触覚フィードバックシステムを用いたブラインドサッカーのキック動作向上に関する研究 佐久間亨1,2),松井 康2),小林 真3),木下裕光2) 筑波技術大学 保健科学部 東西医学統合医療センター1),理学療法学専攻2),情報システム学科3) キーワード:視覚障害,ブラインドサッカー,キックフォーム,触覚,フィードバック 【研究の背景と目的】 我々は,これまでに視覚障害者サッカー(以下,ブラインドサッカー)選手のキック動作を分析し,全盲クラスの選手ではボールインパクトを確実にするために,キックの助走距離が短く蹴り脚足部の加速が十分でないことなどを報告した(佐久間ら 2015)。しかし,これらの動作解析の結果を視覚障害のある選手へ伝達する効果的な手段がないため,研究成果を練習場面では十分に活用できないことが課題であった。本研究の目的は,ブラインドサッカー選手が,自身の動作フォームを確認したり,熟練者の動作フォームと比較したりすることを可能にする触覚フィードバックシステムを開発することである(図1)。本研究における課題は以下の3点である。課題1:モーションキャプチャーシステムおよび加速度センサで得られた人体の空間座標データを,点図ディスプレーに動くスティックピクチャーとして再生させるシステムを作成すること。課題2:サッカー熟練者のキック動作を撮影し,利用者の見本となる動作モデルを作成すること。課題3:ブラインドサッカー選手への効果的な触覚フィードバックの提示方法について検討すること。本年は課題1と2を実施した。 図1 触覚フィードバックシステムの概要 【本年度の成果】 (1)慣性センサと点図ディスプレーを利用した触覚フィードバック機器の開発 視覚障害者サッカー選手の動作フォームをスポーツ現場で簡便に記録できる慣性センサと動作フォームを点図ディスプレーに再生させる連携アプリケーションの開発により視覚障害者サッカー選手が指で点図ディスプレーに触れることで動作フォームの確認を可能とする触覚フィードバック機器が完成した。 (2)サッカー熟練者のキック動作における標準動作モデルの作成 3次元モーションキャプチャシステム(VICON)を用いてサッカー熟練者8名分のキック動作データを取得し,Ae, et al.(2007)の方法を用いて標準動作モデルを作成した。標準動作モデルを用いることで動作のなかでポイントとなる部位やタイミングを抽出することが可能になる。標準動作モデルを分析すると体幹と蹴り脚の動作パターンは熟練者で共通性が高いことが分かった。 【成果発表】 佐久間亨,小林育斗,松井康,渡邊昌宏,小林真,木下裕光.ブラインドサッカーのトウキックフォームの特徴.第27回日本障害者スポーツ学会.2018年1月27‐28日