視覚障害者のビジネスデータ分析能力の向上に関する研究 堀江則之 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 キーワード:ビジネスデータ分析,ビジネスデータ処理 1.はじめに 学生が事務系の職種を希望している場合に,事務系の業務にどのように自分が携われるかについての自己PRが弱い学生が見受けられる。事務系の業務は,財務,人事,総務,法務などさまざま考えられるが,これらの業務のなかで,自分はどのような業務ができるのか,就職活動時の面接等で明確に説明できることが求められている。こうした背景を踏まえ,本研究は,さまざまな事務系の業務のなかから,ビジネスデータ分析能力の向上という観点でアプローチする。そして,視覚障害学生向けビジネスデータ分析の演習コンテンツの検討を行う。 2.成果概要 ビジネスデータ分析及び演習に関する文献を広く収集し,レビューを行った。「データの整理方法と数値尺度」,「確率」,「離散確率分布」,「正規分布」,「標本抽出と標本分布」,「信頼区間の推定」,「仮説検定」,「分散分析」,「単回帰分析」,「重回帰分析」などは,ビジネスデータ分析を行う上で,多くの文献で重要項目として取り扱われていた。 従来のビジネスデータ分析に関する文献では,一般的に晴眼者を想定している。したがって,視覚障害者に配慮しているとは言い難く,弱視や重度弱視,全盲の場合,既存のビジネスデータ分析の手法をそのまま有効活用できるとは言い難い。そこで,視覚障害学生向けの演習コンテンツを検討した。今年度に情報システム学科のカリキュラムが改定となり,3,4年次対象科目として新たに「ビジネスデータ処理1」,「ビジネスデータ処理2」を担当する予定である。そこで,本研究で得られた知見をこれらの授業の演習で活用していきたいと考える。一般的に,ビジネスデータの分析ができる人材は,視覚障害の有無に限らず欲しい人材となり得る可能性がある。このことは,視覚障害者の職域開拓が長年の課題となっているなかで,社会に視覚障害者の職能的価値をアピールしていく上でも有効であると考える。 参照文献 [1] デイビッド・M・ルビーン,ティモシー・C・クレビール,マーク・L・ベレンソン,前田祐治[監訳].ビジネス統計学 原書6版Excelで学ぶ実践活用テクニック.丸善出版,2014 [2] アミール・D・アクゼル,ジャヤベル・ソウンデルパンディアン,鈴木一功[監訳],手嶋宣之,原郁,原田喜美枝[訳].ビジネス統計学[上].ダイヤモンド社,2007 [3] アミール・D・アクゼル,ジャヤベル・ソウンデルパンディアン,鈴木一功[監訳],手嶋宣之,原郁,原田喜美枝[訳].ビジネス統計学[下].ダイヤモンド社,2007 [4] 上田太一郎[監修],中西元子,村上直子,杉村裕喜.真の顧客を見極める/ヒット商品開発のための実践! ビジネスデータ解析入門.共立出版,2005 [5] 日花弘子.仕事に役立つ Excelビジネスデータ分析 第4版.SBクリエイティブ,2013 [6] 金城俊哉.Excelビジネス統計パーフェクトマスター.秀和システム,2015 [7] 玄場公規,湊宣明,豊田裕貴.Excelで学ぶビジネスデータ分析の基礎.オデッセイコミュニケーションズ,2016