高等教育機関に在籍する聴覚障害学生の語学支援や指導に関する教育支援の充実に資することを目的とする。  上記の目的を達するため、以下の項目に重点を置いて事業を展開する。  1)聴覚障害学生(者)の語学・指導や留学に関する情報の提供  2)聴覚障害学生(者)の語学指導に関する研修会開催・講師派遣  3)語学資格試験に関する相談・助言・指導   2.活動報告  事業計画に基づき、以下を実施した   1)聴覚障害学生(者)の語学・指導や留学に関する情報の提供  米国のろう者ための大学への留学を希望する一般大学に在籍する学生から留学の準備の相談を受け、当拠点事業で作成した「留学準備Web講座」の視聴先を案内した。   2)聴覚障害学生(者)の語学指導に関する研修会開催・講師派遣  聴覚障害学生の英語学習に関する研修の開催、講師派遣として、8月18日に熊本聾学校で行われた九州地区の英語教育研究会と第18回「聴覚障害英語教育研究会」を共催し、九州地区の英語教員のみならず、関西、関東の英語指導教員、大学院生を対象としたFD研修会を実施した。また当研究会にて本事業で作成した「字幕付きTOEIC対策講座」を紹介した。 (図)紹介した「字幕付きTOEIC対策講座」 3)語学資格試験に関する相談・助言・支援  実用英語検定試験やTOEICを受験予定の本学を含む聴覚障害の学生に対して、受験上の配慮依頼や申請に関する助言・指導を行った。またWebによるTOEIC問題練習を3名の受験生に対して実施し、2月12日に本学にてTOEICのIPテストを実施した。 3.実績・成果 ※平成30年4月1日~平成30年2月18日現在 利用件数・利用述べ人数・大学実数:2件・4名・2大学 支援件数・大学実数:1件 1)聴覚障害学生(者)の語学・指導や留学に関する情報の提供 表 日時 対象・件数 内容 5月9日 A大学に在籍する聴覚障害学生 留学を希望する一般大学に在籍する学生から留学の準備の相談を受け、「留学・準備Web講座」の視聴を案内した。【担当:須藤】 2)聴覚障害学生(者)の語学指導に関する研修会開催・講師派遣 表 日時 対象・件数 内容 8月18日 熊本、九州地区聾学校等 第18回「聴覚障害英語教育研究会」を共催し、九州地区の英語教員、関西、関東の英語指導教員、大学院生を対して講演を行った。また本事業で作成した「字幕付きTOEIC対策講座」を実演した。【担当:須藤】 執筆者:須藤 正彦 メールマガジン 【メールマガジン】 ※「障害者高等教育拠点」メールマガジンで連載した「プロジェクトコーナー」・「活動報告等」を取組毎に転載しています。(平成30年4月・第24号~平成31年2月・第34号掲載分) ■「プロジェクトコーナー」テーマ:各取組の活動紹介、指導・支援の事例紹介、取組内容に関連した・情報、等 プロジェクトコーナー キャリア発達支援 【執筆:石原保志、平成30年8月号】 「障害学生の就労移行支援」  障害者法定雇用率の上昇にともない、障害者の求人件数が増加しており、数値的にはこれまでにない売り手市場となっています。特別支援学校生徒(聾学校、盲学校)を対象とした求人も多く、昨年度は高等部生徒の就職志向が高まりました。就職が堅調であるということは、生徒本人にとっても学校にとっても好ましいことでしょう。しかし彼ら、彼女らが就いた職業あるいは職種は、将来的に持続性があるのか。第四次産業革命ということばが象徴するように、人が行う仕事を機械などに委ねる、または奪われる時代が始まっています。さらに企業のグローバル化は、単純労働を国外に移動させています。  今、目の前にある好条件に飛びつくのか、将来性を考えて教養や専門性を高めてから就職するのかは個人が決めることです。その意思決定に際して必要な情報を提供し、さらに判断をするための能力を高めることが学校教育に求められています。  中教審答申(平成23年1月)はキャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して・キャリア発達を促す教育」と定義し、キャリア発達を「社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現していく過程」と意味づけています。この定義や意味を読んだだけでは「キャリア発達支援」を学校教育の中でどのように具体化するのか、教員は戸惑います。  しかし高等教育機関においては、学生は既に後期中等教育段階で進路選択、進学先選択という大きな意思決定を経験しています。これを踏まえ、学校から職業への移行に関する意識(教育というサービスを受ける立場から賃金の対価としての労働というサービスを提供する立場に代わること)を自覚させ、さらなる意思決定の能力を高めることが、キャリア発達支援において重要となるでしょう。   情報保障 【執筆:三好茂樹、平成30年4月号】 「遠隔情報保障システム『T-TAC Caption』の運用状況について」  筑波技術大学・障害者高等教育研究支援センターの三好茂樹です。情報保障システム・遠隔情報保障システムの開発や普及を担当しております。本学の教育共同利用拠点も含め本学では、他大学への支援活動として、依頼のあった高等教育機関等の情報保障体制の整備や情報保障者の養成のお手伝いをさせて頂いております。遠隔情報保障システムの例として、私が開発しました遠隔情報保障システム「T-TAC・Caption」に関しましては、本拠点メルマガのバックナンバー(第17号)でも触れさせて頂いたところです。  現場でのノートテイクでは、その現場の状況をノートテイカー達が把握し易く、そこでなされる教員や学生達の会話、そして、それを判りやすく文字で伝える工夫も盛り込み易いという利点があります。一方、遠隔で行われるPCノートテイク(遠隔情報保障)では、それらがある程度制限されてしまいます。その代わり、キャンパス間で自大学で養成した支援学生をシェアしたり、学外で行われるイベントや実習先での利用なども期待でき、前者の現場でのノートテイクでは困難な場面を補うように利用されています。  遠隔情報保障の導入に関しては技術的なハードルも高いのが現状ですが、このようなメリットもあることをご理解頂き、皆様方の大学で、もしもというときにご活用・お声かけを頂ければと思います。  このような遠隔情報保障システムや情報保障システム全般に関しまして、ご興味・ご関心のある方は是非一度、三好宛(・miyoshi@a.tsukuba-tech.ac.jp・)にご連絡下さいますよう、よろしくお願い致します。内容に応じて私以外の専門家とも協議しつつ、ご返答・ご対応させて頂きたく思います。 【執筆:三好茂樹、平成30年11月号】 「聴覚障害学生に対するさまざまな情報保障支援」  本学では学内情報保障手段としてPCノートテイクや速記による手法、そしてそれらと通信技術を結び付けて他の地域から情報保障サービスを受けるための手段(遠隔情報保障)で賄っています。本学の場合には、他の教育機関や企業から来て頂いている非常勤講師の方々にご担当頂く授業に対して情報保障を付けています。  それらの授業の多くは学内養成の主要チームが担いますが、授業の専門性や大学院、教職課程などの科目には遠隔情報保障と組み合わせた運用を行っています。利用している情報保障グループの形態は様々ですが、これらの利用経験から様々な高等教育機関等に対して紹介も可能かと思います。支援学生の確保が難しいような週末や祝日、夏季休業期間などの際にも強い味方となると思いますので、もしもの際にはご相談頂けますと幸いです。  また、PCノートテイクに関する講師紹介等も継続的に受けておりますので、こちらも宜しくお願い致します。 ろう者学 【執筆:門脇翠、平成30年9月号】 「スポーツ分野における指導案開発の検討」  9月6日にスポーツ庁が公表した「スポーツ実施率向上のための行動計画」には、特別支援学校にてオリンピック・パラリンピック教育を推進するといった内容も含まれています。きこえない人たちのオリンピックと言われるデフリンピックに関する啓発も進められることでしょう。  ろう者学教育コンテンツ開発事業では、競技スポーツに取り組む聴覚障害者の事例を教材化して、(きこえない人同士の)デフスポーツと(きこえる人に交じる)一般スポーツそれぞれの意義と自身の関わり方を学べる内容の指導案を作成しています。  最近、インタビューに協力いただいたきこえない女性の方は、特別支援学校ではなく一般の学校に学んだ後、プロのバレーボール選手としてきこえる選手に交じってVリーグで活躍した経歴に加えて、4度のデフリンピック出場できこえない選手のチームで国際大会を戦った経験を持っています。デフバレーボールに参加し始めた頃は手話で話すきこえない選手と一緒になっても、自分はあの人たちと違う人間だからという理由で、手話コミュニケーションに参加する気になれなかったといいます。ところが、デフリンピックへの出場を重ねて行く中で、徐々にきこえない自分の存在を肯定し、手話コミュニケーションに参加するようになり、さらに周囲のきこえる人たちにきこえない選手としての自分の存在をアピールするようになります。  つまり、デフスポーツへの参加を通して、従来のきこえる人の生き方を基準とする価値観から脱却し、きこえない“自分なりの価値観”を見出していったのです。その“自分なりの価値観”こそ、きこえない人が社会に出て人間関係を築いていくために必要な基礎力ではないでしょうか。  スポーツに限らず、きこえない学生が二つの世界それぞれにうまく対応していく方法やヒントを学べるような指導案を開発したいと思います。 視覚障害学生の修学支援 【執筆:宮城愛美、平成30年7月号】 「墨字から点字への移行」  視覚障害のある学生のなかには、視力低下が進み、拡大しても墨字(普通文字)を読めない状態になる学生もいます。先日もそのような学生と関わる機会がありました。  これまで使用していた拡大資料(フォントサイズは24ポイント)では読みづらくなり、また、非常に強い目の疲れを感じるようになってきたため、徐々にPCのスクリーンリーダや点字資料を使用した学習の時間を増やすようにしている段階でした。  幸い、出身の盲学校で点字の訓練を受けてきていたため、一定の読み書きスキルはありましたので、ゆっくりですが、紙や点字ディスプレイで点字を読むことは可能です。ここまで読むと、学習には問題が無いように思えるかもしれませんが、本人としては強く不安を感じていました。視力は低下しているものの目で見えるものもまだまだ多いので、どうしても目に頼ってしまい、PCを音声やキーボードで操作せず、画面やマウスを使ってしまうそうです。また、点字ディスプレイも独特の操作方法ですので、まだ習得できないでいるようです。  さらに、ここでは詳しく書きませんが、文字の読み書きだけでなく、移動の困難も感じつつあると思います。  墨字から点字へ移行する場面は、単に使用する文字が変わることだけでなく、学生の修学・生活の大きな変化を伴うため、精神的なケアを含めて慎重に対応する必要を感じています。 【執筆:宮城愛美、平成31年2月号】 「就職に関する最近の話題から」  先日、久しぶりに会った3年次の学生が、以前は物怖じした話し方で自信が無さそうな印象でしたが、見違えるように自分の考えを相手にはっきりと伝えている様子を見る機会がありました。勝手な想像ですが、恐らく、3年次から開始したインターンシップや就職活動を通してコミュニケーション力を大きく成長させたのでは無いかと思います。  さて、障害のある学生の支援に携わる方にとって、昨年大きな話題になったのは、各省庁等における障害者雇用の水増し問題では無いでしょうか。その影響で、4000人以上の新規雇用という大規模な求人があるようです。視覚障害関係では急遽、当事者団体による公務員就職を支援する説明会や相談用ホットラインの開設が行われました。今回の件をチャンスと考えて公務員就職を検討する学生もいますが、気になりますのが、視覚障害者の場合は、やはり採用試験準備のための学習資料の確保であり、さらに、雇用側の障害に対する理解(採用後の、情報アクセスやバリアフリー環境などの整備、適正な配置と業務の切り出し等)でしょうか。本学にも応募側、採用側の両方から関連した問い合わせがありました。確かに好機ではありますが、慎重に検討し、準備する必要がありそうです。本事業としては、これまで同様に、ご相談に応じて視覚障害学生の就職関連の情報提供などでご協力させていただきたいと考えています。 視覚障害情報保障機器の評価 【執筆:飯塚潤一、平成30年5月号】 「身近な便利グッズのご紹介」  皆さんの大学で学ぶ視覚障害のある学生さんの日常生活は、うまくいっていますでしょうか。本学は大学の校舎裏手に寄宿舎があり、全国から入学してくる学生さんはそこで初めて、自炊などを行うことになります。 「情報保障機器」というと、とかく修学のための拡大読書器や点字機器などを思い浮かべがちですが、今回は普段の生活に便利な商品を2種類ご紹介したいと思います。 (1)「白黒まな板」  まな板は木製か白い樹脂製が一般的ですが、大根、蕪、白菜などの白い野菜は白地のまな板では良く見えません。そこで、黒地のまな板があると良く見え便利です。身近なホームセンターなどでも比較的安価で売っています。裏面は白いので、茄子など色の濃い野菜などにはリバーシブルで使用可能です。  この考えと同じで、「黒しゃもじ」もご飯粒を残さず茶碗によそうことができます。100円ショップで販売されていました。 (2)「拡大鏡」  Windows画面の拡大表示機能ではありません。  生活の中で、自分の顔を見ることは多いと思います。特に、口紅をはみ出さずに塗ったり、まゆを整えたりするなどの細かい作業の際には、手持ちのLEDルーペでは不便です。ロービジョン製品を扱っている“タイムズコーポレーション”から「LED照明付き拡大ミラー10倍」http://www.times.ne.jp/visual/selectbeauty/expansionmirror/が発売されています。もう少し手軽なもの、コンパクトなものを、という方は「拡大鏡」「ミラー」で検索してみてはいかがですか。 【執筆:飯塚潤一、平成30年12月号】 「ゴーグル型の視覚障害支援機器がブーム?」  これまでメガネ型の情報保障(視覚障害補償)機器としては、まぶしさを軽減する『遮光眼鏡』程度しかありませんでしたが、最近次々と新しいコンセプトのゴーグル型支援機器が発売されてきたので概要をご紹介します。視覚障害は“情報障害”と“移動・歩行障害”とも言われ、それを支援するものです。  1つ目は“MW10”(399,600円):暗い場所や夜の歩道などを高感度カメラで撮影し、メガネ部に明るく投影する機器です。  2つ目は“eSightマイグラス”(1,620,000円):ゴーグル中央にある高解像カメラで撮影した映像を眼前のディスプレイに投影する機器です。  3つ目は“OTON・GLASS”(3~400,000円予価):メガネの前に置いた資料の文字をカメラと文字認識技術で、音声で読み上げてくれる機器です。  4つ目は“OrCamMyEye”(648,000円):メガネのつるに装着した小型カメラで文字や顔の識別情報をスピーカーから聞くことができる装置です。  どれも機能としては魅力ですが、価格が従来の支援機器に比べて非常に高額です。視覚障害当事者が1割負担で購入できる“日常生活用具給付等事業”の製品ジャンルには上記製品に適したものがなく、強いて言えば「拡大読書器」ですが、すでに同事業を使って拡大読書器を購入している場合は8年間は新規申請できません。全額自費負担では購入が大変ですので、同事業の適用が緩和・拡充されるといいですね。  なお、これらに加えて、本学支援センターが開発に協力した安価で高機能な商品も近日リリース予定です。お楽しみに。 体育・スポーツ 【執筆:向後佑香、平成30年6月号】 「学外集中授業における障害学生への配慮」  体育・スポーツでは、聴覚・視覚障害学生の体育・スポーツ活動について、「体育授業に関する支援・相談」、「講習会の開催や講師派遣」、「体育・スポーツ活動に関する情報提供」を実施しています。  今回は、聴覚・視覚障害学生の体育授業の中でも、特に学外実習について取り上げてみたいと思います。我が国の大学体育授業においては、豊かな自然環境を活かし、キャンプやマリンスポーツ、スノースポーツなどの様々なアウトドアスポーツの授業が展開されています。一方で、通常の学内施設とは異なる環境において、障害学生に対してどのように指導したら良いのか、どのような配慮、安全管理が必要なのか、という悩みを抱える教職員の方がいらっしゃるのではないでしょうか。  今年の1月に開催された大学体育スキー指導者研究集会のシンポジウムにて、「聴覚障害学生に対するスノースポーツの指導・実践例」について情報提供させていただきました。聴覚障害学生がスキー場で感じる困難さ・不便さの事例を挙げ、指導者の配慮事項等についてご紹介しました。具体的には、「健常学生と同じ注意喚起の方法では正しく伝わらない」、「雪上車、スノーモービル、自分以外の滑走者等の接近に気がつき難い」、「暗闇やホワイトアウトなどの荒天時は視覚からの情報を得にくい」などが挙げられます。他にも屋外で情報を伝える工夫や指導体制のポイントについて、本学の事例を用いながら解説させていただきました。  これから夏季休業期間を迎え、各大学では学外実習の準備等が始まる時期かと思います。全ての学生が安全でより良い教育を享受できるように、もし、聴覚・視覚障害学生への体育・スポーツ指導に関するご相談・ご質問などございましたら、お気軽にご連絡をいただければ幸いです。   【執筆:中島幸則、平成31年1月号】 「聴覚障害者スポーツを通した障害の理解」  「体育・スポーツ教育」の取り組みの1つに「聴覚障害者、視覚障害スポーツに関する講習会の開催」があります。スポーツを通して其々の障害を理解してもらおうというもので、毎年5校程度に行っています。今回は、聴覚障害スポーツを通した障害の理解に関する講習会について、紹介させていただきます。  聴覚障害は他の障害に比べて、目で見てすぐにわかる障害とは言えません。そこで、講習会では、聴覚障害者の特徴、体育・スポーツ指導における注意点等、わかっているようで、理解されていないことについて話をしています。また、聴覚障害者が聞こえる人とスポーツ活動を行うとどのような状況になるのか、簡単な「聞こえない体験」を行い、理解を深めてもらっています。  これまで本講習会は、学校の先生を目指す教育系学部、体育系学部の学生、そして、医療関係の資格取得を目指す、医療系学部の学生に行ってきました。講習会終了後、受講生からは、「障害の有無に関わらず、生徒にあった指導、伝え方ができるようにしたい」、「障害者だからスポーツが出来ないと決め付けるのではなく、どうしたら出来るのかを考え、配慮することが大切だと感じた」、「障害についてもっと深く学んでみたいと思った」等の感想をもらっており、多くの学生さんに「スポーツを通した障害の理解」の場の提供を行ってこられたのではないかと感じています。  今後も、より多くの学生さんに、体育・スポーツを通した障害の理解をしてもらいたいと考えています。是非、お気軽にご相談下さい。   語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供 【執筆:須藤正彦、平成30年10月号】 「初修外国語と語学支援」  本学では英語に加えて、ドイツ語、フランス語、アメリカ手話の授業を開講しており、2年次以降に選択科目として履修できます。アメリカ手話は音声を伴わない視覚的な言語です。以前の第二外国語は初修外国語と呼ばれ、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、ロシア語、韓国(朝鮮)語、イタリア語の七言語が多くの大学で採用されているようです。  聴覚に障がいのある学生に必要な情報保障や配慮事項例を以下に挙げます。座席の配慮、板書・プリントの多用、指示説明・リスニング課題の文字化、話速の配慮、対面による指導、文字化された音声のルビや発音記号、パワーポイント等のプレゼンテーションソフトウェア活用、訳配布、個別指導、ノートテイク、PCテイク、字幕付き映像の活用、手話通訳、補聴支援機器(Assistive Listening Device=*ALD)の活用など。*FMシステムやBluetooth、S/N比の良好なスピーカの使用など語学の授業において指導者やクラスメート話者の音声を視覚(文字)化する際、カタカナ表記か当該言語かについては、ノートテイカー等補助者のスキルや知識に負うところが大きく、カタカナ表記になる場合も少なくありません。ノートテイカーやPCテイカーの語彙・文法的知識は質の高い情報保障を行う上では重要な要素となります。  また、リスニング課題については、試験を免除する方法(TOEIC等)、文字提示をして同等の時間で試験を実施する等の配慮を行うことが考えられます。きこえの程度や発音は受講生の個人差があり、きこえる学生、きこえにくい学生双方が不利益にならないような工夫が求められます。 -------  [英語教育コンテンツ]の取組では、字幕のついたアメリカ留学希望者向けの「留学準備講座」と「聴覚障害者向けTOEIC・対策講座」を提供しています。受講を希望される方は共同利用拠点事業事務局(krk-net@ad.tsukuba-tech.ac.jp)へお申し込みください。TOEIC対策講座サンプルは以下でご覧いただけます。https://bz.nlc-e.com/top/tut00/ 活動報告等 「AHEAD JAPAN第4回大会」ポスター発表【平成30年8月号に掲載】  「AHEAD JAPAN 第4回大会」(主催:一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会)の第2日目(6月29日)に、[視覚障害学生の修学支援]の取組担当・宮城が「視覚障害学生の外国語学習のための環境構築の方法」をテーマにポスター発表を行ないました。当日は、本ポスターへお立ち寄りいただいた皆さまと現在の支援状況について情報交換を行なうことができました。  また、支援を行なう上での課題や悩みなど相談も寄せられ、その場で対応方法をご提案するとともに、今後も関連情報をご紹介するお約束ができ、有意義な機会となりました。当日お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。 「日本特殊教育学会 第56回大会」における本事業企画実施について【平成30年10月号に掲載】  9月22日(土)~9月24日(月)に、大阪国際会議場において、「日本特殊教育学会 第56回大会」が開催されました。  本学会の企画のひとつである自主シンポジウムを企画・実施いたしました。   【開催概要】 「大学等における障害学生のキャリア発達支援 -障害学生の意思表明支援を中心に-」    企画者:石原 保志(筑波技術大学)  話題提供者:森 まゆ(広島大学) 河野 純大(筑波技術大学) 宇都野康子(筑波大学)  指定討論者:平尾 智隆(摂南大学) 【開催報告】  キャリア発達支援の取組として、9月の日本特殊教育学会第56回大会にて自主シンポジウム「大学等における障害学生のキャリア発達支援-障害学生の意思表明支援を中心に-」を実施しました。視覚障害学生の意思表明支援、聴覚障害学生への指導、パソコンノートテイクをとおした事例の話題提供の後、企業の人的資源管理の視点での障害学生のキャリア発達支援に関する指定討論、フロアとのディスカッションと進行しました。フロアとのやり取りでは学内のキャリア支援部門と障害学生支援部門との連携に課題があることなどが示され、今後の本取組に関する示唆をいただいたシンポジウムとなりました。ご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。(企画者・石原 保志)   障害者スポーツに関する講習会について【平成30年12月号に掲載】  体育・スポーツ担当から、12月にはいって実施した聴覚障害者のスポーツに関する講習会(2件)についてご紹介いたします。  まず1件目は、12月1日(月)了徳寺大学で2年生52名を対象に、また2件目は、12月11日(火)帝京平成大学で2年生89名を対象に、それぞれ「聴覚障害者スポーツ」というテーマで実施しました。聴覚障害者とのコミュニケーションや聴覚障害者がスポーツをする際に必要な配慮や支援などについて、実例を挙げながら講義をしました。  終了後、学生達は「将来、体育教師になった時に、障害の有る無しに関わらず、生徒にあった「指導」「伝え方」ができるようにしたいと思う」「障害者だから出来ないと決め付けるのではなく、どうしたら出来るのかを考え、配慮することが大切であると感じた」等の感想を寄せてくれました。我々が伝えたかったことを、多くの学生が理解してくれたのでは、と考えています。  体育・スポーツでは、聴覚・視覚障害者スポーツの講習会開催や聴覚・視覚障害学生の体育実技に関する支援・ご相談などを承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。   聴覚障害学生、支援学生、教職員を対象とした「ろう者学講座」【平成31年2月号に掲載】  2月13日(水)に明治学院大学との共催で、明治学院大学白金キャンパスにて、一般大学に在籍する聴覚障害学生、学生支援に関心のある学生、教職員、社会人の方々を対象とした「ろう者学講座」を開催しましたので、ご報告いたします。 [午前の部] (1)「ろう者学へのいざない:手話言語の世界を探る」 担当:大杉豊  音声言語体系と手話(身振り)言語体系の違い、そして身振りが手話へ、手話から手話言語へと変容していく過程について、丁寧に説明しました。手話言語には、1つのエンブレムに動作が加わることで、語彙化されたものや、語彙化のパターンが洗練されて文法化し、拍子の要素も加わって、表される意味、ニュアンスが変わってくるものなどがあることについて、確認をしました。さらに、日本の法律では言語に関する取り決めが十分にされていないことから、手話言語法が制定されにくい状況にあることを解説しました。 [午後の部] (2)「ろう者学とグローバル社会」 担当:小林洋子  海外、特に米国におけるろう者学の動向について話をしました。「ろう者学」が誕生した背景として、米国社会で起きた歴史的な公民権運動や女性参政権運動、障害者運動についても触れました。最後に、“Deafhood”(ろうであること)について、医学的な意味を持つ“deafness”とは反対に、聴覚障害をポジティブに捉えた言葉がイギリス出身のPaddy・Ladd博士によって提唱されたことについても提供しました。日本ではまだ普及していないろう者学について深く学ぶことができた濃い時間だったのではないかと思います。 (3)「聴覚障害者スポーツについて考えよう」 担当:門脇翠  基本的知識として、聴覚障害者が行う代表的なスポーツの大会である全国ろうあ者体育大会とデフリンピック競技大会を取り上げ、それぞれの大会の歴史的な背景について簡単に情報を提供しました。その後に、デフアスリートの藤原慧選手(競泳)と佐藤湊選手(陸上・棒高跳)にお越しいただき、お話を伺いました。デフスポーツに出会うまでのこと、デフスポーツを経験して感じたことや自己の中での気持ちの変化などにおいて、国内のデフスポーツの競技力の低さにも触れつつ、障害を前向きに受容できるきっかけとなったこと等、2選手の“本音”が聞けたことで、参加者の皆さんに非常に興味を持っていただけたようでした。  明治学院大学の皆さまに会場提供から周知、会場設営までご協力頂き、重ねてお礼を申し上げます。  さらに詳しい内容については、ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトHP(http://www.deafstudies.jp/)に後ほど掲載しますので、是非ご覧ください。 取組担当者  他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会の開催  宮城 愛美   (宇都野 康子)  キャリア発達支援  石原 保志   (宇都野 康子)   ろう者学教育コンテンツ  大杉 豊    小林 洋子   門脇 翠   情報保障  三好 茂樹   (宇都野 康子)   視覚障害学生の修学支援  宮城 愛美   視覚障害情報保障機器の評価  飯塚 潤一   体育・スポーツ  香田 泰子   中島 幸則   天野 和彦   向後 佑香  小森園 一樹    語学に関するアカデミック・アドバイスの提供  須藤 正彦   大杉 豊   筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 「障害者高等教育拠点」事業平成30年度(2018)活動報告書 発行者  筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 〒305-8520 茨城県つくば市天久保4-3-15 TEL/FAX:029-858-9483 E-mail:krk-net@ad.tsukuba-tech.ac.jp https://krk-ntut.org/ 編集責任者  須藤 正彦 編集  天野 和彦  三好 茂樹  宮城 愛美 橋本 万里菜  沼生 詩織 文部科学省認定 教育関係共同利用拠点 障害者高等教育研究支援センター「障害者高等教育拠点」事業 国立大学法人 筑波技術大学 National University Corporation Tsukuba University of Technology