就職活動における面接企業等への歩行移動支援システムに関する研究 嶋村幸仁 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 キーワード:視覚障害者,スマートフォン,音声,誘導 1.はじめに 国立大学法人筑波技術大学保健科学部の学生はすべて視覚に障害を持っている学生であり,就職活動などで東京へ出向くことも多く,一人での歩行移動に苦慮している状況である。視覚障害者は,ガイドヘルパーや他の人の助けを得て外出しているが,基本的には一人で自由に外出したいと考えている。しかし,実際には線路に落ちて死亡する事故があることや方向がわからなくなり目的地にたどりつけないこと。電車に乗る際も係員不足から駅の待合室で1時間程度待たされるなど時間通りに目的地に到着できない事態がしばしば起こっている。このようなことからスマートフォンを利用してオペレータによる道案内ができれば,視覚障害者が就職活動で面接企業等に1人で移動ができるのではないかと考えた。 2.成果の概要 本研究は,他の研究者が機械システムのみでの案内研究をしている中で,機械と人との融合性により,移動弱者を安全に安心して目的地へ到達させることができる点である。このことにより,視覚障害者が安全・安心して目的地に行くことができるとともに,困った場合などに簡単に道を聞くことが出来,心理的な不安解消にも役立つことができるものである。 ①本研究の全体像 本システムの全体像は,あらかじめ就活面接企業などの目的地とし,視覚障害者にスマートフォンまたはタブレットを持参して,迷った時点で研究代表者に位置情報,動画カメラ情報,電話(スカイプ含む)機能により目的地まで誘導できるかどうかについて,オペレータ機能を担い移動を行う。オペレータは,位置情報とgoogleストリートビューを利用し,両方の画像を比較できるようにし,電話機能により,被験者を目的地まで誘導する。まず,本システムの有効性と汎用性をチェックすることに主眼を置き,障害の程度の軽いものから重いものへ被験者を変更して行きながら問題点や課題を整理し,検証する。視覚障害の特性により,軽いものから重いものへ順次被験者調査を行い,障害別の移動時間や問題点および課題を抽出し,有効性と汎用性の評価を行う。 ②有効性・汎用性の検討 視覚障害のある軽度の弱視から重度の全盲者に対して目的地までの移動調査を実施し,本システムが有効に機能するかどうかについて,有効性のチェックを実施した。この結果,就職活動中の面接企業である目的地まで誘導することができ,有効性と汎用性があることが分かった。 ③高齢者への活用 視覚障害者全般に対して対応可能であるが,介護を必要とした高齢者の増加によりヘルパーの数が足りなくなったことに加え,法改正により同行援護事業から手を引く業者が増えたことで,ヘルパーを利用した外出が以前より難しくなった結果,外出機会が低下していることにより,特に高齢化に伴う視力低下や認知能力の補助,糖尿病を発症した患者の二次的障害による失明の補助などへの活用も考えられた。以上の結果を基に,さらに他の補助金・助成金等への応募や各種学会への発表投稿を行う予定である。